1.暗闇より夜魔來たる-1
あなたはきっとこんな私をお許しにはならないでしょう…
ですが仅讽、私はあなたを守る以外の何かを他に知らない
たとえあなたがこれからどれだけ苦しんだとしても
私は決してあなたを解放したりはしない
この日もまた霹崎、帝都フェザーンでは
皇帝ラインハルト?フォン?ローエングラムの居城「獅子の泉」の會(huì)議室において定例の會(huì)議が行われていた厚脉。
「…では、フロイライン?マリーンドルフ浦楣。その件はそのように」
會(huì)議を取り仕切ったのは蹭越、銀河帝國(guó)3長(zhǎng)官及び帝國(guó)宰相を兼務(wù)し抹恳、
皇帝の最大の腹心とも呼ばれるジークフリード?キルヒアイス主席元帥その人であった锡搜。
彼はローエングラム王朝確立以來そのほとんどの政務(wù)を
ラインハルトに代わり唯一取り仕切ることを許されている人物である橙困。
この日ラインハルトは朝から発熱のために會(huì)議の欠席を余儀なくされ、
その會(huì)議の運(yùn)営をキルヒアイスに委ねていたのだった耕餐。
王朝確立以來まだまだ問題は山積みのため凡傅、その執(zhí)務(wù)は激務(wù)を極め
ラインハルトが體調(diào)を崩したのも無理のないことだった。
キルヒアイスは無理に體を起こすラインハルトを強(qiáng)引に押さえ込んで今日の會(huì)議に出席していたのである肠缔。
”きっと怒っていらっしゃるのだろうな…ラインハルト様”
などと夏跷、考えながらキルヒアイスは次々と上る議題の數(shù)々を迅速に片付けてゆく。
今日は予定よりもかなり早く會(huì)議に終わりが見えてきていた明未。
丁度キリのいい所で會(huì)議に小休止を入れると會(huì)議の參加者達(dá)に珈琲が運(yùn)ばれてくる拓春。
「いやあ、キルヒアイスが議長(zhǎng)だと早くていいな」
「そんな…」
ミッターマイヤーがそんな労いの言葉をキルヒアイスにかける亚隅。
「…じゃ硼莽、なかった。失敬煮纵、キルヒアイス主席元帥」
「お褒めのお言葉有難うございます…あ懂鸵、今は公式の場(chǎng)ではありませんので呼び名はお?dú)荬摔胜丹椁骸?br>
いつも気さくなミッターマイヤーの失言にもキルヒアイスは笑ってそう答えた。
「は行疏、それは助かる匆光。どうも最近はお互い重い肩書のせいで肩が凝っていかんな…」
「ですね…確かに忙しくて息をつく間もありませんから。
元帥もここしばらく家の方にお戻りになっていないのではありませんか酿联?」
苦笑いを浮かべたミッターマイヤーと顔を合わせながらキルヒアイスはそんな世間話を交わす终息。
そんな様子にクスクスと上がるヒルダの笑い聲。
「あら贞让、ご謙遜なさることはありませんわ周崭。キルヒアイス元帥の働きはここにいる
メンバー全員を含め萬民がお認(rèn)めになっていることですもの」
ヒルダのその言葉に回りの元帥府の面々もそれに相槌をもって答える。
ラインハルトと違うところはその卓越した事務(wù)能力だろうか喳张。
ラインハルトのように感情を表にだすこともなくとにかくキルヒアイスのそれには無駄がない续镇。
迅速かつ適切な処理能力には皆も舌を巻くところである。
穏やかな口調(diào)で難なく問題を片付けていくその様子を誰もがたのもしく思っていた销部。
「…ところ摸航、で」
話題を変えるように今度はロイエンタールが話しをもちかける。
「陛下のご容態(tài)の方はどうなのだ舅桩?キルヒアイス」
「熱は…大したものではありません酱虎、ただ最近は特にご無理をなさることが多かったものですから」
キルヒアイスが遠(yuǎn)慮がちにそう告げるとロイエンタールはようやく話に納得する。
「…なるほど擂涛。卿が休ませた訳か」
「そういうことです」
「それでしたら读串、キルヒアイス元帥。早く陛下の下にお戻りにならないといけませんわね」
笑ってそう答えるヒルダにはラインハルトの怒る姿が目に浮かぶようであった。
「…です爹土、ね」
困ったような笑い顔でキルヒアイスはヒルダに言葉を返す。
「オマエも大変だな踩身、キルヒアイス…」
「別に胀茵、そんなことは…」
そんな同情のようなミッターマイヤーの聲にキルヒアイスはわずかな否定をもってそれに答える。
だがこればかりは他の誰もそれを変わってはやれない挟阻。
ラインハルトが親友と呼び自らの傍におくこと望んでいるのは他ならぬこのキルヒアイスだけなのだから琼娘。
「キルヒアイス元帥…」
會(huì)議に參加していた帝國(guó)の治安維持を擔(dān)當(dāng)する
憲兵総監(jiān)のウルリッヒ?ケスラーからさらに話題が続けられる。
「最近附鸽、ヴェスターラントの殘黨勢(shì)力に不穏な動(dòng)きがみられます」
「穏やかではありませんね…詳しくお聞かせいただけますか脱拼?」
ケスラーからの連絡(luò)はまるで寢耳に水のような話であった。
「皇帝誘拐?辣浮熄浓?」
「…はい、かなり大掛かりなものと思われます省撑。どうやら地球教が絡(luò)んでいる可能性も」
「地球教が…ッ6拿铩?」
會(huì)議室が地球教の言葉を聴いて一層ざわめきたった竟秫。
地球教娃惯。
それは銀河帝國(guó)ローエングラム王朝の設(shè)立以前から存在し
同盟、帝國(guó)肥败、フェザーンにまたがりその勢(shì)力を水面下に広げる今だ謎の多い計(jì)り知れない第3勢(shì)力だった趾浅。
ローエングラム王朝設(shè)立によってその活動(dòng)に極端の制限を強(qiáng)いられた地球教は
王朝打倒にその力を注いでいるという。
宗教とは名ばかりのサイオキシン麻薬を始めとする麻薬密売といった分野でも
その悪名は高く馒稍、薬づけの信者達(dá)の結(jié)束は絶対服従の軍人よりもタチが悪かった皿哨。
「今度はヴェスターラントの殘黨勢(shì)力と手を結(jié)んだという訳ですか…」
”手段を選ばないということか…しかしヴェスターラントとは。
いつまでたってもあの男(オーベルシュタイン)には祟られる…ッ”
顔色には出さずキルヒアイスは一人心の中でそう愚癡る纽谒。
「…警護(hù)についてはキスリング親衛(wèi)隊(duì)長(zhǎng)の方にすでに説明を済ませております」
「分かりました…ケスラー憲兵総監(jiān)往史、引き続き徹底的な調(diào)査をお願(yuàn)いします。この件を最優(yōu)先に」
「かしこまりました…あと佛舱、陛下へのご報(bào)告はいかがなさいますか椎例?」
「…それは私の方から致しましょう。オーベルシュタイン元帥」
ケスラーとの話をそこで終えて會(huì)議の書類をまとめ終えたオーベルシュタインをキルヒアイスが呼びとめた请祖。
「…なにか订歪?」
「お話しがあります…執(zhí)務(wù)室までご同行願(yuàn)えますか」
キルヒアイスが手を執(zhí)務(wù)室に向けてオーベルシュタインを招く。
「承知した…」
室內(nèi)に緊迫した空気が流れ再びざわめきが起こった肆捕。
どちらにしろこの二人が內(nèi)輪で話すとなれば
穏やかな話などでは到底有り得ない事を皆が當(dāng)然のように承知しているからだ刷晋。
「…あの、キルヒアイス元帥」
「今日の會(huì)議はこれまでとします…フロイライン、報(bào)告は後でお願(yuàn)いします」
ヒルダの呼びかけにキルヒアイスがきっぱりと皆にそう言い放った眼虱。
そしてそのままオーベルシュタインを伴うとキルヒアイスはその場(chǎng)を後にした喻奥。
その後姿をその目で追いながらミッターマイヤーとロイエンタールは
「さあ…どうでるかな、キルヒアイスは」
「…ふむ捏悬、だがヴェスターラントの件は陛下と同じくキルヒアイスにも禁句のことだ撞蚕。
あの件にオーベルシュタインが絡(luò)んでいることはまず間違いあるまい。
あの時(shí)…キルヒアイスは陛下のお傍を離れ陛下の代理として辺境星域の制圧にあたっていたのだからな过牙。
自分が陛下のお傍を離れることがなければあの悲劇は起こらなかった…
事実そうであっただろうし甥厦、そう思っているのではないか?」
などと寇钉、言葉を漏らし執(zhí)務(wù)室に消える二人の姿を皆で見送った刀疙。
執(zhí)務(wù)室に入ると話を切り出したのは意外にもオーベルシュタインの方だった。
「私を呼ばれたからには扫倡、ヴェスターラントの件…ですかな」
「…そうです谦秧。あなたの労した愚かな策のおかげでローエングラム王朝は深い影を殘してしまいました」
キルヒアイスは腰に下げたブラスターをオーベルシュタインに向けると
オーベルシュタインはそれに驚いた様子もなくその言葉を返した。
「私を撵溃、どうするおつもりか…キルヒアイス元帥」
「…あなたは私を見誤っています油够。陛下の前で銃口を向けたときもそうでした…
私はたとえ無抵抗なものでも、それがたとえ無垢な子供であっても
陛下のご命令ならばこの引き金を引くことが出來る征懈。
そして今ならば私の意志でこの引き金は簡(jiǎn)単に引くことが出來ます…ですが」
話を続けながらキルヒアイスは
オーベルシュタインに向けたブラスターの銃口を下ろす石咬。
「ですが、あなたにはいずれヴェスターラント虐殺の張本人として活躍して頂かなくてはなりません…
今はまだ卖哎、殺す訳にはいきません」
「…今はまだ鬼悠、と申されたか」
「そうです、今はまだ…その時(shí)期ではありません…まだあなたにはやるべきことが殘っています亏娜。
あなたには陛下のためにこれまでの忌まわしきもの全てを背負(fù)って逝って頂かねばなりません…」
オーベルシュタインもそれは自分の中で納得していた焕窝。
自分はそのための存在であるということを。
劣悪遺伝子排除法を生み出したゴールデンバウム王朝打倒のため
オーベルシュタインがラインハルトに誓った絶対の忠誠(chéng)と目的は
それをもって証明することにあった维贺。
「…以前它掂、あなたは私におっしゃいました。自分は敵ではない溯泣、と」
そしてキルヒアイスはブラスターを腰に収めた手で
オーベルシュタインを自分と向かい合う席へと招く虐秋。
「あなたにやっていただきたいことがあります…」
席に腰を下ろしたオーベルシュタインにキルヒアイスは、そう言って用件を話し始めた垃沦。
「なるほど…」
全ての話を聞き終えるとオーベルシュタインはそれを受け入れて承諾する梳星。
「…しかし歌馍、キルヒアイス元帥编曼。卿は私と心中なさるおつもりか深浮?」
「あなたを陛下にお引き合わせしたのは私です…私にも責(zé)任はあります蜻拨。
陛下を守るために必要とあらば私はなんでもします」
そう言うとキルヒアイスは席を立ち、オーベルシュタインもそれに続いた桩引。
「先程の地球教の件は缎讼、フェルナーをお使いになるが宜しかろう…」
「…それでは、この件はそういうことでお願(yuàn)いします」
部屋を出る際坑匠、扉の前にいたオーベルシュタインがキルヒアイスに振り向き様に聲をかける血崭。
「卿のおっしゃる通り私は卿を見誤っていた…
陛下の影になっていて今まで誰もが気づかなかったのでしょう…果たして
陛下も卿の本質(zhì)をどれほどご存知かは知らぬが、これだけは言えますな笛辟。
卿は確かに陛下にとって必要なお方だ」
キルヒアイスがオーベルシュタインのその言葉に目を向けたが
そのままオーベルシュタインは軽く一禮して扉を開けて退出してしまった功氨。
オーベルシュタインが退室し序苏、ただ一人キルヒアイスはその執(zhí)務(wù)室に取り殘される手幢。
結(jié)局キルヒアイスはオーベルシュタインを密かに自分の直屬に置くことにした。
いざ忱详、ヴェスターラントの件が明るみにでた際には围来、
陛下の傍の參謀は自分の直屬であるということにして
ラインハルトの身代わりとなって自分がその非難の的となるために。
だが匈睁、今はその件を明るみにする訳にはいかなかった监透。
帝國(guó)內(nèi)には問題が多すぎてまだまだ不安定な狀態(tài)にあるからだ。
だからキルヒアイスは今はまだ航唆、とオーベルシュタインに言ったのだ胀蛮。
キルヒアイスにもオーベルシュタインにもまだ成さねばならない議題が山積している。
だから全てが片付くまでオーベルシュタインとキルヒアイスは共同戦線を張ったのだった糯钙。
それは到底友と呼べるものではなくどちらかといえば共犯者といった意味合いの方が強(qiáng)いものである粪狼。
だが二人のそれは立場(chǎng)や目的は違えども
ともにローエングラム王朝を…いや皇帝を守ろうとする殉教者ともいえた。
1.暗闇より夜魔來たる-2
キルヒアイスが靜かに胸元から銀色の懐中時(shí)計(jì)を取り出した任岸。
それは以前クリスマスの贈(zèng)り物として
アンネローゼからラインハルトとキルヒアイスにと贈(zèng)られた金銀揃いの懐中時(shí)計(jì)だった再榄。
揃いの金は勿論今もラインハルトが持っている。
中を開くとそれはロケットになっていて
そこにはアンネローゼとラインハルト享潜、そしてキルヒアイスの3人の懐かしい寫真が添えられていた困鸥。
”…いかなる災(zāi)いからも必ずこの私がお守り致します、ラインハルト様”
キルヒアイスはその寫真を見ながら出會(huì)った頃の昔を懐かしむように
その懐中時(shí)計(jì)を胸元で握りしめ剑按、瞼を閉じてロケットにそっと口付ける疾就。
”ラインハルト様…”
しばらくそうしていたキルヒアイスだったがラインハルトが自分を待っているため
ずっとこうしていてもいる訳にもいかなかった。
殘った仕事を早々に片付けてキルヒアイスは一刻も早くラインハルトの下に戻らなければならないからだ艺蝴。
懐中時(shí)計(jì)を胸元にしまい込むとキルヒアイスはヒルダを呼んで
執(zhí)務(wù)機(jī)の上にあった書類に再び目を通し始めたのだった虐译。
やがて仕事を終えたキルヒアイスはヒルダを退出させてそのままラインハルトの下へと向かった。
なにやらラインハルトの居住區(qū)のあたりが騒がしい吴趴。
そのままキルヒアイスがラインハルトの部屋の前までいくと漆诽、
ラインハルトの側(cè)近であるエミールの姿がキルヒアイスの目に飛び込んできた侮攀。
「キルヒアイス元帥…ッ」
「…どうなさいましたか?」
「陛下がどこにもいらっしゃらないんです…ッO崾谩兰英!」
あちこちで親衛(wèi)隊(duì)の聲があがっておりすでに親衛(wèi)隊(duì)の方でも捜索を開始しているようだった。
「キルヒアイス元帥供鸠、キスリング親衛(wèi)隊(duì)長(zhǎng)がお見えになりました…畦贸!」
「進(jìn)展は?」
「只今楞捂、全力でお探ししております…しかし薄坏、どうもこれは」
「え…?」
中からの侵入の形跡はまったく見られないとのことだった寨闹。
どうやらラインハルト自ら外に出た可能性が高いというのである胶坠。
”…まったく。あの人は繁堡、この大変な時(shí)期に…何故”
目を僅かに細(xì)め片手を顎に添えて考え込むキルヒアイスだったが
考えるその間もなく胸元の通信機(jī)の音が鳴った沈善。
それはフェルナーからの連絡(luò)だった。
どうやらオーベルシュタインが早速フェルナーに命じすでに行動(dòng)を起こさせていたようである椭蹄。
流石にオーベルシュタインは有能でその辺にも手抜かりがなく仕事も速い闻牡。
「フェルナー準(zhǔn)將、陛下は今どちらに…绳矩?」
『…キルヒアイス元帥罩润、少しやっかいなことになりました。
陛下は何者かに呼び出しを受けていたようなのですが翼馆、
そのまま地上車に乗せられて移動(dòng)させられてしまった模様です』
「……ッ割以!」
すでに敵は動(dòng)き出してしまっていた。
全てが後手に回ってしまったのである写妥。
一瞬目の前が真っ暗になりそうになりながらも
キルヒアイスは引き続きフェルナーからの連絡(luò)を聞き続ける拳球。
『すでに部下が後を追っております…場(chǎng)所は…』
「…わかりました、すぐに向かいます珍特。引き続き連絡(luò)をお願(yuàn)いします」
通信機(jī)を切るとすぐにキルヒアイスは行動(dòng)を起こした祝峻。
「ケスラー憲兵総監(jiān)に至急連絡(luò)を…!キスリング隊(duì)長(zhǎng)扎筒、陛下をお迎えに上がります…頭數(shù)を揃えて下さい」
「は…ッ莱找!」
上手くいけば先発させたケスラー達(dá)によって早々に鎮(zhèn)圧され
ラインハルトは無事に保護(hù)されているはずである。
キルヒアイスはキスリングに指示を出すとそのまま用意させた地上車に乗り込み
急いでフェルナーからの報(bào)告があった現(xiàn)場(chǎng)へと向かった嗜桌。
現(xiàn)場(chǎng)に到著するとすでにケスラー達(dá)により救出作戦は展開されていた奥溺。
「陛下はどちらに…?」
「今だ発見には到っておりません骨宠、只今総力を挙げて捜索中です」
會(huì)話を遮るように突然建物から連続の爆発音が辺りに鳴り響いた浮定。
たまらずキルヒアイスが腰に下げたブラスターをその手に持って建物に向かって走り出す相满。
「元帥、危険です…ッ」
ケスラーの制止も聞かずキルヒアイスはそのまま爆発が続く建物へ突入を開始した桦卒。
慌ててケスラーも近くにいた人間をかき集めてその後を追う立美。
「…ラインハルト様!どちらにおられますッ…ラインハルト様ッ7皆帧建蹄!」
キルヒアイスがラインハルトの姿を求めて必死の聲を上げる。
爆発が立て続けに起こる中裕偿、建物內(nèi)を探し回っていたキルヒアイスの視界の隅に
ようやくラインハルトの姿が捉えられた洞慎。
「ラインハルト様…ッご無事で!嘿棘?」
そこには建物の奧に壁際で蹲るような格好のラインハルトの姿があった劲腿。
衣服に多少の亂れはあったものの外傷はなく拘束はなにもされていない。
だがキルヒアイスの言葉にラインハルトからはなんの反応がない…いや蔫巩、なさすぎた谆棱。
「…ライン快压、ハルト様圆仔?」
キルヒアイスがラインハルトの顎を摑み上げ自分の方へと向かせてその瞳を覗き込むと
ラインハルトのその瞳は焦點(diǎn)も虛ろで、ぼんやりとしていた蔫劣。
ラインハルトの體をキルヒアイスが抱えこむとラインハルトは小さな笑い聲をあげながら
キルヒアイスの頭に腕を絡(luò)めてくる坪郭。
どうやら見張りもろくになく拘束もされていなかったのには訳がありそうだった。
”…幻覚剤かなにか薬物を投與されたのかも知れない”
「キルヒアイス元帥…ッどうかお早くッ」
建物內(nèi)では今だ頻発に爆発音が鳴り響いている脉幢。
ケスラーのその言葉にキルヒアイスはラインハルトを脇で抱え込みながらそのまま出口へと急いだ歪沃。
そうして建物の倒壊が始まる頃にはキルヒアイス達(dá)は建物から脫出することが出來た。
「陛下嫌松、ご無事で…沪曙!」
キルヒアイスは一目を避けるようにそのままラインハルトのその姿を背中のマントを外して覆い隠す。
「…陛下のご様子が変なのです萎羔。なにか薬を飲まされたようで…
急いで醫(yī)師を呼んでください液走。城には私がこのままお連れしますので…」
「なんと…ッ!」
キルヒアイスのその言葉にケスラーは驚きの聲を上げながらも早速醫(yī)師の手配をするべく連絡(luò)をとった贾陷。
その時(shí)近くにいたフェルナーの姿を見つけたキルヒアイスは労いの言葉をかける缘眶。
「…フェルナー準(zhǔn)將、よくやってくれました」
「早速お役にたてて何よりです…建物內(nèi)の関係者はケスラー憲兵総監(jiān)が全て捕らえてあります髓废。
こちらはケスラー憲兵総監(jiān)におまかせして巷懈、私の方はこれらと地球教との関係を調(diào)査しようと思うのですが」
フェルナーの言葉にキルヒアイスが怪訝に眉を顰めた。
「やはり慌洪、地球教と関わりが…顶燕?」
「建物の関係者のそのほとんどはヴェスターラントの殘黨勢(shì)力と思われますが…
その可能性は極めて高いと私は考えます」
確かに規(guī)模が大きすぎる凑保。
そしてラインハルトの行動(dòng)をこれほど早く知りえる情報(bào)力といい
その用意周到な手口にただならぬ裏の存在があるというところは
キルヒアイスにも否めないところだ。
「…わかりました涌攻、引き続き調(diào)査を続けてください」
「元帥愉适、地上車の用意が整いました」
キスリングの聲にキルヒアイスはラインハルトを連れてその場(chǎng)を後にする。
「では癣漆、ケスラー憲兵総監(jiān)…あとはよろしくお願(yuàn)いします」
キルヒアイスはその場(chǎng)をケスラーに任せラインハルトごと後部座席に乗ってそのまま地上車を発進(jìn)させた维咸。
ラインハルトを覆ったマントを外すとそこには無邪気に笑うラインハルトがいた。
その身をキルヒアイスに憑れさせ何が可笑しいのか
クスクスと笑いながらキルヒアイスの服の襟元を觸っては戯れる惠爽。
その有様にキルヒアイスはラインハルトをこのようにした犯人達(dá)にかつてない憎悪を覚えていた癌蓖。
”許さない…この購いは必ずさせる…その命すでにあると思うな。
近いうちおまえ達(dá)の身にかつてない恐怖が襲いかかる…
その時(shí)こそ婚肆、おまえ達(dá)は生きていることを後悔することになるだろう”
ラインハルトの身體を黙って自分に引き寄せて
キルヒアイスはただ靜かに怒りをその身に滾らせる租副。
その言葉の通り犯人達(dá)は決して怒らせてはならない者を敵にしたことを
やがて身をもって知る事となる。
キルヒアイスがラインハルトの居城?獅子の泉に辿りついた時(shí)には
すでにその情報(bào)をいち早く聞きつけた元帥府の面々やヒルダ達(dá)も駆けつけてきていた较性。
「おい用僧、キルヒアイス…!陛下は…ッT蘖责循?」
「陛下…ッ」
「陛下はご無事です…ですが、まず醫(yī)師の診斷を仰がねばなりません…どうか前を通してください」
挨拶もそこそこにキルヒアイスは脇に抱えたラインハルトを
マントに包み込んだまま醫(yī)師団の元へと連れてゆく攀操。
ラインハルトはそのまま寢室へと運(yùn)ばれそこで醫(yī)師団達(dá)による診斷が行われた呆馁。
部屋の外ではその診斷結(jié)果を聞くべく訪れた元帥府の提督達(dá)とヒルダが待機(jī)している绍在。
その背を壁に憑れさせラインハルトの寢室の扉を見つめながらキルヒアイスもまたそこでその結(jié)果を待った土居。
やがて診斷を終えた醫(yī)師団たちがキルヒアイス達(dá)を?qū)嬍窑尉Aき間へと呼んだ桑滩。
だが診斷の結(jié)果はキルヒアイス達(dá)の予想を遙かに超えたものだった。
「急性麻薬中毒5叻拧排惨?」
「そんな…ッ」
皆がその言葉に愕然として顔を真っ青にさせて騒然の中、キルヒアイスは醫(yī)師団に治療法を訊ねた碰凶。
「ドクター…治療法は暮芭?」
「方法は二つあります…一つはこのまま薬を抜けさせること、ただしこれはかなり大変なことです痒留。
今は鎮(zhèn)靜剤で眠らせておりますが谴麦、禁斷癥狀が始まればそれも効き目がなくなります。
薬が抜けるまでは幻覚癥狀を始めとする吐き気伸头、嘔吐といった
あらゆる禁斷癥狀に全身は襲われ匾效、その癥狀が治まるまでに発狂してしまう者も少なくはありません」
「…もう一つの方法は?」
その言葉に醫(yī)師が瓶を一つ差し出した恤磷。
「こちらです…さらに強(qiáng)い薬で一時(shí)的に正気を取り戻すことが出來ます面哼。
ですが野宜、これはあくまで薬の効用で一時(shí)的なものです。
治療といえたものではありません…さらなる中毒を引き起こすことになりますから」
「毒をもって毒を制すか…」
そんなロイエンタールの言葉にミッタマイヤーからの激昂が飛んだ魔策。
「馬鹿をいうな…ッ陛下を中毒患者にするつもりか匈子!」
薬を抜けさせるか、一生薬漬けか…
”…ラインハルト様ッ”
キルヒアイスは醫(yī)師団からその背を返し壁に向かってそのまま拳を激しく壁に打ち付ける闯袒。
室內(nèi)に壁を叩きつける鈍い音が響き渡り虎敦、皆が壁を叩きつけたキルヒアイスの背中を見つめた。
そこからでは壁に向かうキルヒアイスの表情を伺い知る事は誰にも出來なかったが
震える身體からはそのどうしようもない胸の內(nèi)の様子が見てとれた政敢。
何か痛いものを見てしまったようにキルヒアイスのその姿に皆が顔を顰める其徙。
キルヒアイスは壁に打ち付けた拳の痛みによってわなわなと震える身體を無理やり押さえ込むと
その感情を表情に露わにすることもなく再び醫(yī)師団の方へと向き直った。
「…手錠の鍵をください」
キルヒアイスは無表情のままそう言って
ラインハルトが薬が切れた時(shí)の用心のために醫(yī)師団によって施された手錠の鍵を醫(yī)師団に求めた喷户。
醫(yī)師団はその言葉に応じてキルヒアイスにその鍵を差し出す唾那。
「…薬はどのくらいで抜けますか」
「量にもよりますが正気に戻るのに早くて3日から1週間弱、
禁斷癥狀が完全に出なくなるにはまたさらに時(shí)間を要します…」
その言葉にキルヒアイスは手錠の鍵をその手に強(qiáng)く握りしめる褪尝。
「わかりました…この件はどうか內(nèi)密にお願(yuàn)いします」
醫(yī)師団は禁斷癥狀や癥例の簡(jiǎn)単な説明を済ませるとその場(chǎng)を退出した闹获。
「キルヒアイス…卿は」
「この件に関しては箝口令をしきます…陛下のお體から薬が完全に抜けられるまで、
陛下は療養(yǎng)中ということで陛下の執(zhí)務(wù)は私がしばらく代行します…
フロイライン河哑、スケジュールの方を調(diào)整して下さい」
立ち盡くす面々にキルヒアイスがそう告げる避诽。
その言葉でキルヒアイスが自らラインハルトの薬を抜けさせる役を
かってでたことにその場(chǎng)にいる全員が瞬時(shí)に気がついた。
「元帥灾馒、なにもあなたがなさらずとも…ッ」
「いいえ…他の者に陛下のそのようなお姿をお見せする訳にはまいりません茎用。これは私の仕事です…」
淡々と発せられるキルヒアイスの言葉に全員がその耳を傾ける遣总。
「…これより陛下の居住區(qū)への出入りを一切禁じます睬罗。
キスリング隊(duì)長(zhǎng)、この先何人たりとも陛下のお傍に人を近づけてはなりません旭斥。
ケスラー憲兵総監(jiān)には引き続き関係者の取調(diào)べの方をよろしくお願(yuàn)いします」
口答えは許されなかった容达。
キルヒアイスの命令はラインハルトがいない以上それは絶対のもので何者にもそれに逆らうことは出來ない。
「用件は以上です…」
靜まりかえった室內(nèi)でキルヒアイスは最後にその話を締めくくると垂券、
キルヒアイスその背を皆に向けて退出を命じた花盐。
寢室の扉が閉められてようやくキルヒアイスはラインハルトと二人きりとなる。
まだ鎮(zhèn)靜剤が効いているのだろうか菇爪、ラインハルトは穏やかな吐息を漏らしてよく眠っている算芯。
だがそれも薬が効いているうちのことでじきに恐ろしい禁斷癥狀が始まるだろう。
キルヒアイスは以前クロイツナハ?ドライにおいて
サイオキシン麻薬の事件に巻き込まれ麻薬によって引き起こされた
中毒患者の恐ろしい有様を目の當(dāng)たりにしたことがあった凳宙。
だからこそ熙揍、その薬の恐ろしさをよく知っている。
これからラインハルトに襲い掛かる禁斷癥狀は
その想像を絶するものであろうということも…
ラインハルトの綺麗な肌に傷がついてしまうと氏涩、
キルヒアイスはラインハルトを拘束する手錠を外し
近くにあったシーツを引きちぎり両手両足を縛りベッドの足に固定させた届囚。
そのままラインハルトの眠るベッドの端に腰をかけて座りこみ
キルヒアイスはそっとラインハルトの額に自分の唇をあてる有梆。
そしてその身を抱きながらラインハルトの頬に摺り寄せるように頬を合わせた。
”これからまたあなたと同じ夢(mèng)をみましょう…今度の夢(mèng)は長(zhǎng)くて苦しいものになりますが意系、
あなたが薬以上に私を欲しがるまでは決してあなたを離しはしない”
今まさにキルヒアイスとラインハルトの二人は
長(zhǎng)い戦いの夜を迎えようとしていた泥耀。
2.歪んだ真珠-1
闇夜を照らすあの月はまるで歪んだ真珠のよう
微妙に正円を描かないそれを
まるでその光で覆い隠すように自らを包み込む
その完璧な正円を求める姿に私はどこかあなたを見てしまいます
いくらその光にその身を隠しても
ずっとそれを見ている私にはその姿すらも全て愛おしい
「あ…うあ、ああッ;滋怼痰催?」
深夜遅くにようやくラインハルトはその意識(shí)を取り戻した。
目が醒めたラインハルトの手足はキルヒアイスによって
引きちぎられたシーツでベッドの端へと繋がれその身は捕らわれの狀態(tài)にある迎瞧。
「…お目覚めになりましたか」
窓際に椅子を寄せて靜かに読書に耽りながらラインハルトの目覚めを待っていたキルヒアイスは
そのまま席をたってラインハルトのいるベッドへと近づいてゆく陨囊。
「…いやッだ、怖…いッ」
ラインハルトの焦點(diǎn)の定まらないその瞳から浮かび上がる生理的な涙夹攒。
禁斷癥狀によってじっとしていられない身體は
身動(dòng)きを封じられた狀態(tài)であってもその身の自由を求めて暴れ出す蜘醋。
「無駄ですよ…その様にされても」
「離、せ…ッ離せええーッS匠ⅰ压语!うあああ…ッ」
ラインハルトの寢室から絶叫が上がりその聲は居住區(qū)へと響き渡った。
「…始まったな」
ラインハルトの悲痛の叫びをキルヒアイスより警備を命じられたキスリングだけが聞いていた编检。
”長(zhǎng)い夜になりそうだ…”
だが辛いのは悲鳴を聞いている自分ではない胎食。
禁斷癥狀で苦しむラインハルトは元よりその姿を目の當(dāng)たりにしながら世話をする
キルヒアイスの心中はさらに想像を絶するものであるだろう。
それは今も辺りに響き渡るラインハルトの悲鳴からもキスリングには伺い知れた允懂。
自分に今出來ることはそのキルヒアイスから命じられた人払いの任を確実に遂行することにある厕怜。
キスリングはそう自分に言い聞かせて帽子を深く被りなおした。
「そのようにお聲をあげられますな…喉を痛めてしまいます」
そう言うとキルヒアイスは布でラインハルトの口元を封じ込んでしまう蕾总。
「ぐ…ッ粥航!うーッ!生百!…んんッ」
「…どこまでもお付き合いしますから递雀、ラインハルト様」
ラインハルトの狂気に満ちた挑むような瞳を
キルヒアイスは物ともせずにラインハルトの身體を押さえ込む。
「あなたが本當(dāng)に欲しいものは薬などではないはずです…
あなたがそれを思い出すまでは蚀浆、身體の自由を返してはあげられない」
”あなたの今の苦しみはあなたを守りきれなかった私の罪です缀程。
私にはあなたのその苦しみを全て受け止める義務(wù)がある。
だから決して目を逸らさずに市俊、今のあなたを見屆けましょう…”
禁斷癥狀を忘れさせるのは杨凑、それ以上の苦しみ。
「あなたをずっと傷つけたくないと願(yuàn)い摆昧、それを守り続けた私が
今唯一あなたに與えられるものが他にないとは…」
”だが禁斷癥狀に一人もだえ苦しむあなたを見るよりは…それもいた仕方のないことか”
キルヒアイスはラインハルトの顎を摑んで自分の方へと向かせた撩满。
「あなたも、こんな私を許さないでください…ラインハルト様」
「……ひッ、いいッp信!搞糕!」
ラインハルトの全身に痙攣が走る。
焦點(diǎn)のあやふやだったその瞳は大きく見開かれ曼追、その背を大きく反り返させた窍仰。
あまりの痛みに全身は恐怖におののき、禁斷癥狀もこの時(shí)ばかりはなりを顰める礼殊。
驚愕に目を見開かせてびくびくと小刻みに痙攣を繰り返すラインハルトの身體を
キルヒアイスはその目を逸らさずに受け止めていた驹吮。
「決して私からその目を逸らしてはなりません…
あなたは見屆けなければならない…あなたに大罪を犯す男の姿を」
「…うーッううー」
たちまちラインハルトを橫たえさせていたベッドが真紅に染まってゆく。
キルヒアイスが何の準(zhǔn)備も施さないままラインハルトの中に強(qiáng)引に自分を埋め込ませた為に
下肢から滴り落ちたラインハルトの鮮血によってシーツが汚されたのだ晶伦。
これまでも二人は身體を重ねる関係にあったが何の準(zhǔn)備もなく身體を繋げることは
ラインハルトの身體に負(fù)擔(dān)が大きかったためキルヒアイスはいつも気にかけていた碟狞。
だが他に目立った外傷を殘さずにラインハルトに苦痛を與える術(shù)を
他に思いつかなかったキルヒアイスは今までの禁忌を破りその手段としてそれを用いたのである。
「ぐッう…ん婚陪、んーッ」
涙を溢れさせていたラインハルトの瞳からそれは堰をきったように一気に零れ出す族沃。
互いの快楽を一切封じ込んだ痛みだけの身體の交わり。
その行為は啜り泣きをしながら痛みを受け止めるラインハルトが気を失ってしまうまで続けられた泌参。
夜が明けるとキルヒアイスはそのままろくに眠ることもないまま身支度を整えて部屋を出た脆淹。
ヒルダからの業(yè)務(wù)連絡(luò)とケスラー達(dá)の捜査狀況を聞くためである。
部屋を出ると一日中警備を続けていたキスリングの姿がキルヒアイスの目に止まった沽一。
一晩で人が変わったようにやつれ果てたキルヒアイスにキスリングが敬禮してその視線に答える盖溺。
「…どうやらあなたも眠ってはおられないようだ」
「自分のことはどうかお?dú)荬摔胜丹椁骸?br>
元帥におかれましては今は陛下のことだけにご専念下さいますよう…」
キルヒアイスの言葉にキスリングはそう聲をかけたがキルヒアイスはその言葉を首を振って否定した。
「いいえ铣缠、あなたはそれではいけません…キスリング隊(duì)長(zhǎng)烘嘱。
陛下のお傍にいる私がこのような狀態(tài)である以上、
あなたはきちんとした體調(diào)で陛下をお守り下さらなければなりません」
「…です蝗蛙、が」
「眠れないのでしたら薬を使ってでも無理に身體を休めるのです…いいですね蝇庭?」
続けられたキルヒアイスの言葉にキスリングは敬禮をもってそれに答える。
「陛下は今お休みになっておられます…私が戻られるまでどうか後をよろしくお願(yuàn)いします」
その姿を見屆けたキルヒアイスはそう言って
キスリングはそのまま執(zhí)務(wù)室に向かうキルヒアイスのその姿を見えなくなるまで見送った歼郭。
”…気丈なお方だ遗契。このような狀況にあっても全てを冷靜に判斷されている”
そこにはすでにやつれた様子を表に出すことのないいつもと変わらぬキルヒアイスの姿があった。
キルヒアイスが執(zhí)務(wù)室に入るとやはり昨夜は眠れなかったのか赤い目をしたヒルダが待機(jī)していた病曾。
「キルヒアイス元帥…お手が…」
ヒルダのその言葉にキルヒアイスがふと自分の手に目をやると
手の甲にはラインハルトの爪によって傷つけられた赤くみみず腫れを起こした痛々しい傷跡があった。
「…これは漾根、失禮」
キルヒアイスは制服にしまい込んであった白い手袋をその手につける泰涂。
「それでは報(bào)告を聞きましょうか…フロイライン」
そして何事もなかったかのようにキルヒアイスはヒルダによってまとめられた書類に目を通し始め
そのまま報(bào)告を聞きながら仕事を片付けにかかった。
あらかた仕事を片付けてしまうとキルヒアイスは捜査狀況を聞くべくケスラーに連絡(luò)をとる辐怕。
ケスラーからの報(bào)告ではその場(chǎng)に居合わせた地球教関係者は口に含んだ毒で服毒自殺を図っており逼蒙、
殘ったヴェスターラント関係者も地球教徒によってすでに麻薬に犯された狀態(tài)にあるらしく
その証言もほとんど得られない狀態(tài)だという。
結(jié)局寄疏、一晩経っても捜査にこれといった進(jìn)展は見られなかったという訳である是牢。
「…今からそちらに向かいます」
それだけ告げるとキルヒアイスは通信をきってケスラーの元に向かうべく立ち上がった僵井。
キルヒアイスに同行しようと後を追うヒルダにキルヒアイスは控えめに聲をかける。
「貴女は來られないほうが…」
「いいえ…私は秘書官です驳棱。陛下をお助けする立場(chǎng)にある以上お供させてください」
今自分のするべきことは陛下の代わりとなって働くキルヒアイスのそれを手助けをすることにある批什。
そういって斷固として同行を求めるヒルダにキルヒアイスはやむなく許可を出す。
「わかりました…では社搅、ご一緒に」
そのままヒルダを連れ立って執(zhí)務(wù)室を後にするとキルヒアイスはケスラーのもとへと急いだ驻债。
キルヒアイスが到著するとそこにはケスラー自らが出迎えに出ていた。
そしてキルヒアイスに請(qǐng)われるままに一同は生き殘った事件の関係者の下へと向かう形葬。
「……ッ合呐!」
最初、その姿を目にした時(shí)ヒルダが恐怖に顔を引き攣らせた。
そこには麻薬の禁斷癥狀に襲われた見るも無殘な人間には程遠(yuǎn)い生き物の姿があったのだ。
これと同じ薬をラインハルトもまた與えられたのである围俘。
今のラインハルトもこれと似た狀態(tài)であることには違いなかった箱熬。
キルヒアイスはこの狀態(tài)のラインハルトの傍に一緒にいるのだ。
ヒルダはそっとキルヒアイスを覗き見ると轰枝、
いつもと変わらないその様子にキルヒアイスの精神力の強(qiáng)さを思い知ったのだった。
「面目ない…キルヒアイス元帥」
「…いいえ、ケスラー憲兵総監(jiān)」
捜査の進(jìn)展が手詰まりになったことにケスラーが詫びを入れると
それに答えるキルヒアイスの言葉は予想外のものだった缘屹。
「內(nèi)國(guó)安全保障局のラング局長(zhǎng)を呼び出してください」
「な…ッ」
ケスラーとヒルダがキルヒアイスのその言葉に衝撃を走らせる。
ラングはローエングラム王朝以前は國(guó)家治安維持局の局長(zhǎng)として
帝國(guó)內(nèi)の不穏分子に対して極端な弾圧を強(qiáng)いて恐れられていた人物であった侠仇。
オーベルシュタインにその手腕を買われ轻姿、ローエングラム王朝確立後は
その名を內(nèi)國(guó)安全保障局と変えて局長(zhǎng)としてその任にあたっていたが
ロイエンタールを謀反人に仕立て上げようとした國(guó)家への內(nèi)亂罪により
その身は今やオーベルシュタインの下で更迭されている立場(chǎng)にある。
「なにを申されますか逻炊、キルヒアイス元帥…ッ一體あなたは何を考えておられるのですか;チ痢?」
「なにって…別に余素。こういったことは専門家におまかせしましょう…
ケスラー憲兵総監(jiān)豹休、あなたは引き続きこの件を最優(yōu)先とした徹底捜査を」
キルヒアイスから告げられたその言葉にケスラーは逆らう言葉を失くす。
「…すぐに桨吊、手配いたします」
ようやくそれだけ口にするとケスラーはそのままその場(chǎng)を後にして
ラングをこちらに呼ぶための手続きにとりかかった威根。
「キルヒアイス元帥…」
ヒルダはこの時(shí)常に陛下と共にあってその笑みを崩すことのなかったキルヒアイスが
その表情を顔色にすら出さずに怒りで身をみなぎらせていることを知る。
口の中に溜まる唾液をごくりと飲み込みながら
ヒルダはこの時(shí)自分の背に滴り落ちる冷たい汗を感じていた视乐。
ケスラーからの連絡(luò)を受けたオーベルシュタインにより早速ラングとの連絡(luò)が
つけられると早々にラングがケスラーに連れられてその場(chǎng)にやってきた洛搀。
一禮するラングにキルヒアイスが聲をかける。
「…ようこそ佑淀、ラング局長(zhǎng)」
控えの間でそのままヒルダとふたりキルヒアイスはラングの到著を待っていたが
ヒルダを殘しラングとケスラーと共に事件関係者の部屋へと向かうためその部屋を出て移動(dòng)を始めた留美。
「キルヒアイス元帥、私も…!」
「いいえ…貴女は陛下にとっても谎砾、我々にとっても…大切なお方です逢倍。
これ以上あなたにお目苦しいものをお見せする訳にはまいりません」
「すぐに戻ります…貴女はどうかこちらでお待ちください」
後を追おうとしたヒルダをキルヒアイスがそういって口答えの余地も與えないまま
立ち止まらせキルヒアイスはその場(chǎng)を後にした。
「あなたに見ていただきたいものがあります…」
キルヒアイスは捕らえられた関係者をラングに引き合わせる景图。
「…なるほど较雕。私の仕事はこれらからその情報(bào)の全て引き出すことですな」
すでに事件の詳細(xì)は耳にしていたため自分が呼ばれるということで
大よその予想をラングはしていたようだった。
クックックッと症歇、ラングが小刻みに身體を揺らしながらその喉元を笑わせる郎笆。
「そういうことです…ラング局長(zhǎng)。あなたにこれより24時(shí)間の猶予を與えます忘晤。
それまでに必要な情報(bào)を彼らから引き出してください」
その言葉にラングが驚いた目でキルヒアイスを見やる宛蚓。
「24時(shí)間とは…またふっかけますな、閣下」
「…この仕事设塔、あなたを見込んでお願(yuàn)いしています凄吏。
成功した暁にはあなたの処遇はこの私の名において保証させて頂きましょう」
ラングの望みは唯一つ。
それは更迭を解かれて內(nèi)國(guó)安全保障局の局長(zhǎng)として再びその立場(chǎng)に返り咲くことにあった闰蛔。
皇帝?ラインハルトに次ぐ地位にあるキルヒアイスの言葉であるならば
この帝國(guó)內(nèi)で適わないことなど何もない痕钢。
2.歪んだ真珠-2
「…その言葉、二言はございますまいな序六、閣下」
「キルヒアイス元帥…それはッ」
ケスラーの非難の聲をキルヒアイスがその手を翳して遮った任连。
「よいのです…ケスラー憲兵総監(jiān)。どうやら帝國(guó)にはまだこの方が必要のようです」
「やってみましょう…しかし例诀、24時(shí)間とは時(shí)間がない上に
ここにはその道具もない随抠。はて、どうしたものか…」
ラングが首を傾げて少し愚癡めいた言葉を漏らす繁涂。
麻薬中毒に侵された関係者からその証言を得るためには無論尋問だけでは無理な話であった拱她。
「今、彼らを移動(dòng)して口封じに消されてしまっては元も子もありません…
必要なものはケスラー憲兵総監(jiān)にいって用意させましょう」
「…果たして扔罪、どこまでのご許可が下りますかな秉沼?」
ラングがその小さい身體を丸めこませ、下から眺めるように陰濕な目でにやりと笑ってキルヒアイスに訊ねる矿酵。
その言葉を顔色を変えないまま受け止めるとキルヒアイスはラングに言葉を返した唬复。
「どうせ、彼らは皇帝誘拐の罪により極刑は免れません…いかようにも」
「…なかなか辛辣な事を言うお方だ坏瘩、閣下は」
ラングのその言葉に付け足すようにキルヒアイスが訂正を加える盅抚。
「ああ、しかし…首から上は生かしておいてください倔矾。
この件が片付くまではせいぜい役にたって頂きましょう…」
「………ッ!」
まるで世間話をするように次々とキルヒアイスから告げられる言葉に
ケスラーはただ顔を青ざめるより他はなかった。
”この方あってのローエングラム王朝か…”
ラングがここで見たジークフリード?キルヒアイスという人物は
オーベルシュタインから聞いていた以上の人物だった哪自。
オーベルシュタインと同じくしてこの目の前にいる人物もまた必要悪としての自分の存在を認(rèn)めている丰包。
”…ならば、この身をもってそれを証明せねばなるまいて”
これはラングに與えられた最後の復(fù)帰の機(jī)會(huì)である壤巷。
キルヒアイスの言葉にラングは一禮をもってその任を受けたのだった邑彪。
そしてこの場(chǎng)をラングに預(yù)け、キルヒアイスはケスラーを連れて退出してゆく胧华。
「ケスラー憲兵総監(jiān)…あなたはフェルナー準(zhǔn)將と連絡(luò)をとって連攜をもってこの任にあたって下さい寄症。
一刻も早くこの件を終わらせなければなりません」
「承知しました…しかし元帥。よろしいのですか矩动、あのような危険な輩を…
おそらく他の提督達(dá)も黙ってはおりますまい」
ケスラーに言われるまでもなくミッターマイヤーを始めとする提督達(dá)が
それを聞きつけて自分の元へとやってくる事はキルヒアイスにも予想はついた有巧。
「他の提督達(dá)には私からお話します…あなたはどうかこの件にのみに全力を盡くしてください」
キルヒアイスとケスラーはそんな會(huì)話を交わしながらヒルダの待つ控え室に到著すると
そこで待っていたヒルダにキルヒアイスが聲をかける。
「お待たせしました悲没、フロイライン」
そう言ってキルヒアイスはヒルダを連れて獅子の泉に戻るべくその場(chǎng)を離れたのだった篮迎。
キルヒアイスがその日の仕事を片付けた頃には
早速その話を聞きつけたミッターマイヤー達(dá)が會(huì)議室に集まって來ていた。
「一體どういうつもりなのだ示姿、キルヒアイス元帥は…ッ甜橱!」
口火を切って大聲で一聲を投じたのはビッテンフェルトだ。
席から立ち上がってその身を奮い立たせながら怒りを露わにさせている栈戳。
「…抑えて下さい岂傲、ビッテンフェルト提督」
「抑えろだと…ッ!子檀?」
傍にいたミュラーが立ち上がったビッテンフェルトを軽く嗜めるが
ビッテンフェルトはそれを振り払うようにさらに聲を荒げて言葉を続けた镊掖。
「これが抑えていられるか…ッ!あのラングだぞC堰乔?
いつまた我々に事を起こすか知れたものではないわッ!脐恩!」
ロイエンタールの謀反の件はロイエンタールに限らずとも
その情報(bào)操作はおそらくその名を変えて行うことも出來ただろう镐侯。
もしかするとそれは自分であったかも知れないのだ。
ビッテンフェルトのその言葉にそこにいる提督達(dá)もまた沈黙をもってそれを肯定するしかなかった驶冒。
一同が沈黙する中苟翻、その沈黙を破ったのはその事件の當(dāng)事者であるロイエンタールだ。
「しかし…よりにもよってあのラングを使うとは骗污。キルヒアイスもまた隨分と思い切ったことをする」
以前ラングによって謀反人に仕立てられそうになったロイエンタールが苦笑混じりにそう口にすると崇猫、
ケスラーからの連絡(luò)を受けたミッターマイヤーが言葉を続けた。
「ケスラーもお手上げだったようだ…まあ需忿、無理もあるまい诅炉。
地球教関係者はその場(chǎng)で服毒自殺蜡歹、殘されたのはヴェスターラントの麻薬中毒患者だけときては、な…」
「オーベルシュタイン涕烧、貴様のせいだ…ッ毎度ながらその冷徹な頭脳はろくな事には働かぬ月而!
なぜラングをキルヒアイス元帥に引き渡したりなどしたのだ…ッ」
ビッテンフェルトは黙って席について話を聞き続けるオーベルシュタインに痛烈な言葉を放った。
「…會(huì)議でもないのに呼び出しがあったのはその件ですか…ですがその件に関しては议纯、
私は命令に従ったまでのこと父款。卿にどうこう言われる筋合いはございますまい」
「なにを…ッ!」
その身を乗り出すビッテンフェルトをミュラーが抱え込むように押さえ込む瞻凤。
「いけません憨攒、提督…ッオーベルシュタイン元帥…ッあなたもです。
どうか阀参、これ以上この方を刺激なさいますなッ」
騒然となる會(huì)議室の中肝集、仕事を終えたキルヒアイスがヒルダを伴わせてようやくその場(chǎng)に到著した。
「どうしました…结笨?なにやら騒々しいようですが」
「その原因は當(dāng)然分かっておるのだろう…キルヒアイス主席元帥」
キルヒアイスは自分を見つめる一同を確認(rèn)するように視線を向けると
ロイエンタールの一言に席について言葉を返した包晰。
「…會(huì)議でもないのにここへ皆様がお集まりになられたのは、ラング局長(zhǎng)の件ですか」
「左様…ッ卿はなにを考えておるのだ炕吸。正気の沙汰ではあるまいッ7ズ丁!」
そう言ってキルヒアイスに迫るビッテンフェルトは
これまでに何度かキルヒアイスに助けられたことがある赫模。
戦場(chǎng)においてもそうであったし树肃、ラインハルトからの叱責(zé)を受けた時(shí)も
そしてオーベルシュタインをその感情のままに毆ってしまった時(shí)も、
いつも助けに現(xiàn)れたのはラインハルトではなく目の前にいるキルヒアイスだった瀑罗。
口に出さずともビッテンフェルトはキルヒアイスに感謝をしていた胸嘴。
以前とは違い今ではビッテンフェルトもキルヒアイスを
ラインハルトの傍にふさわしい唯一の存在として認(rèn)めている。
だからこそラングの件に関してもなんらかの意図がキルヒアイスにあることは
ビッテンフェルトには分かっていた斩祭。
だがそれでもあえて何故ラングなのかとビッテンフェルトには問わずにはいられなかったのである劣像。
「…クックク、クククク…」
キルヒアイスがその手を機(jī)の上に組んだまま下を向いて小さく笑い聲を上げた摧玫。
その様子に怪訝な顔で皆が下を向いて笑い聲をあげるキルヒアイスの顔を伺おうとする耳奕。
「キルヒアイス…?」
「…いえ诬像、失禮屋群。ですが、正気の沙汰と申されましても
私は自分が正気のある分別をもった人間と思ったことなど
今までにただの一度もなかったものですから…つい」
キルヒアイスがそんな自嘲めいた言葉を口にした坏挠。
普段から陛下の傍で続けてきたキルヒアイスのこれまでのあらゆる働きは誰もが認(rèn)めるところにある芍躏。
また、その仕事振りだけでなくその身に穏やかな空気を抱くキルヒアイスは
気性の荒いラインハルトと皆との緩衝剤ともいえる存在だった降狠。
ビッテンフェルトに限らずともここにいる誰もがキルヒアイスに
數(shù)え切れないほど助けられている对竣。
「なにを言っているのだ…ッキルヒアイス」
ミッターマイヤーの動(dòng)揺の聲にキルヒアイスは皆にまるで昔話を聞かせるようにその言葉を続けた庇楞。
「そう…あれは、確か10歳の時(shí)でした柏肪。
陛下が宇宙への志をお立てになってその手を私に差し出されたのは…
その時(shí)ここにいる誰よりも早く私はこう言ったものです…マイン?カイザーと」
「………ッ=愕蟆芥牌!」
「その時(shí)より私は自分が至極正気であったとは到底思えません…」
10歳の子供にその膝をつけ絶対の忠誠(chéng)を誓ったキルヒアイスは
その信念をもって今はその新帝國(guó)における最重要の地位にある烦味。
皆が信じられないものを見るようにキルヒアイスを見つめていた。
そしてそのままキルヒアイスは機(jī)に載せた手を膝元に置き変えると
いつもの口調(diào)でここにいる全員に向かってはっきりと宣言した壁拉。
「ラング局長(zhǎng)は私の直屬におきます…再び事が起こらぬよう谬俄、
組織自體もそれに伴った體制に改変させその発言権は私の名のもとにその一切を封じます…
私は造壮、これを機(jī)に陛下に害をなす存在を一気に葬り去るつもりです」
會(huì)議室がその言葉に一瞬で凍りつく庶艾。
この時(shí)、そこにいる全員が今まで陛下の盾となっていたキルヒアイスが
その盾を剣へと持ち替えたことを知った色解。
「あの方を害するものにかける容赦を私は知りません…」
表情もなく淡々と告げられる言葉の數(shù)々に全員が息を呑む痘昌。
いつもと同じ口調(diào)で語られるその言葉は
感情が篭らないことがさらにうすら寒く感じる恐ろしいものだった钥勋。
それだけ告げるとそのままキルヒアイスが席を立ち上がる。
「…そろそろ陛下がお目覚めになる頃ですので辆苔、私はこれで失禮致します算灸。
ロイエンタール元帥、私についてきて貰えますか驻啤?」
「キルヒアイス菲驴?」
「あなたとラング局長(zhǎng)は淺からぬ因縁がお有りです…
私の方から納得のいく説明をさせて頂きましょう。どうぞこちらへ…」
キルヒアイスの呼びかけにロイエンタールは立ち上がってその後を追い骑冗、
そのまま二人が會(huì)議室から退出すると再び殘された面々で話が続いた赊瞬。
「…そら恐ろしいものを見てしまったような気がします」
そう言葉を漏らしたのは少し顔を青ざめさせたミュラーだった。
「陛下の無殘なお姿を毎日目の當(dāng)たりにしているのだ…當(dāng)然の事かも知れんが贼涩、あれは苛烈を極めるな…」
「よもやあれほどとは…」
ミッターマイヤーの言葉にファーレンハイトが同調(diào)する巧涧。
その話を否定するように割って入ったのはキルヒアイスの部下であるベルゲングリューンだった。
「…あの方の恐ろしさはすでに分かっていたことです遥倦。皆様はカストロプ動(dòng)亂の件を覚えておいでか谤绳?」
「カストロプ動(dòng)亂というと…たしか、前帝國(guó)皇帝より勅命を受けて
キルヒアイスが初出陣をした時(shí)のものだな谊迄?」
「そうだ…あれは一度目の出征に失敗後今度はキルヒアイスが出陣して1度目の出征の時(shí)の半數(shù)で
半年かかった動(dòng)亂をわずか10日で無血開城させたのだ」
皆が思い出すように口々にその時(shí)の話題を口にする闷供。
それは今では「奇跡のヤン」のイゼルローン奪還に続く
伝説の一話として巷で語られている話であった。
しかしキルヒアイスとともに動(dòng)亂に參加していた
ベルゲングリューンから言わせるとどうやらそれだけではなかったようである统诺。
「血は流れました…マクシミリアン?カストロプ歪脏。動(dòng)亂の首謀者です」
「それは知っている。だが粮呢、他に血は流れなかったのだろう婿失?
しかもわずか10日間で終わったともなれば…無血といってもいいだろう」
「あのキルヒアイスのことだ…敵味方钞艇、共に無駄な血を流させることはすまい…」
「事実はその通りです、ですが豪硅、違うのです…ッそうではないのです」
皆の言葉を遮るように話し出すベルゲングリューンにその場(chǎng)にいる一同はその耳を傾けた哩照。
そう、あれは閣下がマクシミリアン?カストロプに降伏勧告をした時(shí)のことでした…
キルヒアイスの降伏勧告に対しマクシミリアン?カストロプは大膽にも映像を送りつけてきた懒浮。
そこには年端もいかない子供達(dá)が何人も裸のまま鎖で繋がれ
それを弄ぶマクシミリアン?カストロプの姿があった飘弧。
その姿をキルヒアイスに見せつけた上に自分より年若なキルヒアイスを嘲笑うかのように
マクシミリアン?カストロプは降伏勧告を跳ね除けたのだ。
『…そのまま惑星ごと滅びなさいッマクシミリアン?カストロプ…ッ砚著!』
それに対してキルヒアイスはそう一聲告げるとその後の通信の一切を絶った次伶。
これ以後再びキルヒアイスから降伏勧告を出されることはなくなり
全面無條件降伏以外の相手からの通信以外を受け付けなくなった。
そしてそのままキルヒアイスはカストロプの門地を守る
最新防御システム「アルテミスの首飾り」を瞬時(shí)に消滅させる稽穆。
「アルテミスの首飾り」とはその頃同盟の首都星?ハイネセンでも使われていた最新兵器であり冠王、
フェザーンからそれを買い受けたカストロプはその防御に絶対の自信を持っていた。
現(xiàn)に以前やってきた帝國(guó)艦隊(duì)をカストロプはそれを持って返り打ちにしている舌镶。
だが今回はその時(shí)よりも半分の艦隊(duì)によって瞬時(shí)に消滅させられてしまったのである柱彻。
「…攻撃停止命令がでたのはカストロプ側(cè)からの全面降伏が出てまもなくの事です。
辿りついた私達(dá)が目にしたのは見るも無殘に変わり果てた
マクシミリアン?カストロプのめった刺しにされた姿でした餐胀。
閣下のお言葉に恐怖を感じた臣下の者達(dá)によって彼は虐殺されたのです哟楷。
目の前に現(xiàn)れた閣下に膝まづいて彼らはこう言いました…」
…我々は悪虐の統(tǒng)治者から救われたのだ、と骂澄。
「………ッ」
「それ以後吓蘑、略奪もそれに類する行為も一切行われませんでした。
閣下から全艦隊(duì)に向けて命令が発せられたからです坟冲。命令違反は全て極刑に処す磨镶、と…」
艦隊(duì)の中にも赤毛の若い將校を嘲笑うものは最早何処にもいなかった。
その時(shí)マクシミリアン?カストロプの恐ろしい死に様を皆の目に焼き付いていたからである健提。
キルヒアイス艦隊(duì)は今も健在でその艦隊(duì)は無敵艦隊(duì)として今や帝國(guó)最大規(guī)模を誇る琳猫。
ラインハルトによって現(xiàn)在キルヒアイスは帝國(guó)艦隊(duì)の半數(shù)をその指揮下に置くことも許されていた。
「…あの陛下がお認(rèn)めになってお傍におく以上私痹、
閣下がただ者でないのは至極當(dāng)然のことであったのかも知れません…」
ベルゲングリューンは話の最後をそう締めくくるとその目を伏せて下を向いて沈黙してしまう脐嫂。
その話を聞いた一同は今までそこに座っていたキルヒアイスの席をじっと見つめていた。
普段はまるで感じさせない穏やかなキルヒアイスの姿に
そんな一面があったことなど今までの彼らは知る由がなかった紊遵。
だが彼らはじきにそれをまた改めて知る事になるだろう账千。
「この件…このままでは済むまいな」
そう告げるミッターマイヤーに一同は目をあわせて頷きを返した。
それからまもなくして暗膜、キルヒアイスに連れられて出て行ったロイエンタールが會(huì)議室へと戻ってきた匀奏。
「ロイエンタール…ッ」
「…ミッターマイヤー」
壁際に身體を支えるように顔を覆ったままのロイエンタールがようやくミッターマイヤーの姿を確認(rèn)する。
「しっかりしろ学搜、ロイエンタール…ッ娃善!一體论衍、なにがあったのだ…ッ」
皆がロイエンタールを囲むように集まってきた。
ロイエンタールの顔色がいつにも増して青ざめている聚磺。
「まさか坯台、オマエ…陛下のご様子を見てきたのか…?」
「…いいや瘫寝、違う蜒蕾。あれは陛下などでは斷じてない…そうであってたまるものか…ッ!矢沿!」
大きく首を振ってすぐさまロイエンタールがミッターマイヤーの言葉を否定した滥搭。
そこから皆は想像を絶するラインハルトの今の狀態(tài)を理解する。
「許すまい…決して許すまいぞ…ッ捣鲸!」
ロイエンタールがその胸の內(nèi)にあるおぞましさを吐き出すようにその言葉を口にした。
今もなおその狀態(tài)のラインハルトの傍にキルヒアイスはいるのである闽坡。
キルヒアイスが手段を選ばないのにはそれ以上の理由があったのだ栽惶。
騒ぎが収まらないまま退出しようとするオーベルシュタインに
ミッターマイヤーがロイエンタールのその身を支えながら聲をかける。
「卿はこの件…どう読む疾嗅?」
「…これは見せしめだ外厂、陛下に手を出そうとする者達(dá)への…」
オーベルシュタインの中で以前ラインハルトのいった言葉が頭をよぎった。
『キルヒアイスは私自身も同様だ』
”そう…確かにあれはナンバー2などと呼べる代物ではない”
それだけ告げるとオーベルシュタインはそのまま會(huì)議室を出て行ってしまった代承。
ロイエンタールはオーベルシュタインが退出すると
その身をミッターマイヤーに支えられながら今見てきたことを回想する汁蝶。
”オレは今恐怖を感じている…陛下以外の存在に…”
そんな言葉を心の中で呟きながらロイエンタールはここを出てからの自分を振り返り始めた。
2.歪んだ真珠-3
「ジーク…」
「大公妃殿下…こちらにおいででしたか论悴?」
ロイエンタールを伴わせてラインハルトのもとへ向かっていたキルヒアイスにアンネローゼが聲をかけてきた掖棉。
「…また、あの子が寢込んでいると聞いてケーキを焼いてきたのよ膀估。
まだ面會(huì)は出來ないとキスリング隊(duì)長(zhǎng)に言われて直接あなたに持ってきたの…あの子と一緒に食べてね」
「それは幔亥、わざわざ有難うございます…」
そのままキルヒアイスは笑顔で禮を述べるとアンネローゼも笑ってそれに答え
傍にいるロイエンタールに軽く挨拶をしてその場(chǎng)を去ってゆく。
「大公妃殿下には察纯、まだ何もお話していないという訳か…」
「その必要はございませんでしょう…お心を痛めるだけですから」
キルヒアイスは視線だけロイエンタールに向けてそう答えラインハルトの寢室へ向かうべくと再び歩き始めた帕棉。
ラインハルトの寢室の扉の前に二人が到著するとキスリングがそこで警護(hù)にあたっていた。
「ご苦労さまです…どうやらお休みになられたようですね饼记、キスリング隊(duì)長(zhǎng)香伴。なによりです」
「は…ッ!元帥具则、どうやら陛下が目をお醒ましになった模様です即纲。
中はご命令通り覗いてはおりませんが、先程からなにやら物音が…」
キスリングのその言葉にキルヒアイスは頷いて返事を返すと
そのままドアの鍵を開けてロイエンタールと寢室へ入ろうとする乡洼。
「…キルヒアイス元帥ッ」
慌ててそれをとめに入るキスリングをキルヒアイスがその手で制した崇裁。
「よいのです…私がお連れしました匕坯。
ここはあなたにおまかせします、キスリング隊(duì)長(zhǎng)…ではどうぞ拔稳、ロイエンタール元帥」
キルヒアイスがドアを開けてロイエンタールを部屋へと招きいれる葛峻。
そこでロイエンタールが目にしたものは
想像の範(fàn)疇を遙かに超える信じられない光景だった。
「……これはッ0捅取术奖?」
そこには両手足をベッドに括り付けられたラインハルトのあられもない姿があった。
ラインハルトが動(dòng)物のようにその身を暴れさせている為にベッドが激しく揺れ動(dòng)き
口元も布で覆われてその聲を出すこともままならない狀態(tài)になっていた轻绞。
キルヒアイスがそんなラインハルトに動(dòng)じることもなく近寄っていき采记、
いつも笑顔でラインハルトに話しかける。
「陛下…大公妃殿下からケーキが屆けられましたよ政勃。後で一緒に頂きましょう…」
「んーッんん…_罅洹!」
そのケーキをラインハルトの枕元にあるサイドテーブルの上に置くと
キルヒアイスがラインハルトの顎を押さえてそのまま上へと向かせる奸远。
「…いけませんね既棺。口元が布で擦ってしまって傷になっています」
そういうとキルヒアイスは機(jī)の引き出しから軟膏を取り出すと
その指でラインハルトの唇に軟膏を塗りつけた懒叛。
入り口で青い顔で立ち盡くすロイエンタールにキルヒアイスがラインハルトを抱えたまま
自分の寢室でもあるつづきの別室に首を振って合図を送る丸冕。
「…お話はあちらの方で」
ロイエンタールは席につくとうつむき加減にキルヒアイスに話しかける。
「卿はなぜいつもと同じ態(tài)度であの陛下に接することが出來る…キルヒアイス」
「…そう見えているだけですよ薛窥。
それに胖烛、ああして拘束しておかねば暴れるだけでなく自傷行為もしてしまわれるので」
そう言ってキルヒアイスはラインハルトの寢室を眺めながらロイエンタールに答えを返した。
「今の陛下のお姿を私があえてお見せしたのはラング局長(zhǎng)の件に対し
あなたに不快な思いをさせてしまった理由を説明するためです…
私には上手く言葉にすることが出來ませんでしたのであなたには…直接その理由を見て頂きました」
ロイエンタールはその言葉にようやくその顔を上げてキルヒアイスの話を聞き始める诅迷。
「…私でも佩番、あなたでもここにいる人間には無理なのです。
陛下をこのような狀態(tài)にした関係者である彼らの前にあっては
おそらくその眉間に銃口を向けずにはいられないでしょう…」
「それであのラングをか…」
吐き捨てるように答えるロイエンタールにキルヒアイスが相槌をもってそれに答えた竟贯。
「そうです…まだ彼らを殺す訳にはいきません答捕。
我々は一刻も早くその情報(bào)を聞き出してその首謀者を捕らえなければなりません…しかし
我々には彼らを殺すことは出來ても殺さずの術(shù)は持ち合わせていません」
「…殺さず、か」
キルヒアイスもロイエンタールも戦場(chǎng)においては
その手で敵を殲滅させることは出來ても拘束された無抵抗な人間に
殺さずに一方的な苦痛を與え続けることなど出來はしない屑那。
「…あなたは以前拱镐、ラング局長(zhǎng)によって謀反人に仕立てられることよりも
自ら謀反人になることを選ぼうとしました…どうか、陛下の御為に今一度」
「もういい…わかった持际、キルヒアイス…この件沃琅、ミッターマイヤー達(dá)はオレが説得させよう」
「有難うございます…」
キルヒアイスの意図を先に読んだロイエンタールの言葉にキルヒアイスが頭を下げて禮を述べる。
「卿が頭を下げること必要はない…陛下を蜘欲、頼む」
ロイエンタールはそう言って立ち上がって部屋の出口へと向かい益眉、
一度キルヒアイスの姿を確認(rèn)するように背中越しに目を向けるとそのまま扉を開けて部屋を出た。
ロイエンタールは部屋を出た後、ラインハルトのあまりの姿に堪えきれなくなったのか
身體を震わせながら壁によりかかりその身を少し屈ませ
その手で今見てきたものを全て押さえ込むように口元に抑え込む郭脂。
ロイエンタールのそんな様子に寢室の入り口にいたキスリングが慌てて駆け寄ってきた年碘。
「閣下…ご覧になられましたか」
「よくも…よくも、あの狀態(tài)で平然としていられるものだ…キルヒアイスはッ」
キスリングに抱えられるようにロイエンタールは崩れ落ちそうになる身體を支えた展鸡。
「昨夜から屿衅、陛下の聞いたことのない悲鳴のような絶叫を何度も耳にしました…
それを目の當(dāng)たりにしているキルヒアイス元帥の心中は私如きには察しきれません」
キスリングの言葉にロイエンタールもまた痛いものをみるように閉ざされた扉をみる。
「…戻らねば莹弊。皆が會(huì)議室にまだ殘っているはずだ」
そうしてロイエンタールはその身を奮い起こしてその場(chǎng)を立ち去ってゆく涤久。
”よくも…陛下をあのような目にッ”
今のロイエンタールにはラングの問題などどうでもよくなっていた。
打ち消しても浮かんでくるのはラインハルトの禁斷癥狀に苦しむその姿忍弛。
自分が唯一の主と認(rèn)め响迂、その絶対なる存在を打ち壊そうとする存在はロイエンタール自身の敵でもある雏搂。
自分がどうやって會(huì)議室に戻ったのかはっきりしないほど不確かな足取りで
ロイエンタールは皆の待つ會(huì)議室に戻ってきたのだった呼胚。
回想を終えて少し頭をすっきりさせたロイエンタールはようやくその口を開いて皆に告げる。
「…皆旺坠、聞いてくれ惠昔。今は形振りなどかまっていられぬ…ッ
この件は一刻もすみやかに終わらせなければならない幕与、
陛下が我々のもとにお戻りになるまでに…なんとしてでもッ!镇防!」
ロイエンタールの言葉に皆がはっとする。
そしてやっと気づく潮饱。
自分達(dá)にも今出來ることはあった来氧。
ラインハルトが戻るまでになんとしてでもこの件を終わらせることである。
そして2度とこのようなことを起こさせてはならない香拉。
キルヒアイスはこれを機(jī)會(huì)にそれを全て一掃するといったのであれば…
「…陛下のことは啦扬、キルヒアイスにまかせるか」
「そういうことだ…我々のすべきことは唯一つ…」
”皇帝陛下の御為に…”
皆視線を交わしてそれを確認(rèn)するとばたばたと慌しく會(huì)議室を出ていった。
「ケスラーに連絡(luò)を…ッこれまでに得た情報(bào)の全て聞き出すのだ凫碌!」
こうして獅子の泉は再びその靜けさを取り戻し夜を迎える扑毡。
だが長(zhǎng)い夜はまだその夜明けの気配すら感じさせない狀態(tài)にあった。
ロイエンタールが退出するとキルヒアイスは制服から私服に著替えて
そのままラインハルトの待つ寢室へと向かった盛险。
寢室に入るとラインハルトがなんとかその身體を動(dòng)かして自力でケーキの箱を開けていた瞄摊。
そこにあったペーパーナイフで自らを拘束する手足の布を切ろうとしている。
「…そんなものでは切れませんよ苦掘、ラインハルト様」
そういってキルヒアイスはそのペーパーナイフをラインハルトから取り上げると换帜、
恨めしそうな強(qiáng)い視線でラインハルトがキルヒアイスを見やる。
「そんなお顔をされても無駄ですよ…いった筈です鹤啡。
あなたのその身を解放することが出來るのはあなた自身だと…
あなたにはそれを早く思い出して頂かなければ」
キルヒアイスはラインハルトの顎を上げさせると口元の傷に目をやった惯驼。
「ん…うッ」
そっとキルヒアイスがその傷口を舌で舐め上げる。
「それに、お體に傷をつけてはなりません…それはたとえあなた自身であっても許しませんよ祟牲。
今度ラング局長(zhǎng)にでも言ってあなたにぴったりの拘束具でも用意させましょう」
キルヒアイスがラインハルトにそう告げて取り上げたペーパーナイフで
アンネローゼから貰ったケーキを切り分けた隙畜。
そしてラインハルトの口元を覆った布をキルヒアイスはそっと外してやると、
口の自由を手に入れたラインハルトがその首を振るようにまた叫び聲を上げ始めた说贝。
「あーッあッああああ…议惰!」
キルヒアイスが口を開けたラインハルトの顎をそのまま固定させその口にケーキを放り込み、
ケーキを吐き出さないようにその口を白い手袋をした手で押さ込む狂丝。
「んー…ッんんッ;幌!」
「美味しいでしょう…几颜?あなたの大好きな少し苦味のあるガトーショコラですよ」
食事も取らず薬を欲しがるラインハルトに無理やり食事をさせるにはこのようにするしか出來ない倍试。
身體が疲れて眠っている間は禁斷癥狀もなりを顰めるが
禁斷癥狀が身體の疲れを上回るとまたすぐに禁斷癥狀がラインハルトを襲った。
キルヒアイスが眠っているラインハルトに栄養(yǎng)剤と點(diǎn)滴を施しているが蛋哭、
目を醒ますとたちまちそれはラインハルトによって外されてしまう县习。
だから不十分な時(shí)はこうやってキルヒアイスが無理やりラインハルトに食事を取らせるのである。
抑え込んだラインハルトの口の中からどうやらケーキを食べ終えたのか谆趾、
食物を飲み込んだ音と同時(shí)に膨らませた頬がおさまりを見せ
キルヒアイスがラインハルトの顎を抑えていた手を解放すると
口の中に僅かに殘ったケーキの殘骸をラインハルトが吐き出した躁愿。
キルヒアイスが汚れたラインハルトのその口元を手で拭い取る。
「…お行儀が悪いですよ沪蓬。ラインハルト様」
「うあ彤钟、ああー…ッ!」
その言葉にラインハルトがキルヒアイスの手に思い切り噛み付いた跷叉。
「……いッあ」
「これは失禮…ラインハルト様」
キルヒアイスが著けていた手袋は軍用の手袋でその素材には金屬が組みこまれている逸雹。
それを思い切り噛んでしまった為ラインハルトは痛みに顔を顰めたのだった。
その姿に苦笑しながらもキルヒアイスが手袋を外した云挟。
「ですが…あなたがいけないのですよ梆砸?
私の甲に爪跡など殘すから…今朝はフロイラインに見つかってしまいました」
そう言ってキルヒアイスはラインハルトにケーキを食べさせ終えた。
「うーッ…ああ…あ」
「…さて园欣、どうしたものか帖世。口元をまた布で覆ってその唇の傷が化膿してはいけませんし…
かといってまた自分の舌を噛むようなこともされては困ります沸枯。
聲を上げすぎても喉を痛めてしまいますから…」
キルヒアイスはそんなことを口にしながら
ラインハルトに身體を重ねて暴れる身體を抑え込んだ日矫。
すると昨日の行為をその身に覚えていたのだろうか、
ラインハルトは叫び聲を上げるのをやめて今度はたちまち恐怖に震えだす辉饱。
そしてキルヒアイスに懇願(yuàn)の表情を浮かべて見つめ返してきた搬男。
「おや…どうしました?さっきの威勢(shì)はどこへいったのです」
”禁斷癥狀を抑え込むのはそれを上回る痛みと…そして恐怖ということか”
自分がそれを上回る存在になるとは…
そんな思いにかられながらもキルヒアイスはラインハルトに顔を近づける彭沼。
「う…ッや缔逛、あ」
「…そうだ、こうしましょう」
キルヒアイスは思いついたようにラインハルトの顎を固定させたままその唇をあわせた。
顎を固定するのは褐奴、舌を噛まれないようにするためである按脚。
舌を絡(luò)めとられ呼吸もままならなくなったラインハルトから苦しそうな聲が漏れた。
「ぐッ…うッううー」
「フフ…クリームがこんなところにもついていますよ敦冬、ラインハルト様…」
キルヒアイスが目元についたラインハルトのクリームをそのままその舌で拭いとり辅搬、
空いた片手でラインハルトの下肢に觸れるとそのまま一気に下半身を覆う衣服を引きずり下ろした。
一瞬にしてラインハルトは露わになった下半身をキルヒアイスに曬すことになる脖旱。
「…あッ堪遂、やあああッ」
「あなたが全て思い出すまでこれは続けます…嫌なら早く正気に戻ることです」
そしてそのままキルヒアイスは自分のベルトを緩め
昨夜と同じように何の準(zhǔn)備もしないままラインハルトの中に自身の楔を埋め込んだ。
その痛みから発せられるラインハルトの絶叫は合わされたキルヒアイスの口の中へと消える萌庆。
しばらくして長(zhǎng)い行為にラインハルトが気を失うようにして眠りについた溶褪。
そんなラインハルトを見つめながら
キルヒアイスは嗚咽を封じるように口元を抑え込む。
”一體いつまで続くのか…
このままでは私の方が先に気が狂ってしまいそうです…ラインハルト様ッ”
二人をある日突然襲った暗闇はなお深みを増すばかりだった践险。
得體の知れない恐怖にとりつかれたままキルヒアイスは
ラインハルトから目を離して窓に映る月を見上げる猿妈。
あなたは以前月を見る私におっしゃいましたね…
自分以外の存在にその目を奪われてはならないと。
ですが巍虫、今はどうぞお許しを…
あなたが眠るこの間だけ彭则、私が月を見ることを
月を見ているとラインハルトとのかつての思い出がキルヒアイスの中に甦ってくる。
”…ああ占遥、気付いたことがあります俯抖。私を照らすあの月、そうだ瓦胎、あれはあなただ…ラインハルト様”
闇夜を切り裂くような明るい満月が煌々と
その光でキルヒアイスの心の暗闇を満たすようにその姿を照らして続けていた蚌成。
3.悪魔と踴れ-1
こんな月のない夜は私はあなたの存在を見つけられず
自分の存在を暗闇の中で見失って分からなくなってしまう時(shí)があります
いつもあなたは私にそれと気付かず傍にいて
私をずっと照らし続けてくれていたのだと
私は今そんな風(fēng)にあなたを想うのです
人間の血を流すものは自らの血もまた流すことになる
創(chuàng)世記第9章6節(jié)─
そのときラインハルトは暗闇の中にいた。
身動(dòng)きすることもままならずただ干乾びた喉はなにかを求めその精神は飢餓の中にある凛捏。
暗闇の中を這ってただ闇雲(yún)に前とも後ろとも知れぬ中を
ひたすらどこかを目指してラインハルトは蠢いていた。
『苦しい…オレは芹缔、なにかを探している坯癣。この闇の中に一體なにがあるというのか』
誰かが自分を呼んでいる。
心の中から急かされるようにラインハルトはその存在を探し求めていた最欠。
『…ここは示罗、どこなのだ。そしてそれは何なのだ』
息が出來ないほど苦しく求める存在を求めてラインハルトはもう隨分長(zhǎng)いことその暗闇を彷徨っていた芝硬。
『果たして蚜点、それは存在するのか…』
答えの見つからないままラインハルトはそのまま暗闇の中を迷走し続けていた。
”…また拌阴、熱があがった”
その日の夜もキルヒアイスはラインハルトの看病を続けている绍绘。
薬物に侵され禁斷癥狀に苦しむラインハルトの世話をしながらキルヒアイスもまた共に苦しんでいた。
禁斷癥狀から引き起こされる幻覚から発狂してしまう者も多いという。
幻覚から逃れさせるようにキルヒアイスは
ラインハルトの身體に禁斷癥狀を上回る痛覚を與えることによってそれらを押さえ込む陪拘。
だが厂镇、その行為によって苦痛を感じていたのは
誰よりもラインハルトを大切に想っているキルヒアイスの方だった。
キルヒアイスは発熱して汗を掻くラインハルトの身體を拭いながらいたたまれない気持ちに苛まれていた左刽。
そしてこのまま元には戻らないかも知れないという不安を
キルヒアイスは必死でかき消そうとしていたのだ捺信。
「…キル、ヒアイス」
ラインハルトがかすかに聲を上げてキルヒアイスを呼んだ欠痴。
その聲にキルヒアイスは驚きの中懸命にラインハルトに呼びかける迄靠。
「ライン、ハルト様喇辽?…ラインハルト様ッ」
熱と薬による禁斷癥狀の中意識(shí)が薄れようとするラインハルトに
キルヒアイスは何度も名前を呼び掛けてラインハルトの身體を抱え込むようにしてその身を揺らした掌挚。
「キル…ヒアイス…」
「ラインハルト様…ッ!」
ラインハルトが意識(shí)を取り戻した瞬間だった茵臭。
ラインハルトがその意識(shí)を必死に保とうとしながらゆっくりと辺りを見回すが
身體中に酷い痛みもあって身動(dòng)きすらまともに出來ない疫诽。
そしてそれは自分の身體が拘束されているからだということにラインハルトはようやく気がついた。
「…これ旦委、は奇徒?なにが、あった缨硝?」
「あなたは今…薬物の禁斷癥狀に襲われているのです摩钙。
體を傷つけないために…やむなく、申し訳ありません」
キルヒアイスが慌ててその拘束を解こうと括りつけたベッドへと手を伸ばした查辩。
「…いや胖笛、いい。まだ…このままで」
「…です宜岛、が」
「いいんだ…キルヒアイス长踊。
どうやら、まだその禁斷…癥狀とやらは萍倡、おさまってはいないようだ…」
ままならない自分の身體身弊。
乾いた喉が求めていたのはまさか薬だったとは…
ラインハルトはそのまま苦しくてまた意識(shí)が飛んでしまいそうになる。
「…ラインハルト様ッ」
「また列敲、オマエにいらぬ心配をかけてしまったな…すま阱佛、ない」
ラインハルトは今苦しいのは自分だけではないことを分かっている。
いつも自分を大切に扱うキルヒアイスが自分のこの狀態(tài)になんとも思わない筈がない戴而。
「…だが凑术、もう少し辛抱してくれ。オレは…オマエと所意、一緒にいたい」
「は…い淮逊、はいッラインハルト様」
キルヒアイスは拘束しているラインハルトの手をとって何度も深く頷きを返す催首。
「それでは、身體は拭きましたので…熱冷ましのお薬を」
ラインハルトが抱きかかえられるようにキルヒアイスに支えられ
熱冷ましの薬を口に入れられるとグラスの水を含みその薬を飲みこんだ壮莹。
「ん…ッ」
ラインハルトの熱によって干乾びた喉が冷たい水によって徐々に潤(rùn)っていく翅帜。
だが今ラインハルトのその乾いた喉が本當(dāng)に求めているのはそのようなものではなかった。
「お辛いとは思いますが…どうか命满、今暫くのご辛抱を」
「………涝滴?」
そういってキルヒアイスがラインハルトの身體をベッドに橫たえさせると
ベッドの枕元にあるサイドテーブルから塗り薬を取り出した。
「な胶台、なに…ッ<叽?キル诈唬、ヒ…アイス韩脏?」
「どうかそのままで。すぐに終わります铸磅、薬を塗るだけです…」
キルヒアイスの手がラインハルトの下肢へ及んだ赡矢。
キルヒアイスが薬を塗ろうとしていたのはキルヒアイスがこれまでの行為によって
傷つけてしまったラインハルトの腔內(nèi)である。
「…い阅仔、いいッ大丈吹散、夫、だから…ッキルヒ八酒、アイス…ッ声功!」
「駄目です…早く手當(dāng)てをしないと」
一昨日から続けた行為によってラインハルトのそこは傷ついた狀態(tài)にあった延曙。
出血は止まっていたもののその痛みはさぞ酷いものであったことだろう。
「い汗菜、いい…いや摇幻、やめ…っあ岭皂、ああッ存捺!」
キルヒアイスが赤くなったラインハルトの入り口にそっと薬を塗った指を摺り寄せる贼邓。
おそらくラインハルトのその中も傷ついているに違いなかった。
「…い热鞍、痛ッ…い」
ラインハルトの瞳に涙が浮かぶ与殃。
觸れるだけでもその痛みは相當(dāng)なものであったようだ。
そんなラインハルトの様子を確認(rèn)するとキルヒアイスは薬を塗りつけたその指をそこから離した碍现。
そして今度はその顔をラインハルトの下肢へと近づけていく。
そこから先を悟ったラインハルトが慌ててキルヒアイスを止めるべく聲をかける米奸。
「馬鹿…ッよせ昼接、キルヒ…アイス…ッ」
キルヒアイスの舌がラインハルトの入り口を撫でるように觸れた。
キルヒアイスがよく見るとそこはやはり酷い狀態(tài)にあった悴晰。
”…酷いことを”
キルヒアイスはその舌で癒すように入り口に薬を塗り込み始める慢睡。
「は…あッ逐工、やめ…ん、んっ」
拘束されたラインハルトにはその行為から逃れる術(shù)もなく
ひたすらキルヒアイスの行為を受け入れるしかない漂辐。
そのまま今度は薬を塗り込めたキルヒアイスの舌が入り口から奧へと差し込まれる泪喊。
「駄目、…だッキル…ヒ髓涯、アイスッ」
ラインハルトの制止の聲もキルヒアイスは聞くこともなくその薬を奧へと塗り込み続けた袒啼。
これは治療の一環(huán)であることはラインハルトにも分かっている。
だがこれまでキルヒアイスと數(shù)え切れない程に身體を重ねてきたラインハルトの身體は
その行為にも自分の意思とは反して簡(jiǎn)単に反応を示してしまう纬纪。
「…うッ」
「ラインハルト様蚓再?」
キルヒアイスがラインハルトの顔を見上げると
ラインハルトはキルヒアイスの視線から逃れるように顔を背けた。
ラインハルトの顔は瞳を潤(rùn)わせて羞恥に染まっている包各。
その様子にキルヒアイスはようやくラインハルトの狀態(tài)に気づく摘仅。
「…あなたのせいではありません。これは…私の问畅、せいです」
今までそういう風(fēng)にキルヒアイスはラインハルトを抱いてきた娃属。
ラインハルトがそういった反応を見せるのも當(dāng)然の事だということはキルヒアイスにも分かっている。
そのままキルヒアイスは今度は顕著に反応を示しているラインハルト自身をその口に含み
ラインハルトを解放させるべく口を窄めて扱き始めた护姆。
「や…はッあ矾端、ああッ」
キルヒアイスから與えられる感覚にラインハルトはたまらず何度か身を捩じらせると
そのままあっけなく慣れたキルヒアイス愛撫の前にその全てを吐き出した。
そしてキルヒアイスはそれを飲み干すと唇を舌で拭いながら顔をあげる签则。
普段と余り変わらない冷靜なキルヒアイスの様子に
羞恥に染まった顔をしたラインハルトが恨めしそうな視線を向けて愚癡めいた聲を漏らした须床。
「…オマ、エ」
「さて渐裂、そろそろ豺旬。お休みを…ラインハルト様」
そんなラインハルトにキルヒアイスは何事もなかったかのようにその身體に毛布をかけてやる。
「…今柒凉、どうなってる族阅。外は」
「何事もなく…ラインハルト様が戻られるまで皆、頑張っておりますよ」
「そう膝捞、か…」
キルヒアイスがラインハルトのその様子を見屆けると坦刀、
枕元の機(jī)の上においた洗面道具を片付けるためにベッドに下ろしていた腰をあげた。
「…オマエ蔬咬、ずっといるな鲤遥?」
「はい…ラインハルト様」
最後にラインハルトはその言葉に頷きを返してそのまま目を閉じてしまった。
まだまだラインハルトを襲う禁斷癥狀はおさまらない狀態(tài)にあったが
それだけ確認(rèn)をとったラインハルトは早くその身を治すべく無理やり身體を休めたのだった林艘。
夜が明けるとキルヒアイスは仕事に向かうべく制服へと著替えを済ませる盖奈。
ラインハルトは目を覚ましていた。
どうやらほとんど眠ってはいない様子である狐援。
「…ラインハルト様钢坦。
寢室の扉の向こうでキスリング隊(duì)長(zhǎng)がずっと警備をしておられます究孕。
ここからでもけっこうですのでお聲をかけてやっては下さいませんか?」
「キスリングが…爹凹?」
ラインハルトの禁斷癥狀がおさまるまで
キルヒアイスがラインハルトの居住區(qū)から一切の人払いを行ってしまったため厨诸、
ラインハルトの身辺を護(hù)衛(wèi)するためにキスリングだけが
ずっとラインハルトの寢室の扉の前で警備をしていたことを
ラインハルトはたった今知らされたのだった。
「…いこ禾酱、う」
部屋の奧のベッドから微酬、寢室の扉までは隨分と離れている。
扉を閉めた狀態(tài)では聲を張り上げてもその內(nèi)容までは伝わりにくい宇植。
キルヒアイスはラインハルトの拘束を一時(shí)的に解くとラインハルトを抱えて寢室の扉の前へと向かった得封。
「…キスリング隊(duì)長(zhǎng)、そこにおられますか指郁?」
「はッここにおります…閣下」
キルヒアイスの呼びかけに外からは変わらずそこにいたことを示すキスリングの返事が即答で返ってくる忙上。
「陛下の意識(shí)が戻られました…」
「…キスリング、世話をかけたな」
「陛下…ッO锌病疫粥?」
キルヒアイスの後に続いたその聲はまぎれもないラインハルトの聲だった。
「だが…もうしばらく頼む」
「…はッ腰懂!陛下梗逮、警備の方はおまかせくださいッ」
「これから私は出ます、後を頼みます…キスリング隊(duì)長(zhǎng)」
それだけいうとキルヒアイスは再び寢室のベッドへと向かった绣溜。
「…キルヒ慷彤、アイス…拘束、具を」
ベッドに腰を落ち著けたラインハルトから出たのは
禁斷癥狀の苦しさからやっとのことで絞り出した小さな聲だった怖喻。
ラインハルトは震えだす身體をその手でシーツを握り締めて必死で堪えている底哗。
「はい…ラインハルト様」
キルヒアイスが再びラインハルトの身體を再び拘束すると
キルヒアイスは上著のポケットから出したものをベッドの枕元にそっと置いた。
「これは…锚沸?」
「砂時(shí)計(jì)です跋选、ラインハルト様…私がいない間はこれと戦ってみてください」
キルヒアイスのいう戦いとは禁斷癥狀との時(shí)間の闘いである。
ラインハルトがこのような狀態(tài)にある以上
その代理で執(zhí)務(wù)を執(zhí)り行わなければならないキルヒアイスはずっとその場(chǎng)に居合わせてやることが出來ない哗蜈。
「それでは前标、いってまいります…すぐに、戻りますから」
「…ん距潘、待っている」
キルヒアイスがそっとラインハルトの額に唇を觸れさせると
ラインハルトは苦しそうな笑顔でそれを受け止める炼列。
そしてそのままキルヒアイスはラインハルトの寢室を後にしたのだった。
キルヒアイスが立ち去ったのを見屆けるとラインハルトはその身を襲う禁斷癥狀に身を悶え始める音比。
ラインハルトはキルヒアイスの前では必死にそれを意思の力で抑え込んでいたのだ唯鸭。
震える身體を動(dòng)かしてラインハルトは
口元で砂時(shí)計(jì)を銜えそれが流れてはまたひっくり返す、それをずっと繰り返し始める硅确。
”苦し目溉、い。これほどとは…だが菱农、やらなくては缭付。
オレ達(dá)は今まで誰にも何物にも負(fù)けはしなかった…そしてこれからも。そうだろう循未?…キルヒアイス”
そう心の中に呟きを漏らすと枕元の砂時(shí)計(jì)を見つめながら
ラインハルトは禁斷癥狀との戦いを始めた陷猫。
執(zhí)務(wù)室でヒルダと合流したキルヒアイスは
早速ラインハルトの意識(shí)が戻ったことをヒルダに報(bào)告した。
その言葉にヒルダは涙を流して噛み締めるようにその喜びを現(xiàn)した的妖。
「ああ…よかった绣檬、本當(dāng)に…陛、下ッ嫂粟、陛下…」
そしてようやくヒルダの狀態(tài)に治まりを見たキルヒアイスは
ヒルダからの報(bào)告を受けながらその日の執(zhí)務(wù)を開始した娇未。
ラインハルトが意識(shí)を取り戻した事は
その日の晝を過ぎた頃には皆の知るところとなっていたのだった。
晝休みにキルヒアイスがラインハルトに食事を?qū)盲堡摔い仍伽鹰毳谣ⅴぅ工蠄?zhí)務(wù)室へと戻る星虹。
するとヒルダがそれを待ちかねたように再び報(bào)告を始めた零抬。
「キルヒアイス元帥…皆が會(huì)議室に集まっております。どうやら例の件宽涌、何か進(jìn)展があったようなのですが…」
「わかりました平夜、いきましょう…」
皆もまた夜を徹してこの件を片付けるべく動(dòng)いていたようである。
ヒルダの言葉にキルヒアイスは皆の待つ會(huì)議室へと向かった卸亮。
3.悪魔と踴れ-2
「…きたか忽妒、キルヒアイスッとんでもないことになってきたぞ!」
皆が待ちかねた中會(huì)議室に入ったキルヒアイスに真っ先に聲をかけてきたのはミッターマイヤーだった兼贸。
キルヒアイスは自分の席につきながら手を差し伸べてミッターマイヤーに話の先を促す段直。
「フェルナーからの連絡(luò)だ。地球教がフェザーンで誰と連絡(luò)を取り合っていたと思う寝受?」
「…アドリアン?ルビンスキーだ」
その後ミッターマイヤーに続いてロイエンタールから告げられた名前に
キルヒアイスは驚愕を覚えずにはいられなかった坷牛。
「アドリアン?ルビンスキー…彼は、死んだと聞いていましたが」
「…どうやら很澄、しぶとく生き殘っていたようだ」
苦々しくミッターマイヤーがそんな言葉を漏らす京闰。
地球教が連絡(luò)をとっていたのはフェザーンの元自治領(lǐng)主であるアドリアン?ルビンスキー。
そこで皆の中にある仮説が成立する甩苛。
「100年にも及んだフェザーンの存在は地球教がそのスポンサーだったという訳蹂楣、か…」
ロイエンタールが代表してそれを言葉に出した。
だがそこまでくれば地球教は一宗教でもテロリストでもない讯蒲。
もはや新帝國(guó)に仇をなす反政府的國(guó)家である痊土。
皆の背中に冷たい汗が流れた。
「…つまり墨林、今回の件はルビンスキーが動(dòng)いたということですね…なるほど」
「そういうことだ…おそらくルビンスキーの居場(chǎng)所は直接ルビンスキーと連絡(luò)をとっていた
今ケスラーが捕らえている奴等が知っているのだろう…」
これまでの一連の出來事にキルヒアイスはようやく納得する赁酝。
地球教の関與もヴェスターラントの殘黨勢(shì)力を使ったのも全ては
フェザーンの元自治領(lǐng)主であるルビンスキーが裏で工作したものだったのである犯祠。
元々自分の領(lǐng)地であったのならば手足もさぞ自由の利いたことだろう。
「どうする酌呆?キルヒアイス元帥…」
「…どちらにしろ衡载、このままにはしておけますまい」
ビッテンフェルトとミュラーが顎に手をあてて少し考え込む風(fēng)になっているキルヒアイスに聲をかける。
「航空宇宙局に連絡(luò)を…艦隊(duì)を太陽系に派遣して地球への運(yùn)行をただちに全面停止させてください隙袁。
地球への出入りは一切立ち入り禁止に…編成はおまかせします痰娱、ミッターマイヤー元帥」
「…おいッそれはまずいぞ、キルヒアイスッ」
席から腰をあげて慌ててミッターマイヤーからは反論の聲が返ってくる菩收。
地球はすでに地下資源は絶え全ての生活物資を輸入に頼っていた梨睁。
地球への運(yùn)行を全面停止にしてしまうと
そこにいる人々はそこにあるものが盡きるまでの生活を強(qiáng)いられることになる。
”それも全て承知の上ということか…”
だがキルヒアイスがそれを知らない訳もなくそれを承知でいっていることなのだ娜饵。
ミッタマイヤーの向ける視線を背けることもなくキルヒアイスは
自分が出した言葉を覆すこと意思がないことをミッターマイヤーにその視線を返すことで答えた坡贺。
「飢え死にさせるつもりですか…」
「それではヴェスターラントの核融合ミサイルの方がまだマシというものだ…」
ミュラーとビッテンフェルトの発言に続いてざわざわとそんな言葉が會(huì)議室の中から飛び出してくる。
地球にいる者たちが生き殘るために想像を絶する諍いが起こることは
ここにいる誰もがそれを容易に想像できた划咐。
「…とりあえずこの件が片付くまでです拴念、それ程時(shí)をかけるつもりはありません。
地球教の方にはそれで分かるはずです褐缠。
…まさか我々がかつての十字軍のように宗教を弾圧する訳にもいかないでしょうし」
新帝國(guó)において思想や種族の弾圧などといった
前帝國(guó)の二の舞などは決してあってはならない政鼠。
それはラインハルトの望む治世にも反する行いである。
とりあえずキルヒアイスの目的は地球教の動(dòng)きを封じることにあった队魏。
地球教を押さえ込んでしまえば地球は遙か遠(yuǎn)く
その支援をなくしたルビンスキーはうかつにこちらに手を出すことが出來なくなるからだ公般。
舊同盟と帝國(guó)を統(tǒng)一した新帝國(guó)の首都がフェザーンにある以上、
ルビンスキーはその活動(dòng)の支援を地球教に頼らざるを得ないのは自明の理のことだった胡桨。
地球も生活の為の物資の供給を新帝國(guó)に抑えられたとなれば
たちまち國(guó)家への反逆どころではなくなるだろう官帘。
「閣下ッ」
その時(shí)會(huì)議室にキルヒアイス宛に連絡(luò)が飛び込んできた。
キルヒアイスがそのヴィジホンをオープンでボタンを押して聞き返す昧谊。
「…なんです刽虹?」
「ラング局長(zhǎng)からの伝文です”鴉が鳴き聲を上げはじめた”とありますが…」
その言葉にキルヒアイスはラングが
麻薬に侵された麻薬中毒の事件関係者たちから証言を得たことを瞬時(shí)に理解する。
「それは重畳…お喜び申し上げる呢诬。早速お伺いします…と擦酌、そうお伝えください」
キルヒアイスはこの連絡(luò)を待っていたのだった车吹。
”…それにしてもどうやったのか澳骤。
急性の麻薬中毒だったラインハルト様でさえ正気に戻られるのに3日…
先日みた様子では彼らはどうみても常時(shí)の慢性中毒患者だった立倍。これほど早くにその回復(fù)を見せるとは…”
ラングがさぞ凄い尋問と拷問を加えたのであろうことは
キルヒアイスにもある程度の予想は出來た。
「ラングのやつめ…やったか」
「流石に…今回は狗唉、自分の身がかかっているからな初烘。必死だったろうよ」
ラングからの報(bào)告に皆がラングへの一様の不安を見せながらそんな言葉を交わしていると
キルヒアイスがその會(huì)話を打ち消すように颯爽と席を立った。
「…會(huì)議は以上です。私はこれから憲兵総監(jiān)の下へまいります」
先を急ぐように會(huì)議室を去ろうとするキルヒアイスの後ろにつき従うように
ヒルダが皆に軽く一禮をしてその後を追う肾筐。
殘された面々もまたキルヒアイスの出した指示を?qū)g行すべく一斉にその動(dòng)きを開始し始めたのだった哆料。
用意させた地上車にキルヒアイスはヒルダを伴わせて乗り込むと
移動(dòng)の間地上車の中でその目を閉じて軽い睡魔に身を任せていた。
”やはり吗铐、お疲れになっていらっしゃるのだわ…”
ヒルダは普段のキルヒアイスの様子からは伺い知る事の出來なかった
キルヒアイスの一面をこの數(shù)日の間に何度か見る機(jī)會(huì)があった剧劝。
ラインハルトの事はなにも口にはしなくとも
近くでみると彫りの深いキルヒアイスの顔はいつにも増してその深さを増している。
おそらくろくに睡眠をとってはいないのだろうということはヒルダにも察しがついた抓歼。
”この方は口や態(tài)度に出さずとも誰よりもそのお心を痛めている…
今もきっと出來ることなら陛下のお傍にいたいはず”
キルヒアイスの普段目にすることのないその寢顔を眺めながら
ヒルダはキルヒアイスの心中を読み取っていた。
ようやく二人が到著すると城からすでにキルヒアイスがこちらに向かうという連絡(luò)を受けていたケスラーが
やはり出迎えにでていた拢锹。
「…ケスラー憲兵総監(jiān)谣妻、よくやってくれました」
「いや、キルヒアイス元帥…まだまだこれからです」
そういってケスラーは控え室へと二人を招く卒稳。
そして一通り捜査狀況を聞くと事件関係者から直接話を聞くために
キルヒアイスはラングのいる取調(diào)室へと向かった蹋半。
キルヒアイスはこの時(shí)もまた先日と同じ理由からヒルダを控え室においてきていた。
ラングによって拷問を受けた彼らの姿はヒルダのその想像を絶するものだと判斷したからである充坑。
取調(diào)室に入るとラングがキルヒアイスの姿を確認(rèn)して挨拶を述べた减江。
「ようこそ、元帥閣下…」
「う…ッ」
ケスラーが顔を顰めて口元に手をあててその聲を塞ぎこむ捻爷。
拷問によって傷めつけられた彼らのすさまじい姿を目の當(dāng)たりにしてしまったからだ辈灼。
その姿をケスラーにはどうしても靜止して見ることが出來ない。
「…これはまた也榄、隨分と努力をなさったものですね」
だがそんな中キルヒアイスは顔色も変えずに
まるで商品を見定めるような口調(diào)で彼らに近寄ってその様子を伺っている巡莹。
”…よく、あんなもの甜紫。靜止して見ていられるものだッ”
ラングはともかくキルヒアイスの変わらない態(tài)度にケスラーは
キルヒアイスに目をやってそう心の中で呟きを漏らす降宅。
「ケスラー憲兵総監(jiān)…ご気分がすぐれないようでしたら
フロイラインと一緒に控え室でお待ちいただいてもかまいませんよ?」
キルヒアイスがケスラーにそう告げると
ケスラーはその言葉に承諾してその場(chǎng)を逃げるように後にした囚霸。
”ラングめ…まともではあるまいッヤツの前では地獄の番人共も裸足で逃げ出すに違いない…”
ケスラーはそんなことを考えながら早足でヒルダの待つ控え室へと向かった腰根。
ケスラーが去った後、ラングが早速話しを再開させる拓型。
「…このまま脳から直接情報(bào)を引き出してもよかったのですが额嘿、
どうも彼らはあなたにお話があるようなのでお呼びたてしました」
「私に…?」
キルヒアイスが拷問を受けた彼らの姿を確認(rèn)してよく見てみると吨述、
それはケスラーでなくとも常人にはとても靜止して見ていられるものではなかった岩睁。
椅子に拘束されて全身には針のようなものが突き刺されている。
その脇にあるのは輸血ポッド揣云。
ラングが一體なにをしたのか気になるところである捕儒。
キルヒアイスのそれを察したかのようにラングはその現(xiàn)狀を話し始めた。
「…なに、慢性の中毒患者はやっかいでしてな刘莹。
荒療治でしたが急ぎのことでしたので薬に侵された全身の血をそっくり入れ替えてやったのですよ」
麻薬によって痛覚は麻痺して拷問にも堪えない阎毅。
そのためラングはその痛覚を刺激するべく全身に針を刺してそのツボを刺激したのである。
通常ならばその痛覚は10倍に達(dá)する点弯。
そして扇调、ラングは全身からその血を入れ替え
麻薬によって侵された脳を無理やり正常化させたのである抢肛。
「…なるほど」
「あん狼钮、たが…責(zé)任者か…?」
たどたどしい口調(diào)でキルヒアイスに話しかけてきたのはその拷問を受けた人間の一人からだ捡絮。
「そうです…」
「なぜ熬芜、我々を…殺さ、ない…福稳?」
下から見上げながらかすかにその目に映るキルヒアイスの存在を確かめながら聲をかけてくる涎拉。
「殺したければ、殺せ…俺達(dá)は的圆、もう死んでいる」
「なぜ鼓拧、死を望むあなた方の望みを私がわざわざ葉えてやらなければならないのです?
それに…あなた方を今殺す訳にはいきません越妈。あなた方には話していただかなければなりません季俩。
アドリアン?ルビンスキーは今、どこにいるのです叮称?」
その言葉にはっとして一人が顔を背けた种玛。
だがキルヒアイスがその手で再び自分の方へと向かせる。
「…知ら瓤檐、んッB冈稀!」
「いいえ挠蛉、その様子ではあなたはどうやらそれをご存知のようだ…」
キルヒアイスは相手を凝視したままその言葉に納得することもなく言葉を続けた祭示。
「これはまた隨分と血の気の多い…輸血が多すぎたようですね…血抜きが必要なようです」
そういってキルヒアイスは近くにあった空洞のある眺めの太い棒を手に取ると
そのままそれを拷問を受けた身體へと突き刺す。
たちまち血はその空洞から溢れるように飛び出してきた谴古。
「ぐ质涛、うああああ…ッ!」
「…閣下掰担、それ以上すると死んでしまいますよ汇陆?大事な証人が」
クックッと笑い聲を上げながらラングがキルヒアイスに言葉をかける。
「血が流れればその分また輸血をすればいいではありませんか…」
だがキルヒアイスはそれが當(dāng)然のような口調(diào)で平然とラングの言葉にそう答えた带饱。
「どうです…苦しいですか毡代?それこそあなた方が今死んでいない阅羹、生きている証なのですよ。
あなた方を殺してしまうと我々はこうしてあなたに苦痛を感じさせることも
証言を聞くことも出來なくなる…生きていてこそのその苦しみを
その身に味あわせることも出來なくなる教寂、そうでしょう捏鱼?ですが…困りましたね。
あなた方が話さないとなるとあなた方を地球で待っているご家族の方が
大変なことになってしまうのですよ酪耕?」
「な…ッ5及稹?」
その反応にキルヒアイスはやはり迂烁、と気づく看尼。
ケスラーの取調(diào)が進(jìn)まなかった訳をここでようやくキルヒアイスの中で納得がいった。
彼らの家族は人質(zhì)として地球に捕らわれ自らは麻薬を與えられ自由すら奪われている盟步。
彼らは地球教に利用されているのだ狡忙。
たとえ麻薬にその身を侵され発狂しようともその家族のために彼らはその死を恐れない。
「私は航空宇宙局に命じて地球への運(yùn)行を全面停止させました…
これがどういうことかおわかりになりますか…址芯?」
「そんなことをしたら…ッ!」
「そう…大変なことになってしまいますね」
キルヒアイスから笑顔で語られるその言葉に彼らは一斉に顔を青ざめる窜觉。
生活物資が供給出來なくなっても人質(zhì)である自分達(dá)の家族に対して
果たして地球教はその生活を保障するのだろうか谷炸。
それは有り得ない話である。
おそらく地球教は自らを守るべく保身に走り
皇帝暗殺に失敗した自分達(dá)を見捨てて家族も飼い殺しにしてしまうことだろう禀挫。
「なんて旬陡、ことをッ」
「あなたの調(diào)書をみました…まもなく、お子様のお誕生日だそうですね语婴。
お子様の今度の誕生日には蝋燭を何本たてるのです描孟?」
その言葉にキルヒアイスに頭を抑えられた男が
全身を震わせて信じられないものをみるようにキルヒアイスのその姿を見つめ
そしてようやくその口から言葉が漏れた。
「助けて砰左、くれ…」
「…誰に救いを求めているのです匿醒?ここには救いの神などおられませんよ。
私が聞きたいのは救いの聲ではなく…ルビンスキーの居場(chǎng)所です」
その言葉に凍りついた一同から瞬時(shí)に聲があがった缠导。
「は廉羔、話す…ッ!なんでもッFг臁憋他!だから、家族を…皆を髓削、早く助けてくれッ」
そうして竹挡、彼らは今までの態(tài)度を一変させて次々と証言を始めた。
洗いざらいに話すとはまさにこのことである立膛。
彼らは先を爭(zhēng)うように証言を口にしていったのだった揪罕。
一通り話しを聞き終えてキルヒアイスはそのまま控え室に戻るべくその場(chǎng)を離れ始めると
ラングが自分の役目は終わったとばかりにキルヒアイスのその後へと続いた。
その姿を見屆けた一人が立ち去るキルヒアイスに慌てて聲をかけてくる。
「待ってくれ…ッオレ達(dá)の耸序、オレ達(dá)の家族はH绦?」
「先程も申しましたが…あなた方は一體誰にその救いをお求めになっておられるのです坎怪?」
キルヒアイスは必死に追い下がるその聲に冷たい一聲を放った罢坝。
「オレ達(dá)は全部、話した…ッオレ達(dá)はともかく家族は搅窿、関係ない…ッ」
「…皇帝叛逆を企てたリヒテンラーデ候がどうなったかご存知ですか嘁酿?」
ラインハルトが皇帝になる以前、帝國(guó)の実権を手に入れるべく
ロイエンタールによって前帝國(guó)の実力者であるリヒテンラーデ候はその身柄を取り押さえられ男应、
一族郎黨ことごとく死罪となった闹司。それは10歳以上の男児にまで到る。
「そ沐飘、そんな…」
「あなた方も皇帝暗殺を企てた以上游桩、極刑は覚悟の上のはず…
今更わざわざ私にこのようなことを言わせないでください」
キルヒアイスはそう告げると
そのまま顔を蒼白させて口を明けたまま呆然とする彼らを殘し取調(diào)室を後にすると
扉の奧ではこの世のものとは思えない男達(dá)の絶叫が響き渡っていた。
キルヒアイスが控え室に戻りそれまで団欒していたヒルダとケスラーは
キルヒアイスとラングに気付いてその腰をあげて出迎える耐朴。
「どうでしたか…借卧?」
「隨分とお話して頂きましたよ?…存外筛峭、素直な方たちで助かりました铐刘。
ケスラー憲兵総監(jiān)はルビンスキーの元へただちに憲兵を派遣してください」
ケスラーはその言葉に少し怪訝な表情を浮かべたものの
キルヒアイスとその後ろに控えるラングに視線を巡らせながら返事を返した。
「…承知しました影晓、ただちにそのように手配致します」
そこで今まで後ろに控えていたラングが待ちに待ったかのようにキルヒアイスに聲をかける镰吵。
「…閣下」
「ああ…ラング局長(zhǎng)。あなたもよくやってくれました…
あなたのお望みは以前の職への復(fù)職でよろしいのですか挂签?」
キルヒアイスのその言葉にラングはニヤリと笑みを浮かべ頷きを返した疤祭。
「はい、これからも新帝國(guó)のため饵婆、あなたのためお役に立ってみせましょう…」
「…いいえ画株、ラング局長(zhǎng)。それは全て皇帝陛下の御為に」
キルヒアイスのその言葉にラングは一禮をもってそれに答えたが
キルヒアイスはそのラングに釘を刺すことも忘れなかった啦辐。
「ですが…以前のような內(nèi)務(wù)に支障をきたす干渉は困ります谓传。
これからは帝國(guó)內(nèi)部の反亂分子にのみその力を注いで戴きたいものです」
「…これはなかなか手厳しいことをおっしゃられる、閣下は芹关。
先程の彼らへの対応といい…中々に续挟、あなどれませんな」
ラングは取調(diào)室でみたキルヒアイスの姿を思い返すように苦笑しながらそう答える。
「…私は尋問よりも殺すことが専門なのです侥衬。いわゆる私の先程のアレは軍隊(duì)仕込みというやつですよ」
ラングの言葉の馴れ合いを突き離すようにキルヒアイスがそんな言葉を返した诗祸。
”…どうやら跑芳、私はオーベルシュタインよりも遙かに恐ろしい者の下へついてしまったようだ”
オーベルシュタインは道具の一つのように事務(wù)的にラングを扱ったがキルヒアイスはまたそれとは違う。
キルヒアイスのそれはさながらに家畜を調(diào)教するかのような徹底さがあった直颅。
もう二度と職を奪われるような愚かな行為はすまい博个、
この仕事こそ自分の天職であり、生きがいそのものであることを
更迭期間で身に染みたラングはそう心に決める功偿。
「私が復(fù)職させると決めた以上盆佣、次の復(fù)職はありえませんよ?ラング局長(zhǎng)…」
「…肝に銘じて」
とどめのように告げるキルヒアイスにラングは目を伏せてさらにその頭を深く垂れたのだった械荷。
ヒルダとケスラーはその會(huì)話を傍でかいま見ながら
取調(diào)室で一體なにがあったのかはまるで想像すら出來ないでいる共耍。
だがはっきりとしていることはラングのキルヒアイスへの態(tài)度が確実に変わったということだ。
キルヒアイスの器量を測(cè)るような態(tài)度から平伏する態(tài)度へと吨瞎。
ヒルダとケスラーがキルヒアイスに伺うような視線を向ける或渤。
「…それでは後はケスラー憲兵総監(jiān)におまかせして城の方へ戻りましょうか庵寞、フロイライン」
そんな二人にキルヒアイスはいつもと変わらぬ穏やかな微笑でそう答えたのだった。
3.悪魔と踴れ-3
ケスラーの見送りを受けながら城へ戻るためにキルヒアイスとヒルダが地上車へと向かった時(shí)のことである结澄。
地上車をねらって突如その場(chǎng)にグレネード弾が打ち込まれ
辺りからは煙とともに悲鳴があがった华临。
キルヒアイスは傍にいたヒルダを庇うようにして
マントに包みこみ腰を低くしてそれをやり過ごした梯嗽。
「お怪我は…铆隘?フロイライン」
「大又沾、丈夫です…」
耳がその轟音ではっきりとしないまま事態(tài)を把握出來ていないヒルダはようやくその言葉だけを口にする。
キルヒアイスは無傷のヒルダを確認(rèn)するとその身を離して立ち上がった归露。
「キルヒアイス元帥、ご無事で…ッ=锒剧包?」
「何事ですか?ケスラー憲兵総監(jiān)」
地上車をみると完全防弾の地上車はびくともしていない往果。
おそらく目的は騒ぎに乗じて証言者を消すか疆液、あわよくば…
”地球への運(yùn)行の全面禁止命令を出した私を殺すため…か
それにしても情報(bào)が伝わるのが早すぎる…やはりここにも內(nèi)通者がいるのか?”
元々ルビンスキーはこのフェザーンの自治領(lǐng)主である陕贮。
その人脈はそれを可能に出來る程であったのかもしれない堕油。
「ルビンスキーめ…ッ血迷ったか!肮之?ええいッ憲兵たちはなにをしておるか掉缺!
早くその不屆き者共を捕らえよッ」
ケスラーの聲が響き憲兵たちがただちに動(dòng)き出した、その時(shí)だった戈擒。
地上車付近でキルヒアイスとヒルダを待っていた警備の者達(dá)が
グレネードの衝撃で咄嗟にうつ伏せになった身體を
襲撃者によって背後から身を抑えられその人質(zhì)にされてしまったのである眶明。
襲撃者達(dá)は銃を人質(zhì)に突きつけながら辺りを見回して
キルヒアイスとケスラー達(dá)の姿を確認(rèn)すると聲を大きく張り上げて語り始めた。
「我々の目的は筐高、罪無き罪で捕らえられた同胞を救うことと
地球への運(yùn)行を停止させた政府への暴挙を止めることにあるッ
責(zé)任者はただちにこの要求をのんで貰いたいッK汛选丑瞧!」
その言葉にキルヒアイスは腰にあった銃を襲撃者に向ける。
「…なにをしているッこれが見えないのか蜀肘!」
襲撃者は自分のその身を庇うように人質(zhì)を抱え込みながら人質(zhì)に銃口を向けた绊汹。
だが、襲撃者達(dá)のその言葉は銃を向けるキルヒアイスにさほどの効果を與えることは出來なかった扮宠。
キルヒアイスはそのまま迷うことなく銃の引き金を引いた西乖。
辺りには人質(zhì)の數(shù)の分だけ銃聲が鳴り響く。
「キ涵卵、キルヒアイス元帥…ッ浴栽!なんてことをッ」
ケスラーが驚きの聲を上げながらキルヒアイスに駆け寄っていくが
だがキルヒアイスは顔色ひとつかえることなく今度は銃口を襲撃者に向けながら話しかけた。
「…さて轿偎、今度はどうします典鸡?」
「う…」
予想外の展開に襲撃者達(dá)も動(dòng)揺が隠せない。
盾となるべき人質(zhì)はそのあてを外れてあっけなく射殺されてしまったのである坏晦。
だが萝玷、襲撃者が反論の言葉につまったのもつかの間だった。
キルヒアイスに撃たれた人質(zhì)が立ち上がって襲撃者の動(dòng)きを封じ込んでしまったからだ昆婿。
「な球碉、なに…ッ!仓蛆?」
襲撃者達(dá)はたった今撃たれたはずの警備の者たちによって武器を奪われ睁冬、動(dòng)きを封じられてしまった。
それを見たケスラーが慌てて憲兵にそれを捕らえるべく命令を出す看疙。
「奴等の身柄を押さえるのだ…ッ急げ豆拨!」
そうして襲撃者達(dá)はケスラー達(dá)によってあっという間に取り押さえられた。
「…防護(hù)服が能庆、役にたったでしょう施禾?」
笑って人質(zhì)だった警備の者たちにキルヒアイスが聲をかけると警備兵は敬禮をもってそれに答えた。
「しかし搁胆、驚きましたぞ…キルヒアイス元帥」
そう言ってケスラーがキルヒアイスに溜め息交じりに聲をかける弥搞。
「すみません、ケスラー憲兵総監(jiān)…ブラスターの出力を最小に抑えて撃ったのですよ渠旁。
これだと防護(hù)服がなくとも攀例、そう簡(jiǎn)単には人間の身體は貫けませんから」
「…なるほど。左様でしたか顾腊、いや…見事な判斷でした」
警備の者が倒れたのはブラスターから発せられた衝撃からであり肛度、
防護(hù)服を著用していた彼らはその身を一切傷つけることはなかった。
キルヒアイスは傍で驚いたまま座り込んでいるヒルダに顔を向けて手を差し伸べる投慈。
「フロイライン承耿、驚かせて申し訳ありません…大丈夫ですか冠骄?」
「は…は、い」
目の前で行われた銃撃戦にヒルダは腰が抜けたように身動(dòng)きが出來ないでいた加袋。
そんな様子を見て取ったキルヒアイスがヒルダを支えるようにして立ち上がらせる凛辣。
「…す、すみません职烧。有難うございます扁誓、キルヒアイス元帥…」
「いえ…どうかお?dú)荬摔胜丹椁骸?br>
ヒルダの禮に軽い會(huì)釈でキルヒアイスがそれに答えた。
「簒奪者の片棒を擔(dān)ぐ兇悪者どもめ…ッ」
憲兵によって取り押さえられた襲撃犯の一人からそんな聲が上がり蚀之、
そこにいた誰もが一斉にその姿に目を向けた蝗敢。
「なにをいうか…ッこの癡れ者めがッ!」
ケスラーがその言葉に猛反発に言い返したが足删、その襲撃者は怯むことなく更に言葉を続けた寿谴。
「あの金髪の小僧は前帝國(guó)皇帝に実の姉を差し出してその身を立身出世させた恥知らずなのだ…ッ
所詮どこの馬の骨とも知れぬ輩が皇帝陛下などとは笑わせるッ姉弟ともに正気の沙汰とも思えぬわ…ッ!失受!」
「…なッQ忍?」
だがケスラーがそれに答える前に突如再び銃聲が上がった拂到。
「ぐっ…がッ…はあッ」
銃はその発言をした襲撃者を狙ったものだった痪署。
襲撃者から上がった聲はキルヒアイスが瞬時(shí)にその手にあった銃で
そのまま眉間に向けて銃を連続で発射させたために上がったものである。
「…がっ…は兄旬、…あッ」
だがそれで銃聲はやむこともなく続いて眉間へと打ち込まれていく狼犯。
ピンポイントで発射されるそれは額を穿つようにその穴が脳を貫通するまで発射された。
やがてその脳に傷口が達(dá)してすでにこと切れた狀態(tài)にある身體から
聲が上がることがなくなるがその身體は続けて発射され続ける弾の衝撃で小刻みに揺れ続けている领铐。
やがてブラスターのエネルギーを使い盡くしたのか
ブラスターからの発射音がようやく止まった悯森。
「…切れて、しまいましたね」
キルヒアイスがそう言って空になった弾裝を再び入れ替えると
その様子にいち早く正気に戻ったケスラーが慌ててキルヒアイスを止めに入る罐孝。
「キルヒアイス元帥…ッ」
「すみません…せっかくの証言者でしたのに」
そのまま銃を腰に収めるとキルヒアイスは
いつもと同じ調(diào)子でケスラーにすまなそうに詫びを述べたのだった。
”金髪の小僧…”
ラインハルトをそう呼んでいたのは舊貴族達(dá)であった肥缔。
ルビンスキーはありとあらゆるところから人材を調(diào)達(dá)しているようである莲兢。
”アドリアン?ルビンスキー…危険な男だ。このまま野放しにはしておけない续膳、なんとしても捕らえなければ”
キルヒアイスはそんなことを考えながら憲兵によって運(yùn)ばれる遺體を見送った改艇。
『…私は尋問より殺すことが専門なのです』
先程そういったキルヒアイスの言葉をケスラーとヒルダは思い返していた。
彼らは失念していたのである坟岔。
キルヒアイスは皇帝の代理を務(wù)めて政務(wù)や艦隊(duì)を指揮するだけでなく
実戦に於いてもその実力は帝國(guó)の誰もが知るところであることを谒兄。
普段の穏やかな態(tài)度によってそれは覆い隠されてしまうために
皆は自然にその事実を記憶の隅に追いやってしまうのだ。
立ち盡くす二人にその目を向けたキルヒアイスがケスラーに聲をかける社付。
「ケスラー憲兵総監(jiān)…ルビンスキーは承疲、危険な男です邻耕。
必ず捕らえてください…決して逃してはなりません」
「…はっ!」
その言葉にケスラーは敬禮をもってそれに答えた燕鸽。
「吉報(bào)をお待ちしています…」
”この騒ぎ…時(shí)間稼ぎの可能性は十分にある”
キルヒアイスは事態(tài)の収拾に動(dòng)く辺りを見回しながらそんなことを考えていた兄世。
思えば計(jì)畫性のない無謀な作戦だった。
これはおそらくルビンスキーが逃げるための時(shí)間稼ぎではないかとそう推察したのである啊研。
キルヒアイスはそのまま動(dòng)けないでいるヒルダを抱えるようにして地上車に乗り込むと
何事もなかったかのように城へと地上車を走らせたのだった御滩。
「…どうしました?震えておいでですよ」
「あ…いえ党远、その」
ショックから覚めやらぬヒルダにキルヒアイスが苦笑混じりに話しかける削解。
ヒルダは地上車の車中二人きりでキルヒアイスの姿をまともに見ることが出來ないでいた。
そんなヒルダの様子にキルヒアイスは窓に向けていた視線を戻してヒルダに向けると
それを和らげるように柔らかな口調(diào)で話し出す沟娱。
「先日氛驮、會(huì)議の時(shí)にお話したように私はこの通りまともな人間ではありません…
私のこと、恐ろしくなりましたか花沉?フロイライン」
「いいえ…そんなことはありません柳爽。ただびっくりして…その。
そ碱屁、それに元帥は立派にその努めを果たしておられるではありませんかッ
ご自分をそんな風(fēng)に卑下なさる必要はありませんわ…」
ヒルダはキルヒアイスのその言葉を否定するようにそう告げるとその顔をキルヒアイスへと向けた磷脯。
「…やっと、私を見てくれましたね娩脾。フロイライン」
「キルヒ赵誓、アイス元帥…」
キルヒアイスは笑ってそれだけいうとまた顔を窓へと向けてその目を伏せたのだった。
”この方も必死なのだ…陛下をお助けするために”
ヒルダもまたそれ以上の會(huì)話をやめて
目を伏せるキルヒアイスを見守りながらそのまま城へ辿りつくまでの時(shí)間を過ごしたのである柿赊。
「それでは俩功、これで失禮致します…」
城へ到著後、いつもの調(diào)子で仕事を終えたヒルダは
キルヒアイスの軽い會(huì)釈を受けてそのまま執(zhí)務(wù)室を出る碰声。
「キルヒアイス元帥…陛下の意識(shí)がお戻りになった以上少しでもお休みになって下さいませね…诡蜓?」
ヒルダは心配そうにそういい殘すと一禮して
そのままキルヒアイスの返事を聞かないまま執(zhí)務(wù)室を出てしまった。
ヒルダが執(zhí)務(wù)室をでた後キルヒアイスは眉間に手をあてて目を伏せたまま頭を上へと向けた胰挑。
そしてそのまま執(zhí)務(wù)室の椅子を思い切り傾ける蔓罚。
”…疲れているのは分かっている。だが…あの男瞻颂、ルビンスキーは
ラインハルト様がお戻りになるまでになんとかしなくては…”
ヴェスターラントや地球教の件は昨日今日で片付く問題でもない豺谈。
だがラインハルトの命を狙うことは出來ないのだということを
また同じような事が起きる前に萬民に知らしめる必要がある。
そうなるまではキルヒアイスも安心してラインハルトを外に出してやることが出來ない贡这。
執(zhí)務(wù)室に山積する書類の中茬末、キルヒアイスはそんなことを考えながら
少しの間ではあったが疲れきったその身體をそこで休めた。
わずかな眠りであったが気分をすっきりさせたキルヒアイスが
ようやくラインハルトの元へ戻ってきた盖矫。
「…キル丽惭、ヒ…アイス」
薄れる意識(shí)のなかラインハルトが力なくその聲でキルヒアイスを呼ぶ击奶。
キルヒアイスは額に口付けてそれに答えた。
「ただいま吐根、戻りました…今日は正歼、また隨分と頑張ったようですね」
私服に著替えたキルヒアイスはラインハルトの身體を拭くために洗面道具を片手にやってきていた。
傍でラインハルトを見やると拘束する手足にはいつにも増してくっきりとその跡が殘っている拷橘。
キルヒアイスがその拘束を外そうとするとラインハルトがそれを制止した局义。
「まだ…駄目、だ冗疮。キルヒ萄唇、アイス…外す…なッ」
だがキルヒアイスはラインハルトの制止も聞かずあっという間にその拘束を解いてしまった。
「あッ…やめ」
「…こんなに术幔、こんなに肌に跡が殘ってしまって…」
そしてラインハルトの擦れて出來てしまった傷口にキルヒアイスは唇を寄せながら
目を伏せて溜め息混じりにそんな言葉を口にする另萤。
だが拘束を外されたラインハルトはたまらず震える自分の身體を抱え込むようにして
その身を捩じらせてその衝動(dòng)を抑え込む。
「…駄目なんだッ頼む诅挑、から…キルヒ四敞、アイスッ」
その目に涙を浮かべながらラインハルトは必死にキルヒアイスに哀願(yuàn)する。
「ああ拔妥、拘束具を変える間だけですよ…ラインハルト様忿危。
隨分汗もお掻きになっておいでですから…ついでに、身體をお拭きしましょう…」
そういってキルヒアイスが身體を抱え込むラインハルトの身體を押さえ込んでその身を拭い始めた没龙。
そしてキルヒアイスはラインハルトの身を拭い終えると
持ち帰った新しい拘束具をラインハルトに身につけさせてやる铺厨。
「これ、は…硬纤?」
「…なんでも解滓、病院で使われている拘束具だそうです。
これだとお身體に傷がつくことはありませんので筝家、しばらくは…どうかこれでご辛抱を」
ラインハルトはキルヒアイスの言葉に頷くように返事を返すと
言葉を口にするのも辛いのかそのまままた硬く目を閉じてしまった洼裤。
荒々しい呼吸がキルヒアイスの耳にも入ってくる。
キルヒアイスは席をたって洗面道具を片付けるためにラインハルトの傍から離れようとその腰を上げた溪王。
「…キ腮鞍、キルヒ、アイ…スッ」
「ラインハルト様…在扰?」
苦しい息から自分の名前を呼ぶラインハルトの聲に
キルヒアイスはその小さな聲を聞き取るようにその口元に顔を近づけた缕减。
「…い拧廊、て」
かすかにラインハルトから漏れたその言葉に
キルヒアイスは目を見開いてその驚きを見せたがすぐに眉を顰めて言葉を返す茄袖。
「いけません…どうか梁呈、今はお休みを」
「どうに颅围、かなって…しまいそうなんだ…」
だがキルヒアイスはその言葉にも了承を出すことは出來ないでいた皱卓。
先日までの行為によってラインハルトの傷ついた蕾を
キルヒアイスは目の當(dāng)たりに見てしまっている裹芝。
「…駄目です。どうか娜汁、お堪えください…ラインハルト様」
つれないキルヒアイスのその言葉に
ラインハルトは自分の口元に寄せていたキルヒアイスの耳に思い切り噛み付いた嫂易。
「……痛ッ!」
たちまちキルヒアイスの耳がラインハルトに噛まれた場(chǎng)所から出血を始める掐禁。
そして苦痛に顔を歪めるキルヒアイスの耳元を銜えるようにしながら
その血を飲み干すようにラインハルトはその舌で舐め上げて血を啜った怜械。
「だっ…だったら、命令だ…キルヒ傅事、アイス」
キルヒアイスがそう告げたラインハルトをじっと見つめる缕允。
ラインハルトの意図はキルヒアイスにも分かっていた。
ラインハルトは禁斷癥狀に苦しむ自分の姿をキルヒアイスに見られたくないのである蹭越。
キルヒアイスの目に觸れさせないようにと考えてのことだった障本。
それを察してキルヒアイスがラインハルトを説得するためにその打開策を告げる。
「私がお邪魔でしたら响鹃、隣の部屋に控えております…ですから驾霜、どうか」
「…それもイヤ、だ买置。オマエは…こんな粪糙、オレといるのはイヤかもしれないが
…オレはオマ…エと一緒にいたいんだ」
これまで二人にはそれぞれに暗黙のルールがあった。
キルヒアイスのそれはラインハルトへの身體が重い負(fù)擔(dān)を強(qiáng)いる行為であるため
行為に及ぶ際には十分に気を使うこと堕义。
ラインハルトには自分の立場(chǎng)を理由にそれを命令しないこと猜旬。
だが、その暗黙のルールを先に破ったのはキルヒアイスの方だ倦卖。
禁斷癥狀からくる発狂を招く幻覚から逃れさせるためにやむを得ず
あえてその身を使ってラインハルトの身體を痛めつける行為に及んだ洒擦。
ラインハルトもまたそのルールを破ってその行為を強(qiáng)要するのは
自分の禁斷癥狀を見てキルヒアイスにこれ以上辛い思いをさせたくはなかったからである。
たとえ自分の姿を見なくてもキルヒアイスが苦しむことはラインハルトには容易に想像がついた怕膛。
「…なあ熟嫩、キル、ヒ…アイス褐捻。オレ達(dá)は…ずっと掸茅、一緒なの…だろう…?」
その言葉キルヒアイスはその口を塞ぐように深い口付けを與えてラインハルトに答えを返した柠逞。
「ご命令のままに…陛下」
キルヒアイスがベッドでの睦言の中で陛下とラインハルトを呼んだのはこれが初めてのことだった昧狮。
そして與えられた命令を果たすかのように優(yōu)しい言葉を告げることもないまま
キルヒアイスはラインハルトのその身の衣服を亂暴に引き剝がしていく。
「オ板壮、マエ…怒って…る逗鸣、な」
キルヒアイスのそんな様子にラインハルトはそれを察したように聲をかけると
キルヒアイスは冷たく言葉を言い放つ。
「陛下のご命令には、逆らえません…あなたは撒璧、それをよくご存知のはずだ」
「あっ…う透葛、あ、ああ…ッ卿樱!」
それは普段二人が身體を重ねる時(shí)とはまるで違う行為だった僚害。
言葉もなくキルヒアイスはラインハルトの身體に一方的に快楽を與える。
それは愛の交歓ではなく獣の交わりに等しいものだった繁调。
ラインハルトはキルヒアイスの思う様に亂れてその聲を隠すことなく上げ続けた萨蚕。
ラインハルトの意識(shí)が途絶えるその時(shí)まで。
”…あなたは卑怯だ蹄胰、ラインハルト様ッ”
キルヒアイスは意識(shí)を失くしたラインハルトを見ながら心の中でそんな恨み事を口にする门岔。
キルヒアイスにはラインハルトの命令への拒否権がない。
よってキルヒアイスはラインハルトの命令には絶対に逆らえない烤送。
それに抗うことを許されないキルヒアイスを知っていて
それでもあえてラインハルトはキルヒアイスに命令を出したのである寒随。
キルヒアイスもラインハルトの気持ちを察しているだけに
決してその恨み言を口にすることは出來ない。
キルヒアイスはただラインハルトの望みを葉えてやるべくただひたすらにその行為に及んだのだ帮坚。
それはキルヒアイスにとって思い出しても吐き気がでそうな行為だった妻往。
キルヒアイスはラインハルトの身の後始末を終えると立ち上がり洗面道具をもってその場(chǎng)を離れる。
月のない暗闇の部屋の中でキルヒアイスは
ラインハルトをこのような身においた者達(dá)に対して呪いの言葉を口にする试和。
「許さない讯泣、絶対に許さない…ッよくもこん…な」
キルヒアイスの心から吐き出された想いはその暗闇へと全て飲み込まれるように消えてゆく。
その日阅悍、外に月が昇ることはなく部屋は闇に包まれたまま二人は夜を迎えたのだった好渠。
4.pigeon blood ピジョン?ブラッド~鳩の血~-1
Ruby pigeon blood ルビー?ピジョン?ブラッド
そのルビーの中で最上級(jí)と言われるのが、
ピジョンブラッドと呼ばれる真紅のルビー节视。
數(shù)あるルビーの中でも拳锚、これほどの赤と透明度を両立させた上に、
紫外線による獨(dú)特の蛍光性まで併せ持つという寻行、まさにルビーのなかのルビー霍掺。
ルビーの場(chǎng)合、暗いほどに濃い赤が最上級(jí)とされ
特にピジョン?ブラッド(鳩の血)という名前で呼ばれている拌蜘。
翌日杆烁、キルヒアイスが身支度を整えて再びラインハルトの寢室へと足を踏み入れると、
やはり眠れなかったのか顔色の悪いラインハルトの姿がそれを出迎えた简卧。
「…おはようございます兔魂、ラインハルト様」
「おは、よう…」
隨分苦しんだのかラインハルトからは拘束具をつけたまま力のない聲で挨拶が帰って來る举娩。
キルヒアイスが心配そうにラインハルトの傍によってその様子を眺めた析校。
こんなラインハルトを一人置いてキルヒアイスは仕事へ向かわなければならないからだ拍棕。
そんなキルヒアイスの気持ちを知ってかラインハルトは
極力出來うる笑顔でキルヒアイスの耳元をみながら話しかける。
「フフ…見事に跡になっているぞ勺良、キルヒアイス」
それは昨日ラインハルトがキルヒアイスの耳に噛み付いた時(shí)に出來た傷跡で
出血は止まっていたもののその傷跡は明らかに噛み跡だとわかる。
「それ…どう骄噪、ごまかすつもりだ尚困?」
「…まったく、誰のせいだと思っているのですか」
困り顔で答えるキルヒアイスにラインハルトが小さな笑い聲をあげた链蕊。
「キルヒアイス事甜、そこの引き出しの一番下にいいものがある…出して、みろ」
キルヒアイスがラインハルトに従って引き出しを開けると
そこには小さな寶石箱のようなケースがある滔韵。
「…そのまま逻谦、開けて」
「これ、は…陪蜻?」
開けるとそこには赤い石でできた2連のピアスがあった邦马。
「…この間、博物館の視察にいった際に余りの見事な真紅に目を奪われてしまってな宴卖。
そこの館長(zhǎng)が気を使って欠片を分けてくれたのだ滋将。
本當(dāng)はクリスマスにでもカフスにしてオマエにくれてやろうと思っていたんだが…」
何かの手違いで屆いたのがこのピアスだった。
ルビーの中でも最上級(jí)と言われたのがこの真紅のルビーである症昏。
地球でのみ産出されていたこの希少な寶石は
今ではもう産出することもなくなり現(xiàn)存するもののみとなっていた随闽。
「…ルビーの場(chǎng)合、暗いほどに濃い赤が一番良いらしくて
特にピジョンブラッド(鳩の血)と呼ばれるそうですね」
「この凄い赤肝谭、まるでオマエの髪みたいだろ掘宪?」
ラインハルトの言葉にキルヒアイスがそのピアスに目を向けた。
”平和を司る鳩の血…確かに今の私には相応しい代物かもしれないな…”
「本當(dāng)はカフスに作り直させるつもりだったんだが攘烛、いいからもうこのまま使ってしまえ魏滚。
フロイラインにでも頼めばその傷をごまかして上手くつけてくれるだろう…
これは、いわばオレの代わりに頑張って仕事をしているオマエへのご褒美だな」
「…それは坟漱、どうも…お心遣いいたみいります」
大體この噛み傷をつけたのはラインハルトである栏赴。
楽しそうにいうラインハルトに內(nèi)心複雑な気持ちなキルヒアイスだった。
だが明らかに噛み傷だと分かるそれをそのままにもしておけず
キルヒアイスはラインハルトから贈(zèng)られたピアスを受け取った靖秩。
「ああ…キルヒアイス须眷。それと、砂時(shí)計(jì)の砂の量を少し足しておいてくれ」
今日もラインハルトは薬の禁斷癥狀と戦うようである沟突。
「あまりご無理はなさいますな…お體を崩してしまいます花颗。ゆっくり慣らした方が…」
ラインハルトの顔色の悪さにキルヒアイスは心配そうに聲をかけた。
「…駄目だ惠拭。オレがこのままだとまたオマエが無茶をするのだろう扩劝?
…だからオレは早く元の身體に戻さないと庸论、な」
「ラインハルト様…」
ラインハルトの言葉がキルヒアイスのその身に染み渡るように行き渡り、
キルヒアイスは拘束されたままのラインハルトを抱きしめる棒呛。
「心配するな聂示、オレは大丈夫だ…だから、早く仕事に行って來い」
そういって仕事に行きづらくなっていたキルヒアイスの背中を押すようにラインハルトが聲をかけると
キルヒアイスはようやく立ち上がりラインハルトに背を向けた簇秒。
「…それでは鱼喉、いってまいります。すぐに戻りますから」
そしてキルヒアイスは名殘惜しくはあったがラインハルトの寢室を後にした趋观。
”…オレもとんだ芝居上手になったものだ”
キルヒアイスが寢室を出るとまた禁斷癥狀に苦しみ始めるラインハルトだった扛禽。
”この身體のなんと虛弱なことか…今だ淺ましく薬を求めて悶え続けている”
ラインハルトは震える身體と薬を求める渇ききった身體を堪えながら再び砂時(shí)計(jì)に目を落とす。
まだまだラインハルトの禁斷癥狀は治まりを見せる兆しを見せてはいなかった皱坛。
今日もまたラインハルトの長(zhǎng)く苦しい一日はこうして始まりを告げたのである编曼。
朝、人目に極力觸れないように執(zhí)務(wù)室に入りキルヒアイスはヒルダを呼んだ剩辟。
「…申し訳ありません掐场、少し手伝っていただけませんか?」
「ま贩猎、まあ…ッ刻肄!キルヒアイス元帥」
ヒルダがよく見るとキルヒアイスが手で押さえた耳元にはそれは見事な噛み傷の跡があった。
「…これ融欧、陛下ですの敏弃?」
「ええ…まあ、それで…これを使って誤魔化そうと思うのですが
…なんとか上手くつけて貰えないかと…フロイライン」
唖然とするヒルダにキルヒアイスはピアスのケースを渡した噪馏。
ヒルダが中を確認(rèn)するとそこには見事な2連のルビーがある麦到。
あまりの凄い赤に溜め息の漏れたヒルダであったが
早速それを取り出すと手持ちのものでキルヒアイスの耳元を消毒し始める。
「…素晴らしいですわ欠肾、この石瓶颠。
ですが、傷跡にピアスを入れれば少し痛みますわよ刺桃、キルヒアイス元帥」
「ッ…粹淋!」
ヒルダはそういってキルヒアイスの耳元の噛み傷にあわせるように二つのピアスを取り付けた。
傷跡に被せるようにつけたピアスにキルヒアイスは痛みで一瞬顔を顰める瑟慈。
「後はファンデーションでもして回りの傷と赤みをごまかしましょう…」
キルヒアイスの耳にヒルダがファンデーションを軽くつけるとその傷跡はものの見事に隠れてしまった桃移。
「これで、傷跡は分かりませんわ…キルヒアイス元帥」
「助かりました葛碧、フロイライン借杰。どうも有難うございます」
やはりこういうのは女性の専門分野である。
キルヒアイスはヒルダに改めて感心して禮を述べたのだった进泼。
「お役に立ててなによりです蔗衡。元帥纤虽、よくお似合いですわよ」
そんなキルヒアイスの言葉をヒルダはにっこりと笑って受け止めた。
ヒルダが言うまでもなくそのピアスの赤は
見事キルヒアイスの赤い髪に溶け込むように馴染んでいる绞惦。
キルヒアイスの片耳の2連のルビーは
存在を主張するかのようにその輝きを放っていた逼纸。
ヒルダからの報(bào)告を聞き終えて書類に目を通しているとやがて會(huì)議の時(shí)間となった。
ヒルダを伴わせてキルヒアイスが皆の待つ會(huì)議室へと向かう济蝉。
會(huì)議室では既に皆が集まっておりキルヒアイスが來る間杰刽、
ケスラーから聞いた先日のキルヒアイスの出來事について話しあっていた。
「先日の憲兵隊(duì)への襲撃事件…テロリストの一人がものの見事にキルヒアイスに眉間を打ち抜かれたそうだ」
「ケスラーが鑑識(shí)に話を聞いたところ堆生、
出力を最小に抑えたブラスターを連続発射させて眉間が貫いた痕は
まるでレーザーで繰り抜かれたようになっていたと言うぞ…」
相手は取り押さえてあったとはいえ生身の動(dòng)く人間である。
眉間にピンポイントで打ち込むとなればそれがたとえ射撃の的であったとしても至難の業(yè)であった雷酪。
「…原因は淑仆、陛下と大公妃殿下への酷い侮辱であったそうだが」
キルヒアイスは射撃の名手としても帝國(guó)ではその名が高い。
こと白兵戦においては右に出る者無しとまでいわれている程で哥力、
既に數(shù)ある射撃大會(huì)などでも輝かしい戦績(jī)とともに
キルヒアイスはその名の多くを大會(huì)の筆頭に殘していた蔗怠。
「觸らぬ神のなんとやら…というやつだ。テロリストも馬鹿なことをいったものだ」
そういって話を締めくくると會(huì)議室は靜かな空気に包まれる吩跋。
丁度その話のキリのいい所で寞射、キルヒアイスが會(huì)議室へと到著した。
「おまたせしました…それでは锌钮、始めましょうか」
キルヒアイスが席をつく姿に皆がすぐにその耳元に気がついた桥温。
「ちょっと待て…それは、どうしたのだ梁丘?」
「ああ侵浸、これですか…?」
キルヒアイスがミッターマイヤーが指先を向けた耳元に手をあてる氛谜。
「陛下に頂いたのです…なんでも掏觉、代わりに仕事をしているご褒美だそうです能犯。
これをやるからとっとと仕事にいけ输吏、と…今朝は、早々に部屋を追い出されてしまいました」
キルヒアイスのその言葉にビッテンフェルトが
キルヒアイスを伺うようにいつもとは隨分控えめに話をもちかけた巫财。
「…その杨何、なんだ…キルヒアイス元帥酱塔。我々が陛下にお會(huì)いするのは…まだ、ご無理なのだろう危虱、か」
ビッテンフェルトのその言葉に皆がキルヒアイスに視線を向けると延旧、
キルヒアイスは制服のポケットからある物を黙って機(jī)に取り出した。
「これ槽地、は…迁沫?」
「砂時(shí)計(jì)です…陛下は一日これと向かい合って禁斷癥狀と時(shí)間を相手に戦っておられます芦瘾。
そうですね、今の陛下はこの砂時(shí)計(jì)でいうと…」
キルヒアイスが砂時(shí)計(jì)の口を開けて指先で一握りの砂を取り出した集畅。
「…今は近弟、このくらいです」
「………ッ!挺智!」
ビッテンフェルトが愕然としてその一握りの砂に顔を歪ませ皆も同様にその驚きを隠せない祷愉。
「今しばらくは…どうか、お待ちください」
頭を下げるキルヒアイスにビッテンフェルトは大きく首を振って言葉を返す赦颇。
「いいや二鳄、いいのだ…ッ!陛下も苦しみの中頑張っておられる媒怯!
我々は陛下を信じてそれをひたすら待つのみであったッ订讼!
無理を言ってこちらこそすまなかった…キルヒアイス元帥、
もし良かったらその砂時(shí)計(jì)扇苞。このままそこに置いては貰えないだろうか欺殿?」
そういってビッテンフェルトが
キルヒアイスの隣のラインハルトの席の前に置かれた砂時(shí)計(jì)に手を差し伸べた。
その言葉にキルヒアイスは一瞬目を大きく瞬きさせたもののビッテンフェルトの言葉を笑顔で返す鳖敷。
「…そうですね脖苏、それもいいかも知れません。
では定踱、ここに置いて皆で陛下のお帰りをお待ちすることにしましょう」
キルヒアイスはそのままそこに砂時(shí)計(jì)を置いたままにすると棍潘、
皆がそれぞれラインハルトを想いながらその砂時(shí)計(jì)を眺めた。
「それでは崖媚、今日の議題を始めましょうか…」
キルヒアイスの言葉に皆が頷きを返すと早速會(huì)議が始められた蜒谤。
しばらくして會(huì)議が順調(diào)に進(jìn)む中、キルヒアイス宛にケスラーからの連絡(luò)が入る至扰。
『面目ない…ッキルヒアイス元帥』
ケスラーの謝りの聲をあげながら続けられた報(bào)告はキルヒアイスの期待を裏切るものだった鳍徽。
「ルビンスキーを、取り逃がしたですって…敢课?」
『早速阶祭、後を追います…ッキルヒアイス元帥、どうかご許可を…V备选濒募!』
ケスラーの追いすがる言葉にキルヒアイスが沈黙する。
既にフェザーンを出たのであれば捜索には宇宙船を使用しなければならない圾结。
だがそれはケスラーの管轄外である瑰剃。
そこでケスラーはキルヒアイスにその追跡許可を貰うべく連絡(luò)を入れてきたのだった。
會(huì)議室からもケスラーに対する非難の聲が次々とあがる筝野。
「ルビンスキーを獲り逃がしたというのか…ッなにをしていたか晌姚、ケスラーのヤツめ…ッ粤剧!」
「キルヒアイス…ッ!地球へはミュラーを向かわせている挥唠。そこでヤツを取り押さえるのだ…ッ5至怠!」
キルヒアイスから地球への艦隊(duì)派遣を要請(qǐng)されたミッターマイヤーは
ミュラーの艦隊(duì)をすでに派遣させていた宝磨。
そこでルビンスキーを抑えることは十分可能だった弧关。
「…いいえ、このままルビンスキーを行かせましょう唤锉。目的地は分かっています」
「な…ッJ滥摇?」
「地球窿祥、か…」
”やはり先日の襲撃事件はルビンスキーが自分が逃げるためにした時(shí)間稼ぎだったのだ…
ものの見事に悪い予感だけは當(dāng)たってしまうな…”
キルヒアイスは心の中で一人そんな愚癡を零していた株憾。
「そういうことです…この際、地球教とルビンスキーとの関係をここで一切絶ってしまいましょう壁肋。
ルビンスキーが地球に到著次第号胚、地球教にルビンスキーの引渡しを要求します」
そこで地球教がルビンスキーを引き渡せばここでこの両者の関係は完全に斷ち切れる籽慢。
そうキルヒアイスが考えてのことだった浸遗。
「ミュラー提督に連絡(luò)を…ルビンスキーが地球に到著次第、その場(chǎng)で待機(jī)箱亿。
そのまま私の方から地球教への交渉に入ります…ルビンスキーの地球への予定到著時(shí)刻は跛锌?」
「おそらく明日中には著くだろう…だが、
物資の供給を停止させている以上早々に片をつけないと大変なことになるぞ」
「大丈夫です届惋、すぐに終わらせますから心配ありません…」
ミッターマイヤーの言葉にキルヒアイスはそう答えたのだった髓帽。
すぐに終わるともとても思えなかったがキルヒアイスが斷言する以上皆は納得する他はない。
そしてそのままキルヒアイスが席をたった脑豹。
「…ベルゲングリューン郑藏、こちらへ」
そういってキルヒアイスは今は自分の艦隊(duì)指揮の副司令を努める
ベルゲングリューンを執(zhí)務(wù)室へと招いたのだった。
「ついに瘩欺、キルヒアイス艦隊(duì)が動(dòng)く必盖、か…」
「どうだろう…すぐに終わらせるとはいっていたが」
果たしてそれは可能なのかどうか、そんな考えに會(huì)議室の中が包まれる俱饿。
そうしてベルゲングリューンを連れてその場(chǎng)を離れるキルヒアイスの姿をそのまま皆で見送ったのだった歌粥。
キルヒアイスから指示を受けたベルゲングリューンが執(zhí)務(wù)室を後にすると
丁度また晝にさしかかりラインハルトに食事をさせるために執(zhí)務(wù)室を後にした。
引き続き午後からはヒルダが執(zhí)務(wù)室に戻りキルヒアイスは仕事を続けた拍埠。
そして夜再びキルヒアイスはラインハルトの元へと戻ってきた失驶。
「只今、戻りました…ラインハルト様」
そういっていつものようにキルヒアイスはラインハルトの拘束具を外すと
汗を掻いたラインハルトの身を拭い始める枣购。
「思ったとおりだ…中々…似合っているではないか嬉探、キルヒ擦耀、アイス…」
そういってラインハルトは震えた手をキルヒアイスの耳元に伸ばした。
キルヒアイスの片耳には今朝ラインハルトから渡された2連のピアスが付けられている甲馋。
「…オマエの髪に埂奈、よく似合う…」
まるでルビーを染め上げたような髪とキルヒアイスを評(píng)するものもいる。
それはラインハルトも納得するところだった定躏。
ラインハルトの身體を拭い終えたキルヒアイスがそのまま再びラインハルトの拘束具を取り付ける账磺。
苦しそうに息を漏らしながらラインハルトはキルヒアイスの腕を求めて聲をあげた。
「……キルヒ痊远、アイスッ」
「分かっておりますよ垮抗、陛下…アレが欲しいのでしょう?」
そのままキルヒアイスがラインハルトの身を返すとうつ伏せにさせる碧聪。
「キルヒアイス…ッこれは冒版、イヤだって…」
「それも承知しております…貴方が私の姿が見えないのはお嫌だと言うことは」
だがそれでもキルヒアイスはうつ伏せにさせたラインハルトを元に戻そうとはしない。
拘束具を身に付けたラインハルトは上から覆いかぶさるキルヒアイスにその身を抑えられ
自分ではうつ伏せの身體を仰向けには戻せなかった逞姿。
「キルヒアイス…ッ4俏恕!」
「…ですが滞造、今はどうか我慢をなさって下さい续室。
私があなたに見られたくはないのです、今の私の姿を…」
”そして痛みに顔を歪める貴方のそのお姿も…見たくない”
本來ならばこの行為は二人の中ではその想いを込めた行為だった谒养。
だが挺狰、今は違う。
禁斷癥狀の苦しみから逃れさせるために無理やり始めた行為だった买窟。
いつもならラインハルトに與えてあげられるその歓びを
キルヒアイスは今ラインハルトに與えてやることが出來ない丰泊。
”私があなたに今してあげられる事があなたを苦しめる事だけだなん、て…そんな”
「い…ッや始绍、だッあ…ッM骸!」
キルヒアイスがラインハルトの腰を高く掲げあげるとそのまま自身を深く埋め込ませた亏推。
「ひぱ…あッい、あ径簿、ああ罢屈!」
ラインハルトが大きく目を見開いて首を振ってその痛みに顔を顰める。
なだらかな曲線を描いたラインハルトの背中がたちまちしなりを帯びた篇亭。
あまりの痛みにラインハルトが片頬を寄せる枕が涙に濡れる缠捌。
そのまま有無をも言わせないまま、キルヒアイスがラインハルトの中にあった自身を動(dòng)かし始めた。
「…ん曼月、あ…う谊却、…んんッ」
動(dòng)きとともに上がるラインハルトの苦痛の聲をキルヒアイスは
口から漏れそうになる嗚咽を隠すように歯を噛み締めて堪えながら受け止める。
「これは…あなたが哑芹、望んだことなのです…よ炎辨、陛、下…ッ」
「…キル聪姿、ヒ…アイ…スッ」
その時(shí)碴萧、ラインハルトは先日キルヒアイスに出した命令が間違ったものであることを?qū)g感した。
身體を重ねながら自分のことを陛下と呼びその命令に従って自分を傷つけさせる行為をさせていることに末购、
キルヒアイスが何とも思わない訳はないのである破喻。
いつも身體を重ねる時(shí)、キルヒアイスがどれほど自分を大事に抱いてくれたか盟榴。
今それをラインハルトが身をもって思い知った瞬間だった曹质。
だが薬の禁斷癥狀に絶えられずラインハルトは
淺ましくもその行為をキルヒアイスに命令を持ってそれを強(qiáng)要してしまった。
「…もう擎场、いい羽德。分かった…分かった…か、ら…キルヒ迅办、アイ…スッ」
そうして泣き崩れるラインハルトの姿にキルヒアイスの動(dòng)きが止まる宅静。
「…陛、下礼饱?」
「情けない…ッオレは坏为、なんて脆く究驴、そして弱いのだ…
すま镊绪、ない…キルヒアイス…こんなオレを、オマエは嫌いになった事だろう…」
そういって悔しそうにラインハルトは顔を歪め枕にその顔を隠そうとする洒忧。
そんなラインハルトをキルヒアイスが抱き上げて上を向かせた蝴韭。
ラインハルトが身體を震えさせてキルヒアイスの視線から逃れるように視線を逸らせる。
「見る熙侍、な…ッキルヒアイス…頼む榄鉴、から…今のオレを、見ないでくれ…」
「いいえ蛉抓、ラインハルト様…私が心を奪われてもいいのはあなただけだと
以前あなたは私にそうおっしゃったではありませんか…これから先も…それは庆尘、変わることはありません」
その言葉にもラインハルトは慌てて顔をキルヒアイスから背けようとするが
キルヒアイスはラインハルトの顔を抑えて自分の方へと強(qiáng)引に向かせてしまう。
「…やっと巷送、名前を呼んでくれたな驶忌。キルヒアイス…」
「ラインハルト様…」
そのまま二人の唇が重なった。
何度も角度を繰り返しては一層口付けは深いものとなっていく笑跛。
「そうやって…これからもずっと付魔、オレを呼び続けてくれ…キルヒ聊品、アイス」
キルヒアイスが自分の名を呼ぶ…
ただそれだけがどれ程愛おしかったことかラインハルトは思い知る。
自分が本當(dāng)に欲しかったのはただそれだけであったのかも知れない几苍。
そうして目を伏せるとラインハルトの疲れた體は
自分を呼ぶキルヒアイスの聲を聞きながらそのまま眠りへとついた翻屈。
”…私の気持ち、ラインハルト様は分かってくださった…ラインハルト様妻坝。
私がお守りしたいのはあなたご自身…私の望みは貴方を傷つける何物からも貴方をお守りすること…
あなたを傷つけるものはたとえそれが私自身であってもならないのです…
私は今までそうして貴方と身體を重ねてきた…”
キルヒアイスはベッドに橫たわり眠りについたラインハルトの頬に愛おしそうに唇を寄せた伸眶。
そしてキルヒアイスはラインハルトの傍を離れると自分の部屋へと戻っていったのだった。
夜が明けキルヒアイスがラインハルトの部屋にいくと
そこには朝から早速砂時(shí)計(jì)と格闘しているラインハルトの姿があった刽宪。
「おはようございます赚抡、ラインハルト様」
「…んッおはよう、キル纠屋、ヒ…アイス」
昨日のことを思い出して照れくさいのかラインハルトは少し頬を赤らめながら
キルヒアイスの微笑みの挨拶を顔を合わさずに返した涂臣。
「なんだか…昨日は、いつもよりよく眠れたみたいなんだ」
「そうですか…それは何よりです售担。顔色も昨日より隨分よろしいようです」
ラインハルトの頬には昨日までとは違い以前の薔薇色の頬が戻ってきている赁遗。
どうやら本當(dāng)に昨日はあれから良く眠れたようだった。
キルヒアイスは愛おしそうにラインハルトのその頬にそっと口付ける族铆。
「砂時(shí)計(jì)…今日は岩四、どのくらいいけそうですか?」
「もう少し砂を足してくれ…今日は哥攘、身體の調(diào)子がいい」
ラインハルトのその言葉をキルヒアイスは頼もしく受け止めながら砂時(shí)計(jì)に砂を足した剖煌。
”流石だ…ラインハルト様。
貴方はご自分を弱いといって昨日は泣き崩れておいででしたがそれは違う…
あなたは本當(dāng)は誰よりもお強(qiáng)い…あなたのそれにはきっと誰も敵いはしないでしょう”
「…それではいってきます逝淹、ラインハルト様耕姊。またお晝に食事をお持ちしますね」
「ああ…オマエも、頑張ってこい」
ラインハルトの笑顔に見送られながらキルヒアイスは部屋を出た。
キルヒアイスが部屋を出るとラインハルトは再び砂時(shí)計(jì)に目を向ける。
”最早…この苦しみがオレ自身を凌駕することはない…
オレを支配出來るものがこの世にあるとするならば
それはこのオレ以外の何物であってもならないのだッ”
そう心の中で決意を新たにしてラインハルトはこの一日を送るのだった或杠。
4.pigeon blood ピジョン?ブラッド~鳩の血~-2
キルヒアイスが執(zhí)務(wù)室でヒルダと合流すると報(bào)告を聞く間もなく會(huì)議室へと向かった葱轩。
ミュラーからルビンスキーが地球に到著したとの連絡(luò)が入ったからである。
キルヒアイスが會(huì)議室に入ると皆もそれを待ち受けていたようだった。
「ミュラー提督、ご苦労さまです…そちらの首尾はどうなっていますか?」
『はい…地球への物資の提供は全面に停止して
すでに地球教の大司教猊下との通信を繋げてあります…いつでも莫鸭、どうぞ』
ミュラーの言葉にキルヒアイスはミュラー艦隊(duì)を中継して地球との交信を繋げた。
そこに待ち構(gòu)えていたように大司教の姿が映し出される横殴。
「初めまして…大司教猊下被因。私はこの度の作戦の指揮を執(zhí)らせて頂いております
ジークフリード?キルヒアイスと申します」
『…噂には聞いておる。新帝國(guó)の皇帝とやらも若いと聞くが、そなたもまた隨分と若いことだ…』
自分よりはるかに年の若いキルヒアイスを前に少し不遜な態(tài)度で大司教が言葉を返す氏身。
だが今までにもキルヒアイスの外見ではそれもよくあったことなので気にせずキルヒアイスは話を続けた巍棱。
「今回のご用件は、そちらに到著したルビンスキーの引渡しです蛋欣。
お引渡し戴けたならばすぐに物資の提供は再開させます…いかがなさいますか航徙、猊下?」
『…ふん陷虎、私に指図をするつもりか到踏?若僧が…申し出を私が斷ったならば…どうする気だ?
また…ヴェスターラントの二の舞でもするつもりか…I性场窝稿?』
大司教の強(qiáng)気な態(tài)度には今だ揺ぎがない。
その上ヴェスターラントの話までも持ち出す始末である凿掂。
そんな大司教の様子にもキルヒアイスは動(dòng)じることなく返答を返す伴榔。
「…それも、いいかも知れませんね…ミュラー提督庄萎。
そちらに核融合ミサイルは裝備してありますか踪少?」
そう言ってキルヒアイスは大司教と繋がれたモニター畫面から少し顔を出して
今度はミュラーと繋がっている別回線で話し始める。
慌てて皆がキルヒアイスのその言葉に仰天して止めに入った糠涛。
「おい…ッ正気かT荨?キルヒアイスH碳瘛集漾!」
『…また、出來もしないことを』
鼻で笑う大司教の言葉にキルヒアイスは表情も変えずに話し出す砸脊。
「そうでしょうか具篇?本當(dāng)に出來ないとお思いですか?…なら脓规、試してみましょう」
『な…ッ』
キルヒアイスはラインハルトの席の前ににおいてあった砂時(shí)計(jì)持ち出すと
それを大司教にもモニターから見えるところに置いて引っくり返した栽连。
砂時(shí)計(jì)の砂がゆっくりと下に向かって流れ始める险领。
「私が貴方に差し上げる時(shí)間は…この砂時(shí)計(jì)が落ちるまで侨舆、です【钅埃…さあ挨下、大司教猊下…ご決斷を」
キルヒアイスが話をする間もそのまま砂がどんどん下へと滑り落ちていく。
『…馬鹿脐湾、な臭笆。そんな事、出來る訳が…』
「もしかしてルビンスキーですか?…猊下にそのようなことを吹きこんだのは愁铺。
それはいささか私を買い被り過ぎというものです…
私はいわゆる戦爭(zhēng)慣れをしてしまった社會(huì)的病的者ですので…つまりそれはどういうことかというと鹰霍、
私は戦いで全てを殺しても平気でいられます。
お望みとあらば茵乱、これを機(jī)會(huì)にそれを今ここで証明して差し上げましょう…」
無表情で告げられるキルヒアイスの言葉に大司教はおろか會(huì)議室にいる面々もその場(chǎng)に凍りつく茂洒。
それは誰もがキルヒアイスの表情からはその言葉が本気かどうかという事に確信を持てないでいるからだ。
大司教が無表情なキルヒアイスにわなわなと震え出す瓶竭。
『この神への冒涜者め…ッ神の怒りに觸れるぞッ』
「…私には崇めるべき神も督勺、救いを求める神も必要ありません。
私が唯一膝をつくのはこれから先もラインハルト?フォン?ローエングラム皇帝陛下ただ一人…」
沈黙の中靜かに砂時(shí)計(jì)が流れ落ち斤贰、やがて大司教の返事がないまま砂時(shí)計(jì)の砂は途切れた智哀。
「殘念ですが…お時(shí)間、です荧恍。猊下」
そういってキルヒアイスが再び大司教とのモニターから少し顔を外してミュラーに連絡(luò)を取る瓷叫。
「出力を最小にして2発…核融合ミサイルを発射してください」
「キルヒアイス…ッやめろ!送巡!」
『…キルヒアイス元帥ッそれはT薇纭!』
まわりからの反対の聲をものともせずにキルヒアイスは続ける授艰。
「いいから辨嗽、そのまま発射してくださいッこれは命令です!
…ただし淮腾、目標(biāo)は地球ではありません…月糟需、表面です。
これは彼らへの私からの警告です谷朝。地球からもよく見えるように
大きなクレーターを空けるつもりで発射してください」
その言葉にミュラーは敬禮をもって返事を返すとそのまま核融合ミサイルを月に向かって発射させた洲押。
爆発の衝撃によってその磁場(chǎng)が亂れ通信は一時(shí)的に途切れた狀態(tài)になる。
『通信…一時(shí)圆凰、途絶…ッ』
亂れた映像が途切れ途切れに飛んで音とともに少しずつ戻ってくる杈帐。
「…通信が正常に戻るまで、どのくらいかかりますか专钉?」
『…約挑童、5…、分…』
亂れとぶ通信を皆が靜かに會(huì)議室で見守った跃须。
そして5分後站叼。
それはミュラー艦隊(duì)からの中継で送られてきた地球からの映像に皆が恐怖に息を飲んだ瞬間だった。
血の色のような赤い月に大きな黒い穴が二つ空いている菇民。
それはまるでラインハルトに贈(zèng)られたという
今キルヒアイスが耳元につけているピアスそのものだったからだ尽楔。
おそらく地球にいる人間の衝撃はこの會(huì)議室にいる人間の比ではない投储。
皆が目を盜むようにしてキルヒアイスに目をやったが
相変わらず変わらないキルヒアイスのその表情からは何も読みとることが出來ない。
『通信阔馋、完全に回復(fù)しました玛荞。大司教への通信、繋ぎます…』
再び通信が大司教と繋がると最初に見た時(shí)とは別人の驚愕に打ち震えた大司教の姿がそこにあった呕寝。
「…2度は申しませんよ冲泥、猊下…今の帝國(guó)では宗教の弾圧といった思想の弾圧はしておりません。
ルビンスキーさえお引渡し下されれば壁涎、このまま物資を提供させた後
艦隊(duì)は撤退させて地球への運(yùn)行も平常通りに戻します」
『なんということを…ッこのままではすまさんぞ7不小!』
大司教はわなわなとその身を震わせながら引き絞るような聲でキルヒアイスを睨みつけて言葉を返す怔球。
「それは嚼酝、こちらのセリフです…今度、再び皇帝陛下の御身に手出しがあらばその時(shí)は
あなた方の崇めるその神ごと全てを打ち滅ぼしてご覧にいれましょう…」
キルヒアイスの言葉に大司教は返す言葉を失くした竟坛。
最早立つ力もないのかがくりと肩を落としてそのまま椅子に腰を下ろすと闽巩、
その両手を顔にあてて小さな聲でなんとか大司教が言葉を口にする。
『…迎えを担汤、よこしてくれ涎跨、ルビンスキーを…引き渡す…』
「懸命な判斷です…あなたは見事地球の危機(jī)を救われたのです。猊下…貴方に神のご加護(hù)を」
そういってキルヒアイスは大司教との通信を終わらせたのだった崭歧。
100年にも渡った地球教の野望は今まさにこれをもって打ち砕かれたのである隅很。
彼らは地球から毎日月を見ながらこの日味わった恐怖を思い知ることとなるだろう。
大きな黒い穴を2つ空けた赤い月が今もなお彼らの天上を照らし続けていた率碾。
キルヒアイスはその後ベルゲングリューンへの回線を繋いだ叔营。
「ベルゲングリューン…交渉は無事に終わりました。
貴方はミュラー艦隊(duì)と合流してルビンスキーの身柄を押さえてください所宰。
ミュラー艦隊(duì)には地球への運(yùn)行が正常に戻るまでの間绒尊、物資の提供を続けて頂きます」
『は…ッ』
キルヒアイスは萬一を考えて地上への突入部隊(duì)をベルゲングリューンに別働隊(duì)として指揮させていた。
勿論それはルビンスキーを捕獲するためのものである仔粥。
周到なキルヒアイスのその手並みに皆はひたすら舌を巻くしかない婴谱。
「ベルゲングリューンを向かわせていたのか…キルヒアイス」
「まあ…必要になる事態(tài)が避けられたのは何よりでした。
…実は躯泰、正直なところ大司教猊下も薬で頭がぼけてまともな話は出來ないのでは谭羔、
などと思っていましたもので」
あっさりとそんなことを言ってのけるキルヒアイスに皆はただ唖然とするばかりだった。
「…それではルビンスキーを捕らえた時(shí)點(diǎn)で地球への運(yùn)行を再開させて下さい」
話しをしながらキルヒアイスが席から立ち上がる斟冕。
「キルヒアイス…口糕?」
「そろそろ、お晝の時(shí)間です…陛下に食事をお持ちしなければ磕蛇。
なんとかお晝に間に合ってくれて助かりました…」
そういってそのままキルヒアイスは皆を殘して急ぐようにその場(chǎng)を立ち去ってしまう景描。
取り殘された面々は最早言葉もでない。
「おい…もしかして秀撇、キルヒアイスが急いでいたのは…」
「…陛下のお晝の時(shí)間が近かったからなのか超棺?」
ようやく顔を見合わせて出た言葉も
會(huì)議室の中がさらに沈黙を広げる結(jié)果になってしまったのだった。
確かに今回も実際には予想に反して血はほとんど流れなかった呵燕。
ほとんど無血ではある棠绘。
亡くなった者といえば先日の襲撃事件でキルヒアイスに眉間を撃ち抜かれたテロリスト一人だけだ。
だが流されなかった血以上にキルヒアイスが後に殘したものは果てしなく大きなものだった再扭。
それは誰もが今回の件で思い知ったことだろう氧苍。
特に地球に今なお暮らし続ける人々は
月を貫くあの二つの穴を毎晩見上げる度にこの日を思い返すに違いなかった。
やがてルビンスキーの引渡しを無事に終えたベルゲングリューンが艦隊(duì)を引き上げさせ泛范、
ミュラー艦隊(duì)は引き続き物資の提供を続け地球への運(yùn)行が無事再開されるのを確認(rèn)して
フェザーンへと戻ったのだった让虐。
こうして事件はルビンスキー逮捕で収まりを見せまた穏やかな日常がその姿を見せ始める。
ラインハルトの回復(fù)振りもそれからは見事なもので
その後1ヶ月を待たずして禁斷癥狀から解放されたラインハルトは
皆の前に出ることが出來るようになったのである罢荡。
キルヒアイスを背後に伴わせて會(huì)議室に姿を見せたラインハルトのその姿に
皆は涙を浮かべずにはいられなかった赡突。
「陛、下…ッ」
「皆には長(zhǎng)らく苦労をかけたな…」
ラインハルトのその言葉にビッテンフェルトなどは感極まってその目から涙を流していた区赵。
「いいえ惭缰、いいえ…陛下ッ」
「皆、席につけ…このままでは話も始められないだろう笼才?」
ラインハルトの言葉に皆が自分の席へと戻っていく漱受。
そこでふと自分の席にラインハルトが目をやるとそこには見覚えのある砂時(shí)計(jì)があった。
その視線に気がついたビッテンフェルトが慌ててそれの説明する骡送。
「あの…っそれは自分がキルヒアイス元帥に頼んでそこにおいて頂いたのです」
「…そうか拜效、いや。これには隨分と世話になったな各谚、余も…」
笑いながらそういうとラインハルトはその砂時(shí)計(jì)をそのままそこに置いたまま席へとついた紧憾。
「…そうだ、キルヒアイス昌渤。今から余の部屋に戻ってとってきて欲しいものがあるんだが」
「部赴穗、屋…?今から膀息、ですか般眉?」
席に著いた途端ラインハルトが思いついたようにキルヒアイスに話しかける。
「ああ…今しか駄目だ潜支。引き出しにしまってある…だが甸赃、急がなくていいぞ?」
「は冗酿、あ…」
少し首をかしげたもののキルヒアイスは
ラインハルトから引き出しの鍵を受け取るとそのままその場(chǎng)を後にした埠对。
キルヒアイスの姿が消えたのを確認(rèn)してラインハルトは
早速今回の事件の詳細(xì)を記された書類に目を通し始める络断。
「…ラングを復(fù)職させたか」
「それは、その…」
ラインハルトの言葉にヒルダが弁明を入れようとするがラインハルトは手を翳してそれを制した项玛。
「仕方あるまい…キルヒアイスが動(dòng)こうにも
その間アイツは中毒患者の世話に明け暮れていたのだから貌笨、な」
「陛下…ッ」
ラインハルトの自嘲めいたその言葉にヒルダは慌てて言葉を返そうとするが
それも意に介さないままラインハルトは引き続き書類に目を通していく。
「…結(jié)局襟沮、亡くなったのは襲撃事件での一人だけという訳か锥惋。
まあ、これは…思ったよりはマシ开伏、というやつだな…」
「マシ…です膀跌、か?」
ようやく目を通し終えたラインハルトがその書類を機(jī)に置いた固灵。
「そうだ…アイツのことだ捅伤。キレて地球に核融合ミサイルでも撃ち込みかねんからな…」
ラインハルトのその言葉に皆がはっとするように靜まり返る。
実際地球へは撃ち込まれはしなかったがあの時(shí)警告として
キルヒアイスは月へと核融合ミサイルを2発撃ち込んでいる怎虫。
モニターに映し出された赤い月に刻まれた2つの大きなクレーターの姿は
その日味わった恐怖とともに皆の記憶に焼き付いて消えることはないだろう暑认。
「…キルヒアイス元帥は神をも恐れません、陛下」
「それでいい…アレのすることに神の許しなど必要ない大审。
今までも蘸际、そしてこれからもそうだ。アレの全てはこの余がその全てを許す…」
ラインハルトは皆にそう宣言するとその言葉に皆が息を飲んだ徒扶。
だがそのままラインハルトは更に言葉を続けた粮彤。
「分からぬか…?余はこの世で最も敵に回したくない者だからこそ
自分の唯一腹心の親友として傍に置くことを望んだのだ姜骡、
今回の件で…それは皆にも分かったのではないのか导坟?」
返す言葉がないとはまさにこの事である。
これまでもキルヒアイスのその実力は皆の知るところにあったが
今回の件で圈澈、最早誰もがラインハルトの傍にいるキルヒアイスの存在を認(rèn)めない訳にはいかないだろう惫周。
「おっしゃる通りです…敵に回せばこれほど恐ろしい男を私は他に知りません」
「味方であったことに感謝したいものですな…」
皆も相槌をうってラインハルトへ言葉を返した。
「…昔からそうだが康栈、アレはこと姉上と余のことに関しては加減というものを知らぬのだ递递。
かつてアレを本気で怒らせて生き殘ったものなど…ああ、一人いたな啥么。そういえば」
「陛下…登舞?」
ラインハルトが聞き返すミッターマイヤーと隣のロイエンタールを見ながら話しを進(jìn)める。
「卿ら悬荣、覚えてないか…菠秒?ガイエスブルグ要塞で舊貴族…いや骗绕、賊軍との戦いの時(shí)のことだ拯勉。
オフレッサーという化け物がいただろう茅逮?」
オフレッサー上級(jí)大將膊存。
すでにこの世にはいないが舊帝國(guó)ではその怪物じみた容姿と殘忍な殺しぶりから恐れられていた男である。
その當(dāng)時(shí)酵熙、白兵戦において彼は無敵を誇っていた轧简。
だがその時(shí)キルヒアイスはガイエスブルグにはおらずラインハルトの代理として
辺境星域の平定を命じられその場(chǎng)にはいなかった驰坊。
オフレッサーを生かしたまま捕らえるという命令をラインハルトに命じられ
ミッターマイヤーとロイエンタールは白兵戦を展開するも匾二、
それは悉くオフレッサーの返り討ちにあって艦隊(duì)の多くの白兵戦部隊(duì)が壊滅に追い込まれた。
結(jié)局ミッターマイヤーとロイエンタールが二人がかりで自らを囮にして
罠を仕掛けてなんとかオフレッサーを捕らえたのだ拳芙。
まともに一対一でやりあおうなどとは考えすら及ばない相手である察藐。
「オフレッサーがキルヒアイスがいないのをいいことに
モニターで余に戯けたことを言いたい放題抜かしていただろう…?」
それはオフレッサーがモニター越しにラインハルトに贈(zèng)ったメッセージにあった舟扎。
『オマエを守る赤毛の男は今ここにはいないぞ…』
そう言っていたのである分飞。
ようやくそれを思い出した二人はラインハルトに話を聞き返した。
「…キルヒアイスとオフレッサーは睹限、以前になにかあったのですか譬猫?」
「あったもなにも…あの猛獣に引き裂かれただの、
いろんな噂が飛び交っていたあの顔の傷跡…アレは羡疗、キルヒアイスがやったものだ」
その言葉に皆が目を見開いてラインハルトに話の先を促すように眺める染服。
「確か、幼年學(xué)校の頃だったな…どうも叨恨、あの馬鹿柳刮。
キルヒアイスの前で酷く姉上を侮辱する言葉を口にしたらしくてな。
生きたままキルヒアイスにその目を抉られたのよ…ザマはない痒钝。
オフレッサーからすればあの時(shí)のキルヒアイスは確かに猛獣であったかも知れんが…余が止めねば
両方の目はキルヒアイスによって抉り取られていたことだろうよ」
おかげでキルヒアイスの前ではすっかりおとなしくなって自分の前では文句をいうことがなくなった秉颗。
などと、オチまでつけて笑ってラインハルトは皆に聞かせてやった送矩。
「…まあ蚕甥、結(jié)局は死んだがな…アレも」
オフレッサーの恐ろしさはここにいる誰もがその記憶に新しい。
ミッターマイヤーやロイエンタールは実際にそれを身を持って経験している栋荸。
聞いただけでも背筋が冷たくなるような話だった菇怀。
「…なにを、話し込んでいらっしゃるのですか蒸其?」
そこにいる全員が一瞬その聲に身をびくりと震わせた敏释。
噂の主であるキルヒアイスが會(huì)議室に戻ってきたからである。
皆の様子に首を傾げながらキルヒアイスは自分の席へと著いた摸袁。
「いや钥顽、なに…オマエを怒らせると怖い、なんて話をしてたのさ」
「怖靠汁、いですか…蜂大?」
キルヒアイスはラインハルトの言葉に考え込むように手を顎において顔を俯かせる闽铐。
「怖いぞ…相當(dāng)。オマエ奶浦、自覚ないんだ…兄墅?」
「なにがです…?」
そのまま視線を逸らさずキルヒアイスはラインハルトにその目を合わせて真面目にそう答えると
呆れた顔をしてラインハルトは今度は話題を変えてキルヒアイスに話しかける澳叉。
「まあ…いいか隙咸。ところで…探しものは、見つかったのか成洗?」
「はい…」
それまでにない笑顔でキルヒアイスはラインハルトの言葉に返事を返したのだった五督。
キルヒアイスのその返事にラインハルトもまたこれ以上にない笑顔で頷いてそれに答える。
「そうか…それは瓶殃、なによりだ」
そういってラインハルトは再び會(huì)議を再開させた充包。
「…皇帝誘拐を企てた実行犯を流刑に?極刑ではなく遥椿、か…基矮?」
報(bào)告書に目をやりながらラインハルトが意外そうにキルヒアイスの方に目をやった。
「はい…極刑をご希望でしたら…そのように冠场、すぐに手配致しますが」
遠(yuǎn)慮がちにそう答えるキルヒアイスにラインハルトは笑って返事を返す家浇。
「はは…いや…いい。やはりそれがオマエらしいよ慈鸠、キルヒアイス…皆も蓝谨、そう思うだろう?」
「はい」
ラインハルトのその言葉に頷きながら皆がキルヒアイスに顔を向けた青团。
それこそ皆の知るいつものキルヒアイスだからだ譬巫。
皇帝誘拐をした以上本來なら厳罰をもってあたるべきことではあったのだが
こと相手がヴェスターラントの被害者である上に地球教によって家族を人質(zhì)に取られ
麻薬の中毒患者にまでされていたのならばそれ以上のことは當(dāng)事者のラインハルトが認(rèn)める以上
皆にはなにも言い返すことなど出來ない。
”私には彼らを罰する資格などなかった…
彼らにもまた守るべきものがあり督笆、そのために命をかけたのだ…
再び事を起こそうとするなら容赦をする気はないが芦昔、
ラインハルト様がご無事であったのならばそれ以上のことはすまい…”
そう考えてのキルヒアイスの決斷だった。
辺境星域での強(qiáng)制労働とは刑を執(zhí)行するためにその名をつけただけの名ばかりのものだった娃肿。
皇帝誘拐に失敗した彼らは拷問から解放された後手厚く看護(hù)を受けてその身を回復(fù)させると
家族との再會(huì)を果たして新しい土地と家を手に入れていた咕缎。
そこに同行したケスラーに彼らはキルヒアイスからの伝言を聞かされることになる。
『失われたヴェスターラントの血はこの身の生涯全てをもってしても決して購いきれるものではありません…
ですが料扰、これからのあなた方の幸福な生活を守るためにこれからも私達(dá)は戦いを続けます凭豪。
住むべき土地を無殘にも奪われたあなた方にはその幸福を主張する権利があり、我々にはそれを守る義務(wù)がある晒杈。
永遠(yuǎn)の平和をお約束することは葉わなくともローエングラム皇帝陛下のおわす限り嫂伞、
この誓い、必ず果たしてご覧にいれましょう…
今はただあなた方のこれからの幸福を私は祈らずにはいられません』
そう長(zhǎng)いものではなかったがキルヒアイスの肝心な想いは彼らに伝わったようだった。
彼らはその返事の代わりにとケスラーに一言の伝言を預(yù)けていた帖努。
『私達(dá)はこの遠(yuǎn)い空の下からあなた方の誓いと
その全てを見続けましょう…子々孫々に到るまで』撰豺、と。
その日の午後ラインハルトはヴェスターラントの慰霊祭に參列していた拼余。
ラインハルトは元々この式典に合わせてその體調(diào)を整えていたのである污桦。
ヴェスターラントの関係者の前で壇上に上がったラインハルトは演説の最後をこう締め括った。
「…全ては匙监、その時(shí)若輩で力いたらぬ余の力にあった凡橱。
ヴェスターラントの被害者、そしてその親族に到るまでこれからの幸福は
皇帝の名のもとに全力をもってこれを保証するものである」
ヴェスターラントの件はまだまだ解決には時(shí)間が必要な問題である舅柜。
だがそれはこれから善政を布いて贖うより他に道はない梭纹。
その流された血よりも遙かに多くの血を救うことだ躲惰。
ヴェスターラントの過ちをラインハルトはすでにその身に染みて思い知っている致份。
自分に迷いは許されないということ。
そしてその迷いは再びヴェスターラントの悲劇を招くということを…
あの時(shí)础拨、自分に少しの迷いさえなければ未然に防げたことなのだ氮块。
”だからこれからは決して迷いはしない…この身をもってオレはそれを証明し続けてみせる”
この先どれほどの苦難がこの身を襲おうとも
傍にはいつもと変わらないキルヒアイスの姿がある。
傍にいるキルヒアイスの姿を確認(rèn)しながらそう心を決めるラインハルトだった诡宗。
ラインハルトが壇上で話しをする中滔蝉、
キルヒアイスは會(huì)議室から部屋へと戻るように言われた時(shí)のことを思い返していた。
ラインハルトから貰った鍵で引き出しを開けると
そこには一冊(cè)の本があり塔沃、本を開くと挾みこむように手紙が入っていた蝠引。
それはキルヒアイスにあてたラインハルトからの手紙だった。
いつも傍にいるせいか正直ラインハルトから手紙を貰ったのはこれが初めてのことである蛀柴。
通信モニターを介して會(huì)話することはあっても
手紙でのやりとりなどはこれまでには皆無のことだった螃概。
封筒に自分の名前を確認(rèn)するとキルヒアイスはそっとその封を開けた。
『キルヒアイス…こうしてオマエに手紙を出すのはなんだかひどく恥ずかしくて照れくさいものだ鸽疾。
だが吊洼、こうでもしないととても今のオレには自分の口からは言えそうにない…
オレはオマエにどうしても言っておきたいことがあるんだ』
ラインハルトからの手紙はそんな始まりだった。
ラインハルトがキルヒアイスにどうしても言っておきたかったこと制肮。
それは…
『今のオレが欲しいもの冒窍、なんだか分かるか?
でもオマエならきっと言わなくても分かってくれるだろう豺鼻?』
”今の貴方が欲しいもの…それは综液、今の私と同じものでいいのでしょうか…”
『もちろんそれは薬なんかじゃない、オレはもうちゃんと思い出しているぞ儒飒?』
浮かぶ涙に文字が薄れてキルヒアイスはまともにその手紙をみることが出來ないでいた谬莹。
零れようとする涙を手の平に押さえ込みながら、
ラインハルトの手紙の文面がキルヒアイスの目の中に入ってくる。
『…オマエはいつも届良、オレと一緒に同じ思いを感じてくれるだろう笆凌?』
二人はあの日を境に身體を重ねることがなくなっていた。
だが二人とも自分からは決して言い出せない狀況にあった士葫。
キルヒアイスはラインハルトを傷つけてしまった自分を今でも許せないでいたし乞而、
ラインハルトもまた皇帝の名を使って命令してその行為を強(qiáng)いてしまったことに深く後悔を覚えていたからだ。
”ラインハルト様…”
『…なあ慢显、こうは思ってはくれないか爪模。オレ達(dá)は一緒にいなきゃ駄目だ…
オマエでないとオレは駄目だし、オマエもオレでないと駄目であって欲しい…だから荚藻、キルヒアイス』
”そうです…私はあなたがいないと駄目です…あなたでないと”
『だからオレはあの時(shí)の自分を忘れない…もう二度と同じ過ちを犯さないために屋灌。
だからオマエも無理に忘れることはない、だがオレはその全て許すよ…そう应狱、決めたんだ』
”ああ…ラインハルト様…私は今共郭、あなたに會(huì)いたい…
今この場(chǎng)に貴方がいるならば貴方を息が止まるほどに抱きしめて閉じ込めてしまうのに…ッ”
懐かしいのはその記憶に殘るラインハルトの體溫。
自分より幾分低いラインハルトの身體の熱が自分の與えた愛撫によって熱くなりその姿を変えていく疾呻。
そしてその腕を開いて自分の全てを受け入れてくれるラインハルトの姿がキルヒアイスの脳裏に浮かんだ除嘹。
『だから…オマエも全て許してやってはくれないか…?』
そこで手紙は終わっていたが岸蜗、ラインハルトのベッドに座り込んだまま
キルヒアイスはそこから身動(dòng)きをすることが出來ないでいた尉咕。
手紙を握りしめキルヒアイスは空いた手でその顔を押さえ込む。
震える身體を必死に押さえ込みながら何度もその手紙に書かれた言葉を反芻させていく璃岳。
”…やはり年缎、あなたには誰も敵わない…ラインハルト様”
そんなことを心の中で呟きながらキルヒアイスは手紙を自分の部屋に片付けると
気を落ち著かせてラインハルトの待つ會(huì)議室へと戻ったのだった。
「キルヒアイス…どうした铃慷?ぼっとして」
その言葉にキルヒアイスが一瞬で回想を打ち切ってラインハルトを見やる单芜。
「いえ、なんでも…」
「…なんだ枚冗、せっかくのオレの演説を聴いてなかったのか缓溅?」
キルヒアイスの様子にラインハルトがからかうように笑いかけた。
「ちゃんと聞いておりましたよ…ラインハルト様」
「本當(dāng)か…赁温?」
「本當(dāng)ですとも」
疑い深い目で眺めるラインハルトにキルヒアイスも笑ってそう答える坛怪。
獅子の泉を覆った暗闇は最早消え去り今のラインハルトの背には輝くばかりの太陽の姿がある。
そして黃金の髪がその光を受けてなお一層輝きをましてラインハルトを神々しい存在へと変え股囊、
その美しい輝きは常に全ての人々を圧倒する袜匿。
”いつも思うが、この方には本當(dāng)に太陽がよく似合う…”
光の中をゆくラインハルトを見つめながら稚疹、キルヒアイスはそんなことを考えていた居灯。
獅子の泉の暗闇が明ける日を皆とともに心待ちにしていた二人だったが今本當(dāng)に待っていたのは
暗闇の中苦しい想いを抱き続けた夜に終止符を打つための二人だけの今夜のことだった祭务。
悪魔を憐れむ歌/終章?5.獅子は微睡む-1
いつか貴方と二人誰もいない場(chǎng)所へ行くことが出來たなら
などとあなたとそんな話をしたことがありましたね
今の私たちにはそれはとても遠(yuǎn)く今ではまるで御伽噺のような話になりますが
あなたは変わらず私と同じその夢(mèng)を見続けてくれていたのだとこの日私は初めて知りました
あなたが本當(dāng)に望むなら葉えられないことなどなにもないことを私は知っている
そうして今宇宙に君臨するあなたの姿を今までずっとその傍らで私は見続けてきたのですから─
私はこれからもそんなあなたに導(dǎo)かれるままそれに付き従い続ける事でしょう
ヴェスターラントの慰霊祭を終えたラインハルトは
身體の全快祝いもかねてその日の夜はささやかな園遊會(huì)を催していた。
もともと華美をあまり好まないラインハルトであるため
それはアンネローゼとその親しい知人たち怪嫌、そして自分の部下やその家族といった
ほとんど內(nèi)輪の間で開かれたものだった义锥。
園遊會(huì)というよりはホームパーティのような雰囲気のものである。
忙しい中岩灭、皆が交代で園遊會(huì)に參加してラインハルトの全快を祝いにやってきていた拌倍。
そろそろ夜も更け始め食事を終えた提督達(dá)が
端のテーブルに集まり腰を落ち著けて食後酒を楽しみ始めている。
「いや~…いい酒だ」
そういったのはビッテンフェルトである噪径。
ラインハルトの回復(fù)を祝い柱恤、
早々に仕事を片付けてラインハルトに祝いの言葉を言いにやってきていた。
そのため早くから飲み始めており酔いも隨分と回っているようである找爱。
脇でミュラーがビッテンフェルトのその様子を心配そうに見守っていた梗顺。
ミッターマイヤーも妻子を連れ立ってこの園遊會(huì)に參加していたが、
女性達(dá)がかたまって談笑を始めたのを頃合いにこちらに合流したようである车摄。
ミッタマイヤーもまた隣にいるロイエンタールと話をかわしながら
久しぶりに美味しい酒を楽しんでいた寺谤。
そんな時(shí)にまたしてもミュラーが噂話を持ち出してきたのである。
「…実は练般、こんな話を先月伺ったのですが」
「なんだ矗漾、またかミュラー…今度は、一體どんな話だ薄料?」
普段、提督達(dá)はなかなか全員で集まる機(jī)會(huì)がない泵琳。
だからこの園遊會(huì)は情報(bào)交換にもうってつけの集まりでもあった摄职。
皆が興味津々にミュラーの話に耳を傾ける。
「キルヒアイス元帥が先月获列、ホテルでとある女性と密會(huì)をしていたと耳にしたのです…」
小聲で告げるミュラーの言葉を聞いた皆が顔を見合わせる谷市。
「…密會(huì)ッ?キルヒアイスが击孩?ほんとか迫悠、それは!巩梢?」
「ほほう…それが本當(dāng)ならばなかなかやるではないか创泄、キルヒアイスも」
その話に皆が胡散臭げに半信半疑の目でミュラーを見やるが
ミュラーもそこで引き下がらない。
「ですが括蝠、ホテルのロビーでその女性と口付けを交わすところをウチの部下が目撃しているのですよ」
ミュラーのその言葉にその話を聞いていた皆が靜まりかえった鞠抑。
確かにキルヒアイスは回りの女性が放ってはおかないほどの美丈夫ではある。
だが今までにキルヒアイスのそんな浮いた噂などまったく耳にしたことがない忌警。
「…なにか搁拙、カンチガイじゃないのか?」
「ううーん…」
皆が普段のキルヒアイスからはどうしてもその話を信じることがが出來ないでいた、その時(shí)である箕速。
「なにか酪碘、面白そうな話をしているではないか…」
その聲に全員が身體をびくりとさせて振り返ると、
そこにはこの皇帝の居城?『獅子の泉』の主である皇帝ラインハルトの姿があった盐茎。
「陛下…ッF排堋!」
全員がその姿に驚いて立ち上がろうとするのをラインハルトが手を挙げて制した庭呜。
そしてそのままラインハルトがテーブルの空席に腰を落ち著ける滑进。
「…で、今の話本當(dāng)なのか募谎?」
ミュラーにその話の続きを聞こうとラインハルトが迫った扶关。
「それは…その…えーと、ですね」
「なんなら数冬、本人に直接聞くか节槐?その方が、早い」
そういって言い淀むミュラーを脇目に
ラインハルトは近くの者を呼び寄せるとキルヒアイスを向かえにやった拐纱。
「陛下…ッそれは少々まずいのではッM臁策肝?」
「なんだ…どう蹲蒲、まずいのだ?」
ラインハルトの言葉に皆が言葉を返すのを躊躇った久窟。
あまりに真実味がない話の上普段のキルヒアイス本人からもそういった雰囲気を微塵と感じさせないために
そういう話を持ち出す事自體皆には憚られたのだ东抹。
「…別にアイツは聖人君主蚂子、とかではないぞ…何に気を使うことがある?」
「そ缭黔、それは…そうかも知れませんがっ」
ラインハルトは首を傾げながらそう答えると皆が返答に困ったように顔を下に向ける食茎。
やがてラインハルトに呼ばれたキルヒアイスがテーブルにやってきた。
ラインハルトは隣の空席に手を差し伸べてキルヒアイスを招くとそこへ座らせた馏谨。
皆からの異様な視線を一身に浴びたキルヒアイスが首を傾げながらラインハルトに訊ねる别渔。
「あの、何か…惧互?」
「いや哎媚、な。ミュラーの知り合いが先月オマエがホテルで女性と密會(huì)しているのを見かけたというのだ…
実際のところはどうなのだ壹哺、キルヒアイス抄伍?」
”それはあまりにストレート過ぎです、陛下…ッ管宵!”
ラインハルトのあまりな直球な物言いに全員が同じ心の叫びを上げて固まってしまった截珍。
そしてそのまま様子を伺うように皆がキルヒアイスに視線を向ける攀甚。
「ホテルで女性と密會(huì)…私が、ですか岗喉?」
「ああ…やはりデマなのですね秋度、申し訳ありません。
キルヒアイス元帥钱床、ウチの部下がそのような戯言を口にしておりましたもので…」
首を傾げて考え込むキルヒアイスにミュラーが非禮を詫びたが荚斯、
キルヒアイスが何かを思い出したように言い返してきた。
「思い出しました…あれは查牌、密會(huì)ではないのですよ」
「…っておい事期、キルヒアイスッそれって事実ってことか!纸颜?」
身を乗り出してキルヒアイスに聞き返したのはミッターマイヤーだった兽泣。
事の成り行きを見守ろうとしていたラインハルトの方へ顔を向けるとキルヒアイスはその説明を始める。
「ええ胁孙、あれは先月唠倦。陛下に頼まれた件でその女性と待ち合わせをしていたのです…
陛下、覚えておりませんか涮较?」
「…待ち稠鼻、合わせ?」
ラインハルトは眉を顰めその心當(dāng)たりを思い出そうと記憶を辿る狂票。
「ええ…ヴェスパトーレ男爵夫人に頼まれ事をされたでしょう候齿?」
「ああ、あれかッI灰唷毛肋?」
キルヒアイスの言葉にラインハルトは瞬時(shí)に記憶を甦らせた。
「確か…オマエを貸してくれって頼まれたのだ屋剑。
どうしてもって言われて…で、なんだったのだ诗眨?その用事っていうのは」
「はあ唉匾、それがですね…私もその用件を知らされないままホテルに呼び出されたのですよ」
キルヒアイスは顎に手を當(dāng)てたまま首を傾げさせてその時(shí)の事を説明し始める。
キルヒアイスが呼び出しを受けたホテルのロビーで待っていると
ヴェスパトーレ男爵夫人がそこにやってきて突然強(qiáng)引にその唇を奪われたのだという匠楚。
「どうやら…聞いた話では巍膘、お見合いの話があったようです。
恩のある親戚の侯爵からの薦めでどうしても斷れなかったらしくて」
「…で芋簿、オマエがその間男を演じるハメになった訳だ」
流石にキルヒアイスが相手となれば見合い相手も引き下がらない訳にはいかない峡懈。
見合い相手の戀人が皇帝ラインハルトに次ぐ地位にある元帥ともなればその相手にもならないからだ。
「じゃ与斤、オマエの密會(huì)の相手ってのはヴェスパトーレ男爵夫人なのか」
「別に…密會(huì)ではありませんが肪康、そうなりますね」
そこで収まると思われた話だったが酔ったビッテンフェルトが更に話を突っ込んできた荚恶。
「…だが、ヴェスパトーレ男爵夫人とは以前から噂は囁かれておるが磷支、実際のとこはどうなのだ谒撼?」
「ビ…ビッテンフェルト提督ッ」
その言葉を止めようとミュラーが慌てて隣に座るビッテンフェルトを肘でこづく。
「実際もなにも…大體あの方には雾狈、他に…」
キルヒアイスがそう言いかけていた時(shí)だった廓潜。
噂の主であるヴェスパトーレ男爵夫人が
背後からキルヒアイスの頭を抱きこむように押さえ込んできたのである。
「…ジーク善榛、それ以上喋ったら…許さないわよ辩蛋?」
そういってそのままキルヒアイスの顔を自分の方へと向けさせた。
「あ移盆、そうでした…これは確か內(nèi)密とのことでした悼院。失禮しました、マグダレーナ嬢…」
「分かればいいのよ…ジーク味滞、もうすぐ帰るから家まで送ってくれるわよね樱蛤?」
有無をいわせないヴェスパトーレ男爵夫人の言葉である。
だがラインハルトの前でこれ以上余計(jì)なことを話して欲しくもなく
キルヒアイスは話を終わらせるためにヴェスパトーレ男爵夫人の申し出を承諾したのだった剑鞍。
「わかりました…」
キルヒアイスの素直な返事に納得を見せた男爵夫人は
そのまま手を振って皆の輪のなかへと再び戻っていった昨凡。
そんな二人のやりとりを不思議そうに見ていたラインハルトだったが
ふとなにかを思いついたようにキルヒアイスに言葉をかける。
「…オマエ蚁署、男爵夫人に頭が上がらないのは知っているが便脊、男爵夫人の事は名前で呼んでいるのだな」
「実は…名前で呼ばないと返事をなさって下さらないのです…それで、やむなく」
名前で呼ばないと返事をしない…
その言葉でラインハルトは頭の中にひらめきが浮かんだ光戈。
「それ哪痰、だ…キルヒアイス」
「な…なにが、です久妆?」
キルヒアイスの中で長(zhǎng)年親友として付き合っていたラインハルトのその態(tài)度に一瞬嫌な予感を走らせる晌杰。
「決めた…オレも今度、公式の場(chǎng)でもないのにオマエがオレを陛下と呼んだら返事をしないことにする…」
「それは困ります筷弦、陛下…ッ」
ラインハルトのその言葉にキルヒアイスは慌てて言い返すが
その先を言う前にキルヒアイスはラインハルトに今度は胸倉を捕まれて
さらに追い討ちのような言葉を続けられた肋演。
「いいか…ッ今度オレを陛下と呼んでみろッ…!オマエに対してのみ不敬罪を適用してやるからなッ」
正直烂琴、ラインハルトは禁斷癥狀の間キルヒアイスと身體を重ねる時(shí)爹殊、
陛下と呼ばれたのが思い出したくないほど嫌だった。
ラインハルトからしてみればキルヒアイスの口からは
もう2度と陛下という言葉は聞きたくないというのが本音だ奸绷。
だが皇帝の立場(chǎng)にある以上それが無理なことはラインハルトにも分かっている梗夸。
それでもなお返事を返さないキルヒアイスにまわりからの仲介が入った。
ロイエンタールである号醉。
「…オマエの負(fù)けだな反症、キルヒアイス辛块。まあ、別にいいではないか…
オレ達(dá)も公式の場(chǎng)以外ではオマエのことは敬稱無しでそのまま呼んでいるのだし」
「だな惰帽。まあ憨降、今更誰も文句など言わんさ…オマエと陛下が幼馴染なのは周知の事実だ」
ロイエンタールの言葉にミッターマイヤーがフォローに入るとそこにいる皆も相槌でそれに答える。
「…ですが该酗、そういう訳にはまいりませんッ」
「そうなのか…授药?なら、問題ないな呜魄。キルヒアイス」
キルヒアイスの否定をものともせずに思いもよらない助け舟が入ったラインハルトは
更に強(qiáng)気にキルヒアイスにニヤリと笑ってそう答えたのだった悔叽。
まだ、キルヒアイスは納得のいくところではなくラインハルトにも曖昧に頷くしかない爵嗅。
話のきりのいいところで落ち著いたのでラインハルトはその腰をあげた娇澎。
「…なら、オレは姉上を連れてそろそろ部屋へと引き上げるとしよう…
今日は睹晒、楽しい時(shí)間を過ごさせて貰った趟庄、皆に禮を言う」
ラインハルトは皆にそういうと笑って禮を述べた。
皆も後に続いて立ち上がり禮をもってそれに答える伪很。
ラインハルトが噂話の禮とばかりにミュラーに言葉をかけた戚啥。
「そうだ…ミュラー。こういうのは锉试、どうだ猫十?」
「え…?」
ミュラーがラインハルトのその言葉に顔を上げた時(shí)のことだった呆盖。
ラインハルトが隣にいるキルヒアイスの唇に軽く自分のそれに觸れさせたのだ拖云。
「陛、下…っSτ帧宙项!」
キルヒアイスが驚きの聲をあげてその口元を手で覆った。
その言葉に睨みを効かすようにラインハルトが下から見上げてキルヒアイスを見つめ返す株扛。
「今杉允、なんていった…?」
「ライン席里、ハルト様…なんて、ことを…」
慌てて名前で呼び直したキルヒアイスがわなわなと震えだす様子を
ラインハルトは悪戯に成功した子供のような笑い聲でそれを受け止めた拢驾。
これは男爵夫人にまんまとその唇を奪われてしまったキルヒアイスに対する
ラインハルトの嫌がらせもかねてのことだったのである奖磁。
「ははは…っこれで、また噂のタネが出來たじゃないか」
「笑い事ではありません…ッそれでなくとも私達(dá)繁疤、昔からよからぬ妙な噂が流されているのに…ッ咖为!」
ラインハルトは怒るキルヒアイスがまた可笑しくて笑い聲が止まらない秕狰。
「ラインハルト様、あなた酔っていらっしゃいますねT耆尽鸣哀?
一體、どのくらいお酒をお召しになったのです吞彤?」
「ふふ…これで2本目我衬。だが、オマエが早く男爵夫人を送ってこないとなると
部屋でまた1本空けることになる…だから饰恕、早くいってこい」
笑いながらラインハルトはそういって皆に手をあげるとアンネローゼの元へと立ち去っていってしまった挠羔。
その後、取り殘された提督達(dá)とキルヒアイスは異様な沈黙に覆われていた埋嵌。
「あの…提督方破加。陛下は、酔っておいでなのです雹嗦、よ范舀?」
だが額に手をやってそう弁明するキルヒアイスの聲は
途方にくれてしまった提督達(dá)の耳に入ることはなかったようである。
”ああ…ッ一體どうしてくれるのですか了罪、ラインハルト様锭环!”
ラインハルトが去った後、提督達(dá)のいるテーブルに殘されたキルヒアイスは
そのまましばらく気まずい空気の中に曬される羽目になってしまったのだ捶惜。
男爵夫人からのお呼びの聲がかかるその時(shí)まで田藐。
その後キルヒアイスは男爵夫人を屋敷まで無事送り屆けるとそのまま再び獅子の泉へと戻った。
そして大きな溜め息をつきながら自分の部屋へ入ったところで
キルヒアイスは自分のベッドの上にいるラインハルトの姿を見つける吱七。
悪魔を憐れむ歌/終章?5.獅子は微睡む-2
「…なにをなさっておいでです汽久?ラインハルト様」
「オマエのベッドで一人酒盛りをしているんだが…見て分からないのか?」
ラインハルトはけろりとした口調(diào)でそう言ってのけたが踊餐、
流石にキルヒアイスもそこで引き下がりはしなかった景醇。
「もう、駄目です…ラインハルト様吝岭、今夜はお酒の量が過ぎますよ」
「…ふむ三痰、今度はアル中にでもなるかな」
ラインハルトは今夜とてもいい酒を飲んだようだった。
気分がいいのかラインハルトからはこれまでにない安堵の表情が見て取れる窜管。
「冗談ではありません散劫、まったく…」
そういってキルヒアイスがラインハルトが手に持ったワインを取り上げると
そのまま部屋のワインセラーへと片付けた。
「キルヒアイス…」
ベッドの上で膝をたて両手を開いてラインハルトがキルヒアイスを招く幕帆。
その聲に導(dǎo)かれるままキルヒアイスはベッドに腰掛けるとラインハルトを抱きしめると
ラインハルトがキルヒアイスのその背に腕をまわした获搏。
「…もう、隨分とオマエの背中に觸れてない失乾。ずっと常熙、こうしたかった…」
「そうですね…貴方がつけた背中の爪跡纬乍、もうすっかり消えてしまいましたよ」
二人が身體を重ね始めてからラインハルトによってキルヒアイスに時(shí)折つけられた背中の傷跡は
ほとんど絶えることはなかった。
だが裸卫、今回の件でその傷跡はすっかりキルヒアイスの背中から消えていた仿贬。
ラインハルトがキルヒアイスの背中にその指と辿らせ
キルヒアイスがラインハルトの感觸を確かめるようにラインハルトを掻き抱く。
それはまるで互いの存在を溫もりで確認(rèn)しているような抱擁だった墓贿。
ラインハルトがキルヒアイスの頬を挾みこむとそのまま自分の唇をあわせた茧泪。
そのまま唇をわずかに離してラインハルトはキルヒアイスに小聲で囁く。
「また募壕、つけていいか…调炬?」
ラインハルトの言葉にキルヒアイスはラインハルトの手を自分の背中に回させて
唇を重ねることでその答えを返したのだった。
そのまま月明かりに照らされた二人の影が部屋の中で折り重なった舱馅。
二人は先を急ぐように互いの服を脫がしあいその肌を求めあう缰泡。
そしてかつて身體を重ねた時(shí)のようにキルヒアイスはラインハルトの肌を愛しんでいく。
手で代嗤、唇で棘钞。その溫もり全てで。
ああ…自分はこれが欲しかったのだと干毅、互いがそう感じていた宜猜。
言葉だけでは伝わらない溫もりと、觸れ合うことでしか感じられない労わり硝逢。
身體を重ねるときの一體感とその時(shí)一緒に重なるその心こそ今二人が求めていたものだ姨拥。
二人は幼年學(xué)校の頃から身體を重ねてきた。
傍にいるだけでは足りない何かを埋めるように今まで互いを求め続けてきたのである渠鸽。
今叫乌、身をもって二人はそれを感じていた。
それは身體だけでは埋まらないものであり徽缚、だが心だけでもそれは足りないものだった憨奸。
「…今まで、この溫もりなしで…どうやって凿试、夜を過ごしてきたのか分からない」
「私もです…ラインハルト様」
同じ夢(mèng)をみよう…そういったのはやはり幼年學(xué)校時(shí)代の時(shí)の話だ排宰。
それから二人は同じ夢(mèng)を共有しながら供に夜を過ごしてきた。
時(shí)にこんな風(fēng)に身體を重ねて那婉。
ラインハルトの左胸に唇を寄せるとキルヒアイスはその胸の飾りを唇で吸い上げると
ラインハルトはその背を逸らしてキルヒアイスの頭を抱え込んだままそれを受け止める板甘。
「ん…ッ」
両手で胸の尖りに愛撫をしながらキルヒアイスの舌がそのまわりを辿って下へと降りてゆき
やがてそれはラインハルトの下肢に及んだ。
ベッドに腰掛けていたキルヒアイスの愛撫を膝を立てて受けていたラインハルトだったが
すでに膝は下肢の熱により立っているのがやっとの狀態(tài)だった详炬。
「ふ…う虾啦、んんッ」
キルヒアイスに自身を含まれるとたちまち膝から力が抜けてしまったが
キルヒアイスの両手によって支えられた身體は
そのままベッドに腰を下ろしてしまうことが出來ない。
ラインハルトはキルヒアイスの髪を震えた手で摑みあげながら惜しみなく與えられる愛撫を堪える。
「あ傲醉、ああ…んッキルヒ、アイスッ」
ラインハルトの聲でその限界を悟ったキルヒアイスが
そのままラインハルトを口に含みながらその指先をラインハルトの奧へと忍ばせた呻率。
「んッあ…は」
両手の指に入り口を撫でられてそのままキルヒアイスの指を奧へと受け入れると
ラインハルトはそれに堪えきれずにキルヒアイスの口の中へ自身を解放させてしまう硬毕。
「や…ああっ!」
「ライン礼仗、ハルト様…」
指を奧に差し入れたまま下から仰ぎ見るようにキルヒアイスがラインハルトを呼んだ吐咳。
その言葉に答えるようにラインハルトはキルヒアイスの眉間に唇を寄せると
そのままラインハルトは身體を屈ませてキルヒアイス自身をその口に銜え込む。
「ん元践、う…ッ」
ラインハルトはキルヒアイス自身を口に銜えこんだままキルヒアイスの指先を奧へと受け入れていた韭脊。
時(shí)折キルヒアイスから漏れる熱く低い聲が心地よくラインハルトの耳に屆く。
「…ラインハ…ルト、様」
キルヒアイスの呼ぶ聲にラインハルトはその名を呼ばれる幸せに浸っていた。
「もう…しい昏苏、です驶兜。ライ、ンハル…ト様」
キルヒアイスの苦しそうな聲にラインハルトが顔を上げる忆某。
かすかに屆いた聲にラインハルトは笑みを浮かべ
その褒美を與えるようにキルヒアイス自身から口を離して
そのままキルヒアイスを奧へと受け入れる。
「…あッんん」
ラインハルトが苦しそうな聲を上げながらゆっくりと腰を下ろしてキルヒアイス自身を飲み込んでいく。
そしてその全てを飲み込んでラインハルトはキルヒアイスの大腿に腰を下ろした篓吁。
熱に浮かされたまま二人は視線を合わすと
そのまま引き合うように唇を深く重ね、舌が絡(luò)み合うと同時(shí)に腰が動(dòng)き始める蚪拦。
キルヒアイスを飲み込んだラインハルトの奧が熱くそれに絡(luò)みつき
腰の動(dòng)きにあわせて貪欲に貪り始めた杖剪。
ラインハルトの熱い內(nèi)部に締め付けられて眩暈を覚えながらキルヒアイスは
ラインハルトの身體を抱えたまま下から突き上げてそれに答える。
ラインハルトは嬌聲を上げ続けキルヒアイスの背に爪をたてて更にキルヒアイスを求めた驰贷。
「…んっ…もっと…あ盛嘿、あんっ」
一つになった二人はそのまま自分に足りない何かを補(bǔ)うように互いを求め続けたのだった。
「ずっと…ずっと饱苟、欲し孩擂、かった…」
「…もっ、と」
二人を捕らえる熱は中々その治まりを見せず箱熬、時(shí)間を忘れて身體を重ね続けた类垦。
「このまま…離れたくない、な」
キルヒアイスの上に重なるように身體をうつ伏せにしているラインハルトは
そんな言葉を口にしながら自分の奧に受け入れたキルヒアイスを決して解放しようとはしない城须。
その言葉に答えるようにキルヒアイスもまた
ラインハルトに何度も唇をあわせてそれに答えた蚤认。
觸れるような口付けから離す度にその角度をかえ徐々に深く舌を絡(luò)ませていく。
互いの熱は治まるどころかさらにその高まりを見せるばかりだった糕伐。
”ずっと砰琢、か…本當(dāng)にそれが葉うものなら”
キルヒアイスがそんなことを考えながらラインハルトの顔を自分の方へと向けさせると
自分の唇を辿るキルヒアイスの指先をラインハルトがその手にとって愛おしそうに口付けた。
「…そんな顔を、するな陪汽。キルヒアイス…オマエの言いたいこと训唱、
オレが分からないとでも思っているのか?」
後継者問題である挚冤。
皇帝となったからにはその世継ぎが必要になる况增。
近頃では見合いの話が嫌でもラインハルトの耳に入ってきていた。
ラインハルトの皇帝としての最終目標(biāo)は皇帝を必要としない自治を作り上げることにあった训挡。
だがそれはまだまだ一代では不可能なことであり澳骤、時(shí)間が必要なものだ。
「…オレに澜薄、女が抱けると思うか为肮?」
「世継ぎは必要です…私があなたを抱くように抱けばいい」
キルヒアイスの言葉にラインハルトが信じられないものを見るように見つめ返す。
「オマエ肤京、それ…本気で言っているのか颊艳?」
「勿論…それでも私はずっと貴方の傍にいて貴方を想い続けることしか出來ないでしょうけれど」
キルヒアイスはそういって自分の頬に當(dāng)てられているラインハルトの手を
両手で握り締めながら目を伏せて答える。
「では仮に…オレが皇妃を娶ったとしよう蟆沫。その子供籽暇、オマエは愛せるのか…?」
「愛せます…他ならぬ貴方の血を分けた御子です饭庞。
きっと…貴方に似て天使のように美しい御子であることでしょう」
”強(qiáng)い貴方の傍に在るために…私は今よりさらに強(qiáng)くならなくてはならない戒悠。その全てを許せる強(qiáng)さを…”
ラインハルトはキルヒアイスの全てを許すという。
だからキルヒアイスもラインハルトの全てを許せとラインハルトは言うのだ舟山。
この事件を経て二人は互いの存在に勝る
確かで大切なものなどこの世のどこにもないことを知った绸狐。
キルヒアイスの即答にラインハルトはキルヒアイスの新たな決意を再確認(rèn)した思いだった。
実際そのような事態(tài)になればやはりどちらも苦しむだろうが
キルヒアイスにとってラインハルトの存在そのものとその問題は比べられるものではないことなのだ累盗。
ラインハルトにとってキルヒアイスの存在がそうであるように寒矿。
キルヒアイスの言葉で改めてそのことをラインハルトは身に染み込ませた。
「…今すぐに若债、とはいかないが符相。いつか、オマエにオレの子供を抱かせてやってもいい」
「ラインハルト様…蠢琳?」
そういいながらラインハルトはキルヒアイスの頬を優(yōu)しく撫で上げる啊终。
「だが…オレはオマエ以外の人間を愛せそうにない…だから、
その子はオレの代わりにオマエが愛してやってくれ」
「………ッ傲须!」
この世の終わりを見屆けたような儚い笑顔でラインハルトはそう告げた蓝牲。
だがキルヒアイスにとってそれはこれ以上にない言葉だった。
キルヒアイスはラインハルトのその言葉に熱い抱擁をもってそれに答える泰讽。
”この想い例衍、今まで何度身體を重ねてもあなたに言葉で伝えることがどうしても私には出來なかった昔期。
だがあなたはそれをいともたやすく口に出來てしまうのですね…こんな時(shí)私はいつもあなたには
永遠(yuǎn)に敵わないのだということを思い知らされる…”
その後、二人はベッドにその身を橫たえさせながらいろんな話をした佛玄。
出會(huì)ったときのことから今までのことまで
それはまるで御伽噺を話すように二人は夜を明かす程語り続けた硼一。
そして二人が最後に話した事。
「…それって翎嫡、いわゆる駆け落ちです欠动、か…?」
「そう…いつか惑申、全てを終わらせることが出來たら二人で誰もいない遠(yuǎn)い所にいこう」
それは幼年學(xué)校にいた頃二人で語りあった夢(mèng)の話だった。
「宇宙を手にいれるのに10年余り…あと10年でそれを成し得ないなんてオマエは言わないよな翅雏?
これから先もオレ達(dá)に葉わないことなんて圈驼、ない」
「ライン、ハルト様…っ」
ラインハルトはそうしてキルヒアイスの頭を撫でながら
最後に話をこう締めくくったのだった望几。
「…それまではオレが皇帝を続けてオマエを食わせてやる绩脆。
だがそれから先オレは働かないからな…オマエに養(yǎng)って貰うことにする。
だからその時(shí)がきたら今度は橄抹、オマエの夢(mèng)を二人で葉えにいこう靴迫?」、と楼誓。
二人はこの時(shí)からまた新しい夢(mèng)を見始める玉锌。
その夢(mèng)もまた今の二人には先の見えない遠(yuǎn)い未來のことだ。
だがその手で夢(mèng)を?qū)g現(xiàn)させて宇宙を手にいれたように
今度の夢(mèng)もまたきっと二人は葉えることが出來るだろう疟羹。
暗闇の開けた獅子の泉に靜かにその年の初雪が舞い降り
その雪を眺めながら二人はやがてくる新たな年を迎えようとしていた主守。