「悪魔を憐れむ歌」

1.暗闇より夜魔來たる-1
あなたはきっとこんな私をお許しにはならないでしょう…
ですが、私はあなたを守る以外の何かを他に知らない

たとえあなたがこれからどれだけ苦しんだとしても
私は決してあなたを解放したりはしない

この日もまた俄讹、帝都フェザーンでは
皇帝ラインハルト?フォン?ローエングラムの居城「獅子の泉」の會(huì)議室において定例の會(huì)議が行われていた沸伏。

「…では享钞、フロイライン?マリーンドルフ船万。その件はそのように」
會(huì)議を取り仕切ったのは街立、銀河帝國3長(zhǎng)官及び帝國宰相を兼務(wù)し滨溉、
皇帝の最大の腹心とも呼ばれるジークフリード?キルヒアイス主席元帥その人であった什湘。

彼はローエングラム王朝確立以來そのほとんどの政務(wù)を
ラインハルトに代わり唯一取り仕切ることを許されている人物である长赞。

この日ラインハルトは朝から発熱のために會(huì)議の欠席を余儀なくされ、
その會(huì)議の運(yùn)営をキルヒアイスに委ねていたのだった闽撤。

王朝確立以來まだまだ問題は山積みのため得哆、その執(zhí)務(wù)は激務(wù)を極め
ラインハルトが體調(diào)を崩したのも無理のないことだった。

キルヒアイスは無理に體を起こすラインハルトを強(qiáng)引に押さえ込んで今日の會(huì)議に出席していたのである哟旗。

”きっと怒っていらっしゃるのだろうな…ラインハルト様”
などと贩据、考えながらキルヒアイスは次々と上る議題の數(shù)々を迅速に片付けてゆく。

今日は予定よりもかなり早く會(huì)議に終わりが見えてきていた闸餐。
丁度キリのいい所で會(huì)議に小休止を入れると會(huì)議の參加者達(dá)に珈琲が運(yùn)ばれてくる饱亮。

「いやあ、キルヒアイスが議長(zhǎng)だと早くていいな」
「そんな…」
ミッターマイヤーがそんな労いの言葉をキルヒアイスにかける舍沙。

「…じゃ近上、なかった。失敬拂铡、キルヒアイス主席元帥」
「お褒めのお言葉有難うございます…あ壹无、今は公式の場(chǎng)ではありませんので呼び名はお?dú)荬摔胜丹椁骸?br> いつも気さくなミッターマイヤーの失言にもキルヒアイスは笑ってそう答えた。

「は感帅、それは助かる斗锭。どうも最近はお互い重い肩書のせいで肩が凝っていかんな…」
「ですね…確かに忙しくて息をつく間もありませんから。
元帥もここしばらく家の方にお戻りになっていないのではありませんか失球?」

苦笑いを浮かべたミッターマイヤーと顔を合わせながらキルヒアイスはそんな世間話を交わす岖是。

そんな様子にクスクスと上がるヒルダの笑い聲。

「あら她倘、ご謙遜なさることはありませんわ璧微。キルヒアイス元帥の働きはここにいる
メンバー全員を含め萬民がお認(rèn)めになっていることですもの」
ヒルダのその言葉に回りの元帥府の面々もそれに相槌をもって答える作箍。

ラインハルトと違うところはその卓越した事務(wù)能力だろうか硬梁。
ラインハルトのように感情を表にだすこともなくとにかくキルヒアイスのそれには無駄がない。

迅速かつ適切な処理能力には皆も舌を巻くところである胞得。

穏やかな口調(diào)で難なく問題を片付けていくその様子を誰もがたのもしく思っていた荧止。

「…ところ、で」
話題を変えるように今度はロイエンタールが話しをもちかける阶剑。

「陛下のご容態(tài)の方はどうなのだ跃巡?キルヒアイス」
「熱は…大したものではありません、ただ最近は特にご無理をなさることが多かったものですから」
キルヒアイスが遠(yuǎn)慮がちにそう告げるとロイエンタールはようやく話に納得する牧愁。

「…なるほど素邪。卿が休ませた訳か」
「そういうことです」
「それでしたら、キルヒアイス元帥猪半。早く陛下の下にお戻りにならないといけませんわね」
笑ってそう答えるヒルダにはラインハルトの怒る姿が目に浮かぶようであった兔朦。

「…です偷线、ね」
困ったような笑い顔でキルヒアイスはヒルダに言葉を返す。

「オマエも大変だな沽甥、キルヒアイス…」
「別に声邦、そんなことは…」
そんな同情のようなミッターマイヤーの聲にキルヒアイスはわずかな否定をもってそれに答える。

だがこればかりは他の誰もそれを変わってはやれない稽揭。
ラインハルトが親友と呼び自らの傍におくこと望んでいるのは他ならぬこのキルヒアイスだけなのだから贾铝。

「キルヒアイス元帥…」
會(huì)議に參加していた帝國の治安維持を擔(dān)當(dāng)する
憲兵総監(jiān)のウルリッヒ?ケスラーからさらに話題が続けられる禽拔。

「最近、ヴェスターラントの殘黨勢(shì)力に不穏な動(dòng)きがみられます」
「穏やかではありませんね…詳しくお聞かせいただけますか媳瞪?」
ケスラーからの連絡(luò)はまるで寢耳に水のような話であった。

「皇帝誘拐U毡Α材失?」
「…はい、かなり大掛かりなものと思われます硫豆。どうやら地球教が絡(luò)んでいる可能性も」

「地球教が…ッA蕖?」
會(huì)議室が地球教の言葉を聴いて一層ざわめきたった熊响。

地球教旨别。
それは銀河帝國ローエングラム王朝の設(shè)立以前から存在し
同盟、帝國汗茄、フェザーンにまたがりその勢(shì)力を水面下に広げる今だ謎の多い計(jì)り知れない第3勢(shì)力だった秸弛。

ローエングラム王朝設(shè)立によってその活動(dòng)に極端の制限を強(qiáng)いられた地球教は
王朝打倒にその力を注いでいるという。

宗教とは名ばかりのサイオキシン麻薬を始めとする麻薬密売といった分野でも
その悪名は高く洪碳、薬づけの信者達(dá)の結(jié)束は絶対服従の軍人よりもタチが悪かった递览。

「今度はヴェスターラントの殘黨勢(shì)力と手を結(jié)んだという訳ですか…」

”手段を選ばないということか…しかしヴェスターラントとは。
いつまでたってもあの男(オーベルシュタイン)には祟られる…ッ”

顔色には出さずキルヒアイスは一人心の中でそう愚癡る瞳腌。

「…警護(hù)についてはキスリング親衛(wèi)隊(duì)長(zhǎng)の方にすでに説明を済ませております」
「分かりました…ケスラー憲兵総監(jiān)绞铃、引き続き徹底的な調(diào)査をお願(yuàn)いします。この件を最優(yōu)先に」

「かしこまりました…あと嫂侍、陛下へのご報(bào)告はいかがなさいますか儿捧?」
「…それは私の方から致しましょう。オーベルシュタイン元帥」
ケスラーとの話をそこで終えて會(huì)議の書類をまとめ終えたオーベルシュタインをキルヒアイスが呼びとめた挑宠。

「…なにか菲盾?」
「お話しがあります…執(zhí)務(wù)室までご同行願(yuàn)えますか」
キルヒアイスが手を執(zhí)務(wù)室に向けてオーベルシュタインを招く。

「承知した…」
室內(nèi)に緊迫した空気が流れ再びざわめきが起こった各淀。

どちらにしろこの二人が內(nèi)輪で話すとなれば
穏やかな話などでは到底有り得ない事を皆が當(dāng)然のように承知しているからだ懒鉴。

「…あの、キルヒアイス元帥」
「今日の會(huì)議はこれまでとします…フロイライン碎浇、報(bào)告は後でお願(yuàn)いします」
ヒルダの呼びかけにキルヒアイスがきっぱりと皆にそう言い放った临谱。
そしてそのままオーベルシュタインを伴うとキルヒアイスはその場(chǎng)を後にした咆畏。

その後姿をその目で追いながらミッターマイヤーとロイエンタールは
「さあ…どうでるかな、キルヒアイスは」

「…ふむ吴裤、だがヴェスターラントの件は陛下と同じくキルヒアイスにも禁句のことだ旧找。
あの件にオーベルシュタインが絡(luò)んでいることはまず間違いあるまい。
あの時(shí)…キルヒアイスは陛下のお傍を離れ陛下の代理として辺境星域の制圧にあたっていたのだからな麦牺。
自分が陛下のお傍を離れることがなければあの悲劇は起こらなかった…
事実そうであっただろうし钮蛛、そう思っているのではないか?」

などと剖膳、言葉を漏らし執(zhí)務(wù)室に消える二人の姿を皆で見送った魏颓。

執(zhí)務(wù)室に入ると話を切り出したのは意外にもオーベルシュタインの方だった。

「私を呼ばれたからには吱晒、ヴェスターラントの件…ですかな」
「…そうです甸饱。あなたの労した愚かな策のおかげでローエングラム王朝は深い影を殘してしまいました」

キルヒアイスは腰に下げたブラスターをオーベルシュタインに向けると
オーベルシュタインはそれに驚いた様子もなくその言葉を返した。

「私を仑濒、どうするおつもりか…キルヒアイス元帥」
「…あなたは私を見誤っています叹话。陛下の前で銃口を向けたときもそうでした…
私はたとえ無抵抗なものでも、それがたとえ無垢な子供であっても
陛下のご命令ならばこの引き金を引くことが出來る墩瞳。
そして今ならば私の意志でこの引き金は簡(jiǎn)単に引くことが出來ます…ですが」

話を続けながらキルヒアイスは
オーベルシュタインに向けたブラスターの銃口を下ろす驼壶。

「ですが、あなたにはいずれヴェスターラント虐殺の張本人として活躍して頂かなくてはなりません…
今はまだ喉酌、殺す訳にはいきません」
「…今はまだ热凹、と申されたか」

「そうです、今はまだ…その時(shí)期ではありません…まだあなたにはやるべきことが殘っています泪电。
あなたには陛下のためにこれまでの忌まわしきもの全てを背負(fù)って逝って頂かねばなりません…」

オーベルシュタインもそれは自分の中で納得していた般妙。

自分はそのための存在であるということを。
劣悪遺伝子排除法を生み出したゴールデンバウム王朝打倒のため
オーベルシュタインがラインハルトに誓った絶対の忠誠と目的は
それをもって証明することにあった相速。

「…以前碟渺、あなたは私におっしゃいました。自分は敵ではない和蚪、と」

そしてキルヒアイスはブラスターを腰に収めた手で
オーベルシュタインを自分と向かい合う席へと招く止状。

「あなたにやっていただきたいことがあります…」
席に腰を下ろしたオーベルシュタインにキルヒアイスは烹棉、そう言って用件を話し始めた攒霹。

「なるほど…」
全ての話を聞き終えるとオーベルシュタインはそれを受け入れて承諾する。

「…しかし浆洗、キルヒアイス元帥催束。卿は私と心中なさるおつもりか?」
「あなたを陛下にお引き合わせしたのは私です…私にも責(zé)任はあります伏社。
陛下を守るために必要とあらば私はなんでもします」
そう言うとキルヒアイスは席を立ち抠刺、オーベルシュタインもそれに続いた塔淤。

「先程の地球教の件は、フェルナーをお使いになるが宜しかろう…」
「…それでは速妖、この件はそういうことでお願(yuàn)いします」

部屋を出る際高蜂、扉の前にいたオーベルシュタインがキルヒアイスに振り向き様に聲をかける。

「卿のおっしゃる通り私は卿を見誤っていた…
陛下の影になっていて今まで誰もが気づかなかったのでしょう…果たして
陛下も卿の本質(zhì)をどれほどご存知かは知らぬが罕容、これだけは言えますな备恤。
卿は確かに陛下にとって必要なお方だ」

キルヒアイスがオーベルシュタインのその言葉に目を向けたが
そのままオーベルシュタインは軽く一禮して扉を開けて退出してしまった。

オーベルシュタインが退室し锦秒、ただ一人キルヒアイスはその執(zhí)務(wù)室に取り殘される露泊。

結(jié)局キルヒアイスはオーベルシュタインを密かに自分の直屬に置くことにした。

いざ旅择、ヴェスターラントの件が明るみにでた際には惭笑、
陛下の傍の參謀は自分の直屬であるということにして
ラインハルトの身代わりとなって自分がその非難の的となるために。

だが生真、今はその件を明るみにする訳にはいかなかった沉噩。

帝國內(nèi)には問題が多すぎてまだまだ不安定な狀態(tài)にあるからだ。
だからキルヒアイスは今はまだ柱蟀、とオーベルシュタインに言ったのだ屁擅。

キルヒアイスにもオーベルシュタインにもまだ成さねばならない議題が山積している。
だから全てが片付くまでオーベルシュタインとキルヒアイスは共同戦線を張ったのだった产弹。

それは到底友と呼べるものではなくどちらかといえば共犯者といった意味合いの方が強(qiáng)いものである派歌。

だが二人のそれは立場(chǎng)や目的は違えども
ともにローエングラム王朝を…いや皇帝を守ろうとする殉教者ともいえた。

1.暗闇より夜魔來たる-2
キルヒアイスが靜かに胸元から銀色の懐中時(shí)計(jì)を取り出した痰哨。

それは以前クリスマスの贈(zèng)り物として
アンネローゼからラインハルトとキルヒアイスにと贈(zèng)られた金銀揃いの懐中時(shí)計(jì)だった胶果。

揃いの金は勿論今もラインハルトが持っている。

中を開くとそれはロケットになっていて
そこにはアンネローゼとラインハルト斤斧、そしてキルヒアイスの3人の懐かしい寫真が添えられていた早抠。

”…いかなる災(zāi)いからも必ずこの私がお守り致します、ラインハルト様”

キルヒアイスはその寫真を見ながら出會(huì)った頃の昔を懐かしむように
その懐中時(shí)計(jì)を胸元で握りしめ撬讽、瞼を閉じてロケットにそっと口付ける蕊连。

”ラインハルト様…”

しばらくそうしていたキルヒアイスだったがラインハルトが自分を待っているため
ずっとこうしていてもいる訳にもいかなかった。

殘った仕事を早々に片付けてキルヒアイスは一刻も早くラインハルトの下に戻らなければならないからだ游昼。

懐中時(shí)計(jì)を胸元にしまい込むとキルヒアイスはヒルダを呼んで
執(zhí)務(wù)機(jī)の上にあった書類に再び目を通し始めたのだった甘苍。

やがて仕事を終えたキルヒアイスはヒルダを退出させてそのままラインハルトの下へと向かった。
なにやらラインハルトの居住區(qū)のあたりが騒がしい烘豌。

そのままキルヒアイスがラインハルトの部屋の前までいくと载庭、
ラインハルトの側(cè)近であるエミールの姿がキルヒアイスの目に飛び込んできた。

「キルヒアイス元帥…ッ」
「…どうなさいましたか?」

「陛下がどこにもいらっしゃらないんです…ッG艟邸靖榕!」
あちこちで親衛(wèi)隊(duì)の聲があがっておりすでに親衛(wèi)隊(duì)の方でも捜索を開始しているようだった。

「キルヒアイス元帥顽铸、キスリング親衛(wèi)隊(duì)長(zhǎng)がお見えになりました…茁计!」
「進(jìn)展は?」

「只今谓松、全力でお探ししております…しかし簸淀、どうもこれは」
「え…?」

中からの侵入の形跡はまったく見られないとのことだった毒返。
どうやらラインハルト自ら外に出た可能性が高いというのである租幕。

”…まったく。あの人は拧簸、この大変な時(shí)期に…何故”

目を僅かに細(xì)め片手を顎に添えて考え込むキルヒアイスだったが
考えるその間もなく胸元の通信機(jī)の音が鳴った劲绪。

それはフェルナーからの連絡(luò)だった。
どうやらオーベルシュタインが早速フェルナーに命じすでに行動(dòng)を起こさせていたようである盆赤。

流石にオーベルシュタインは有能でその辺にも手抜かりがなく仕事も速い贾富。

「フェルナー準(zhǔn)將、陛下は今どちらに…牺六?」
『…キルヒアイス元帥颤枪、少しやっかいなことになりました。
陛下は何者かに呼び出しを受けていたようなのですが淑际、
そのまま地上車に乗せられて移動(dòng)させられてしまった模様です』

「……ッ畏纲!」
すでに敵は動(dòng)き出してしまっていた。
全てが後手に回ってしまったのである春缕。

一瞬目の前が真っ暗になりそうになりながらも
キルヒアイスは引き続きフェルナーからの連絡(luò)を聞き続ける盗胀。

『すでに部下が後を追っております…場(chǎng)所は…』
「…わかりました、すぐに向かいます锄贼。引き続き連絡(luò)をお願(yuàn)いします」
通信機(jī)を切るとすぐにキルヒアイスは行動(dòng)を起こした票灰。

「ケスラー憲兵総監(jiān)に至急連絡(luò)を…碗短!キスリング隊(duì)長(zhǎng)火俄、陛下をお迎えに上がります…頭數(shù)を揃えて下さい」
「は…ッ诉稍!」

上手くいけば先発させたケスラー達(dá)によって早々に鎮(zhèn)圧され
ラインハルトは無事に保護(hù)されているはずである寺晌。

キルヒアイスはキスリングに指示を出すとそのまま用意させた地上車に乗り込み
急いでフェルナーからの報(bào)告があった現(xiàn)場(chǎng)へと向かった。

現(xiàn)場(chǎng)に到著するとすでにケスラー達(dá)により救出作戦は展開されていた乔询。

「陛下はどちらに…唤反?」
「今だ発見には到っておりません租悄、只今総力を挙げて捜索中です」

會(huì)話を遮るように突然建物から連続の爆発音が辺りに鳴り響いた琼了。
たまらずキルヒアイスが腰に下げたブラスターをその手に持って建物に向かって走り出す逻锐。

「元帥夫晌、危険です…ッ」
ケスラーの制止も聞かずキルヒアイスはそのまま爆発が続く建物へ突入を開始した雕薪。
慌ててケスラーも近くにいた人間をかき集めてその後を追う昧诱。

「…ラインハルト様!どちらにおられますッ…ラインハルト様ッK盏档!」
キルヒアイスがラインハルトの姿を求めて必死の聲を上げる。

爆発が立て続けに起こる中燥爷、建物內(nèi)を探し回っていたキルヒアイスの視界の隅に
ようやくラインハルトの姿が捉えられた蜈亩。

「ラインハルト様…ッご無事で!前翎?」
そこには建物の奧に壁際で蹲るような格好のラインハルトの姿があった稚配。

衣服に多少の亂れはあったものの外傷はなく拘束はなにもされていない。
だがキルヒアイスの言葉にラインハルトからはなんの反応がない…いや港华、なさすぎた道川。

「…ライン、ハルト様立宜?」
キルヒアイスがラインハルトの顎を摑み上げ自分の方へと向かせてその瞳を覗き込むと
ラインハルトのその瞳は焦點(diǎn)も虛ろで冒萄、ぼんやりとしていた。

ラインハルトの體をキルヒアイスが抱えこむとラインハルトは小さな笑い聲をあげながら
キルヒアイスの頭に腕を絡(luò)めてくる橙数。
どうやら見張りもろくになく拘束もされていなかったのには訳がありそうだった尊流。

”…幻覚剤かなにか薬物を投與されたのかも知れない”

「キルヒアイス元帥…ッどうかお早くッ」
建物內(nèi)では今だ頻発に爆発音が鳴り響いている。
ケスラーのその言葉にキルヒアイスはラインハルトを脇で抱え込みながらそのまま出口へと急いだ灯帮。

そうして建物の倒壊が始まる頃にはキルヒアイス達(dá)は建物から脫出することが出來た崖技。

「陛下、ご無事で…钟哥!」
キルヒアイスは一目を避けるようにそのままラインハルトのその姿を背中のマントを外して覆い隠す响疚。

「…陛下のご様子が変なのです。なにか薬を飲まされたようで…
急いで醫(yī)師を呼んでください瞪醋。城には私がこのままお連れしますので…」

「なんと…ッ忿晕!」
キルヒアイスのその言葉にケスラーは驚きの聲を上げながらも早速醫(yī)師の手配をするべく連絡(luò)をとった。
その時(shí)近くにいたフェルナーの姿を見つけたキルヒアイスは労いの言葉をかける银受。

「…フェルナー準(zhǔn)將践盼、よくやってくれました」
「早速お役にたてて何よりです…建物內(nèi)の関係者はケスラー憲兵総監(jiān)が全て捕らえてあります。
こちらはケスラー憲兵総監(jiān)におまかせして宾巍、私の方はこれらと地球教との関係を調(diào)査しようと思うのですが」
フェルナーの言葉にキルヒアイスが怪訝に眉を顰めた咕幻。

「やはり、地球教と関わりが…顶霞?」
「建物の関係者のそのほとんどはヴェスターラントの殘黨勢(shì)力と思われますが…
その可能性は極めて高いと私は考えます」

確かに規(guī)模が大きすぎる肄程。

そしてラインハルトの行動(dòng)をこれほど早く知りえる情報(bào)力といい
その用意周到な手口にただならぬ裏の存在があるというところは
キルヒアイスにも否めないところだ锣吼。

「…わかりました、引き続き調(diào)査を続けてください」

「元帥蓝厌、地上車の用意が整いました」
キスリングの聲にキルヒアイスはラインハルトを連れてその場(chǎng)を後にする玄叠。

「では、ケスラー憲兵総監(jiān)…あとはよろしくお願(yuàn)いします」
キルヒアイスはその場(chǎng)をケスラーに任せラインハルトごと後部座席に乗ってそのまま地上車を発進(jìn)させた拓提。

ラインハルトを覆ったマントを外すとそこには無邪気に笑うラインハルトがいた读恃。

その身をキルヒアイスに憑れさせ何が可笑しいのか
クスクスと笑いながらキルヒアイスの服の襟元を觸っては戯れる。

その有様にキルヒアイスはラインハルトをこのようにした犯人達(dá)にかつてない憎悪を覚えていた代态。

”許さない…この購いは必ずさせる…その命すでにあると思うな寺惫。
近いうちおまえ達(dá)の身にかつてない恐怖が襲いかかる…
その時(shí)こそ、おまえ達(dá)は生きていることを後悔することになるだろう”

ラインハルトの身體を黙って自分に引き寄せて
キルヒアイスはただ靜かに怒りをその身に滾らせる蹦疑。

その言葉の通り犯人達(dá)は決して怒らせてはならない者を敵にしたことを
やがて身をもって知る事となる西雀。

キルヒアイスがラインハルトの居城?獅子の泉に辿りついた時(shí)には
すでにその情報(bào)をいち早く聞きつけた元帥府の面々やヒルダ達(dá)も駆けつけてきていた。

「おい歉摧、キルヒアイス…艇肴!陛下は…ッ!判莉?」
「陛下…ッ」

「陛下はご無事です…ですが豆挽、まず醫(yī)師の診斷を仰がねばなりません…どうか前を通してください」
挨拶もそこそこにキルヒアイスは脇に抱えたラインハルトを
マントに包み込んだまま醫(yī)師団の元へと連れてゆく。

ラインハルトはそのまま寢室へと運(yùn)ばれそこで醫(yī)師団達(dá)による診斷が行われた券盅。

部屋の外ではその診斷結(jié)果を聞くべく訪れた元帥府の提督達(dá)とヒルダが待機(jī)している帮哈。
その背を壁に憑れさせラインハルトの寢室の扉を見つめながらキルヒアイスもまたそこでその結(jié)果を待った。

やがて診斷を終えた醫(yī)師団たちがキルヒアイス達(dá)を?qū)嬍窑尉Aき間へと呼んだ锰镀。
だが診斷の結(jié)果はキルヒアイス達(dá)の予想を遙かに超えたものだった娘侍。

「急性麻薬中毒!泳炉?」
「そんな…ッ」
皆がその言葉に愕然として顔を真っ青にさせて騒然の中憾筏、キルヒアイスは醫(yī)師団に治療法を訊ねた。

「ドクター…治療法は花鹅?」

「方法は二つあります…一つはこのまま薬を抜けさせること氧腰、ただしこれはかなり大変なことです。
今は鎮(zhèn)靜剤で眠らせておりますが刨肃、禁斷癥狀が始まればそれも効き目がなくなります古拴。
薬が抜けるまでは幻覚癥狀を始めとする吐き気、嘔吐といった
あらゆる禁斷癥狀に全身は襲われ真友、その癥狀が治まるまでに発狂してしまう者も少なくはありません」

「…もう一つの方法は黄痪?」
その言葉に醫(yī)師が瓶を一つ差し出した。

「こちらです…さらに強(qiáng)い薬で一時(shí)的に正気を取り戻すことが出來ます盔然。
ですが桅打、これはあくまで薬の効用で一時(shí)的なものです是嗜。
治療といえたものではありません…さらなる中毒を引き起こすことになりますから」

「毒をもって毒を制すか…」
そんなロイエンタールの言葉にミッタマイヤーからの激昂が飛んだ。

「馬鹿をいうな…ッ陛下を中毒患者にするつもりか挺尾!」

薬を抜けさせるか鹅搪、一生薬漬けか…

”…ラインハルト様ッ”
キルヒアイスは醫(yī)師団からその背を返し壁に向かってそのまま拳を激しく壁に打ち付ける。
室內(nèi)に壁を叩きつける鈍い音が響き渡り潦嘶、皆が壁を叩きつけたキルヒアイスの背中を見つめた涩嚣。

そこからでは壁に向かうキルヒアイスの表情を伺い知る事は誰にも出來なかったが
震える身體からはそのどうしようもない胸の內(nèi)の様子が見てとれた崇众。

何か痛いものを見てしまったようにキルヒアイスのその姿に皆が顔を顰める掂僵。

キルヒアイスは壁に打ち付けた拳の痛みによってわなわなと震える身體を無理やり押さえ込むと
その感情を表情に露わにすることもなく再び醫(yī)師団の方へと向き直った。

「…手錠の鍵をください」
キルヒアイスは無表情のままそう言って
ラインハルトが薬が切れた時(shí)の用心のために醫(yī)師団によって施された手錠の鍵を醫(yī)師団に求めた顷歌。

醫(yī)師団はその言葉に応じてキルヒアイスにその鍵を差し出す锰蓬。

「…薬はどのくらいで抜けますか」
「量にもよりますが正気に戻るのに早くて3日から1週間弱、
禁斷癥狀が完全に出なくなるにはまたさらに時(shí)間を要します…」

その言葉にキルヒアイスは手錠の鍵をその手に強(qiáng)く握りしめる眯漩。

「わかりました…この件はどうか內(nèi)密にお願(yuàn)いします」
醫(yī)師団は禁斷癥狀や癥例の簡(jiǎn)単な説明を済ませるとその場(chǎng)を退出した芹扭。

「キルヒアイス…卿は」
「この件に関しては箝口令をしきます…陛下のお體から薬が完全に抜けられるまで、
陛下は療養(yǎng)中ということで陛下の執(zhí)務(wù)は私がしばらく代行します…
フロイライン赦抖、スケジュールの方を調(diào)整して下さい」

立ち盡くす面々にキルヒアイスがそう告げる舱卡。
その言葉でキルヒアイスが自らラインハルトの薬を抜けさせる役を
かってでたことにその場(chǎng)にいる全員が瞬時(shí)に気がついた。

「元帥队萤、なにもあなたがなさらずとも…ッ」
「いいえ…他の者に陛下のそのようなお姿をお見せする訳にはまいりません轮锥。これは私の仕事です…」
淡々と発せられるキルヒアイスの言葉に全員がその耳を傾ける。

「…これより陛下の居住區(qū)への出入りを一切禁じます要尔。
キスリング隊(duì)長(zhǎng)舍杜、この先何人たりとも陛下のお傍に人を近づけてはなりません。
ケスラー憲兵総監(jiān)には引き続き関係者の取調(diào)べの方をよろしくお願(yuàn)いします」

口答えは許されなかった赵辕。

キルヒアイスの命令はラインハルトがいない以上それは絶対のもので何者にもそれに逆らうことは出來ない既绩。

「用件は以上です…」
靜まりかえった室內(nèi)でキルヒアイスは最後にその話を締めくくると、
キルヒアイスその背を皆に向けて退出を命じた还惠。

寢室の扉が閉められてようやくキルヒアイスはラインハルトと二人きりとなる饲握。

まだ鎮(zhèn)靜剤が効いているのだろうか、ラインハルトは穏やかな吐息を漏らしてよく眠っている蚕键。
だがそれも薬が効いているうちのことでじきに恐ろしい禁斷癥狀が始まるだろう救欧。

キルヒアイスは以前クロイツナハ?ドライにおいて
サイオキシン麻薬の事件に巻き込まれ麻薬によって引き起こされた
中毒患者の恐ろしい有様を目の當(dāng)たりにしたことがあった。

だからこそ嚎幸、その薬の恐ろしさをよく知っている颜矿。

これからラインハルトに襲い掛かる禁斷癥狀は
その想像を絶するものであろうということも…

ラインハルトの綺麗な肌に傷がついてしまうと、
キルヒアイスはラインハルトを拘束する手錠を外し
近くにあったシーツを引きちぎり両手両足を縛りベッドの足に固定させた嫉晶。

そのままラインハルトの眠るベッドの端に腰をかけて座りこみ
キルヒアイスはそっとラインハルトの額に自分の唇をあてる骑疆。

そしてその身を抱きながらラインハルトの頬に摺り寄せるように頬を合わせた田篇。

”これからまたあなたと同じ夢(mèng)をみましょう…今度の夢(mèng)は長(zhǎng)くて苦しいものになりますが、
あなたが薬以上に私を欲しがるまでは決してあなたを離しはしない”

今まさにキルヒアイスとラインハルトの二人は
長(zhǎng)い戦いの夜を迎えようとしていた箍铭。

2.歪んだ真珠-1
闇夜を照らすあの月はまるで歪んだ真珠のよう

微妙に正円を描かないそれを
まるでその光で覆い隠すように自らを包み込む

その完璧な正円を求める姿に私はどこかあなたを見てしまいます

いくらその光にその身を隠しても

ずっとそれを見ている私にはその姿すらも全て愛おしい

「あ…うあ泊柬、ああッ!诈火?」
深夜遅くにようやくラインハルトはその意識(shí)を取り戻した兽赁。

目が醒めたラインハルトの手足はキルヒアイスによって
引きちぎられたシーツでベッドの端へと繋がれその身は捕らわれの狀態(tài)にある。

「…お目覚めになりましたか」
窓際に椅子を寄せて靜かに読書に耽りながらラインハルトの目覚めを待っていたキルヒアイスは
そのまま席をたってラインハルトのいるベッドへと近づいてゆく冷守。

「…いやッだ刀崖、怖…いッ」
ラインハルトの焦點(diǎn)の定まらないその瞳から浮かび上がる生理的な涙。

禁斷癥狀によってじっとしていられない身體は
身動(dòng)きを封じられた狀態(tài)であってもその身の自由を求めて暴れ出す拍摇。

「無駄ですよ…その様にされても」
「離亮钦、せ…ッ離せええーッ!充活!うあああ…ッ」
ラインハルトの寢室から絶叫が上がりその聲は居住區(qū)へと響き渡った蜂莉。

「…始まったな」
ラインハルトの悲痛の叫びをキルヒアイスより警備を命じられたキスリングだけが聞いていた窝剖。

”長(zhǎng)い夜になりそうだ…”
だが辛いのは悲鳴を聞いている自分ではない错洁。

禁斷癥狀で苦しむラインハルトは元よりその姿を目の當(dāng)たりにしながら世話をする
キルヒアイスの心中はさらに想像を絶するものであるだろう。

それは今も辺りに響き渡るラインハルトの悲鳴からもキスリングには伺い知れた诈胜。
自分に今出來ることはそのキルヒアイスから命じられた人払いの任を確実に遂行することにある幕随。

キスリングはそう自分に言い聞かせて帽子を深く被りなおした蚁滋。

「そのようにお聲をあげられますな…喉を痛めてしまいます」
そう言うとキルヒアイスは布でラインハルトの口元を封じ込んでしまう。

「ぐ…ッ合陵!うーッJ嗯狻!…んんッ」
「…どこまでもお付き合いしますから拥知、ラインハルト様」

ラインハルトの狂気に満ちた挑むような瞳を
キルヒアイスは物ともせずにラインハルトの身體を押さえ込む踏拜。

「あなたが本當(dāng)に欲しいものは薬などではないはずです…
あなたがそれを思い出すまでは、身體の自由を返してはあげられない」

”あなたの今の苦しみはあなたを守りきれなかった私の罪です低剔。
私にはあなたのその苦しみを全て受け止める義務(wù)がある速梗。
だから決して目を逸らさずに、今のあなたを見屆けましょう…”

禁斷癥狀を忘れさせるのは襟齿、それ以上の苦しみ姻锁。

「あなたをずっと傷つけたくないと願(yuàn)い、それを守り続けた私が
今唯一あなたに與えられるものが他にないとは…」

”だが禁斷癥狀に一人もだえ苦しむあなたを見るよりは…それもいた仕方のないことか”
キルヒアイスはラインハルトの顎を摑んで自分の方へと向かせた猜欺。

「あなたも位隶、こんな私を許さないでください…ラインハルト様」
「……ひッ、いいッ?蟆涧黄!」
ラインハルトの全身に痙攣が走る篮昧。
焦點(diǎn)のあやふやだったその瞳は大きく見開かれ、その背を大きく反り返させた笋妥。

あまりの痛みに全身は恐怖におののき懊昨、禁斷癥狀もこの時(shí)ばかりはなりを顰める。
驚愕に目を見開かせてびくびくと小刻みに痙攣を繰り返すラインハルトの身體を
キルヒアイスはその目を逸らさずに受け止めていた春宣。

「決して私からその目を逸らしてはなりません…
あなたは見屆けなければならない…あなたに大罪を犯す男の姿を」
「…うーッううー」
たちまちラインハルトを橫たえさせていたベッドが真紅に染まってゆく酵颁。

キルヒアイスが何の準(zhǔn)備も施さないままラインハルトの中に強(qiáng)引に自分を埋め込ませた為に
下肢から滴り落ちたラインハルトの鮮血によってシーツが汚されたのだ。

これまでも二人は身體を重ねる関係にあったが何の準(zhǔn)備もなく身體を繋げることは
ラインハルトの身體に負(fù)擔(dān)が大きかったためキルヒアイスはいつも気にかけていた月帝。

だが他に目立った外傷を殘さずにラインハルトに苦痛を與える術(shù)を
他に思いつかなかったキルヒアイスは今までの禁忌を破りその手段としてそれを用いたのである躏惋。

「ぐッう…ん、んーッ」
涙を溢れさせていたラインハルトの瞳からそれは堰をきったように一気に零れ出す嫁赏。

互いの快楽を一切封じ込んだ痛みだけの身體の交わり其掂。
その行為は啜り泣きをしながら痛みを受け止めるラインハルトが気を失ってしまうまで続けられた油挥。

夜が明けるとキルヒアイスはそのままろくに眠ることもないまま身支度を整えて部屋を出た潦蝇。
ヒルダからの業(yè)務(wù)連絡(luò)とケスラー達(dá)の捜査狀況を聞くためである。

部屋を出ると一日中警備を続けていたキスリングの姿がキルヒアイスの目に止まった深寥。
一晩で人が変わったようにやつれ果てたキルヒアイスにキスリングが敬禮してその視線に答える攘乒。

「…どうやらあなたも眠ってはおられないようだ」
「自分のことはどうかお?dú)荬摔胜丹椁骸?br> 元帥におかれましては今は陛下のことだけにご専念下さいますよう…」

キルヒアイスの言葉にキスリングはそう聲をかけたがキルヒアイスはその言葉を首を振って否定した。

「いいえ惋鹅、あなたはそれではいけません…キスリング隊(duì)長(zhǎng)则酝。
陛下のお傍にいる私がこのような狀態(tài)である以上、
あなたはきちんとした體調(diào)で陛下をお守り下さらなければなりません」
「…です闰集、が」

「眠れないのでしたら薬を使ってでも無理に身體を休めるのです…いいですね沽讹?」
続けられたキルヒアイスの言葉にキスリングは敬禮をもってそれに答える。

「陛下は今お休みになっておられます…私が戻られるまでどうか後をよろしくお願(yuàn)いします」
その姿を見屆けたキルヒアイスはそう言って
キスリングはそのまま執(zhí)務(wù)室に向かうキルヒアイスのその姿を見えなくなるまで見送った武鲁。

”…気丈なお方だ爽雄。このような狀況にあっても全てを冷靜に判斷されている”

そこにはすでにやつれた様子を表に出すことのないいつもと変わらぬキルヒアイスの姿があった。

キルヒアイスが執(zhí)務(wù)室に入るとやはり昨夜は眠れなかったのか赤い目をしたヒルダが待機(jī)していた沐鼠。

「キルヒアイス元帥…お手が…」
ヒルダのその言葉にキルヒアイスがふと自分の手に目をやると
手の甲にはラインハルトの爪によって傷つけられた赤くみみず腫れを起こした痛々しい傷跡があった挚瘟。

「…これは、失禮」
キルヒアイスは制服にしまい込んであった白い手袋をその手につける饲梭。

「それでは報(bào)告を聞きましょうか…フロイライン」
そして何事もなかったかのようにキルヒアイスはヒルダによってまとめられた書類に目を通し始め
そのまま報(bào)告を聞きながら仕事を片付けにかかった乘盖。

あらかた仕事を片付けてしまうとキルヒアイスは捜査狀況を聞くべくケスラーに連絡(luò)をとる。

ケスラーからの報(bào)告ではその場(chǎng)に居合わせた地球教関係者は口に含んだ毒で服毒自殺を図っており憔涉、
殘ったヴェスターラント関係者も地球教徒によってすでに麻薬に犯された狀態(tài)にあるらしく
その証言もほとんど得られない狀態(tài)だという订框。

結(jié)局、一晩経っても捜査にこれといった進(jìn)展は見られなかったという訳である兜叨。

「…今からそちらに向かいます」
それだけ告げるとキルヒアイスは通信をきってケスラーの元に向かうべく立ち上がった穿扳。

キルヒアイスに同行しようと後を追うヒルダにキルヒアイスは控えめに聲をかける藤违。

「貴女は來られないほうが…」
「いいえ…私は秘書官です。陛下をお助けする立場(chǎng)にある以上お供させてください」
今自分のするべきことは陛下の代わりとなって働くキルヒアイスのそれを手助けをすることにある纵揍。
そういって斷固として同行を求めるヒルダにキルヒアイスはやむなく許可を出す顿乒。

「わかりました…では、ご一緒に」
そのままヒルダを連れ立って執(zhí)務(wù)室を後にするとキルヒアイスはケスラーのもとへと急いだ泽谨。

キルヒアイスが到著するとそこにはケスラー自らが出迎えに出ていた璧榄。
そしてキルヒアイスに請(qǐng)われるままに一同は生き殘った事件の関係者の下へと向かう。

「……ッ吧雹!」
最初骨杂、その姿を目にした時(shí)ヒルダが恐怖に顔を引き攣らせた。
そこには麻薬の禁斷癥狀に襲われた見るも無殘な人間には程遠(yuǎn)い生き物の姿があったのだ雄卷。

これと同じ薬をラインハルトもまた與えられたのである搓蚪。
今のラインハルトもこれと似た狀態(tài)であることには違いなかった。

キルヒアイスはこの狀態(tài)のラインハルトの傍に一緒にいるのだ丁鹉。

ヒルダはそっとキルヒアイスを覗き見ると妒潭、
いつもと変わらないその様子にキルヒアイスの精神力の強(qiáng)さを思い知ったのだった。

「面目ない…キルヒアイス元帥」
「…いいえ揣钦、ケスラー憲兵総監(jiān)」
捜査の進(jìn)展が手詰まりになったことにケスラーが詫びを入れると
それに答えるキルヒアイスの言葉は予想外のものだった雳灾。

「內(nèi)國安全保障局のラング局長(zhǎng)を呼び出してください」
「な…ッ」
ケスラーとヒルダがキルヒアイスのその言葉に衝撃を走らせる。

ラングはローエングラム王朝以前は國家治安維持局の局長(zhǎng)として
帝國內(nèi)の不穏分子に対して極端な弾圧を強(qiáng)いて恐れられていた人物であった冯凹。

オーベルシュタインにその手腕を買われ谎亩、ローエングラム王朝確立後は
その名を內(nèi)國安全保障局と変えて局長(zhǎng)としてその任にあたっていたが
ロイエンタールを謀反人に仕立て上げようとした國家への內(nèi)亂罪により
その身は今やオーベルシュタインの下で更迭されている立場(chǎng)にある。

「なにを申されますか宇姚、キルヒアイス元帥…ッ一體あなたは何を考えておられるのですかP偻ァ?」
「なにって…別に浑劳。こういったことは専門家におまかせしましょう…
ケスラー憲兵総監(jiān)阱持、あなたは引き続きこの件を最優(yōu)先とした徹底捜査を」
キルヒアイスから告げられたその言葉にケスラーは逆らう言葉を失くす。

「…すぐに呀洲、手配いたします」
ようやくそれだけ口にするとケスラーはそのままその場(chǎng)を後にして
ラングをこちらに呼ぶための手続きにとりかかった紊选。

「キルヒアイス元帥…」
ヒルダはこの時(shí)常に陛下と共にあってその笑みを崩すことのなかったキルヒアイスが
その表情を顔色にすら出さずに怒りで身をみなぎらせていることを知る。

口の中に溜まる唾液をごくりと飲み込みながら
ヒルダはこの時(shí)自分の背に滴り落ちる冷たい汗を感じていた道逗。

ケスラーからの連絡(luò)を受けたオーベルシュタインにより早速ラングとの連絡(luò)が
つけられると早々にラングがケスラーに連れられてその場(chǎng)にやってきた兵罢。

一禮するラングにキルヒアイスが聲をかける。

「…ようこそ滓窍、ラング局長(zhǎng)」
控えの間でそのままヒルダとふたりキルヒアイスはラングの到著を待っていたが
ヒルダを殘しラングとケスラーと共に事件関係者の部屋へと向かうためその部屋を出て移動(dòng)を始めた卖词。

「キルヒアイス元帥、私も…!」
「いいえ…貴女は陛下にとっても此蜈、我々にとっても…大切なお方です即横。
これ以上あなたにお目苦しいものをお見せする訳にはまいりません」

「すぐに戻ります…貴女はどうかこちらでお待ちください」
後を追おうとしたヒルダをキルヒアイスがそういって口答えの余地も與えないまま
立ち止まらせキルヒアイスはその場(chǎng)を後にした。

「あなたに見ていただきたいものがあります…」
キルヒアイスは捕らえられた関係者をラングに引き合わせる裆赵。

「…なるほど东囚。私の仕事はこれらからその情報(bào)の全て引き出すことですな」
すでに事件の詳細(xì)は耳にしていたため自分が呼ばれるということで
大よその予想をラングはしていたようだった。

クックックッと战授、ラングが小刻みに身體を揺らしながらその喉元を笑わせる页藻。

「そういうことです…ラング局長(zhǎng)。あなたにこれより24時(shí)間の猶予を與えます植兰。
それまでに必要な情報(bào)を彼らから引き出してください」

その言葉にラングが驚いた目でキルヒアイスを見やる份帐。

「24時(shí)間とは…またふっかけますな、閣下」
「…この仕事楣导、あなたを見込んでお願(yuàn)いしています废境。
成功した暁にはあなたの処遇はこの私の名において保証させて頂きましょう」

ラングの望みは唯一つ。
それは更迭を解かれて內(nèi)國安全保障局の局長(zhǎng)として再びその立場(chǎng)に返り咲くことにあった筒繁。

皇帝?ラインハルトに次ぐ地位にあるキルヒアイスの言葉であるならば
この帝國內(nèi)で適わないことなど何もない噩凹。

2.歪んだ真珠-2
「…その言葉、二言はございますまいな膝晾、閣下」
「キルヒアイス元帥…それはッ」
ケスラーの非難の聲をキルヒアイスがその手を翳して遮った栓始。

「よいのです…ケスラー憲兵総監(jiān)。どうやら帝國にはまだこの方が必要のようです」

「やってみましょう…しかし血当、24時(shí)間とは時(shí)間がない上に
ここにはその道具もない。はて禀忆、どうしたものか…」

ラングが首を傾げて少し愚癡めいた言葉を漏らす臊旭。
麻薬中毒に侵された関係者からその証言を得るためには無論尋問だけでは無理な話であった。

「今箩退、彼らを移動(dòng)して口封じに消されてしまっては元も子もありません…
必要なものはケスラー憲兵総監(jiān)にいって用意させましょう」
「…果たして离熏、どこまでのご許可が下りますかな?」

ラングがその小さい身體を丸めこませ戴涝、下から眺めるように陰濕な目でにやりと笑ってキルヒアイスに訊ねる滋戳。
その言葉を顔色を変えないまま受け止めるとキルヒアイスはラングに言葉を返した。

「どうせ啥刻、彼らは皇帝誘拐の罪により極刑は免れません…いかようにも」
「…なかなか辛辣な事を言うお方だ奸鸯、閣下は」
ラングのその言葉に付け足すようにキルヒアイスが訂正を加える。

「ああ可帽、しかし…首から上は生かしておいてください娄涩。
この件が片付くまではせいぜい役にたって頂きましょう…」

「………ッ!」
まるで世間話をするように次々とキルヒアイスから告げられる言葉に
ケスラーはただ顔を青ざめるより他はなかった映跟。

”この方あってのローエングラム王朝か…”
ラングがここで見たジークフリード?キルヒアイスという人物は
オーベルシュタインから聞いていた以上の人物だった蓄拣。

オーベルシュタインと同じくしてこの目の前にいる人物もまた必要悪としての自分の存在を認(rèn)めている扬虚。

”…ならば、この身をもってそれを証明せねばなるまいて”
これはラングに與えられた最後の復(fù)帰の機(jī)會(huì)である球恤。
キルヒアイスの言葉にラングは一禮をもってその任を受けたのだった辜昵。

そしてこの場(chǎng)をラングに預(yù)け、キルヒアイスはケスラーを連れて退出してゆく咽斧。

「ケスラー憲兵総監(jiān)…あなたはフェルナー準(zhǔn)將と連絡(luò)をとって連攜をもってこの任にあたって下さい路鹰。
一刻も早くこの件を終わらせなければなりません」
「承知しました…しかし元帥。よろしいのですか、あのような危険な輩を…
おそらく他の提督達(dá)も黙ってはおりますまい」

ケスラーに言われるまでもなくミッターマイヤーを始めとする提督達(dá)が
それを聞きつけて自分の元へとやってくる事はキルヒアイスにも予想はついた。

「他の提督達(dá)には私からお話します…あなたはどうかこの件にのみに全力を盡くしてください」
キルヒアイスとケスラーはそんな會(huì)話を交わしながらヒルダの待つ控え室に到著すると
そこで待っていたヒルダにキルヒアイスが聲をかける馁害。

「お待たせしました葛账、フロイライン」
そう言ってキルヒアイスはヒルダを連れて獅子の泉に戻るべくその場(chǎng)を離れたのだった。

キルヒアイスがその日の仕事を片付けた頃には
早速その話を聞きつけたミッターマイヤー達(dá)が會(huì)議室に集まって來ていた申眼。

「一體どういうつもりなのだ、キルヒアイス元帥は…ッ!」
口火を切って大聲で一聲を投じたのはビッテンフェルトだ碑诉。
席から立ち上がってその身を奮い立たせながら怒りを露わにさせている。

「…抑えて下さい侥锦、ビッテンフェルト提督」
「抑えろだと…ッ=浴?」
傍にいたミュラーが立ち上がったビッテンフェルトを軽く嗜めるが
ビッテンフェルトはそれを振り払うようにさらに聲を荒げて言葉を続けた恭垦。

「これが抑えていられるか…ッ快毛!あのラングだぞ!番挺?
いつまた我々に事を起こすか知れたものではないわッ_氲邸!」

ロイエンタールの謀反の件はロイエンタールに限らずとも
その情報(bào)操作はおそらくその名を変えて行うことも出來ただろう玄柏。

もしかするとそれは自分であったかも知れないのだ襟衰。
ビッテンフェルトのその言葉にそこにいる提督達(dá)もまた沈黙をもってそれを肯定するしかなかった。

一同が沈黙する中粪摘、その沈黙を破ったのはその事件の當(dāng)事者であるロイエンタールだ瀑晒。

「しかし…よりにもよってあのラングを使うとは。キルヒアイスもまた隨分と思い切ったことをする」
以前ラングによって謀反人に仕立てられそうになったロイエンタールが苦笑混じりにそう口にすると徘意、
ケスラーからの連絡(luò)を受けたミッターマイヤーが言葉を続けた苔悦。

「ケスラーもお手上げだったようだ…まあ、無理もあるまい映砖。
地球教関係者はその場(chǎng)で服毒自殺间坐、殘されたのはヴェスターラントの麻薬中毒患者だけときては、な…」

「オーベルシュタイン、貴様のせいだ…ッ毎度ながらその冷徹な頭脳はろくな事には働かぬ竹宋!
なぜラングをキルヒアイス元帥に引き渡したりなどしたのだ…ッ」
ビッテンフェルトは黙って席について話を聞き続けるオーベルシュタインに痛烈な言葉を放った劳澄。

「…會(huì)議でもないのに呼び出しがあったのはその件ですか…ですがその件に関しては、
私は命令に従ったまでのこと蜈七。卿にどうこう言われる筋合いはございますまい」
「なにを…ッ秒拔!」
その身を乗り出すビッテンフェルトをミュラーが抱え込むように押さえ込む。

「いけません飒硅、提督…ッオーベルシュタイン元帥…ッあなたもです砂缩。
どうか、これ以上この方を刺激なさいますなッ」

騒然となる會(huì)議室の中三娩、仕事を終えたキルヒアイスがヒルダを伴わせてようやくその場(chǎng)に到著した庵芭。

「どうしました…?なにやら騒々しいようですが」
「その原因は當(dāng)然分かっておるのだろう…キルヒアイス主席元帥」
キルヒアイスは自分を見つめる一同を確認(rèn)するように視線を向けると
ロイエンタールの一言に席について言葉を返した雀监。

「…會(huì)議でもないのにここへ皆様がお集まりになられたのは双吆、ラング局長(zhǎng)の件ですか」
「左様…ッ卿はなにを考えておるのだ。正気の沙汰ではあるまいッ;崆啊好乐!」

そう言ってキルヒアイスに迫るビッテンフェルトは
これまでに何度かキルヒアイスに助けられたことがある。

戦場(chǎng)においてもそうであったし瓦宜、ラインハルトからの叱責(zé)を受けた時(shí)も
そしてオーベルシュタインをその感情のままに毆ってしまった時(shí)も蔚万、
いつも助けに現(xiàn)れたのはラインハルトではなく目の前にいるキルヒアイスだった。

口に出さずともビッテンフェルトはキルヒアイスに感謝をしていた临庇。
以前とは違い今ではビッテンフェルトもキルヒアイスを
ラインハルトの傍にふさわしい唯一の存在として認(rèn)めている反璃。

だからこそラングの件に関してもなんらかの意図がキルヒアイスにあることは
ビッテンフェルトには分かっていた。

だがそれでもあえて何故ラングなのかとビッテンフェルトには問わずにはいられなかったのである苔巨。

「…クックク、クククク…」
キルヒアイスがその手を機(jī)の上に組んだまま下を向いて小さく笑い聲を上げた侄泽。
その様子に怪訝な顔で皆が下を向いて笑い聲をあげるキルヒアイスの顔を伺おうとする。

「キルヒアイス…蜻韭?」
「…いえ悼尾、失禮。ですが肖方、正気の沙汰と申されましても
私は自分が正気のある分別をもった人間と思ったことなど
今までにただの一度もなかったものですから…つい」

キルヒアイスがそんな自嘲めいた言葉を口にした闺魏。

普段から陛下の傍で続けてきたキルヒアイスのこれまでのあらゆる働きは誰もが認(rèn)めるところにある。
また俯画、その仕事振りだけでなくその身に穏やかな空気を抱くキルヒアイスは
気性の荒いラインハルトと皆との緩衝剤ともいえる存在だった析桥。

ビッテンフェルトに限らずともここにいる誰もがキルヒアイスに
數(shù)え切れないほど助けられている。

「なにを言っているのだ…ッキルヒアイス」
ミッターマイヤーの動(dòng)揺の聲にキルヒアイスは皆にまるで昔話を聞かせるようにその言葉を続けた。

「そう…あれは泡仗、確か10歳の時(shí)でした埋虹。
陛下が宇宙への志をお立てになってその手を私に差し出されたのは…
その時(shí)ここにいる誰よりも早く私はこう言ったものです…マイン?カイザーと」

「………ッ!娩怎!」
「その時(shí)より私は自分が至極正気であったとは到底思えません…」

10歳の子供にその膝をつけ絶対の忠誠を誓ったキルヒアイスは
その信念をもって今はその新帝國における最重要の地位にある搔课。

皆が信じられないものを見るようにキルヒアイスを見つめていた。

そしてそのままキルヒアイスは機(jī)に載せた手を膝元に置き変えると
いつもの口調(diào)でここにいる全員に向かってはっきりと宣言した截亦。

「ラング局長(zhǎng)は私の直屬におきます…再び事が起こらぬよう爬泥、
組織自體もそれに伴った體制に改変させその発言権は私の名のもとにその一切を封じます…
私は、これを機(jī)に陛下に害をなす存在を一気に葬り去るつもりです」

會(huì)議室がその言葉に一瞬で凍りつく崩瓤。

この時(shí)袍啡、そこにいる全員が今まで陛下の盾となっていたキルヒアイスが
その盾を剣へと持ち替えたことを知った。

「あの方を害するものにかける容赦を私は知りません…」

表情もなく淡々と告げられる言葉の數(shù)々に全員が息を呑む却桶。

いつもと同じ口調(diào)で語られるその言葉は
感情が篭らないことがさらにうすら寒く感じる恐ろしいものだった境输。

それだけ告げるとそのままキルヒアイスが席を立ち上がる。

「…そろそろ陛下がお目覚めになる頃ですので肾扰、私はこれで失禮致します畴嘶。
ロイエンタール元帥、私についてきて貰えますか集晚?」
「キルヒアイス窗悯?」

「あなたとラング局長(zhǎng)は淺からぬ因縁がお有りです…
私の方から納得のいく説明をさせて頂きましょう。どうぞこちらへ…」

キルヒアイスの呼びかけにロイエンタールは立ち上がってその後を追い偷拔、
そのまま二人が會(huì)議室から退出すると再び殘された面々で話が続いた蒋院。

「…そら恐ろしいものを見てしまったような気がします」
そう言葉を漏らしたのは少し顔を青ざめさせたミュラーだった。

「陛下の無殘なお姿を毎日目の當(dāng)たりにしているのだ…當(dāng)然の事かも知れんが莲绰、あれは苛烈を極めるな…」
「よもやあれほどとは…」
ミッターマイヤーの言葉にファーレンハイトが同調(diào)する欺旧。

その話を否定するように割って入ったのはキルヒアイスの部下であるベルゲングリューンだった。

「…あの方の恐ろしさはすでに分かっていたことです蛤签。皆様はカストロプ動(dòng)亂の件を覚えておいでか辞友?」

「カストロプ動(dòng)亂というと…たしか、前帝國皇帝より勅命を受けて
キルヒアイスが初出陣をした時(shí)のものだな震肮?」

「そうだ…あれは一度目の出征に失敗後今度はキルヒアイスが出陣して1度目の出征の時(shí)の半數(shù)で
半年かかった動(dòng)亂をわずか10日で無血開城させたのだ」

皆が思い出すように口々にその時(shí)の話題を口にする称龙。

それは今では「奇跡のヤン」のイゼルローン奪還に続く
伝説の一話として巷で語られている話であった。

しかしキルヒアイスとともに動(dòng)亂に參加していた
ベルゲングリューンから言わせるとどうやらそれだけではなかったようである戳晌。

「血は流れました…マクシミリアン?カストロプ鲫尊。動(dòng)亂の首謀者です」

「それは知っている。だが沦偎、他に血は流れなかったのだろう疫向?
しかもわずか10日間で終わったともなれば…無血といってもいいだろう」
「あのキルヒアイスのことだ…敵味方咳蔚、共に無駄な血を流させることはすまい…」

「事実はその通りです、ですが搔驼、違うのです…ッそうではないのです」
皆の言葉を遮るように話し出すベルゲングリューンにその場(chǎng)にいる一同はその耳を傾けた谈火。

そう、あれは閣下がマクシミリアン?カストロプに降伏勧告をした時(shí)のことでした…

キルヒアイスの降伏勧告に対しマクシミリアン?カストロプは大膽にも映像を送りつけてきた匙奴。

そこには年端もいかない子供達(dá)が何人も裸のまま鎖で繋がれ
それを弄ぶマクシミリアン?カストロプの姿があった堆巧。

その姿をキルヒアイスに見せつけた上に自分より年若なキルヒアイスを嘲笑うかのように
マクシミリアン?カストロプは降伏勧告を跳ね除けたのだ。

『…そのまま惑星ごと滅びなさいッマクシミリアン?カストロプ…ッ泼菌!』
それに対してキルヒアイスはそう一聲告げるとその後の通信の一切を絶った谍肤。

これ以後再びキルヒアイスから降伏勧告を出されることはなくなり
全面無條件降伏以外の相手からの通信以外を受け付けなくなった。

そしてそのままキルヒアイスはカストロプの門地を守る
最新防御システム「アルテミスの首飾り」を瞬時(shí)に消滅させる哗伯。

「アルテミスの首飾り」とはその頃同盟の首都星?ハイネセンでも使われていた最新兵器であり荒揣、
フェザーンからそれを買い受けたカストロプはその防御に絶対の自信を持っていた。

現(xiàn)に以前やってきた帝國艦隊(duì)をカストロプはそれを持って返り打ちにしている焊刹。
だが今回はその時(shí)よりも半分の艦隊(duì)によって瞬時(shí)に消滅させられてしまったのである系任。

「…攻撃停止命令がでたのはカストロプ側(cè)からの全面降伏が出てまもなくの事です。
辿りついた私達(dá)が目にしたのは見るも無殘に変わり果てた
マクシミリアン?カストロプのめった刺しにされた姿でした虐块。
閣下のお言葉に恐怖を感じた臣下の者達(dá)によって彼は虐殺されたのです俩滥。
目の前に現(xiàn)れた閣下に膝まづいて彼らはこう言いました…」

…我々は悪虐の統(tǒng)治者から救われたのだ、と贺奠。

「………ッ」
「それ以後霜旧、略奪もそれに類する行為も一切行われませんでした。
閣下から全艦隊(duì)に向けて命令が発せられたからです儡率。命令違反は全て極刑に処す挂据、と…」

艦隊(duì)の中にも赤毛の若い將校を嘲笑うものは最早何処にもいなかった。
その時(shí)マクシミリアン?カストロプの恐ろしい死に様を皆の目に焼き付いていたからである儿普。

キルヒアイス艦隊(duì)は今も健在でその艦隊(duì)は無敵艦隊(duì)として今や帝國最大規(guī)模を誇る崎逃。
ラインハルトによって現(xiàn)在キルヒアイスは帝國艦隊(duì)の半數(shù)をその指揮下に置くことも許されていた。

「…あの陛下がお認(rèn)めになってお傍におく以上眉孩、
閣下がただ者でないのは至極當(dāng)然のことであったのかも知れません…」
ベルゲングリューンは話の最後をそう締めくくるとその目を伏せて下を向いて沈黙してしまう个绍。

その話を聞いた一同は今までそこに座っていたキルヒアイスの席をじっと見つめていた。
普段はまるで感じさせない穏やかなキルヒアイスの姿に
そんな一面があったことなど今までの彼らは知る由がなかった浪汪。

だが彼らはじきにそれをまた改めて知る事になるだろう障贸。

「この件…このままでは済むまいな」
そう告げるミッターマイヤーに一同は目をあわせて頷きを返した。

それからまもなくして吟宦、キルヒアイスに連れられて出て行ったロイエンタールが會(huì)議室へと戻ってきた。

「ロイエンタール…ッ」
「…ミッターマイヤー」
壁際に身體を支えるように顔を覆ったままのロイエンタールがようやくミッターマイヤーの姿を確認(rèn)する涩维。

「しっかりしろ殃姓、ロイエンタール…ッ袁波!一體、なにがあったのだ…ッ」
皆がロイエンタールを囲むように集まってきた蜗侈。

ロイエンタールの顔色がいつにも増して青ざめている篷牌。

「まさか、オマエ…陛下のご様子を見てきたのか…踏幻?」
「…いいや枷颊、違う。あれは陛下などでは斷じてない…そうであってたまるものか…ッ8妹妗夭苗!」

大きく首を振ってすぐさまロイエンタールがミッターマイヤーの言葉を否定した。
そこから皆は想像を絶するラインハルトの今の狀態(tài)を理解する叛复。

「許すまい…決して許すまいぞ…ッ术唬!」
ロイエンタールがその胸の內(nèi)にあるおぞましさを吐き出すようにその言葉を口にした甚脉。

今もなおその狀態(tài)のラインハルトの傍にキルヒアイスはいるのである。
キルヒアイスが手段を選ばないのにはそれ以上の理由があったのだ界赔。

騒ぎが収まらないまま退出しようとするオーベルシュタインに
ミッターマイヤーがロイエンタールのその身を支えながら聲をかける。

「卿はこの件…どう読む牵触?」
「…これは見せしめだ淮悼、陛下に手を出そうとする者達(dá)への…」
オーベルシュタインの中で以前ラインハルトのいった言葉が頭をよぎった。

『キルヒアイスは私自身も同様だ』
”そう…確かにあれはナンバー2などと呼べる代物ではない”
それだけ告げるとオーベルシュタインはそのまま會(huì)議室を出て行ってしまった揽思。

ロイエンタールはオーベルシュタインが退出すると
その身をミッターマイヤーに支えられながら今見てきたことを回想する袜腥。

”オレは今恐怖を感じている…陛下以外の存在に…”
そんな言葉を心の中で呟きながらロイエンタールはここを出てからの自分を振り返り始めた。

2.歪んだ真珠-3
「ジーク…」
「大公妃殿下…こちらにおいででしたか绰更?」

ロイエンタールを伴わせてラインハルトのもとへ向かっていたキルヒアイスにアンネローゼが聲をかけてきた瞧挤。
「…また、あの子が寢込んでいると聞いてケーキを焼いてきたのよ儡湾。
まだ面會(huì)は出來ないとキスリング隊(duì)長(zhǎng)に言われて直接あなたに持ってきたの…あの子と一緒に食べてね」

「それは特恬、わざわざ有難うございます…」
そのままキルヒアイスは笑顔で禮を述べるとアンネローゼも笑ってそれに答え
傍にいるロイエンタールに軽く挨拶をしてその場(chǎng)を去ってゆく。

「大公妃殿下には徐钠、まだ何もお話していないという訳か…」
「その必要はございませんでしょう…お心を痛めるだけですから」
キルヒアイスは視線だけロイエンタールに向けてそう答えラインハルトの寢室へ向かうべくと再び歩き始めた癌刽。

ラインハルトの寢室の扉の前に二人が到著するとキスリングがそこで警護(hù)にあたっていた。

「ご苦労さまです…どうやらお休みになられたようですね尝丐、キスリング隊(duì)長(zhǎng)显拜。なによりです」
「は…ッ!元帥爹袁、どうやら陛下が目をお醒ましになった模様です远荠。
中はご命令通り覗いてはおりませんが、先程からなにやら物音が…」

キスリングのその言葉にキルヒアイスは頷いて返事を返すと
そのままドアの鍵を開けてロイエンタールと寢室へ入ろうとする失息。

「…キルヒアイス元帥ッ」
慌ててそれをとめに入るキスリングをキルヒアイスがその手で制した譬淳。

「よいのです…私がお連れしました档址。
ここはあなたにおまかせします、キスリング隊(duì)長(zhǎng)…ではどうぞ邻梆、ロイエンタール元帥」
キルヒアイスがドアを開けてロイエンタールを部屋へと招きいれる守伸。

そこでロイエンタールが目にしたものは
想像の範(fàn)疇を遙かに超える信じられない光景だった。

「……これはッF滞尼摹?」
そこには両手足をベッドに括り付けられたラインハルトのあられもない姿があった。

ラインハルトが動(dòng)物のようにその身を暴れさせている為にベッドが激しく揺れ動(dòng)き
口元も布で覆われてその聲を出すこともままならない狀態(tài)になっていた剂娄。

キルヒアイスがそんなラインハルトに動(dòng)じることもなく近寄っていき蠢涝、
いつも笑顔でラインハルトに話しかける。

「陛下…大公妃殿下からケーキが屆けられましたよ宜咒。後で一緒に頂きましょう…」
「んーッんん…;莺铡!」
そのケーキをラインハルトの枕元にあるサイドテーブルの上に置くと
キルヒアイスがラインハルトの顎を押さえてそのまま上へと向かせる故黑。

「…いけませんね儿咱。口元が布で擦ってしまって傷になっています」
そういうとキルヒアイスは機(jī)の引き出しから軟膏を取り出すと
その指でラインハルトの唇に軟膏を塗りつけた场晶。

入り口で青い顔で立ち盡くすロイエンタールにキルヒアイスがラインハルトを抱えたまま
自分の寢室でもあるつづきの別室に首を振って合図を送る混埠。
「…お話はあちらの方で」

ロイエンタールは席につくとうつむき加減にキルヒアイスに話しかける。

「卿はなぜいつもと同じ態(tài)度であの陛下に接することが出來る…キルヒアイス」
「…そう見えているだけですよ诗轻。
それに钳宪、ああして拘束しておかねば暴れるだけでなく自傷行為もしてしまわれるので」

そう言ってキルヒアイスはラインハルトの寢室を眺めながらロイエンタールに答えを返した。

「今の陛下のお姿を私があえてお見せしたのはラング局長(zhǎng)の件に対し
あなたに不快な思いをさせてしまった理由を説明するためです…
私には上手く言葉にすることが出來ませんでしたのであなたには…直接その理由を見て頂きました」

ロイエンタールはその言葉にようやくその顔を上げてキルヒアイスの話を聞き始める扳炬。

「…私でも吏颖、あなたでもここにいる人間には無理なのです。
陛下をこのような狀態(tài)にした関係者である彼らの前にあっては
おそらくその眉間に銃口を向けずにはいられないでしょう…」
「それであのラングをか…」
吐き捨てるように答えるロイエンタールにキルヒアイスが相槌をもってそれに答えた恨樟。

「そうです…まだ彼らを殺す訳にはいきません半醉。
我々は一刻も早くその情報(bào)を聞き出してその首謀者を捕らえなければなりません…しかし
我々には彼らを殺すことは出來ても殺さずの術(shù)は持ち合わせていません」
「…殺さず、か」

キルヒアイスもロイエンタールも戦場(chǎng)においては
その手で敵を殲滅させることは出來ても拘束された無抵抗な人間に
殺さずに一方的な苦痛を與え続けることなど出來はしない劝术。

「…あなたは以前缩多、ラング局長(zhǎng)によって謀反人に仕立てられることよりも
自ら謀反人になることを選ぼうとしました…どうか、陛下の御為に今一度」
「もういい…わかった养晋、キルヒアイス…この件衬吆、ミッターマイヤー達(dá)はオレが説得させよう」

「有難うございます…」
キルヒアイスの意図を先に読んだロイエンタールの言葉にキルヒアイスが頭を下げて禮を述べる。
「卿が頭を下げること必要はない…陛下を绳泉、頼む」

ロイエンタールはそう言って立ち上がって部屋の出口へと向かい逊抡、
一度キルヒアイスの姿を確認(rèn)するように背中越しに目を向けるとそのまま扉を開けて部屋を出た。

ロイエンタールは部屋を出た後零酪、ラインハルトのあまりの姿に堪えきれなくなったのか
身體を震わせながら壁によりかかりその身を少し屈ませ
その手で今見てきたものを全て押さえ込むように口元に抑え込む秦忿。

ロイエンタールのそんな様子に寢室の入り口にいたキスリングが慌てて駆け寄ってきた麦射。

「閣下…ご覧になられましたか」
「よくも…よくも、あの狀態(tài)で平然としていられるものだ…キルヒアイスはッ」
キスリングに抱えられるようにロイエンタールは崩れ落ちそうになる身體を支えた灯谣。

「昨夜から、陛下の聞いたことのない悲鳴のような絶叫を何度も耳にしました…
それを目の當(dāng)たりにしているキルヒアイス元帥の心中は私如きには察しきれません」

キスリングの言葉にロイエンタールもまた痛いものをみるように閉ざされた扉をみる蛔琅。

「…戻らねば胎许。皆が會(huì)議室にまだ殘っているはずだ」
そうしてロイエンタールはその身を奮い起こしてその場(chǎng)を立ち去ってゆく。

”よくも…陛下をあのような目にッ”
今のロイエンタールにはラングの問題などどうでもよくなっていた罗售。

打ち消しても浮かんでくるのはラインハルトの禁斷癥狀に苦しむその姿辜窑。
自分が唯一の主と認(rèn)め、その絶対なる存在を打ち壊そうとする存在はロイエンタール自身の敵でもある寨躁。

自分がどうやって會(huì)議室に戻ったのかはっきりしないほど不確かな足取りで
ロイエンタールは皆の待つ會(huì)議室に戻ってきたのだった穆碎。

回想を終えて少し頭をすっきりさせたロイエンタールはようやくその口を開いて皆に告げる。

「…皆职恳、聞いてくれ所禀。今は形振りなどかまっていられぬ…ッ
この件は一刻もすみやかに終わらせなければならない、
陛下が我々のもとにお戻りになるまでに…なんとしてでもッ7徘铡色徘!」

ロイエンタールの言葉に皆がはっとする。

そしてやっと気づく操禀。
自分達(dá)にも今出來ることはあった褂策。

ラインハルトが戻るまでになんとしてでもこの件を終わらせることである。
そして2度とこのようなことを起こさせてはならない颓屑。

キルヒアイスはこれを機(jī)會(huì)にそれを全て一掃するといったのであれば…

「…陛下のことは斤寂、キルヒアイスにまかせるか」
「そういうことだ…我々のすべきことは唯一つ…」

”皇帝陛下の御為に…”
皆視線を交わしてそれを確認(rèn)するとばたばたと慌しく會(huì)議室を出ていった。

「ケスラーに連絡(luò)を…ッこれまでに得た情報(bào)の全て聞き出すのだ揪惦!」

こうして獅子の泉は再びその靜けさを取り戻し夜を迎える遍搞。
だが長(zhǎng)い夜はまだその夜明けの気配すら感じさせない狀態(tài)にあった丹擎。

ロイエンタールが退出するとキルヒアイスは制服から私服に著替えて
そのままラインハルトの待つ寢室へと向かった尾抑。

寢室に入るとラインハルトがなんとかその身體を動(dòng)かして自力でケーキの箱を開けていた。
そこにあったペーパーナイフで自らを拘束する手足の布を切ろうとしている蒂培。

「…そんなものでは切れませんよ再愈、ラインハルト様」
そういってキルヒアイスはそのペーパーナイフをラインハルトから取り上げると、
恨めしそうな強(qiáng)い視線でラインハルトがキルヒアイスを見やる护戳。

「そんなお顔をされても無駄ですよ…いった筈です翎冲。
あなたのその身を解放することが出來るのはあなた自身だと…
あなたにはそれを早く思い出して頂かなければ」
キルヒアイスはラインハルトの顎を上げさせると口元の傷に目をやった。

「ん…うッ」
そっとキルヒアイスがその傷口を舌で舐め上げる媳荒。

「それに抗悍、お體に傷をつけてはなりません…それはたとえあなた自身であっても許しませんよ驹饺。
今度ラング局長(zhǎng)にでも言ってあなたにぴったりの拘束具でも用意させましょう」

キルヒアイスがラインハルトにそう告げて取り上げたペーパーナイフで
アンネローゼから貰ったケーキを切り分けた。

そしてラインハルトの口元を覆った布をキルヒアイスはそっと外してやると缴渊、
口の自由を手に入れたラインハルトがその首を振るようにまた叫び聲を上げ始めた赏壹。

「あーッあッああああ…!」
キルヒアイスが口を開けたラインハルトの顎をそのまま固定させその口にケーキを放り込み衔沼、
ケーキを吐き出さないようにその口を白い手袋をした手で押さ込む蝌借。

「んー…ッんんッ!指蚁!」
「美味しいでしょう…菩佑?あなたの大好きな少し苦味のあるガトーショコラですよ」

食事も取らず薬を欲しがるラインハルトに無理やり食事をさせるにはこのようにするしか出來ない。

身體が疲れて眠っている間は禁斷癥狀もなりを顰めるが
禁斷癥狀が身體の疲れを上回るとまたすぐに禁斷癥狀がラインハルトを襲った凝化。

キルヒアイスが眠っているラインハルトに栄養(yǎng)剤と點(diǎn)滴を施しているが稍坯、
目を醒ますとたちまちそれはラインハルトによって外されてしまう。

だから不十分な時(shí)はこうやってキルヒアイスが無理やりラインハルトに食事を取らせるのである搓劫。

抑え込んだラインハルトの口の中からどうやらケーキを食べ終えたのか瞧哟、
食物を飲み込んだ音と同時(shí)に膨らませた頬がおさまりを見せ
キルヒアイスがラインハルトの顎を抑えていた手を解放すると
口の中に僅かに殘ったケーキの殘骸をラインハルトが吐き出した。

キルヒアイスが汚れたラインハルトのその口元を手で拭い取る糟把。

「…お行儀が悪いですよ绢涡。ラインハルト様」
「うあ、ああー…ッ遣疯!」
その言葉にラインハルトがキルヒアイスの手に思い切り噛み付いた雄可。

「……いッあ」
「これは失禮…ラインハルト様」
キルヒアイスが著けていた手袋は軍用の手袋でその素材には金屬が組みこまれている。

それを思い切り噛んでしまった為ラインハルトは痛みに顔を顰めたのだった缠犀。
その姿に苦笑しながらもキルヒアイスが手袋を外した数苫。

「ですが…あなたがいけないのですよ?
私の甲に爪跡など殘すから…今朝はフロイラインに見つかってしまいました」
そう言ってキルヒアイスはラインハルトにケーキを食べさせ終えた辨液。

「うーッ…ああ…あ」
「…さて虐急、どうしたものか√下酰口元をまた布で覆ってその唇の傷が化膿してはいけませんし…
かといってまた自分の舌を噛むようなこともされては困ります止吁。
聲を上げすぎても喉を痛めてしまいますから…」

キルヒアイスはそんなことを口にしながら
ラインハルトに身體を重ねて暴れる身體を抑え込んだ。

すると昨日の行為をその身に覚えていたのだろうか燎悍、
ラインハルトは叫び聲を上げるのをやめて今度はたちまち恐怖に震えだす敬惦。

そしてキルヒアイスに懇願(yuàn)の表情を浮かべて見つめ返してきた。

「おや…どうしました谈山?さっきの威勢(shì)はどこへいったのです」

”禁斷癥狀を抑え込むのはそれを上回る痛みと…そして恐怖ということか”

自分がそれを上回る存在になるとは…

そんな思いにかられながらもキルヒアイスはラインハルトに顔を近づける俄删。

「う…ッや、あ」
「…そうだ、こうしましょう」
キルヒアイスは思いついたようにラインハルトの顎を固定させたままその唇をあわせた畴椰。
顎を固定するのは臊诊、舌を噛まれないようにするためである。

舌を絡(luò)めとられ呼吸もままならなくなったラインハルトから苦しそうな聲が漏れた斜脂。

「ぐッ…うッううー」
「フフ…クリームがこんなところにもついていますよ抓艳、ラインハルト様…」
キルヒアイスが目元についたラインハルトのクリームをそのままその舌で拭いとり、
空いた片手でラインハルトの下肢に觸れるとそのまま一気に下半身を覆う衣服を引きずり下ろした秽褒。

一瞬にしてラインハルトは露わになった下半身をキルヒアイスに曬すことになる壶硅。

「…あッ、やあああッ」
「あなたが全て思い出すまでこれは続けます…嫌なら早く正気に戻ることです」

そしてそのままキルヒアイスは自分のベルトを緩め
昨夜と同じように何の準(zhǔn)備もしないままラインハルトの中に自身の楔を埋め込んだ销斟。

その痛みから発せられるラインハルトの絶叫は合わされたキルヒアイスの口の中へと消える。

しばらくして長(zhǎng)い行為にラインハルトが気を失うようにして眠りについた椒舵。

そんなラインハルトを見つめながら
キルヒアイスは嗚咽を封じるように口元を抑え込む蚂踊。

”一體いつまで続くのか…
このままでは私の方が先に気が狂ってしまいそうです…ラインハルト様ッ”

二人をある日突然襲った暗闇はなお深みを増すばかりだった。

得體の知れない恐怖にとりつかれたままキルヒアイスは
ラインハルトから目を離して窓に映る月を見上げる笔宿。

あなたは以前月を見る私におっしゃいましたね…

自分以外の存在にその目を奪われてはならないと。

ですが、今はどうぞお許しを…
あなたが眠るこの間だけ雕崩、私が月を見ることを

月を見ているとラインハルトとのかつての思い出がキルヒアイスの中に甦ってくる厦酬。

”…ああ、気付いたことがあります炬灭。私を照らすあの月醋粟、そうだ、あれはあなただ…ラインハルト様”

闇夜を切り裂くような明るい満月が煌々と
その光でキルヒアイスの心の暗闇を満たすようにその姿を照らして続けていた重归。

3.悪魔と踴れ-1
こんな月のない夜は私はあなたの存在を見つけられず
自分の存在を暗闇の中で見失って分からなくなってしまう時(shí)があります

いつもあなたは私にそれと気付かず傍にいて
私をずっと照らし続けてくれていたのだと

私は今そんな風(fēng)にあなたを想うのです

人間の血を流すものは自らの血もまた流すことになる
創(chuàng)世記第9章6節(jié)─

そのときラインハルトは暗闇の中にいた米愿。
身動(dòng)きすることもままならずただ干乾びた喉はなにかを求めその精神は飢餓の中にある。

暗闇の中を這ってただ闇雲(yún)に前とも後ろとも知れぬ中を
ひたすらどこかを目指してラインハルトは蠢いていた鼻吮。

『苦しい…オレは育苟、なにかを探している。この闇の中に一體なにがあるというのか』
誰かが自分を呼んでいる椎木。
心の中から急かされるようにラインハルトはその存在を探し求めていた违柏。

『…ここは、どこなのだ香椎。そしてそれは何なのだ』
息が出來ないほど苦しく求める存在を求めてラインハルトはもう隨分長(zhǎng)いことその暗闇を彷徨っていた漱竖。

『果たして、それは存在するのか…』
答えの見つからないままラインハルトはそのまま暗闇の中を迷走し続けていた士鸥。

”…また闲孤、熱があがった”
その日の夜もキルヒアイスはラインハルトの看病を続けている。
薬物に侵され禁斷癥狀に苦しむラインハルトの世話をしながらキルヒアイスもまた共に苦しんでいた。

禁斷癥狀から引き起こされる幻覚から発狂してしまう者も多いという讼积。

幻覚から逃れさせるようにキルヒアイスは
ラインハルトの身體に禁斷癥狀を上回る痛覚を與えることによってそれらを押さえ込む肥照。

だが、その行為によって苦痛を感じていたのは
誰よりもラインハルトを大切に想っているキルヒアイスの方だった勤众。

キルヒアイスは発熱して汗を掻くラインハルトの身體を拭いながらいたたまれない気持ちに苛まれていた舆绎。

そしてこのまま元には戻らないかも知れないという不安を
キルヒアイスは必死でかき消そうとしていたのだ。

「…キル们颜、ヒアイス」
ラインハルトがかすかに聲を上げてキルヒアイスを呼んだ吕朵。
その聲にキルヒアイスは驚きの中懸命にラインハルトに呼びかける。

「ライン窥突、ハルト様努溃?…ラインハルト様ッ」
熱と薬による禁斷癥狀の中意識(shí)が薄れようとするラインハルトに
キルヒアイスは何度も名前を呼び掛けてラインハルトの身體を抱え込むようにしてその身を揺らした。

「キル…ヒアイス…」
「ラインハルト様…ッ阻问!」
ラインハルトが意識(shí)を取り戻した瞬間だった梧税。

ラインハルトがその意識(shí)を必死に保とうとしながらゆっくりと辺りを見回すが
身體中に酷い痛みもあって身動(dòng)きすらまともに出來ない。

そしてそれは自分の身體が拘束されているからだということにラインハルトはようやく気がついた称近。

「…これ第队、は?なにが刨秆、あった凳谦?」
「あなたは今…薬物の禁斷癥狀に襲われているのです。
體を傷つけないために…やむなく衡未、申し訳ありません」
キルヒアイスが慌ててその拘束を解こうと括りつけたベッドへと手を伸ばした尸执。

「…いや、いい眠屎。まだ…このままで」
「…です剔交、が」

「いいんだ…キルヒアイス。
どうやら改衩、まだその禁斷…癥狀とやらは岖常、おさまってはいないようだ…」

ままならない自分の身體。
乾いた喉が求めていたのはまさか薬だったとは…

ラインハルトはそのまま苦しくてまた意識(shí)が飛んでしまいそうになる葫督。

「…ラインハルト様ッ」
「また竭鞍、オマエにいらぬ心配をかけてしまったな…すま、ない」

ラインハルトは今苦しいのは自分だけではないことを分かっている橄镜。
いつも自分を大切に扱うキルヒアイスが自分のこの狀態(tài)になんとも思わない筈がない偎快。

「…だが、もう少し辛抱してくれ洽胶。オレは…オマエと晒夹、一緒にいたい」
「は…い、はいッラインハルト様」
キルヒアイスは拘束しているラインハルトの手をとって何度も深く頷きを返す。

「それでは丐怯、身體は拭きましたので…熱冷ましのお薬を」
ラインハルトが抱きかかえられるようにキルヒアイスに支えられ
熱冷ましの薬を口に入れられるとグラスの水を含みその薬を飲みこんだ。

「ん…ッ」
ラインハルトの熱によって干乾びた喉が冷たい水によって徐々に潤っていく读跷。
だが今ラインハルトのその乾いた喉が本當(dāng)に求めているのはそのようなものではなかった梗搅。

「お辛いとは思いますが…どうか、今暫くのご辛抱を」
「………效览?」
そういってキルヒアイスがラインハルトの身體をベッドに橫たえさせると
ベッドの枕元にあるサイドテーブルから塗り薬を取り出した无切。

「な、なに…ッXね鳌哆键?キル、ヒ…アイス瘦锹?」
「どうかそのままで洼哎。すぐに終わります、薬を塗るだけです…」
キルヒアイスの手がラインハルトの下肢へ及んだ沼本。

キルヒアイスが薬を塗ろうとしていたのはキルヒアイスがこれまでの行為によって
傷つけてしまったラインハルトの腔內(nèi)である。

「…い锭沟、いいッ大丈抽兆、夫、だから…ッキルヒ族淮、アイス…ッ辫红!」
「駄目です…早く手當(dāng)てをしないと」

一昨日から続けた行為によってラインハルトのそこは傷ついた狀態(tài)にあった。
出血は止まっていたもののその痛みはさぞ酷いものであったことだろう祝辣。

「い贴妻、いい…いや、やめ…っあ蝙斜、ああッ名惩!」
キルヒアイスが赤くなったラインハルトの入り口にそっと薬を塗った指を摺り寄せる。
おそらくラインハルトのその中も傷ついているに違いなかった孕荠。

「…い娩鹉、痛ッ…い」
ラインハルトの瞳に涙が浮かぶ。
觸れるだけでもその痛みは相當(dāng)なものであったようだ稚伍。
そんなラインハルトの様子を確認(rèn)するとキルヒアイスは薬を塗りつけたその指をそこから離した弯予。

そして今度はその顔をラインハルトの下肢へと近づけていく。
そこから先を悟ったラインハルトが慌ててキルヒアイスを止めるべく聲をかける个曙。

「馬鹿…ッよせ锈嫩、キルヒ…アイス…ッ」
キルヒアイスの舌がラインハルトの入り口を撫でるように觸れた艳汽。
キルヒアイスがよく見るとそこはやはり酷い狀態(tài)にあった。

”…酷いことを”
キルヒアイスはその舌で癒すように入り口に薬を塗り込み始める圈浇。

「は…あッ掉伏、やめ…ん、んっ」
拘束されたラインハルトにはその行為から逃れる術(shù)もなく
ひたすらキルヒアイスの行為を受け入れるしかない祸轮。

そのまま今度は薬を塗り込めたキルヒアイスの舌が入り口から奧へと差し込まれる帝际。

「駄目尚揣、…だッキル…ヒ、アイスッ」
ラインハルトの制止の聲もキルヒアイスは聞くこともなくその薬を奧へと塗り込み続けた掖举。

これは治療の一環(huán)であることはラインハルトにも分かっている快骗。
だがこれまでキルヒアイスと數(shù)え切れない程に身體を重ねてきたラインハルトの身體は
その行為にも自分の意思とは反して簡(jiǎn)単に反応を示してしまう。

「…うッ」
「ラインハルト様塔次?」
キルヒアイスがラインハルトの顔を見上げると
ラインハルトはキルヒアイスの視線から逃れるように顔を背けた方篮。

ラインハルトの顔は瞳を潤わせて羞恥に染まっている。
その様子にキルヒアイスはようやくラインハルトの狀態(tài)に気づく俺叭。

「…あなたのせいではありません恭取。これは…私の、せいです」
今までそういう風(fēng)にキルヒアイスはラインハルトを抱いてきた熄守。
ラインハルトがそういった反応を見せるのも當(dāng)然の事だということはキルヒアイスにも分かっている蜈垮。

そのままキルヒアイスは今度は顕著に反応を示しているラインハルト自身をその口に含み
ラインハルトを解放させるべく口を窄めて扱き始めた。

「や…はッあ裕照、ああッ」
キルヒアイスから與えられる感覚にラインハルトはたまらず何度か身を捩じらせると
そのままあっけなく慣れたキルヒアイス愛撫の前にその全てを吐き出した攒发。

そしてキルヒアイスはそれを飲み干すと唇を舌で拭いながら顔をあげる。

普段と余り変わらない冷靜なキルヒアイスの様子に
羞恥に染まった顔をしたラインハルトが恨めしそうな視線を向けて愚癡めいた聲を漏らした晋南。

「…オマ惠猿、エ」
「さて、そろそろ负间。お休みを…ラインハルト様」
そんなラインハルトにキルヒアイスは何事もなかったかのようにその身體に毛布をかけてやる偶妖。

「…今、どうなってる政溃。外は」
「何事もなく…ラインハルト様が戻られるまで皆趾访、頑張っておりますよ」

「そう、か…」
キルヒアイスがラインハルトのその様子を見屆けると董虱、
枕元の機(jī)の上においた洗面道具を片付けるためにベッドに下ろしていた腰をあげた扼鞋。

「…オマエ、ずっといるな愤诱?」
「はい…ラインハルト様」
最後にラインハルトはその言葉に頷きを返してそのまま目を閉じてしまった云头。

まだまだラインハルトを襲う禁斷癥狀はおさまらない狀態(tài)にあったが
それだけ確認(rèn)をとったラインハルトは早くその身を治すべく無理やり身體を休めたのだった。

夜が明けるとキルヒアイスは仕事に向かうべく制服へと著替えを済ませる淫半。

ラインハルトは目を覚ましていた溃槐。
どうやらほとんど眠ってはいない様子である。

「…ラインハルト様科吭。
寢室の扉の向こうでキスリング隊(duì)長(zhǎng)がずっと警備をしておられます竿痰。
ここからでもけっこうですのでお聲をかけてやっては下さいませんか脆粥?」
「キスリングが…?」

ラインハルトの禁斷癥狀がおさまるまで
キルヒアイスがラインハルトの居住區(qū)から一切の人払いを行ってしまったため影涉、
ラインハルトの身辺を護(hù)衛(wèi)するためにキスリングだけが
ずっとラインハルトの寢室の扉の前で警備をしていたことを
ラインハルトはたった今知らされたのだった变隔。

「…いこ、う」
部屋の奧のベッドから蟹倾、寢室の扉までは隨分と離れている匣缘。
扉を閉めた狀態(tài)では聲を張り上げてもその內(nèi)容までは伝わりにくい。

キルヒアイスはラインハルトの拘束を一時(shí)的に解くとラインハルトを抱えて寢室の扉の前へと向かった鲜棠。

「…キスリング隊(duì)長(zhǎng)肌厨、そこにおられますか?」
「はッここにおります…閣下」
キルヒアイスの呼びかけに外からは変わらずそこにいたことを示すキスリングの返事が即答で返ってくる豁陆。

「陛下の意識(shí)が戻られました…」
「…キスリング柑爸、世話をかけたな」

「陛下…ッ!盒音?」
キルヒアイスの後に続いたその聲はまぎれもないラインハルトの聲だった表鳍。

「だが…もうしばらく頼む」
「…はッ!陛下祥诽、警備の方はおまかせくださいッ」
「これから私は出ます譬圣、後を頼みます…キスリング隊(duì)長(zhǎng)」
それだけいうとキルヒアイスは再び寢室のベッドへと向かった。

「…キルヒ雄坪、アイス…拘束厘熟、具を」
ベッドに腰を落ち著けたラインハルトから出たのは
禁斷癥狀の苦しさからやっとのことで絞り出した小さな聲だった。

ラインハルトは震えだす身體をその手でシーツを握り締めて必死で堪えている。

「はい…ラインハルト様」
キルヒアイスが再びラインハルトの身體を再び拘束すると
キルヒアイスは上著のポケットから出したものをベッドの枕元にそっと置いた。

「これは…?」
「砂時(shí)計(jì)です、ラインハルト様…私がいない間はこれと戦ってみてください」

キルヒアイスのいう戦いとは禁斷癥狀との時(shí)間の闘いである窜醉。

ラインハルトがこのような狀態(tài)にある以上
その代理で執(zhí)務(wù)を執(zhí)り行わなければならないキルヒアイスはずっとその場(chǎng)に居合わせてやることが出來ない。

「それでは、いってまいります…すぐに、戻りますから」
「…ん、待っている」
キルヒアイスがそっとラインハルトの額に唇を觸れさせると
ラインハルトは苦しそうな笑顔でそれを受け止める空郊。

そしてそのままキルヒアイスはラインハルトの寢室を後にしたのだった份招。

キルヒアイスが立ち去ったのを見屆けるとラインハルトはその身を襲う禁斷癥狀に身を悶え始める。
ラインハルトはキルヒアイスの前では必死にそれを意思の力で抑え込んでいたのだ狞甚。

震える身體を動(dòng)かしてラインハルトは
口元で砂時(shí)計(jì)を銜えそれが流れてはまたひっくり返す锁摔、それをずっと繰り返し始める。

”苦し哼审、い谐腰。これほどとは…だが孕豹、やらなくては。
オレ達(dá)は今まで誰にも何物にも負(fù)けはしなかった…そしてこれからも十气。そうだろう励背?…キルヒアイス”

そう心の中に呟きを漏らすと枕元の砂時(shí)計(jì)を見つめながら
ラインハルトは禁斷癥狀との戦いを始めた。

執(zhí)務(wù)室でヒルダと合流したキルヒアイスは
早速ラインハルトの意識(shí)が戻ったことをヒルダに報(bào)告した砸西。

その言葉にヒルダは涙を流して噛み締めるようにその喜びを現(xiàn)した叶眉。

「ああ…よかった、本當(dāng)に…陛芹枷、下ッ衅疙、陛下…」
そしてようやくヒルダの狀態(tài)に治まりを見たキルヒアイスは
ヒルダからの報(bào)告を受けながらその日の執(zhí)務(wù)を開始した。

ラインハルトが意識(shí)を取り戻した事は
その日の晝を過ぎた頃には皆の知るところとなっていたのだった鸳慈。

晝休みにキルヒアイスがラインハルトに食事を?qū)盲堡摔い仍伽鹰毳谣ⅴぅ工蠄?zhí)務(wù)室へと戻る饱溢。
するとヒルダがそれを待ちかねたように再び報(bào)告を始めた。

「キルヒアイス元帥…皆が會(huì)議室に集まっております走芋。どうやら例の件绩郎、何か進(jìn)展があったようなのですが…」
「わかりました、いきましょう…」

皆もまた夜を徹してこの件を片付けるべく動(dòng)いていたようである绿聘。
ヒルダの言葉にキルヒアイスは皆の待つ會(huì)議室へと向かった嗽上。

3.悪魔と踴れ-2
「…きたか、キルヒアイスッとんでもないことになってきたぞ熄攘!」
皆が待ちかねた中會(huì)議室に入ったキルヒアイスに真っ先に聲をかけてきたのはミッターマイヤーだった兽愤。

キルヒアイスは自分の席につきながら手を差し伸べてミッターマイヤーに話の先を促す。

「フェルナーからの連絡(luò)だ挪圾。地球教がフェザーンで誰と連絡(luò)を取り合っていたと思う浅萧?」
「…アドリアン?ルビンスキーだ」

その後ミッターマイヤーに続いてロイエンタールから告げられた名前に
キルヒアイスは驚愕を覚えずにはいられなかった。

「アドリアン?ルビンスキー…彼は哲思、死んだと聞いていましたが」
「…どうやら洼畅、しぶとく生き殘っていたようだ」
苦々しくミッターマイヤーがそんな言葉を漏らす。

地球教が連絡(luò)をとっていたのはフェザーンの元自治領(lǐng)主であるアドリアン?ルビンスキー棚赔。
そこで皆の中にある仮説が成立する帝簇。

「100年にも及んだフェザーンの存在は地球教がそのスポンサーだったという訳、か…」

ロイエンタールが代表してそれを言葉に出した靠益。
だがそこまでくれば地球教は一宗教でもテロリストでもない丧肴。

もはや新帝國に仇をなす反政府的國家である。

皆の背中に冷たい汗が流れた胧后。

「…つまり芋浮、今回の件はルビンスキーが動(dòng)いたということですね…なるほど」
「そういうことだ…おそらくルビンスキーの居場(chǎng)所は直接ルビンスキーと連絡(luò)をとっていた
今ケスラーが捕らえている奴等が知っているのだろう…」

これまでの一連の出來事にキルヒアイスはようやく納得する。

地球教の関與もヴェスターラントの殘黨勢(shì)力を使ったのも全ては
フェザーンの元自治領(lǐng)主であるルビンスキーが裏で工作したものだったのである壳快。

元々自分の領(lǐng)地であったのならば手足もさぞ自由の利いたことだろう纸巷。

「どうする镇草?キルヒアイス元帥…」
「…どちらにしろ、このままにはしておけますまい」
ビッテンフェルトとミュラーが顎に手をあてて少し考え込む風(fēng)になっているキルヒアイスに聲をかける瘤旨。

「航空宇宙局に連絡(luò)を…艦隊(duì)を太陽系に派遣して地球への運(yùn)行をただちに全面停止させてください梯啤。
地球への出入りは一切立ち入り禁止に…編成はおまかせします、ミッターマイヤー元帥」

「…おいッそれはまずいぞ裆站、キルヒアイスッ」
席から腰をあげて慌ててミッターマイヤーからは反論の聲が返ってくる条辟。

地球はすでに地下資源は絶え全ての生活物資を輸入に頼っていた。

地球への運(yùn)行を全面停止にしてしまうと
そこにいる人々はそこにあるものが盡きるまでの生活を強(qiáng)いられることになる宏胯。

”それも全て承知の上ということか…”
だがキルヒアイスがそれを知らない訳もなくそれを承知でいっていることなのだ羽嫡。

ミッタマイヤーの向ける視線を背けることもなくキルヒアイスは
自分が出した言葉を覆すこと意思がないことをミッターマイヤーにその視線を返すことで答えた。

「飢え死にさせるつもりですか…」
「それではヴェスターラントの核融合ミサイルの方がまだマシというものだ…」
ミュラーとビッテンフェルトの発言に続いてざわざわとそんな言葉が會(huì)議室の中から飛び出してくる肩袍。

地球にいる者たちが生き殘るために想像を絶する諍いが起こることは
ここにいる誰もがそれを容易に想像できた杭棵。

「…とりあえずこの件が片付くまでです、それ程時(shí)をかけるつもりはありません氛赐。
地球教の方にはそれで分かるはずです魂爪。
…まさか我々がかつての十字軍のように宗教を弾圧する訳にもいかないでしょうし」

新帝國において思想や種族の弾圧などといった
前帝國の二の舞などは決してあってはならない。

それはラインハルトの望む治世にも反する行いである艰管。

とりあえずキルヒアイスの目的は地球教の動(dòng)きを封じることにあった滓侍。

地球教を押さえ込んでしまえば地球は遙か遠(yuǎn)く
その支援をなくしたルビンスキーはうかつにこちらに手を出すことが出來なくなるからだ。

舊同盟と帝國を統(tǒng)一した新帝國の首都がフェザーンにある以上牲芋、
ルビンスキーはその活動(dòng)の支援を地球教に頼らざるを得ないのは自明の理のことだった撩笆。

地球も生活の為の物資の供給を新帝國に抑えられたとなれば
たちまち國家への反逆どころではなくなるだろう。

「閣下ッ」
その時(shí)會(huì)議室にキルヒアイス宛に連絡(luò)が飛び込んできた缸浦。
キルヒアイスがそのヴィジホンをオープンでボタンを押して聞き返す夕冲。

「…なんです?」
「ラング局長(zhǎng)からの伝文です”鴉が鳴き聲を上げはじめた”とありますが…」

その言葉にキルヒアイスはラングが
麻薬に侵された麻薬中毒の事件関係者たちから証言を得たことを瞬時(shí)に理解する裂逐。

「それは重畳…お喜び申し上げる歹鱼。早速お伺いします…と、そうお伝えください」
キルヒアイスはこの連絡(luò)を待っていたのだった卜高。

”…それにしてもどうやったのか弥姻。
急性の麻薬中毒だったラインハルト様でさえ正気に戻られるのに3日…
先日みた様子では彼らはどうみても常時(shí)の慢性中毒患者だった。これほど早くにその回復(fù)を見せるとは…”

ラングがさぞ凄い尋問と拷問を加えたのであろうことは
キルヒアイスにもある程度の予想は出來た掺涛。

「ラングのやつめ…やったか」
「流石に…今回は庭敦、自分の身がかかっているからな。必死だったろうよ」
ラングからの報(bào)告に皆がラングへの一様の不安を見せながらそんな言葉を交わしていると
キルヒアイスがその會(huì)話を打ち消すように颯爽と席を立った鸽照。

「…會(huì)議は以上です。私はこれから憲兵総監(jiān)の下へまいります」

先を急ぐように會(huì)議室を去ろうとするキルヒアイスの後ろにつき従うように
ヒルダが皆に軽く一禮をしてその後を追う颠悬。

殘された面々もまたキルヒアイスの出した指示を?qū)g行すべく一斉にその動(dòng)きを開始し始めたのだった矮燎。

用意させた地上車にキルヒアイスはヒルダを伴わせて乗り込むと
移動(dòng)の間地上車の中でその目を閉じて軽い睡魔に身を任せていた定血。

”やはり、お疲れになっていらっしゃるのだわ…”
ヒルダは普段のキルヒアイスの様子からは伺い知る事の出來なかった
キルヒアイスの一面をこの數(shù)日の間に何度か見る機(jī)會(huì)があった诞外。

ラインハルトの事はなにも口にはしなくとも
近くでみると彫りの深いキルヒアイスの顔はいつにも増してその深さを増している澜沟。

おそらくろくに睡眠をとってはいないのだろうということはヒルダにも察しがついた。

”この方は口や態(tài)度に出さずとも誰よりもそのお心を痛めている…
今もきっと出來ることなら陛下のお傍にいたいはず”

キルヒアイスの普段目にすることのないその寢顔を眺めながら
ヒルダはキルヒアイスの心中を読み取っていた峡谊。

ようやく二人が到著すると城からすでにキルヒアイスがこちらに向かうという連絡(luò)を受けていたケスラーが
やはり出迎えにでていた茫虽。

「…ケスラー憲兵総監(jiān)、よくやってくれました」
「いや既们、キルヒアイス元帥…まだまだこれからです」
そういってケスラーは控え室へと二人を招く濒析。

そして一通り捜査狀況を聞くと事件関係者から直接話を聞くために
キルヒアイスはラングのいる取調(diào)室へと向かった。

キルヒアイスはこの時(shí)もまた先日と同じ理由からヒルダを控え室においてきていた啥纸。

ラングによって拷問を受けた彼らの姿はヒルダのその想像を絶するものだと判斷したからである号杏。
取調(diào)室に入るとラングがキルヒアイスの姿を確認(rèn)して挨拶を述べた。

「ようこそ斯棒、元帥閣下…」
「う…ッ」
ケスラーが顔を顰めて口元に手をあててその聲を塞ぎこむ盾致。
拷問によって傷めつけられた彼らのすさまじい姿を目の當(dāng)たりにしてしまったからだ。

その姿をケスラーにはどうしても靜止して見ることが出來ない荣暮。

「…これはまた庭惜、隨分と努力をなさったものですね」
だがそんな中キルヒアイスは顔色も変えずに
まるで商品を見定めるような口調(diào)で彼らに近寄ってその様子を伺っている。

”…よく穗酥、あんなもの护赊。靜止して見ていられるものだッ”
ラングはともかくキルヒアイスの変わらない態(tài)度にケスラーは
キルヒアイスに目をやってそう心の中で呟きを漏らす。

「ケスラー憲兵総監(jiān)…ご気分がすぐれないようでしたら
フロイラインと一緒に控え室でお待ちいただいてもかまいませんよ迷扇?」

キルヒアイスがケスラーにそう告げると
ケスラーはその言葉に承諾してその場(chǎng)を逃げるように後にした百揭。

”ラングめ…まともではあるまいッヤツの前では地獄の番人共も裸足で逃げ出すに違いない…”
ケスラーはそんなことを考えながら早足でヒルダの待つ控え室へと向かった。

ケスラーが去った後蜓席、ラングが早速話しを再開させる器一。

「…このまま脳から直接情報(bào)を引き出してもよかったのですが、
どうも彼らはあなたにお話があるようなのでお呼びたてしました」
「私に…厨内?」
キルヒアイスが拷問を受けた彼らの姿を確認(rèn)してよく見てみると祈秕、
それはケスラーでなくとも常人にはとても靜止して見ていられるものではなかった。

椅子に拘束されて全身には針のようなものが突き刺されている雏胃。

その脇にあるのは輸血ポッド请毛。
ラングが一體なにをしたのか気になるところである。

キルヒアイスのそれを察したかのようにラングはその現(xiàn)狀を話し始めた瞭亮。

「…なに方仿、慢性の中毒患者はやっかいでしてな。
荒療治でしたが急ぎのことでしたので薬に侵された全身の血をそっくり入れ替えてやったのですよ」

麻薬によって痛覚は麻痺して拷問にも堪えない。
そのためラングはその痛覚を刺激するべく全身に針を刺してそのツボを刺激したのである仙蚜。

通常ならばその痛覚は10倍に達(dá)する此洲。

そして、ラングは全身からその血を入れ替え
麻薬によって侵された脳を無理やり正澄郏化させたのである呜师。

「…なるほど」
「あん、たが…責(zé)任者か…贾节?」
たどたどしい口調(diào)でキルヒアイスに話しかけてきたのはその拷問を受けた人間の一人からだ汁汗。

「そうです…」
「なぜ、我々を…殺さ栗涂、ない…知牌?」
下から見上げながらかすかにその目に映るキルヒアイスの存在を確かめながら聲をかけてくる。

「殺したければ戴差、殺せ…俺達(dá)は送爸、もう死んでいる」
「なぜ、死を望むあなた方の望みを私がわざわざ葉えてやらなければならないのです暖释?
それに…あなた方を今殺す訳にはいきません袭厂。あなた方には話していただかなければなりません。
アドリアン?ルビンスキーは今球匕、どこにいるのです纹磺?」

その言葉にはっとして一人が顔を背けた。
だがキルヒアイスがその手で再び自分の方へと向かせる亮曹。

「…知ら橄杨、んッ!照卦!」
「いいえ式矫、その様子ではあなたはどうやらそれをご存知のようだ…」
キルヒアイスは相手を凝視したままその言葉に納得することもなく言葉を続けた。

「これはまた隨分と血の気の多い…輸血が多すぎたようですね…血抜きが必要なようです」
そういってキルヒアイスは近くにあった空洞のある眺めの太い棒を手に取ると
そのままそれを拷問を受けた身體へと突き刺す役耕。

たちまち血はその空洞から溢れるように飛び出してきた采转。

「ぐ、うああああ…ッ瞬痘!」
「…閣下故慈、それ以上すると死んでしまいますよ?大事な証人が」
クックッと笑い聲を上げながらラングがキルヒアイスに言葉をかける察绷。

「血が流れればその分また輸血をすればいいではありませんか…」
だがキルヒアイスはそれが當(dāng)然のような口調(diào)で平然とラングの言葉にそう答えた。

「どうです…苦しいですか?それこそあなた方が今死んでいない弥喉、生きている証なのですよ老厌。
あなた方を殺してしまうと我々はこうしてあなたに苦痛を感じさせることも
証言を聞くことも出來なくなる…生きていてこそのその苦しみを
その身に味あわせることも出來なくなる瘟则、そうでしょう?ですが…困りましたね。
あなた方が話さないとなるとあなた方を地球で待っているご家族の方が
大変なことになってしまうのですよ?」

「な…ッ4罂?」
その反応にキルヒアイスはやはり丹壕、と気づく。
ケスラーの取調(diào)が進(jìn)まなかった訳をここでようやくキルヒアイスの中で納得がいった薇溃。

彼らの家族は人質(zhì)として地球に捕らわれ自らは麻薬を與えられ自由すら奪われている菌赖。
彼らは地球教に利用されているのだ。

たとえ麻薬にその身を侵され発狂しようともその家族のために彼らはその死を恐れない沐序。

「私は航空宇宙局に命じて地球への運(yùn)行を全面停止させました…
これがどういうことかおわかりになりますか…琉用?」
「そんなことをしたら…ッ堕绩!」

「そう…大変なことになってしまいますね」
キルヒアイスから笑顔で語られるその言葉に彼らは一斉に顔を青ざめる。

生活物資が供給出來なくなっても人質(zhì)である自分達(dá)の家族に対して
果たして地球教はその生活を保障するのだろうか邑时。

それは有り得ない話である奴紧。

おそらく地球教は自らを守るべく保身に走り
皇帝暗殺に失敗した自分達(dá)を見捨てて家族も飼い殺しにしてしまうことだろう。

「なんて晶丘、ことをッ」
「あなたの調(diào)書をみました…まもなく黍氮、お子様のお誕生日だそうですね。
お子様の今度の誕生日には蝋燭を何本たてるのです浅浮?」

その言葉にキルヒアイスに頭を抑えられた男が
全身を震わせて信じられないものをみるようにキルヒアイスのその姿を見つめ
そしてようやくその口から言葉が漏れた滤钱。

「助けて、くれ…」
「…誰に救いを求めているのです脑题?ここには救いの神などおられませんよ。
私が聞きたいのは救いの聲ではなく…ルビンスキーの居場(chǎng)所です」

その言葉に凍りついた一同から瞬時(shí)に聲があがった铜靶。

「は叔遂、話す…ッ!なんでもッU恕已艰!だから、家族を…皆を蚕苇、早く助けてくれッ」

そうして哩掺、彼らは今までの態(tài)度を一変させて次々と証言を始めた。

洗いざらいに話すとはまさにこのことである涩笤。
彼らは先を爭(zhēng)うように証言を口にしていったのだった嚼吞。

一通り話しを聞き終えてキルヒアイスはそのまま控え室に戻るべくその場(chǎng)を離れ始めると
ラングが自分の役目は終わったとばかりにキルヒアイスのその後へと続いた。

その姿を見屆けた一人が立ち去るキルヒアイスに慌てて聲をかけてくる蹬碧。

「待ってくれ…ッオレ達(dá)の舱禽、オレ達(dá)の家族は!恩沽?」
「先程も申しましたが…あなた方は一體誰にその救いをお求めになっておられるのです誊稚?」
キルヒアイスは必死に追い下がるその聲に冷たい一聲を放った。

「オレ達(dá)は全部罗心、話した…ッオレ達(dá)はともかく家族は里伯、関係ない…ッ」
「…皇帝叛逆を企てたリヒテンラーデ候がどうなったかご存知ですか?」

ラインハルトが皇帝になる以前渤闷、帝國の実権を手に入れるべく
ロイエンタールによって前帝國の実力者であるリヒテンラーデ候はその身柄を取り押さえられ疾瓮、
一族郎黨ことごとく死罪となった。それは10歳以上の男児にまで到る飒箭。

「そ爷贫、そんな…」
「あなた方も皇帝暗殺を企てた以上认然、極刑は覚悟の上のはず…
今更わざわざ私にこのようなことを言わせないでください」

キルヒアイスはそう告げると
そのまま顔を蒼白させて口を明けたまま呆然とする彼らを殘し取調(diào)室を後にすると
扉の奧ではこの世のものとは思えない男達(dá)の絶叫が響き渡っていた。

キルヒアイスが控え室に戻りそれまで団欒していたヒルダとケスラーは
キルヒアイスとラングに気付いてその腰をあげて出迎える漫萄。

「どうでしたか…卷员?」
「隨分とお話して頂きましたよ?…存外腾务、素直な方たちで助かりました毕骡。
ケスラー憲兵総監(jiān)はルビンスキーの元へただちに憲兵を派遣してください」

ケスラーはその言葉に少し怪訝な表情を浮かべたものの
キルヒアイスとその後ろに控えるラングに視線を巡らせながら返事を返した。

「…承知しました岩瘦、ただちにそのように手配致します」
そこで今まで後ろに控えていたラングが待ちに待ったかのようにキルヒアイスに聲をかける未巫。

「…閣下」
「ああ…ラング局長(zhǎng)。あなたもよくやってくれました…
あなたのお望みは以前の職への復(fù)職でよろしいのですか启昧?」
キルヒアイスのその言葉にラングはニヤリと笑みを浮かべ頷きを返した叙凡。

「はい、これからも新帝國のため密末、あなたのためお役に立ってみせましょう…」

「…いいえ握爷、ラング局長(zhǎng)。それは全て皇帝陛下の御為に」
キルヒアイスのその言葉にラングは一禮をもってそれに答えたが
キルヒアイスはそのラングに釘を刺すことも忘れなかった严里。

「ですが…以前のような內(nèi)務(wù)に支障をきたす干渉は困ります新啼。
これからは帝國內(nèi)部の反亂分子にのみその力を注いで戴きたいものです」

「…これはなかなか手厳しいことをおっしゃられる、閣下は刹碾。
先程の彼らへの対応といい…中々に燥撞、あなどれませんな」
ラングは取調(diào)室でみたキルヒアイスの姿を思い返すように苦笑しながらそう答える。

「…私は尋問よりも殺すことが専門なのです迷帜。いわゆる私の先程のアレは軍隊(duì)仕込みというやつですよ」
ラングの言葉の馴れ合いを突き離すようにキルヒアイスがそんな言葉を返した物舒。

”…どうやら、私はオーベルシュタインよりも遙かに恐ろしい者の下へついてしまったようだ”

オーベルシュタインは道具の一つのように事務(wù)的にラングを扱ったがキルヒアイスはまたそれとは違う戏锹。
キルヒアイスのそれはさながらに家畜を調(diào)教するかのような徹底さがあった茶鉴。

もう二度と職を奪われるような愚かな行為はすまい、
この仕事こそ自分の天職であり景用、生きがいそのものであることを
更迭期間で身に染みたラングはそう心に決める涵叮。

「私が復(fù)職させると決めた以上、次の復(fù)職はありえませんよ伞插?ラング局長(zhǎng)…」
「…肝に銘じて」
とどめのように告げるキルヒアイスにラングは目を伏せてさらにその頭を深く垂れたのだった割粮。

ヒルダとケスラーはその會(huì)話を傍でかいま見ながら
取調(diào)室で一體なにがあったのかはまるで想像すら出來ないでいる。

だがはっきりとしていることはラングのキルヒアイスへの態(tài)度が確実に変わったということだ媚污。
キルヒアイスの器量を測(cè)るような態(tài)度から平伏する態(tài)度へと舀瓢。

ヒルダとケスラーがキルヒアイスに伺うような視線を向ける。

「…それでは後はケスラー憲兵総監(jiān)におまかせして城の方へ戻りましょうか耗美、フロイライン」
そんな二人にキルヒアイスはいつもと変わらぬ穏やかな微笑でそう答えたのだった京髓。

3.悪魔と踴れ-3
ケスラーの見送りを受けながら城へ戻るためにキルヒアイスとヒルダが地上車へと向かった時(shí)のことである航缀。

地上車をねらって突如その場(chǎng)にグレネード弾が打ち込まれ
辺りからは煙とともに悲鳴があがった。

キルヒアイスは傍にいたヒルダを庇うようにして
マントに包みこみ腰を低くしてそれをやり過ごした堰怨。

「お怪我は…芥玉?フロイライン」
「大、丈夫です…」
耳がその轟音ではっきりとしないまま事態(tài)を把握出來ていないヒルダはようやくその言葉だけを口にする备图。
キルヒアイスは無傷のヒルダを確認(rèn)するとその身を離して立ち上がった灿巧。

「キルヒアイス元帥、ご無事で…ッ@夸獭抠藕?」
「何事ですか?ケスラー憲兵総監(jiān)」
地上車をみると完全防弾の地上車はびくともしていない蒋困。

おそらく目的は騒ぎに乗じて証言者を消すか盾似、あわよくば…

”地球への運(yùn)行の全面禁止命令を出した私を殺すため…か
それにしても情報(bào)が伝わるのが早すぎる…やはりここにも內(nèi)通者がいるのか?”

元々ルビンスキーはこのフェザーンの自治領(lǐng)主である雪标。
その人脈はそれを可能に出來る程であったのかもしれない零院。

「ルビンスキーめ…ッ血迷ったか!汰聋?ええいッ憲兵たちはなにをしておるか!
早くその不屆き者共を捕らえよッ」
ケスラーの聲が響き憲兵たちがただちに動(dòng)き出した喊积、その時(shí)だった烹困。

地上車付近でキルヒアイスとヒルダを待っていた警備の者達(dá)が
グレネードの衝撃で咄嗟にうつ伏せになった身體を
襲撃者によって背後から身を抑えられその人質(zhì)にされてしまったのである。

襲撃者達(dá)は銃を人質(zhì)に突きつけながら辺りを見回して
キルヒアイスとケスラー達(dá)の姿を確認(rèn)すると聲を大きく張り上げて語り始めた乾吻。

「我々の目的は髓梅、罪無き罪で捕らえられた同胞を救うことと
地球への運(yùn)行を停止させた政府への暴挙を止めることにあるッ
責(zé)任者はただちにこの要求をのんで貰いたいッ!绎签!」

その言葉にキルヒアイスは腰にあった銃を襲撃者に向ける枯饿。

「…なにをしているッこれが見えないのか!」
襲撃者は自分のその身を庇うように人質(zhì)を抱え込みながら人質(zhì)に銃口を向けた诡必。

だが奢方、襲撃者達(dá)のその言葉は銃を向けるキルヒアイスにさほどの効果を與えることは出來なかった。

キルヒアイスはそのまま迷うことなく銃の引き金を引いた爸舒。
辺りには人質(zhì)の數(shù)の分だけ銃聲が鳴り響く蟋字。

「キ、キルヒアイス元帥…ッ扭勉!なんてことをッ」
ケスラーが驚きの聲を上げながらキルヒアイスに駆け寄っていくが
だがキルヒアイスは顔色ひとつかえることなく今度は銃口を襲撃者に向けながら話しかけた鹊奖。

「…さて、今度はどうします涂炎?」
「う…」
予想外の展開に襲撃者達(dá)も動(dòng)揺が隠せない忠聚。
盾となるべき人質(zhì)はそのあてを外れてあっけなく射殺されてしまったのである设哗。

だが、襲撃者が反論の言葉につまったのもつかの間だった两蟀。
キルヒアイスに撃たれた人質(zhì)が立ち上がって襲撃者の動(dòng)きを封じ込んでしまったからだ网梢。

「な、なに…ッ5婢骸澎粟?」
襲撃者達(dá)はたった今撃たれたはずの警備の者たちによって武器を奪われ、動(dòng)きを封じられてしまった欢瞪。
それを見たケスラーが慌てて憲兵にそれを捕らえるべく命令を出す活烙。

「奴等の身柄を押さえるのだ…ッ急げ!」
そうして襲撃者達(dá)はケスラー達(dá)によってあっという間に取り押さえられた遣鼓。

「…防護(hù)服が啸盏、役にたったでしょう?」
笑って人質(zhì)だった警備の者たちにキルヒアイスが聲をかけると警備兵は敬禮をもってそれに答えた骑祟。

「しかし回懦、驚きましたぞ…キルヒアイス元帥」
そう言ってケスラーがキルヒアイスに溜め息交じりに聲をかける。

「すみません次企、ケスラー憲兵総監(jiān)…ブラスターの出力を最小に抑えて撃ったのですよ怯晕。
これだと防護(hù)服がなくとも、そう簡(jiǎn)単には人間の身體は貫けませんから」

「…なるほど缸棵。左様でしたか舟茶、いや…見事な判斷でした」
警備の者が倒れたのはブラスターから発せられた衝撃からであり、
防護(hù)服を著用していた彼らはその身を一切傷つけることはなかった堵第。

キルヒアイスは傍で驚いたまま座り込んでいるヒルダに顔を向けて手を差し伸べる吧凉。

「フロイライン、驚かせて申し訳ありません…大丈夫ですか踏志?」
「は…は阀捅、い」
目の前で行われた銃撃戦にヒルダは腰が抜けたように身動(dòng)きが出來ないでいた。
そんな様子を見て取ったキルヒアイスがヒルダを支えるようにして立ち上がらせる针余。

「…す饲鄙、すみません。有難うございます圆雁、キルヒアイス元帥…」
「いえ…どうかお?dú)荬摔胜丹椁骸?br> ヒルダの禮に軽い會(huì)釈でキルヒアイスがそれに答えた傍妒。

「簒奪者の片棒を擔(dān)ぐ兇悪者どもめ…ッ」
憲兵によって取り押さえられた襲撃犯の一人からそんな聲が上がり、
そこにいた誰もが一斉にその姿に目を向けた摸柄。

「なにをいうか…ッこの癡れ者めがッ颤练!」
ケスラーがその言葉に猛反発に言い返したが、その襲撃者は怯むことなく更に言葉を続けた。

「あの金髪の小僧は前帝國皇帝に実の姉を差し出してその身を立身出世させた恥知らずなのだ…ッ
所詮どこの馬の骨とも知れぬ輩が皇帝陛下などとは笑わせるッ姉弟ともに正気の沙汰とも思えぬわ…ッ`戮痢患雇!」
「…なッ!宇挫?」
だがケスラーがそれに答える前に突如再び銃聲が上がった苛吱。

「ぐっ…がッ…はあッ」
銃はその発言をした襲撃者を狙ったものだった。
襲撃者から上がった聲はキルヒアイスが瞬時(shí)にその手にあった銃で
そのまま眉間に向けて銃を連続で発射させたために上がったものである器瘪。

「…がっ…は翠储、…あッ」
だがそれで銃聲はやむこともなく続いて眉間へと打ち込まれていく。
ピンポイントで発射されるそれは額を穿つようにその穴が脳を貫通するまで発射された橡疼。

やがてその脳に傷口が達(dá)してすでにこと切れた狀態(tài)にある身體から
聲が上がることがなくなるがその身體は続けて発射され続ける弾の衝撃で小刻みに揺れ続けている援所。

やがてブラスターのエネルギーを使い盡くしたのか
ブラスターからの発射音がようやく止まった致盟。

「…切れて匈子、しまいましたね」
キルヒアイスがそう言って空になった弾裝を再び入れ替えると
その様子にいち早く正気に戻ったケスラーが慌ててキルヒアイスを止めに入る。

「キルヒアイス元帥…ッ」
「すみません…せっかくの証言者でしたのに」
そのまま銃を腰に収めるとキルヒアイスは
いつもと同じ調(diào)子でケスラーにすまなそうに詫びを述べたのだった柱嫌。

”金髪の小僧…”
ラインハルトをそう呼んでいたのは舊貴族達(dá)であった历帚。
ルビンスキーはありとあらゆるところから人材を調(diào)達(dá)しているようである滔岳。

”アドリアン?ルビンスキー…危険な男だ。このまま野放しにはしておけない挽牢、なんとしても捕らえなければ”
キルヒアイスはそんなことを考えながら憲兵によって運(yùn)ばれる遺體を見送った谱煤。

『…私は尋問より殺すことが専門なのです』
先程そういったキルヒアイスの言葉をケスラーとヒルダは思い返していた。

彼らは失念していたのである禽拔。
キルヒアイスは皇帝の代理を務(wù)めて政務(wù)や艦隊(duì)を指揮するだけでなく
実戦に於いてもその実力は帝國の誰もが知るところであることを刘离。

普段の穏やかな態(tài)度によってそれは覆い隠されてしまうために
皆は自然にその事実を記憶の隅に追いやってしまうのだ。

立ち盡くす二人にその目を向けたキルヒアイスがケスラーに聲をかける奏赘。

「ケスラー憲兵総監(jiān)…ルビンスキーは寥闪、危険な男です太惠。
必ず捕らえてください…決して逃してはなりません」

「…はっ磨淌!」
その言葉にケスラーは敬禮をもってそれに答えた。

「吉報(bào)をお待ちしています…」

”この騒ぎ…時(shí)間稼ぎの可能性は十分にある”
キルヒアイスは事態(tài)の収拾に動(dòng)く辺りを見回しながらそんなことを考えていた凿渊。

思えば計(jì)畫性のない無謀な作戦だった梁只。
これはおそらくルビンスキーが逃げるための時(shí)間稼ぎではないかとそう推察したのである。

キルヒアイスはそのまま動(dòng)けないでいるヒルダを抱えるようにして地上車に乗り込むと
何事もなかったかのように城へと地上車を走らせたのだった埃脏。

「…どうしました搪锣?震えておいでですよ」
「あ…いえ、その」
ショックから覚めやらぬヒルダにキルヒアイスが苦笑混じりに話しかける彩掐。

ヒルダは地上車の車中二人きりでキルヒアイスの姿をまともに見ることが出來ないでいた构舟。

そんなヒルダの様子にキルヒアイスは窓に向けていた視線を戻してヒルダに向けると
それを和らげるように柔らかな口調(diào)で話し出す。

「先日堵幽、會(huì)議の時(shí)にお話したように私はこの通りまともな人間ではありません…
私のこと狗超、恐ろしくなりましたか弹澎?フロイライン」

「いいえ…そんなことはありません。ただびっくりして…その努咐。
そ苦蒿、それに元帥は立派にその努めを果たしておられるではありませんかッ
ご自分をそんな風(fēng)に卑下なさる必要はありませんわ…」

ヒルダはキルヒアイスのその言葉を否定するようにそう告げるとその顔をキルヒアイスへと向けた。

「…やっと渗稍、私を見てくれましたね佩迟。フロイライン」
「キルヒ、アイス元帥…」
キルヒアイスは笑ってそれだけいうとまた顔を窓へと向けてその目を伏せたのだった竿屹。

”この方も必死なのだ…陛下をお助けするために”
ヒルダもまたそれ以上の會(huì)話をやめて
目を伏せるキルヒアイスを見守りながらそのまま城へ辿りつくまでの時(shí)間を過ごしたのである报强。

「それでは、これで失禮致します…」
城へ到著後羔沙、いつもの調(diào)子で仕事を終えたヒルダは
キルヒアイスの軽い會(huì)釈を受けてそのまま執(zhí)務(wù)室を出る躺涝。

「キルヒアイス元帥…陛下の意識(shí)がお戻りになった以上少しでもお休みになって下さいませね…?」
ヒルダは心配そうにそういい殘すと一禮して
そのままキルヒアイスの返事を聞かないまま執(zhí)務(wù)室を出てしまった扼雏。

ヒルダが執(zhí)務(wù)室をでた後キルヒアイスは眉間に手をあてて目を伏せたまま頭を上へと向けた坚嗜。
そしてそのまま執(zhí)務(wù)室の椅子を思い切り傾ける。

”…疲れているのは分かっている诗充。だが…あの男苍蔬、ルビンスキーは
ラインハルト様がお戻りになるまでになんとかしなくては…”

ヴェスターラントや地球教の件は昨日今日で片付く問題でもない。

だがラインハルトの命を狙うことは出來ないのだということを
また同じような事が起きる前に萬民に知らしめる必要がある蝴蜓。

そうなるまではキルヒアイスも安心してラインハルトを外に出してやることが出來ない碟绑。

執(zhí)務(wù)室に山積する書類の中、キルヒアイスはそんなことを考えながら
少しの間ではあったが疲れきったその身體をそこで休めた茎匠。

わずかな眠りであったが気分をすっきりさせたキルヒアイスが
ようやくラインハルトの元へ戻ってきた格仲。

「…キル、ヒ…アイス」
薄れる意識(shí)のなかラインハルトが力なくその聲でキルヒアイスを呼ぶ诵冒。
キルヒアイスは額に口付けてそれに答えた凯肋。
「ただいま、戻りました…今日は汽馋、また隨分と頑張ったようですね」

私服に著替えたキルヒアイスはラインハルトの身體を拭くために洗面道具を片手にやってきていた侮东。
傍でラインハルトを見やると拘束する手足にはいつにも増してくっきりとその跡が殘っている。

キルヒアイスがその拘束を外そうとするとラインハルトがそれを制止した豹芯。

「まだ…駄目悄雅、だ。キルヒ铁蹈、アイス…外す…なッ」
だがキルヒアイスはラインハルトの制止も聞かずあっという間にその拘束を解いてしまった宽闲。

「あッ…やめ」
「…こんなに、こんなに肌に跡が殘ってしまって…」
そしてラインハルトの擦れて出來てしまった傷口にキルヒアイスは唇を寄せながら
目を伏せて溜め息混じりにそんな言葉を口にする。

だが拘束を外されたラインハルトはたまらず震える自分の身體を抱え込むようにして
その身を捩じらせてその衝動(dòng)を抑え込む容诬。

「…駄目なんだッ頼む围辙、から…キルヒ、アイスッ」
その目に涙を浮かべながらラインハルトは必死にキルヒアイスに哀願(yuàn)する放案。

「ああ姚建、拘束具を変える間だけですよ…ラインハルト様。
隨分汗もお掻きになっておいでですから…ついでに吱殉、身體をお拭きしましょう…」
そういってキルヒアイスが身體を抱え込むラインハルトの身體を押さえ込んでその身を拭い始めた掸冤。

そしてキルヒアイスはラインハルトの身を拭い終えると
持ち帰った新しい拘束具をラインハルトに身につけさせてやる。

「これ友雳、は…稿湿?」
「…なんでも、病院で使われている拘束具だそうです押赊。
これだとお身體に傷がつくことはありませんので饺藤、しばらくは…どうかこれでご辛抱を」

ラインハルトはキルヒアイスの言葉に頷くように返事を返すと
言葉を口にするのも辛いのかそのまままた硬く目を閉じてしまった。

荒々しい呼吸がキルヒアイスの耳にも入ってくる流礁。
キルヒアイスは席をたって洗面道具を片付けるためにラインハルトの傍から離れようとその腰を上げた涕俗。

「…キ、キルヒ神帅、アイ…スッ」
「ラインハルト様…再姑?」
苦しい息から自分の名前を呼ぶラインハルトの聲に
キルヒアイスはその小さな聲を聞き取るようにその口元に顔を近づけた。

「…い找御、て」
かすかにラインハルトから漏れたその言葉に
キルヒアイスは目を見開いてその驚きを見せたがすぐに眉を顰めて言葉を返す元镀。

「いけません…どうか、今はお休みを」
「どうに霎桅、かなって…しまいそうなんだ…」
だがキルヒアイスはその言葉にも了承を出すことは出來ないでいた栖疑。

先日までの行為によってラインハルトの傷ついた蕾を
キルヒアイスは目の當(dāng)たりに見てしまっている。

「…駄目です滔驶。どうか遇革、お堪えください…ラインハルト様」
つれないキルヒアイスのその言葉に
ラインハルトは自分の口元に寄せていたキルヒアイスの耳に思い切り噛み付いた。

「……痛ッ瓜浸!」
たちまちキルヒアイスの耳がラインハルトに噛まれた場(chǎng)所から出血を始める澳淑。

そして苦痛に顔を歪めるキルヒアイスの耳元を銜えるようにしながら
その血を飲み干すようにラインハルトはその舌で舐め上げて血を啜った比原。

「だっ…だったら插佛、命令だ…キルヒ、アイス」
キルヒアイスがそう告げたラインハルトをじっと見つめる量窘。

ラインハルトの意図はキルヒアイスにも分かっていた雇寇。
ラインハルトは禁斷癥狀に苦しむ自分の姿をキルヒアイスに見られたくないのである。

キルヒアイスの目に觸れさせないようにと考えてのことだった。

それを察してキルヒアイスがラインハルトを説得するためにその打開策を告げる锨侯。

「私がお邪魔でしたら嫩海、隣の部屋に控えております…ですから、どうか」
「…それもイヤ囚痴、だ叁怪。オマエは…こんな、オレといるのはイヤかもしれないが
…オレはオマ…エと一緒にいたいんだ」

これまで二人にはそれぞれに暗黙のルールがあった深滚。
キルヒアイスのそれはラインハルトへの身體が重い負(fù)擔(dān)を強(qiáng)いる行為であるため
行為に及ぶ際には十分に気を使うこと奕谭。

ラインハルトには自分の立場(chǎng)を理由にそれを命令しないこと。

だが痴荐、その暗黙のルールを先に破ったのはキルヒアイスの方だ血柳。

禁斷癥狀からくる発狂を招く幻覚から逃れさせるためにやむを得ず
あえてその身を使ってラインハルトの身體を痛めつける行為に及んだ。

ラインハルトもまたそのルールを破ってその行為を強(qiáng)要するのは
自分の禁斷癥狀を見てキルヒアイスにこれ以上辛い思いをさせたくはなかったからである生兆。

たとえ自分の姿を見なくてもキルヒアイスが苦しむことはラインハルトには容易に想像がついた难捌。

「…なあ、キル鸦难、ヒ…アイス根吁。オレ達(dá)は…ずっと、一緒なの…だろう…合蔽?」
その言葉キルヒアイスはその口を塞ぐように深い口付けを與えてラインハルトに答えを返した婴栽。

「ご命令のままに…陛下」

キルヒアイスがベッドでの睦言の中で陛下とラインハルトを呼んだのはこれが初めてのことだった。
そして與えられた命令を果たすかのように優(yōu)しい言葉を告げることもないまま
キルヒアイスはラインハルトのその身の衣服を亂暴に引き剝がしていく辈末。

「オ愚争、マエ…怒って…る、な」
キルヒアイスのそんな様子にラインハルトはそれを察したように聲をかけると
キルヒアイスは冷たく言葉を言い放つ挤聘。

「陛下のご命令には轰枝、逆らえません…あなたは、それをよくご存知のはずだ」
「あっ…う组去、あ鞍陨、ああ…ッ!」

それは普段二人が身體を重ねる時(shí)とはまるで違う行為だった从隆。
言葉もなくキルヒアイスはラインハルトの身體に一方的に快楽を與える诚撵。

それは愛の交歓ではなく獣の交わりに等しいものだった。

ラインハルトはキルヒアイスの思う様に亂れてその聲を隠すことなく上げ続けた键闺。
ラインハルトの意識(shí)が途絶えるその時(shí)まで寿烟。

”…あなたは卑怯だ、ラインハルト様ッ”
キルヒアイスは意識(shí)を失くしたラインハルトを見ながら心の中でそんな恨み事を口にする辛燥。

キルヒアイスにはラインハルトの命令への拒否権がない筛武。
よってキルヒアイスはラインハルトの命令には絶対に逆らえない缝其。

それに抗うことを許されないキルヒアイスを知っていて
それでもあえてラインハルトはキルヒアイスに命令を出したのである。

キルヒアイスもラインハルトの気持ちを察しているだけに
決してその恨み言を口にすることは出來ない徘六。

キルヒアイスはただラインハルトの望みを葉えてやるべくただひたすらにその行為に及んだのだ内边。
それはキルヒアイスにとって思い出しても吐き気がでそうな行為だった。

キルヒアイスはラインハルトの身の後始末を終えると立ち上がり洗面道具をもってその場(chǎng)を離れる待锈。

月のない暗闇の部屋の中でキルヒアイスは
ラインハルトをこのような身においた者達(dá)に対して呪いの言葉を口にする漠其。

「許さない、絶対に許さない…ッよくもこん…な」
キルヒアイスの心から吐き出された想いはその暗闇へと全て飲み込まれるように消えてゆく竿音。

その日辉懒、外に月が昇ることはなく部屋は闇に包まれたまま二人は夜を迎えたのだった。

4.pigeon blood ピジョン?ブラッド~鳩の血~-1
Ruby pigeon blood ルビー?ピジョン?ブラッド

そのルビーの中で最上級(jí)と言われるのが谍失、
ピジョンブラッドと呼ばれる真紅のルビー眶俩。

數(shù)あるルビーの中でも、これほどの赤と透明度を両立させた上に快鱼、
紫外線による獨(dú)特の蛍光性まで併せ持つという颠印、まさにルビーのなかのルビー。

ルビーの場(chǎng)合抹竹、暗いほどに濃い赤が最上級(jí)とされ
特にピジョン?ブラッド(鳩の血)という名前で呼ばれている线罕。

翌日、キルヒアイスが身支度を整えて再びラインハルトの寢室へと足を踏み入れると窃判、
やはり眠れなかったのか顔色の悪いラインハルトの姿がそれを出迎えた钞楼。

「…おはようございます、ラインハルト様」
「おは袄琳、よう…」
隨分苦しんだのかラインハルトからは拘束具をつけたまま力のない聲で挨拶が帰って來る询件。

キルヒアイスが心配そうにラインハルトの傍によってその様子を眺めた。

こんなラインハルトを一人置いてキルヒアイスは仕事へ向かわなければならないからだ唆樊。

そんなキルヒアイスの気持ちを知ってかラインハルトは
極力出來うる笑顔でキルヒアイスの耳元をみながら話しかける宛琅。

「フフ…見事に跡になっているぞ、キルヒアイス」
それは昨日ラインハルトがキルヒアイスの耳に噛み付いた時(shí)に出來た傷跡で
出血は止まっていたもののその傷跡は明らかに噛み跡だとわかる逗旁。

「それ…どう嘿辟、ごまかすつもりだ?」
「…まったく片效、誰のせいだと思っているのですか」
困り顔で答えるキルヒアイスにラインハルトが小さな笑い聲をあげた红伦。

「キルヒアイス、そこの引き出しの一番下にいいものがある…出して淀衣、みろ」
キルヒアイスがラインハルトに従って引き出しを開けると
そこには小さな寶石箱のようなケースがある昙读。

「…そのまま、開けて」
「これ舌缤、は…箕戳?」
開けるとそこには赤い石でできた2連のピアスがあった鞭衩。

「…この間祭钉、博物館の視察にいった際に余りの見事な真紅に目を奪われてしまってな辉饱。
そこの館長(zhǎng)が気を使って欠片を分けてくれたのだ萤皂。
本當(dāng)はクリスマスにでもカフスにしてオマエにくれてやろうと思っていたんだが…」

何かの手違いで屆いたのがこのピアスだった够庙。
ルビーの中でも最上級(jí)と言われたのがこの真紅のルビーである房待。

地球でのみ産出されていたこの希少な寶石は
今ではもう産出することもなくなり現(xiàn)存するもののみとなっていた践盼。

「…ルビーの場(chǎng)合思瘟、暗いほどに濃い赤が一番良いらしくて
特にピジョンブラッド(鳩の血)と呼ばれるそうですね」

「この凄い赤环础、まるでオマエの髪みたいだろ囚似?」
ラインハルトの言葉にキルヒアイスがそのピアスに目を向けた。

”平和を司る鳩の血…確かに今の私には相応しい代物かもしれないな…”

「本當(dāng)はカフスに作り直させるつもりだったんだが线得、いいからもうこのまま使ってしまえ饶唤。
フロイラインにでも頼めばその傷をごまかして上手くつけてくれるだろう…
これは、いわばオレの代わりに頑張って仕事をしているオマエへのご褒美だな」

「…それは贯钩、どうも…お心遣いいたみいります」
大體この噛み傷をつけたのはラインハルトである募狂。
楽しそうにいうラインハルトに內(nèi)心複雑な気持ちなキルヒアイスだった。

だが明らかに噛み傷だと分かるそれをそのままにもしておけず
キルヒアイスはラインハルトから贈(zèng)られたピアスを受け取った角雷。

「ああ…キルヒアイス祸穷。それと、砂時(shí)計(jì)の砂の量を少し足しておいてくれ」
今日もラインハルトは薬の禁斷癥狀と戦うようである勺三。

「あまりご無理はなさいますな…お體を崩してしまいます雷滚。ゆっくり慣らした方が…」

ラインハルトの顔色の悪さにキルヒアイスは心配そうに聲をかけた。

「…駄目だ吗坚。オレがこのままだとまたオマエが無茶をするのだろう祈远?
…だからオレは早く元の身體に戻さないと、な」
「ラインハルト様…」
ラインハルトの言葉がキルヒアイスのその身に染み渡るように行き渡り商源、
キルヒアイスは拘束されたままのラインハルトを抱きしめる绊含。

「心配するな、オレは大丈夫だ…だから炊汹、早く仕事に行って來い」
そういって仕事に行きづらくなっていたキルヒアイスの背中を押すようにラインハルトが聲をかけると
キルヒアイスはようやく立ち上がりラインハルトに背を向けた躬充。

「…それでは、いってまいります讨便。すぐに戻りますから」
そしてキルヒアイスは名殘惜しくはあったがラインハルトの寢室を後にした充甚。

”…オレもとんだ芝居上手になったものだ”
キルヒアイスが寢室を出るとまた禁斷癥狀に苦しみ始めるラインハルトだった。

”この身體のなんと虛弱なことか…今だ淺ましく薬を求めて悶え続けている”
ラインハルトは震える身體と薬を求める渇ききった身體を堪えながら再び砂時(shí)計(jì)に目を落とす霸褒。
まだまだラインハルトの禁斷癥狀は治まりを見せる兆しを見せてはいなかった伴找。

今日もまたラインハルトの長(zhǎng)く苦しい一日はこうして始まりを告げたのである。

朝废菱、人目に極力觸れないように執(zhí)務(wù)室に入りキルヒアイスはヒルダを呼んだ技矮。

「…申し訳ありません抖誉、少し手伝っていただけませんか?」
「ま衰倦、まあ…ッ袒炉!キルヒアイス元帥」
ヒルダがよく見るとキルヒアイスが手で押さえた耳元にはそれは見事な噛み傷の跡があった。

「…これ樊零、陛下ですの我磁?」
「ええ…まあ、それで…これを使って誤魔化そうと思うのですが
…なんとか上手くつけて貰えないかと…フロイライン」

唖然とするヒルダにキルヒアイスはピアスのケースを渡した驻襟。

ヒルダが中を確認(rèn)するとそこには見事な2連のルビーがある夺艰。
あまりの凄い赤に溜め息の漏れたヒルダであったが
早速それを取り出すと手持ちのものでキルヒアイスの耳元を消毒し始める。

「…素晴らしいですわ沉衣、この石郁副。
ですが、傷跡にピアスを入れれば少し痛みますわよ豌习、キルヒアイス元帥」

「ッ…霞势!」
ヒルダはそういってキルヒアイスの耳元の噛み傷にあわせるように二つのピアスを取り付けた。
傷跡に被せるようにつけたピアスにキルヒアイスは痛みで一瞬顔を顰める斑鸦。

「後はファンデーションでもして回りの傷と赤みをごまかしましょう…」
キルヒアイスの耳にヒルダがファンデーションを軽くつけるとその傷跡はものの見事に隠れてしまった愕贡。

「これで、傷跡は分かりませんわ…キルヒアイス元帥」
「助かりました巷屿、フロイライン固以。どうも有難うございます」

やはりこういうのは女性の専門分野である。
キルヒアイスはヒルダに改めて感心して禮を述べたのだった嘱巾。

「お役に立ててなによりです憨琳。元帥、よくお似合いですわよ」
そんなキルヒアイスの言葉をヒルダはにっこりと笑って受け止めた旬昭。

ヒルダが言うまでもなくそのピアスの赤は
見事キルヒアイスの赤い髪に溶け込むように馴染んでいる篙螟。

キルヒアイスの片耳の2連のルビーは
存在を主張するかのようにその輝きを放っていた。

ヒルダからの報(bào)告を聞き終えて書類に目を通しているとやがて會(huì)議の時(shí)間となった问拘。
ヒルダを伴わせてキルヒアイスが皆の待つ會(huì)議室へと向かう遍略。

會(huì)議室では既に皆が集まっておりキルヒアイスが來る間、
ケスラーから聞いた先日のキルヒアイスの出來事について話しあっていた骤坐。

「先日の憲兵隊(duì)への襲撃事件…テロリストの一人がものの見事にキルヒアイスに眉間を打ち抜かれたそうだ」
「ケスラーが鑑識(shí)に話を聞いたところ绪杏、
出力を最小に抑えたブラスターを連続発射させて眉間が貫いた痕は
まるでレーザーで繰り抜かれたようになっていたと言うぞ…」

相手は取り押さえてあったとはいえ生身の動(dòng)く人間である。
眉間にピンポイントで打ち込むとなればそれがたとえ射撃の的であったとしても至難の業(yè)であった纽绍。

「…原因は蕾久、陛下と大公妃殿下への酷い侮辱であったそうだが」
キルヒアイスは射撃の名手としても帝國ではその名が高い。

こと白兵戦においては右に出る者無しとまでいわれている程で拌夏、
既に數(shù)ある射撃大會(huì)などでも輝かしい戦績(jī)とともに
キルヒアイスはその名の多くを大會(huì)の筆頭に殘していた僧著。

「觸らぬ神のなんとやら…というやつだ履因。テロリストも馬鹿なことをいったものだ」
そういって話を締めくくると會(huì)議室は靜かな空気に包まれる。

丁度その話のキリのいい所で盹愚、キルヒアイスが會(huì)議室へと到著した栅迄。

「おまたせしました…それでは、始めましょうか」
キルヒアイスが席をつく姿に皆がすぐにその耳元に気がついた杯拐。

「ちょっと待て…それは霞篡、どうしたのだ世蔗?」
「ああ端逼、これですか…?」
キルヒアイスがミッターマイヤーが指先を向けた耳元に手をあてる污淋。

「陛下に頂いたのです…なんでも顶滩、代わりに仕事をしているご褒美だそうです。
これをやるからとっとと仕事にいけ寸爆、と…今朝は礁鲁、早々に部屋を追い出されてしまいました」

キルヒアイスのその言葉にビッテンフェルトが
キルヒアイスを伺うようにいつもとは隨分控えめに話をもちかけた。

「…その赁豆、なんだ…キルヒアイス元帥仅醇。我々が陛下にお會(huì)いするのは…まだ、ご無理なのだろう魔种、か」
ビッテンフェルトのその言葉に皆がキルヒアイスに視線を向けると析二、
キルヒアイスは制服のポケットからある物を黙って機(jī)に取り出した。

「これ节预、は…叶摄?」
「砂時(shí)計(jì)です…陛下は一日これと向かい合って禁斷癥狀と時(shí)間を相手に戦っておられます。
そうですね安拟、今の陛下はこの砂時(shí)計(jì)でいうと…」
キルヒアイスが砂時(shí)計(jì)の口を開けて指先で一握りの砂を取り出した蛤吓。

「…今は、このくらいです」
「………ッ?飞狻会傲!」
ビッテンフェルトが愕然としてその一握りの砂に顔を歪ませ皆も同様にその驚きを隠せない。

「今しばらくは…どうか拙泽、お待ちください」
頭を下げるキルヒアイスにビッテンフェルトは大きく首を振って言葉を返す唆铐。

「いいや、いいのだ…ッ奔滑!陛下も苦しみの中頑張っておられる艾岂!
我々は陛下を信じてそれをひたすら待つのみであったッ!
無理を言ってこちらこそすまなかった…キルヒアイス元帥朋其、
もし良かったらその砂時(shí)計(jì)王浴。このままそこに置いては貰えないだろうか脆炎?」

そういってビッテンフェルトが
キルヒアイスの隣のラインハルトの席の前に置かれた砂時(shí)計(jì)に手を差し伸べた。

その言葉にキルヒアイスは一瞬目を大きく瞬きさせたもののビッテンフェルトの言葉を笑顔で返す氓辣。

「…そうですね秒裕、それもいいかも知れません。
では钞啸、ここに置いて皆で陛下のお帰りをお待ちすることにしましょう」

キルヒアイスはそのままそこに砂時(shí)計(jì)を置いたままにすると几蜻、
皆がそれぞれラインハルトを想いながらその砂時(shí)計(jì)を眺めた。

「それでは体斩、今日の議題を始めましょうか…」
キルヒアイスの言葉に皆が頷きを返すと早速會(huì)議が始められた梭稚。

しばらくして會(huì)議が順調(diào)に進(jìn)む中、キルヒアイス宛にケスラーからの連絡(luò)が入る絮吵。

『面目ない…ッキルヒアイス元帥』
ケスラーの謝りの聲をあげながら続けられた報(bào)告はキルヒアイスの期待を裏切るものだった弧烤。

「ルビンスキーを、取り逃がしたですって…蹬敲?」
『早速暇昂、後を追います…ッキルヒアイス元帥、どうかご許可を…0槲恕急波!』
ケスラーの追いすがる言葉にキルヒアイスが沈黙する。

既にフェザーンを出たのであれば捜索には宇宙船を使用しなければならない瘪校。
だがそれはケスラーの管轄外である澄暮。

そこでケスラーはキルヒアイスにその追跡許可を貰うべく連絡(luò)を入れてきたのだった。

會(huì)議室からもケスラーに対する非難の聲が次々とあがる渣淤。

「ルビンスキーを獲り逃がしたというのか…ッなにをしていたか赏寇、ケスラーのヤツめ…ッ!」
「キルヒアイス…ッ价认!地球へはミュラーを向かわせている嗅定。そこでヤツを取り押さえるのだ…ッ!用踩!」

キルヒアイスから地球への艦隊(duì)派遣を要請(qǐng)されたミッターマイヤーは
ミュラーの艦隊(duì)をすでに派遣させていた渠退。

そこでルビンスキーを抑えることは十分可能だった。

「…いいえ脐彩、このままルビンスキーを行かせましょう碎乃。目的地は分かっています」
「な…ッ!惠奸?」

「地球梅誓、か…」

”やはり先日の襲撃事件はルビンスキーが自分が逃げるためにした時(shí)間稼ぎだったのだ…
ものの見事に悪い予感だけは當(dāng)たってしまうな…”

キルヒアイスは心の中で一人そんな愚癡を零していた。

「そういうことです…この際、地球教とルビンスキーとの関係をここで一切絶ってしまいましょう梗掰。
ルビンスキーが地球に到著次第嵌言、地球教にルビンスキーの引渡しを要求します」

そこで地球教がルビンスキーを引き渡せばここでこの両者の関係は完全に斷ち切れる。
そうキルヒアイスが考えてのことだった及穗。

「ミュラー提督に連絡(luò)を…ルビンスキーが地球に到著次第摧茴、その場(chǎng)で待機(jī)。
そのまま私の方から地球教への交渉に入ります…ルビンスキーの地球への予定到著時(shí)刻は埂陆?」

「おそらく明日中には著くだろう…だが苛白、
物資の供給を停止させている以上早々に片をつけないと大変なことになるぞ」

「大丈夫です、すぐに終わらせますから心配ありません…」
ミッターマイヤーの言葉にキルヒアイスはそう答えたのだった焚虱。

すぐに終わるともとても思えなかったがキルヒアイスが斷言する以上皆は納得する他はない购裙。
そしてそのままキルヒアイスが席をたった。

「…ベルゲングリューン著摔、こちらへ」
そういってキルヒアイスは今は自分の艦隊(duì)指揮の副司令を努める
ベルゲングリューンを執(zhí)務(wù)室へと招いたのだった缓窜。

「ついに定续、キルヒアイス艦隊(duì)が動(dòng)く谍咆、か…」
「どうだろう…すぐに終わらせるとはいっていたが」
果たしてそれは可能なのかどうか、そんな考えに會(huì)議室の中が包まれる私股。

そうしてベルゲングリューンを連れてその場(chǎng)を離れるキルヒアイスの姿をそのまま皆で見送ったのだった摹察。

キルヒアイスから指示を受けたベルゲングリューンが執(zhí)務(wù)室を後にすると
丁度また晝にさしかかりラインハルトに食事をさせるために執(zhí)務(wù)室を後にした。

引き続き午後からはヒルダが執(zhí)務(wù)室に戻りキルヒアイスは仕事を続けた倡鲸。

そして夜再びキルヒアイスはラインハルトの元へと戻ってきた供嚎。

「只今、戻りました…ラインハルト様」
そういっていつものようにキルヒアイスはラインハルトの拘束具を外すと
汗を掻いたラインハルトの身を拭い始める峭状。

「思ったとおりだ…中々…似合っているではないか克滴、キルヒ、アイス…」
そういってラインハルトは震えた手をキルヒアイスの耳元に伸ばした优床。
キルヒアイスの片耳には今朝ラインハルトから渡された2連のピアスが付けられている劝赔。

「…オマエの髪に、よく似合う…」
まるでルビーを染め上げたような髪とキルヒアイスを評(píng)するものもいる胆敞。

それはラインハルトも納得するところだった着帽。

ラインハルトの身體を拭い終えたキルヒアイスがそのまま再びラインハルトの拘束具を取り付ける。
苦しそうに息を漏らしながらラインハルトはキルヒアイスの腕を求めて聲をあげた移层。

「……キルヒ、アイスッ」
「分かっておりますよ、陛下…アレが欲しいのでしょう梢薪?」
そのままキルヒアイスがラインハルトの身を返すとうつ伏せにさせる轴或。

「キルヒアイス…ッこれは、イヤだって…」
「それも承知しております…貴方が私の姿が見えないのはお嫌だと言うことは」
だがそれでもキルヒアイスはうつ伏せにさせたラインハルトを元に戻そうとはしない。

拘束具を身に付けたラインハルトは上から覆いかぶさるキルヒアイスにその身を抑えられ
自分ではうつ伏せの身體を仰向けには戻せなかった灵迫。

「キルヒアイス…ッP省!」
「…ですが龟再、今はどうか我慢をなさって下さい书闸。
私があなたに見られたくはないのです、今の私の姿を…」

”そして痛みに顔を歪める貴方のそのお姿も…見たくない”
本來ならばこの行為は二人の中ではその想いを込めた行為だった利凑。

だが浆劲、今は違う。
禁斷癥狀の苦しみから逃れさせるために無理やり始めた行為だった哀澈。

いつもならラインハルトに與えてあげられるその歓びを
キルヒアイスは今ラインハルトに與えてやることが出來ない牌借。

”私があなたに今してあげられる事があなたを苦しめる事だけだなん、て…そんな”

「い…ッや割按、だッあ…ッE虮ā!」
キルヒアイスがラインハルトの腰を高く掲げあげるとそのまま自身を深く埋め込ませた适荣。

「ひは帜…あッい、あ弛矛、ああ够吩!」
ラインハルトが大きく目を見開いて首を振ってその痛みに顔を顰める。
なだらかな曲線を描いたラインハルトの背中がたちまちしなりを帯びた丈氓。

あまりの痛みにラインハルトが片頬を寄せる枕が涙に濡れる周循。
そのまま有無をも言わせないまま、キルヒアイスがラインハルトの中にあった自身を動(dòng)かし始めた万俗。

「…ん湾笛、あ…う、…んんッ」
動(dòng)きとともに上がるラインハルトの苦痛の聲をキルヒアイスは
口から漏れそうになる嗚咽を隠すように歯を噛み締めて堪えながら受け止める闰歪。

「これは…あなたが嚎研、望んだことなのです…よ、陛课竣、下…ッ」
「…キル嘉赎、ヒ…アイ…スッ」
その時(shí)、ラインハルトは先日キルヒアイスに出した命令が間違ったものであることを?qū)g感した于樟。
身體を重ねながら自分のことを陛下と呼びその命令に従って自分を傷つけさせる行為をさせていることに公条、
キルヒアイスが何とも思わない訳はないのである。

いつも身體を重ねる時(shí)迂曲、キルヒアイスがどれほど自分を大事に抱いてくれたか靶橱。
今それをラインハルトが身をもって思い知った瞬間だった。

だが薬の禁斷癥狀に絶えられずラインハルトは
淺ましくもその行為をキルヒアイスに命令を持ってそれを強(qiáng)要してしまった。

「…もう关霸、いい传黄。分かった…分かった…か、ら…キルヒ队寇、アイ…スッ」
そうして泣き崩れるラインハルトの姿にキルヒアイスの動(dòng)きが止まる膘掰。

「…陛、下佳遣?」
「情けない…ッオレは识埋、なんて脆く、そして弱いのだ…
すま零渐、ない…キルヒアイス…こんなオレを窒舟、オマエは嫌いになった事だろう…」
そういって悔しそうにラインハルトは顔を歪め枕にその顔を隠そうとする。

そんなラインハルトをキルヒアイスが抱き上げて上を向かせた诵盼。
ラインハルトが身體を震えさせてキルヒアイスの視線から逃れるように視線を逸らせる惠豺。

「見る、な…ッキルヒアイス…頼む风宁、から…今のオレを洁墙、見ないでくれ…」
「いいえ、ラインハルト様…私が心を奪われてもいいのはあなただけだと
以前あなたは私にそうおっしゃったではありませんか…これから先も…それは杀糯、変わることはありません」

その言葉にもラインハルトは慌てて顔をキルヒアイスから背けようとするが
キルヒアイスはラインハルトの顔を抑えて自分の方へと強(qiáng)引に向かせてしまう扫俺。

「…やっと苍苞、名前を呼んでくれたな固翰。キルヒアイス…」
「ラインハルト様…」
そのまま二人の唇が重なった。
何度も角度を繰り返しては一層口付けは深いものとなっていく羹呵。

「そうやって…これからもずっと骂际、オレを呼び続けてくれ…キルヒ、アイス」

キルヒアイスが自分の名を呼ぶ…

ただそれだけがどれ程愛おしかったことかラインハルトは思い知る冈欢。
自分が本當(dāng)に欲しかったのはただそれだけであったのかも知れない歉铝。

そうして目を伏せるとラインハルトの疲れた體は
自分を呼ぶキルヒアイスの聲を聞きながらそのまま眠りへとついた。

”…私の気持ち凑耻、ラインハルト様は分かってくださった…ラインハルト様太示。
私がお守りしたいのはあなたご自身…私の望みは貴方を傷つける何物からも貴方をお守りすること…
あなたを傷つけるものはたとえそれが私自身であってもならないのです…
私は今までそうして貴方と身體を重ねてきた…”

キルヒアイスはベッドに橫たわり眠りについたラインハルトの頬に愛おしそうに唇を寄せた。
そしてキルヒアイスはラインハルトの傍を離れると自分の部屋へと戻っていったのだった香浩。

夜が明けキルヒアイスがラインハルトの部屋にいくと
そこには朝から早速砂時(shí)計(jì)と格闘しているラインハルトの姿があった类缤。

「おはようございます、ラインハルト様」
「…んッおはよう邻吭、キル餐弱、ヒ…アイス」
昨日のことを思い出して照れくさいのかラインハルトは少し頬を赤らめながら
キルヒアイスの微笑みの挨拶を顔を合わさずに返した。

「なんだか…昨日は、いつもよりよく眠れたみたいなんだ」
「そうですか…それは何よりです膏蚓。顔色も昨日より隨分よろしいようです」
ラインハルトの頬には昨日までとは違い以前の薔薇色の頬が戻ってきている瓢谢。
どうやら本當(dāng)に昨日はあれから良く眠れたようだった。

キルヒアイスは愛おしそうにラインハルトのその頬にそっと口付ける驮瞧。

「砂時(shí)計(jì)…今日は氓扛、どのくらいいけそうですか?」
「もう少し砂を足してくれ…今日は论笔、身體の調(diào)子がいい」
ラインハルトのその言葉をキルヒアイスは頼もしく受け止めながら砂時(shí)計(jì)に砂を足した幢尚。

”流石だ…ラインハルト様。
貴方はご自分を弱いといって昨日は泣き崩れておいででしたがそれは違う…
あなたは本當(dāng)は誰よりもお強(qiáng)い…あなたのそれにはきっと誰も敵いはしないでしょう”

「…それではいってきます翅楼、ラインハルト様尉剩。またお晝に食事をお持ちしますね」
「ああ…オマエも、頑張ってこい」
ラインハルトの笑顔に見送られながらキルヒアイスは部屋を出た毅臊。

キルヒアイスが部屋を出るとラインハルトは再び砂時(shí)計(jì)に目を向ける理茎。
”最早…この苦しみがオレ自身を凌駕することはない…
オレを支配出來るものがこの世にあるとするならば
それはこのオレ以外の何物であってもならないのだッ”

そう心の中で決意を新たにしてラインハルトはこの一日を送るのだった。

4.pigeon blood ピジョン?ブラッド~鳩の血~-2
キルヒアイスが執(zhí)務(wù)室でヒルダと合流すると報(bào)告を聞く間もなく會(huì)議室へと向かった管嬉。
ミュラーからルビンスキーが地球に到著したとの連絡(luò)が入ったからである皂林。

キルヒアイスが會(huì)議室に入ると皆もそれを待ち受けていたようだった。

「ミュラー提督蚯撩、ご苦労さまです…そちらの首尾はどうなっていますか础倍?」
『はい…地球への物資の提供は全面に停止して
すでに地球教の大司教猊下との通信を繋げてあります…いつでも、どうぞ』

ミュラーの言葉にキルヒアイスはミュラー艦隊(duì)を中継して地球との交信を繋げた胎挎。
そこに待ち構(gòu)えていたように大司教の姿が映し出される沟启。

「初めまして…大司教猊下。私はこの度の作戦の指揮を執(zhí)らせて頂いております
ジークフリード?キルヒアイスと申します」

『…噂には聞いておる犹菇。新帝國の皇帝とやらも若いと聞くが德迹、そなたもまた隨分と若いことだ…』

自分よりはるかに年の若いキルヒアイスを前に少し不遜な態(tài)度で大司教が言葉を返す。
だが今までにもキルヒアイスの外見ではそれもよくあったことなので気にせずキルヒアイスは話を続けた揭芍。

「今回のご用件は胳搞、そちらに到著したルビンスキーの引渡しです。
お引渡し戴けたならばすぐに物資の提供は再開させます…いかがなさいますか称杨、猊下肌毅?」

『…ふん、私に指図をするつもりか姑原?若僧が…申し出を私が斷ったならば…どうする気だ悬而?
また…ヴェスターラントの二の舞でもするつもりか…!页衙?』

大司教の強(qiáng)気な態(tài)度には今だ揺ぎがない摊滔。
その上ヴェスターラントの話までも持ち出す始末である阴绢。

そんな大司教の様子にもキルヒアイスは動(dòng)じることなく返答を返す。

「…それも艰躺、いいかも知れませんね…ミュラー提督呻袭。
そちらに核融合ミサイルは裝備してありますか?」

そう言ってキルヒアイスは大司教と繋がれたモニター畫面から少し顔を出して
今度はミュラーと繋がっている別回線で話し始める腺兴。

慌てて皆がキルヒアイスのその言葉に仰天して止めに入った左电。

「おい…ッ正気か!页响?キルヒアイスBㄗ恪!」
『…また闰蚕、出來もしないことを』
鼻で笑う大司教の言葉にキルヒアイスは表情も変えずに話し出す栈拖。

「そうでしょうか?本當(dāng)に出來ないとお思いですか没陡?…なら涩哟、試してみましょう」
『な…ッ』
キルヒアイスはラインハルトの席の前ににおいてあった砂時(shí)計(jì)持ち出すと
それを大司教にもモニターから見えるところに置いて引っくり返した。

砂時(shí)計(jì)の砂がゆっくりと下に向かって流れ始める盼玄。

「私が貴方に差し上げる時(shí)間は…この砂時(shí)計(jì)が落ちるまで贴彼、です“6…さあ器仗、大司教猊下…ご決斷を」
キルヒアイスが話をする間もそのまま砂がどんどん下へと滑り落ちていく。

『…馬鹿童番、な精钮。そんな事、出來る訳が…』
「もしかしてルビンスキーですか妓盲?…猊下にそのようなことを吹きこんだのは杂拨。
それはいささか私を買い被り過ぎというものです…
私はいわゆる戦爭(zhēng)慣れをしてしまった社會(huì)的病的者ですので…つまりそれはどういうことかというと、
私は戦いで全てを殺しても平気でいられます悯衬。
お望みとあらば、これを機(jī)會(huì)にそれを今ここで証明して差し上げましょう…」

無表情で告げられるキルヒアイスの言葉に大司教はおろか會(huì)議室にいる面々もその場(chǎng)に凍りつく檀夹。
それは誰もがキルヒアイスの表情からはその言葉が本気かどうかという事に確信を持てないでいるからだ筋粗。

大司教が無表情なキルヒアイスにわなわなと震え出す。

『この神への冒涜者め…ッ神の怒りに觸れるぞッ』
「…私には崇めるべき神も炸渡、救いを求める神も必要ありません娜亿。
私が唯一膝をつくのはこれから先もラインハルト?フォン?ローエングラム皇帝陛下ただ一人…」

沈黙の中靜かに砂時(shí)計(jì)が流れ落ち、やがて大司教の返事がないまま砂時(shí)計(jì)の砂は途切れた蚌堵。

「殘念ですが…お時(shí)間买决、です沛婴。猊下」
そういってキルヒアイスが再び大司教とのモニターから少し顔を外してミュラーに連絡(luò)を取る。
「出力を最小にして2発…核融合ミサイルを発射してください」

「キルヒアイス…ッやめろ6匠唷嘁灯!」
『…キルヒアイス元帥ッそれは!躲舌!』
まわりからの反対の聲をものともせずにキルヒアイスは続ける丑婿。

「いいから、そのまま発射してくださいッこれは命令です没卸!
…ただし羹奉、目標(biāo)は地球ではありません…月、表面です约计。
これは彼らへの私からの警告です诀拭。地球からもよく見えるように
大きなクレーターを空けるつもりで発射してください」

その言葉にミュラーは敬禮をもって返事を返すとそのまま核融合ミサイルを月に向かって発射させた。
爆発の衝撃によってその磁場(chǎng)が亂れ通信は一時(shí)的に途切れた狀態(tài)になる煤蚌。

『通信…一時(shí)炫加、途絶…ッ』
亂れた映像が途切れ途切れに飛んで音とともに少しずつ戻ってくる。

「…通信が正常に戻るまで铺然、どのくらいかかりますか俗孝?」
『…約、5…魄健、分…』
亂れとぶ通信を皆が靜かに會(huì)議室で見守った赋铝。

そして5分後。
それはミュラー艦隊(duì)からの中継で送られてきた地球からの映像に皆が恐怖に息を飲んだ瞬間だった沽瘦。

血の色のような赤い月に大きな黒い穴が二つ空いている革骨。

それはまるでラインハルトに贈(zèng)られたという
今キルヒアイスが耳元につけているピアスそのものだったからだ。

おそらく地球にいる人間の衝撃はこの會(huì)議室にいる人間の比ではない析恋。

皆が目を盜むようにしてキルヒアイスに目をやったが
相変わらず変わらないキルヒアイスのその表情からは何も読みとることが出來ない良哲。

『通信、完全に回復(fù)しました助隧。大司教への通信筑凫、繋ぎます…』
再び通信が大司教と繋がると最初に見た時(shí)とは別人の驚愕に打ち震えた大司教の姿がそこにあった。

「…2度は申しませんよ并村、猊下…今の帝國では宗教の弾圧といった思想の弾圧はしておりません巍实。
ルビンスキーさえお引渡し下されれば、このまま物資を提供させた後
艦隊(duì)は撤退させて地球への運(yùn)行も平常通りに戻します」

『なんということを…ッこのままではすまさんぞA埂棚潦!』
大司教はわなわなとその身を震わせながら引き絞るような聲でキルヒアイスを睨みつけて言葉を返す。

「それは膝昆、こちらのセリフです…今度、再び皇帝陛下の御身に手出しがあらばその時(shí)は
あなた方の崇めるその神ごと全てを打ち滅ぼしてご覧にいれましょう…」

キルヒアイスの言葉に大司教は返す言葉を失くした。
最早立つ力もないのかがくりと肩を落としてそのまま椅子に腰を下ろすと适室、
その両手を顔にあてて小さな聲でなんとか大司教が言葉を口にする忌穿。

『…迎えを、よこしてくれ、ルビンスキーを…引き渡す…』
「懸命な判斷です…あなたは見事地球の危機(jī)を救われたのです。猊下…貴方に神のご加護(hù)を」
そういってキルヒアイスは大司教との通信を終わらせたのだった。

100年にも渡った地球教の野望は今まさにこれをもって打ち砕かれたのである玄组。
彼らは地球から毎日月を見ながらこの日味わった恐怖を思い知ることとなるだろう。

大きな黒い穴を2つ空けた赤い月が今もなお彼らの天上を照らし続けていた谒麦。

キルヒアイスはその後ベルゲングリューンへの回線を繋いだ俄讹。

「ベルゲングリューン…交渉は無事に終わりました。
貴方はミュラー艦隊(duì)と合流してルビンスキーの身柄を押さえてください绕德。
ミュラー艦隊(duì)には地球への運(yùn)行が正常に戻るまでの間患膛、物資の提供を続けて頂きます」
『は…ッ』

キルヒアイスは萬一を考えて地上への突入部隊(duì)をベルゲングリューンに別働隊(duì)として指揮させていた。
勿論それはルビンスキーを捕獲するためのものである耻蛇。

周到なキルヒアイスのその手並みに皆はひたすら舌を巻くしかない踪蹬。

「ベルゲングリューンを向かわせていたのか…キルヒアイス」
「まあ…必要になる事態(tài)が避けられたのは何よりでした。
…実は臣咖、正直なところ大司教猊下も薬で頭がぼけてまともな話は出來ないのでは跃捣、
などと思っていましたもので」

あっさりとそんなことを言ってのけるキルヒアイスに皆はただ唖然とするばかりだった。

「…それではルビンスキーを捕らえた時(shí)點(diǎn)で地球への運(yùn)行を再開させて下さい」
話しをしながらキルヒアイスが席から立ち上がる夺蛇。

「キルヒアイス…疚漆?」
「そろそろ、お晝の時(shí)間です…陛下に食事をお持ちしなければ刁赦。
なんとかお晝に間に合ってくれて助かりました…」

そういってそのままキルヒアイスは皆を殘して急ぐようにその場(chǎng)を立ち去ってしまう娶聘。

取り殘された面々は最早言葉もでない。

「おい…もしかして甚脉、キルヒアイスが急いでいたのは…」
「…陛下のお晝の時(shí)間が近かったからなのか丸升?」

ようやく顔を見合わせて出た言葉も
會(huì)議室の中がさらに沈黙を広げる結(jié)果になってしまったのだった。

確かに今回も実際には予想に反して血はほとんど流れなかった牺氨。
ほとんど無血ではある狡耻。

亡くなった者といえば先日の襲撃事件でキルヒアイスに眉間を撃ち抜かれたテロリスト一人だけだ。
だが流されなかった血以上にキルヒアイスが後に殘したものは果てしなく大きなものだった波闹。

それは誰もが今回の件で思い知ったことだろう酝豪。

特に地球に今なお暮らし続ける人々は
月を貫くあの二つの穴を毎晩見上げる度にこの日を思い返すに違いなかった。

やがてルビンスキーの引渡しを無事に終えたベルゲングリューンが艦隊(duì)を引き上げさせ精堕、
ミュラー艦隊(duì)は引き続き物資の提供を続け地球への運(yùn)行が無事再開されるのを確認(rèn)して
フェザーンへと戻ったのだった。

こうして事件はルビンスキー逮捕で収まりを見せまた穏やかな日常がその姿を見せ始める蒲障。

ラインハルトの回復(fù)振りもそれからは見事なもので
その後1ヶ月を待たずして禁斷癥狀から解放されたラインハルトは
皆の前に出ることが出來るようになったのである歹篓。

キルヒアイスを背後に伴わせて會(huì)議室に姿を見せたラインハルトのその姿に
皆は涙を浮かべずにはいられなかった瘫证。

「陛、下…ッ」
「皆には長(zhǎng)らく苦労をかけたな…」
ラインハルトのその言葉にビッテンフェルトなどは感極まってその目から涙を流していた庄撮。

「いいえ背捌、いいえ…陛下ッ」
「皆、席につけ…このままでは話も始められないだろう洞斯?」
ラインハルトの言葉に皆が自分の席へと戻っていく毡庆。
そこでふと自分の席にラインハルトが目をやるとそこには見覚えのある砂時(shí)計(jì)があった。

その視線に気がついたビッテンフェルトが慌ててそれの説明する烙如。

「あの…っそれは自分がキルヒアイス元帥に頼んでそこにおいて頂いたのです」
「…そうか么抗、いや。これには隨分と世話になったな亚铁、余も…」
笑いながらそういうとラインハルトはその砂時(shí)計(jì)をそのままそこに置いたまま席へとついた蝇刀。

「…そうだ、キルヒアイス徘溢。今から余の部屋に戻ってとってきて欲しいものがあるんだが」
「部吞琐、屋…?今から然爆、ですか站粟?」
席に著いた途端ラインハルトが思いついたようにキルヒアイスに話しかける。

「ああ…今しか駄目だ曾雕。引き出しにしまってある…だが奴烙、急がなくていいぞ?」
「は翻默、あ…」
少し首をかしげたもののキルヒアイスは
ラインハルトから引き出しの鍵を受け取るとそのままその場(chǎng)を後にした缸沃。

キルヒアイスの姿が消えたのを確認(rèn)してラインハルトは
早速今回の事件の詳細(xì)を記された書類に目を通し始める。

「…ラングを復(fù)職させたか」
「それは修械、その…」
ラインハルトの言葉にヒルダが弁明を入れようとするがラインハルトは手を翳してそれを制した趾牧。

「仕方あるまい…キルヒアイスが動(dòng)こうにも
その間アイツは中毒患者の世話に明け暮れていたのだから、な」
「陛下…ッ」

ラインハルトの自嘲めいたその言葉にヒルダは慌てて言葉を返そうとするが
それも意に介さないままラインハルトは引き続き書類に目を通していく肯污。

「…結(jié)局翘单、亡くなったのは襲撃事件での一人だけという訳か。
まあ蹦渣、これは…思ったよりはマシ哄芜、というやつだな…」
「マシ…です、か柬唯?」
ようやく目を通し終えたラインハルトがその書類を機(jī)に置いた认臊。

「そうだ…アイツのことだ。キレて地球に核融合ミサイルでも撃ち込みかねんからな…」
ラインハルトのその言葉に皆がはっとするように靜まり返る锄奢。

実際地球へは撃ち込まれはしなかったがあの時(shí)警告として
キルヒアイスは月へと核融合ミサイルを2発撃ち込んでいる失晴。

モニターに映し出された赤い月に刻まれた2つの大きなクレーターの姿は
その日味わった恐怖とともに皆の記憶に焼き付いて消えることはないだろう剧腻。

「…キルヒアイス元帥は神をも恐れません、陛下」
「それでいい…アレのすることに神の許しなど必要ない涂屁。
今までも书在、そしてこれからもそうだ。アレの全てはこの余がその全てを許す…」

ラインハルトは皆にそう宣言するとその言葉に皆が息を飲んだ拆又。
だがそのままラインハルトは更に言葉を続けた儒旬。

「分からぬか…?余はこの世で最も敵に回したくない者だからこそ
自分の唯一腹心の親友として傍に置くことを望んだのだ帖族、
今回の件で…それは皆にも分かったのではないのか栈源?」

返す言葉がないとはまさにこの事である。

これまでもキルヒアイスのその実力は皆の知るところにあったが
今回の件で盟萨、最早誰もがラインハルトの傍にいるキルヒアイスの存在を認(rèn)めない訳にはいかないだろう凉翻。

「おっしゃる通りです…敵に回せばこれほど恐ろしい男を私は他に知りません」
「味方であったことに感謝したいものですな…」
皆も相槌をうってラインハルトへ言葉を返した。

「…昔からそうだが捻激、アレはこと姉上と余のことに関しては加減というものを知らぬのだ制轰。
かつてアレを本気で怒らせて生き殘ったものなど…ああ、一人いたな胞谭。そういえば」
「陛下…垃杖?」
ラインハルトが聞き返すミッターマイヤーと隣のロイエンタールを見ながら話しを進(jìn)める。

「卿ら丈屹、覚えてないか…调俘?ガイエスブルグ要塞で舊貴族…いや、賊軍との戦いの時(shí)のことだ旺垒。
オフレッサーという化け物がいただろう彩库?」

オフレッサー上級(jí)大將。
すでにこの世にはいないが舊帝國ではその怪物じみた容姿と殘忍な殺しぶりから恐れられていた男である先蒋。
その當(dāng)時(shí)骇钦、白兵戦において彼は無敵を誇っていた。

だがその時(shí)キルヒアイスはガイエスブルグにはおらずラインハルトの代理として
辺境星域の平定を命じられその場(chǎng)にはいなかった竞漾。

オフレッサーを生かしたまま捕らえるという命令をラインハルトに命じられ
ミッターマイヤーとロイエンタールは白兵戦を展開するも眯搭、
それは悉くオフレッサーの返り討ちにあって艦隊(duì)の多くの白兵戦部隊(duì)が壊滅に追い込まれた。

結(jié)局ミッターマイヤーとロイエンタールが二人がかりで自らを囮にして
罠を仕掛けてなんとかオフレッサーを捕らえたのだ业岁。

まともに一対一でやりあおうなどとは考えすら及ばない相手である鳞仙。

「オフレッサーがキルヒアイスがいないのをいいことに
モニターで余に戯けたことを言いたい放題抜かしていただろう…?」

それはオフレッサーがモニター越しにラインハルトに贈(zèng)ったメッセージにあった笔时。

『オマエを守る赤毛の男は今ここにはいないぞ…』
そう言っていたのである棍好。
ようやくそれを思い出した二人はラインハルトに話を聞き返した。

「…キルヒアイスとオフレッサーは、以前になにかあったのですか梳玫?」
「あったもなにも…あの猛獣に引き裂かれただの爹梁、
いろんな噂が飛び交っていたあの顔の傷跡…アレは右犹、キルヒアイスがやったものだ」

その言葉に皆が目を見開いてラインハルトに話の先を促すように眺める提澎。

「確か、幼年學(xué)校の頃だったな…どうも念链、あの馬鹿盼忌。
キルヒアイスの前で酷く姉上を侮辱する言葉を口にしたらしくてな。
生きたままキルヒアイスにその目を抉られたのよ…ザマはない掂墓。
オフレッサーからすればあの時(shí)のキルヒアイスは確かに猛獣であったかも知れんが…余が止めねば
両方の目はキルヒアイスによって抉り取られていたことだろうよ」

おかげでキルヒアイスの前ではすっかりおとなしくなって自分の前では文句をいうことがなくなった谦纱。
などと、オチまでつけて笑ってラインハルトは皆に聞かせてやった君编。

「…まあ跨嘉、結(jié)局は死んだがな…アレも」
オフレッサーの恐ろしさはここにいる誰もがその記憶に新しい。
ミッターマイヤーやロイエンタールは実際にそれを身を持って経験している吃嘿。

聞いただけでも背筋が冷たくなるような話だった祠乃。

「…なにを、話し込んでいらっしゃるのですか兑燥?」

そこにいる全員が一瞬その聲に身をびくりと震わせた亮瓷。
噂の主であるキルヒアイスが會(huì)議室に戻ってきたからである。

皆の様子に首を傾げながらキルヒアイスは自分の席へと著いた降瞳。

「いや嘱支、なに…オマエを怒らせると怖い、なんて話をしてたのさ」
「怖挣饥、いですか…除师?」
キルヒアイスはラインハルトの言葉に考え込むように手を顎において顔を俯かせる。

「怖いぞ…相當(dāng)扔枫。オマエ汛聚、自覚ないんだ…?」
「なにがです…茧吊?」
そのまま視線を逸らさずキルヒアイスはラインハルトにその目を合わせて真面目にそう答えると
呆れた顔をしてラインハルトは今度は話題を変えてキルヒアイスに話しかける贞岭。

「まあ…いいか。ところで…探しものは搓侄、見つかったのか瞄桨?」
「はい…」
それまでにない笑顔でキルヒアイスはラインハルトの言葉に返事を返したのだった。
キルヒアイスのその返事にラインハルトもまたこれ以上にない笑顔で頷いてそれに答える讶踪。

「そうか…それは芯侥、なによりだ」
そういってラインハルトは再び會(huì)議を再開させた。

「…皇帝誘拐を企てた実行犯を流刑に?極刑ではなく柱查、か…廓俭?」
報(bào)告書に目をやりながらラインハルトが意外そうにキルヒアイスの方に目をやった。

「はい…極刑をご希望でしたら…そのように唉工、すぐに手配致しますが」
遠(yuǎn)慮がちにそう答えるキルヒアイスにラインハルトは笑って返事を返す研乒。

「はは…いや…いい。やはりそれがオマエらしいよ淋硝、キルヒアイス…皆も、そう思うだろう?」

「はい」
ラインハルトのその言葉に頷きながら皆がキルヒアイスに顔を向けた继谚。
それこそ皆の知るいつものキルヒアイスだからだ花履。

皇帝誘拐をした以上本來なら厳罰をもってあたるべきことではあったのだが
こと相手がヴェスターラントの被害者である上に地球教によって家族を人質(zhì)に取られ
麻薬の中毒患者にまでされていたのならばそれ以上のことは當(dāng)事者のラインハルトが認(rèn)める以上
皆にはなにも言い返すことなど出來ない臭挽。

”私には彼らを罰する資格などなかった…
彼らにもまた守るべきものがあり葬荷、そのために命をかけたのだ…
再び事を起こそうとするなら容赦をする気はないが、
ラインハルト様がご無事であったのならばそれ以上のことはすまい…”

そう考えてのキルヒアイスの決斷だった。

辺境星域での強(qiáng)制労働とは刑を執(zhí)行するためにその名をつけただけの名ばかりのものだった。

皇帝誘拐に失敗した彼らは拷問から解放された後手厚く看護(hù)を受けてその身を回復(fù)させると
家族との再會(huì)を果たして新しい土地と家を手に入れていた。

そこに同行したケスラーに彼らはキルヒアイスからの伝言を聞かされることになる鹏控。

『失われたヴェスターラントの血はこの身の生涯全てをもってしても決して購いきれるものではありません…
ですが鲤看、これからのあなた方の幸福な生活を守るためにこれからも私達(dá)は戦いを続けます缘揪。
住むべき土地を無殘にも奪われたあなた方にはその幸福を主張する権利があり澡刹、我々にはそれを守る義務(wù)がある沐祷。
永遠(yuǎn)の平和をお約束することは葉わなくともローエングラム皇帝陛下のおわす限り、
この誓い、必ず果たしてご覧にいれましょう…
今はただあなた方のこれからの幸福を私は祈らずにはいられません』

そう長(zhǎng)いものではなかったがキルヒアイスの肝心な想いは彼らに伝わったようだった。
彼らはその返事の代わりにとケスラーに一言の伝言を預(yù)けていた。

『私達(dá)はこの遠(yuǎn)い空の下からあなた方の誓いと
その全てを見続けましょう…子々孫々に到るまで』囱井、と。

その日の午後ラインハルトはヴェスターラントの慰霊祭に參列していた骆捧。

ラインハルトは元々この式典に合わせてその體調(diào)を整えていたのである顺呕。
ヴェスターラントの関係者の前で壇上に上がったラインハルトは演説の最後をこう締め括った。

「…全ては、その時(shí)若輩で力いたらぬ余の力にあった鳖粟。
ヴェスターラントの被害者、そしてその親族に到るまでこれからの幸福は
皇帝の名のもとに全力をもってこれを保証するものである」

ヴェスターラントの件はまだまだ解決には時(shí)間が必要な問題である。
だがそれはこれから善政を布いて贖うより他に道はない漠畜。

その流された血よりも遙かに多くの血を救うことだ。
ヴェスターラントの過ちをラインハルトはすでにその身に染みて思い知っている尿这。

自分に迷いは許されないということ叨橱。
そしてその迷いは再びヴェスターラントの悲劇を招くということを…

あの時(shí)钢猛、自分に少しの迷いさえなければ未然に防げたことなのだ躺翻。

”だからこれからは決して迷いはしない…この身をもってオレはそれを証明し続けてみせる”

この先どれほどの苦難がこの身を襲おうとも
傍にはいつもと変わらないキルヒアイスの姿がある假瞬。

傍にいるキルヒアイスの姿を確認(rèn)しながらそう心を決めるラインハルトだった。

ラインハルトが壇上で話しをする中、
キルヒアイスは會(huì)議室から部屋へと戻るように言われた時(shí)のことを思い返していた箭券。

ラインハルトから貰った鍵で引き出しを開けると
そこには一冊(cè)の本があり、本を開くと挾みこむように手紙が入っていた。

それはキルヒアイスにあてたラインハルトからの手紙だった。

いつも傍にいるせいか正直ラインハルトから手紙を貰ったのはこれが初めてのことである拟逮。

通信モニターを介して會(huì)話することはあっても
手紙でのやりとりなどはこれまでには皆無のことだった。

封筒に自分の名前を確認(rèn)するとキルヒアイスはそっとその封を開けた脾猛。

『キルヒアイス…こうしてオマエに手紙を出すのはなんだかひどく恥ずかしくて照れくさいものだ。
だが、こうでもしないととても今のオレには自分の口からは言えそうにない…
オレはオマエにどうしても言っておきたいことがあるんだ』

ラインハルトからの手紙はそんな始まりだった倒谷。
ラインハルトがキルヒアイスにどうしても言っておきたかったこと抖格。

それは…

『今のオレが欲しいもの掌呜、なんだか分かるか模暗?
でもオマエならきっと言わなくても分かってくれるだろう隶糕?』

”今の貴方が欲しいもの…それは株旷、今の私と同じものでいいのでしょうか…”

『もちろんそれは薬なんかじゃない钞瀑、オレはもうちゃんと思い出しているぞ显晶?』
浮かぶ涙に文字が薄れてキルヒアイスはまともにその手紙をみることが出來ないでいた唯笙。

零れようとする涙を手の平に押さえ込みながら、
ラインハルトの手紙の文面がキルヒアイスの目の中に入ってくる。

『…オマエはいつも惹资、オレと一緒に同じ思いを感じてくれるだろう侮措?』

二人はあの日を境に身體を重ねることがなくなっていた畏吓。
だが二人とも自分からは決して言い出せない狀況にあった宏悦。

キルヒアイスはラインハルトを傷つけてしまった自分を今でも許せないでいたし砖瞧、
ラインハルトもまた皇帝の名を使って命令してその行為を強(qiáng)いてしまったことに深く後悔を覚えていたからだ。

”ラインハルト様…”

『…なあ、こうは思ってはくれないか呀狼。オレ達(dá)は一緒にいなきゃ駄目だ…
オマエでないとオレは駄目だし貌踏、オマエもオレでないと駄目であって欲しい…だから蜒秤、キルヒアイス』

”そうです…私はあなたがいないと駄目です…あなたでないと”

『だからオレはあの時(shí)の自分を忘れない…もう二度と同じ過ちを犯さないために掂骏。
だからオマエも無理に忘れることはない、だがオレはその全て許すよ…そう、決めたんだ』

”ああ…ラインハルト様…私は今、あなたに會(huì)いたい…
今この場(chǎng)に貴方がいるならば貴方を息が止まるほどに抱きしめて閉じ込めてしまうのに…ッ”

懐かしいのはその記憶に殘るラインハルトの體溫笑诅。
自分より幾分低いラインハルトの身體の熱が自分の與えた愛撫によって熱くなりその姿を変えていく伤哺。

そしてその腕を開いて自分の全てを受け入れてくれるラインハルトの姿がキルヒアイスの脳裏に浮かんだ立莉。

『だから…オマエも全て許してやってはくれないか…?』
そこで手紙は終わっていたが咸包、ラインハルトのベッドに座り込んだまま
キルヒアイスはそこから身動(dòng)きをすることが出來ないでいた。

手紙を握りしめキルヒアイスは空いた手でその顔を押さえ込む烂瘫。
震える身體を必死に押さえ込みながら何度もその手紙に書かれた言葉を反芻させていく媒熊。

”…やはり、あなたには誰も敵わない…ラインハルト様”

そんなことを心の中で呟きながらキルヒアイスは手紙を自分の部屋に片付けると
気を落ち著かせてラインハルトの待つ會(huì)議室へと戻ったのだった坟比。

「キルヒアイス…どうした芦鳍?ぼっとして」
その言葉にキルヒアイスが一瞬で回想を打ち切ってラインハルトを見やる。

「いえ葛账、なんでも…」
「…なんだ柠衅、せっかくのオレの演説を聴いてなかったのか?」
キルヒアイスの様子にラインハルトがからかうように笑いかけた籍琳。

「ちゃんと聞いておりましたよ…ラインハルト様」

「本當(dāng)か…菲宴?」
「本當(dāng)ですとも」
疑い深い目で眺めるラインハルトにキルヒアイスも笑ってそう答える。

獅子の泉を覆った暗闇は最早消え去り今のラインハルトの背には輝くばかりの太陽の姿がある趋急。

そして黃金の髪がその光を受けてなお一層輝きをましてラインハルトを神々しい存在へと変え喝峦、
その美しい輝きは常に全ての人々を圧倒する。

”いつも思うが呜达、この方には本當(dāng)に太陽がよく似合う…”
光の中をゆくラインハルトを見つめながら谣蠢、キルヒアイスはそんなことを考えていた。

獅子の泉の暗闇が明ける日を皆とともに心待ちにしていた二人だったが今本當(dāng)に待っていたのは
暗闇の中苦しい想いを抱き続けた夜に終止符を打つための二人だけの今夜のことだった。

悪魔を憐れむ歌/終章?5.獅子は微睡む-1
いつか貴方と二人誰もいない場(chǎng)所へ行くことが出來たなら
などとあなたとそんな話をしたことがありましたね

今の私たちにはそれはとても遠(yuǎn)く今ではまるで御伽噺のような話になりますが
あなたは変わらず私と同じその夢(mèng)を見続けてくれていたのだとこの日私は初めて知りました

あなたが本當(dāng)に望むなら葉えられないことなどなにもないことを私は知っている
そうして今宇宙に君臨するあなたの姿を今までずっとその傍らで私は見続けてきたのですから─

私はこれからもそんなあなたに導(dǎo)かれるままそれに付き従い続ける事でしょう

ヴェスターラントの慰霊祭を終えたラインハルトは
身體の全快祝いもかねてその日の夜はささやかな園遊會(huì)を催していた眉踱。

もともと華美をあまり好まないラインハルトであるため
それはアンネローゼとその親しい知人たち挤忙、そして自分の部下やその家族といった
ほとんど內(nèi)輪の間で開かれたものだった。

園遊會(huì)というよりはホームパーティのような雰囲気のものである谈喳。

忙しい中册烈、皆が交代で園遊會(huì)に參加してラインハルトの全快を祝いにやってきていた。

そろそろ夜も更け始め食事を終えた提督達(dá)が
端のテーブルに集まり腰を落ち著けて食後酒を楽しみ始めている叁执。

「いや~…いい酒だ」
そういったのはビッテンフェルトである茄厘。

ラインハルトの回復(fù)を祝い、
早々に仕事を片付けてラインハルトに祝いの言葉を言いにやってきていた谈宛。

そのため早くから飲み始めており酔いも隨分と回っているようである次哈。
脇でミュラーがビッテンフェルトのその様子を心配そうに見守っていた。

ミッターマイヤーも妻子を連れ立ってこの園遊會(huì)に參加していたが吆录、
女性達(dá)がかたまって談笑を始めたのを頃合いにこちらに合流したようである窑滞。

ミッタマイヤーもまた隣にいるロイエンタールと話をかわしながら
久しぶりに美味しい酒を楽しんでいた。

そんな時(shí)にまたしてもミュラーが噂話を持ち出してきたのである恢筝。

「…実は哀卫、こんな話を先月伺ったのですが」
「なんだ、またかミュラー…今度は撬槽、一體どんな話だ此改?」
普段、提督達(dá)はなかなか全員で集まる機(jī)會(huì)がない侄柔。

だからこの園遊會(huì)は情報(bào)交換にもうってつけの集まりでもあった共啃。
皆が興味津々にミュラーの話に耳を傾ける。

「キルヒアイス元帥が先月暂题、ホテルでとある女性と密會(huì)をしていたと耳にしたのです…」
小聲で告げるミュラーの言葉を聞いた皆が顔を見合わせる移剪。

「…密會(huì)ッ?キルヒアイスが薪者?ほんとか纵苛、それは!言津?」
「ほほう…それが本當(dāng)ならばなかなかやるではないか攻人、キルヒアイスも」

その話に皆が胡散臭げに半信半疑の目でミュラーを見やるが
ミュラーもそこで引き下がらない。

「ですが悬槽、ホテルのロビーでその女性と口付けを交わすところをウチの部下が目撃しているのですよ」
ミュラーのその言葉にその話を聞いていた皆が靜まりかえった贝椿。

確かにキルヒアイスは回りの女性が放ってはおかないほどの美丈夫ではある。
だが今までにキルヒアイスのそんな浮いた噂などまったく耳にしたことがない陷谱。

「…なにか、カンチガイじゃないのか?」
「ううーん…」
皆が普段のキルヒアイスからはどうしてもその話を信じることがが出來ないでいた烟逊、その時(shí)である渣窜。

「なにか、面白そうな話をしているではないか…」
その聲に全員が身體をびくりとさせて振り返ると宪躯、
そこにはこの皇帝の居城?『獅子の泉』の主である皇帝ラインハルトの姿があった乔宿。

「陛下…ッ!访雪!」
全員がその姿に驚いて立ち上がろうとするのをラインハルトが手を挙げて制した详瑞。
そしてそのままラインハルトがテーブルの空席に腰を落ち著ける。

「…で臣缀、今の話本當(dāng)なのか坝橡?」
ミュラーにその話の続きを聞こうとラインハルトが迫った。

「それは…その…えーと精置、ですね」
「なんなら计寇、本人に直接聞くか?その方が脂倦、早い」

そういって言い淀むミュラーを脇目に
ラインハルトは近くの者を呼び寄せるとキルヒアイスを向かえにやった番宁。

「陛下…ッそれは少々まずいのではッ!赖阻?」
「なんだ…どう蝶押、まずいのだ?」
ラインハルトの言葉に皆が言葉を返すのを躊躇った火欧。

あまりに真実味がない話の上普段のキルヒアイス本人からもそういった雰囲気を微塵と感じさせないために
そういう話を持ち出す事自體皆には憚られたのだ棋电。

「…別にアイツは聖人君主、とかではないぞ…何に気を使うことがある布隔?」
「そ离陶、それは…そうかも知れませんがっ」
ラインハルトは首を傾げながらそう答えると皆が返答に困ったように顔を下に向ける。

やがてラインハルトに呼ばれたキルヒアイスがテーブルにやってきた衅檀。
ラインハルトは隣の空席に手を差し伸べてキルヒアイスを招くとそこへ座らせた招刨。

皆からの異様な視線を一身に浴びたキルヒアイスが首を傾げながらラインハルトに訊ねる。

「あの哀军、何か…沉眶?」
「いや、な杉适。ミュラーの知り合いが先月オマエがホテルで女性と密會(huì)しているのを見かけたというのだ…
実際のところはどうなのだ谎倔、キルヒアイス?」

”それはあまりにストレート過ぎです猿推、陛下…ッ片习!”

ラインハルトのあまりな直球な物言いに全員が同じ心の叫びを上げて固まってしまった捌肴。
そしてそのまま様子を伺うように皆がキルヒアイスに視線を向ける。

「ホテルで女性と密會(huì)…私が藕咏、ですか状知?」
「ああ…やはりデマなのですね、申し訳ありません孽查。
キルヒアイス元帥饥悴、ウチの部下がそのような戯言を口にしておりましたもので…」

首を傾げて考え込むキルヒアイスにミュラーが非禮を詫びたが、
キルヒアイスが何かを思い出したように言い返してきた盲再。

「思い出しました…あれは西设、密會(huì)ではないのですよ」
「…っておい、キルヒアイスッそれって事実ってことか4鹋蟆贷揽?」

身を乗り出してキルヒアイスに聞き返したのはミッターマイヤーだった。
事の成り行きを見守ろうとしていたラインハルトの方へ顔を向けるとキルヒアイスはその説明を始める绿映。

「ええ擒滑、あれは先月。陛下に頼まれた件でその女性と待ち合わせをしていたのです…
陛下叉弦、覚えておりませんか丐一?」
「…待ち、合わせ淹冰?」

ラインハルトは眉を顰めその心當(dāng)たりを思い出そうと記憶を辿る库车。

「ええ…ヴェスパトーレ男爵夫人に頼まれ事をされたでしょう?」
「ああ樱拴、あれかッD堋?」
キルヒアイスの言葉にラインハルトは瞬時(shí)に記憶を甦らせた晶乔。

「確か…オマエを貸してくれって頼まれたのだ珍坊。
どうしてもって言われて…で、なんだったのだ正罢?その用事っていうのは」

「はあ阵漏、それがですね…私もその用件を知らされないままホテルに呼び出されたのですよ」
キルヒアイスは顎に手を當(dāng)てたまま首を傾げさせてその時(shí)の事を説明し始める。

キルヒアイスが呼び出しを受けたホテルのロビーで待っていると
ヴェスパトーレ男爵夫人がそこにやってきて突然強(qiáng)引にその唇を奪われたのだという翻具。

「どうやら…聞いた話では履怯、お見合いの話があったようです。
恩のある親戚の侯爵からの薦めでどうしても斷れなかったらしくて」

「…で裆泳、オマエがその間男を演じるハメになった訳だ」

流石にキルヒアイスが相手となれば見合い相手も引き下がらない訳にはいかない叹洲。
見合い相手の戀人が皇帝ラインハルトに次ぐ地位にある元帥ともなればその相手にもならないからだ。

「じゃ工禾、オマエの密會(huì)の相手ってのはヴェスパトーレ男爵夫人なのか」
「別に…密會(huì)ではありませんが运提、そうなりますね」
そこで収まると思われた話だったが酔ったビッテンフェルトが更に話を突っ込んできた蝗柔。

「…だが、ヴェスパトーレ男爵夫人とは以前から噂は囁かれておるが民泵、実際のとこはどうなのだ诫咱?」
「ビ…ビッテンフェルト提督ッ」
その言葉を止めようとミュラーが慌てて隣に座るビッテンフェルトを肘でこづく。

「実際もなにも…大體あの方には洪灯、他に…」
キルヒアイスがそう言いかけていた時(shí)だった。

噂の主であるヴェスパトーレ男爵夫人が
背後からキルヒアイスの頭を抱きこむように押さえ込んできたのである竟痰。

「…ジーク签钩、それ以上喋ったら…許さないわよ?」
そういってそのままキルヒアイスの顔を自分の方へと向けさせた坏快。

「あ铅檩、そうでした…これは確か內(nèi)密とのことでした。失禮しました莽鸿、マグダレーナ嬢…」
「分かればいいのよ…ジーク昧旨、もうすぐ帰るから家まで送ってくれるわよね?」

有無をいわせないヴェスパトーレ男爵夫人の言葉である祥得。

だがラインハルトの前でこれ以上余計(jì)なことを話して欲しくもなく
キルヒアイスは話を終わらせるためにヴェスパトーレ男爵夫人の申し出を承諾したのだった兔沃。

「わかりました…」
キルヒアイスの素直な返事に納得を見せた男爵夫人は
そのまま手を振って皆の輪のなかへと再び戻っていった。

そんな二人のやりとりを不思議そうに見ていたラインハルトだったが
ふとなにかを思いついたようにキルヒアイスに言葉をかける级及。

「…オマエ乒疏、男爵夫人に頭が上がらないのは知っているが、男爵夫人の事は名前で呼んでいるのだな」
「実は…名前で呼ばないと返事をなさって下さらないのです…それで饮焦、やむなく」

名前で呼ばないと返事をしない…

その言葉でラインハルトは頭の中にひらめきが浮かんだ怕吴。

「それ、だ…キルヒアイス」
「な…なにが县踢、です转绷?」
キルヒアイスの中で長(zhǎng)年親友として付き合っていたラインハルトのその態(tài)度に一瞬嫌な予感を走らせる。

「決めた…オレも今度硼啤、公式の場(chǎng)でもないのにオマエがオレを陛下と呼んだら返事をしないことにする…」
「それは困ります议经、陛下…ッ」

ラインハルトのその言葉にキルヒアイスは慌てて言い返すが
その先を言う前にキルヒアイスはラインハルトに今度は胸倉を捕まれて
さらに追い討ちのような言葉を続けられた。

「いいか…ッ今度オレを陛下と呼んでみろッ…丙曙!オマエに対してのみ不敬罪を適用してやるからなッ」

正直爸业、ラインハルトは禁斷癥狀の間キルヒアイスと身體を重ねる時(shí)、
陛下と呼ばれたのが思い出したくないほど嫌だった亏镰。

ラインハルトからしてみればキルヒアイスの口からは
もう2度と陛下という言葉は聞きたくないというのが本音だ扯旷。

だが皇帝の立場(chǎng)にある以上それが無理なことはラインハルトにも分かっている。
それでもなお返事を返さないキルヒアイスにまわりからの仲介が入った索抓。

ロイエンタールである钧忽。

「…オマエの負(fù)けだな毯炮、キルヒアイス。まあ耸黑、別にいいではないか…
オレ達(dá)も公式の場(chǎng)以外ではオマエのことは敬稱無しでそのまま呼んでいるのだし」
「だな桃煎。まあ、今更誰も文句など言わんさ…オマエと陛下が幼馴染なのは周知の事実だ」

ロイエンタールの言葉にミッターマイヤーがフォローに入るとそこにいる皆も相槌でそれに答える大刊。

「…ですが为迈、そういう訳にはまいりませんッ」
「そうなのか…?なら缺菌、問題ないな葫辐。キルヒアイス」
キルヒアイスの否定をものともせずに思いもよらない助け舟が入ったラインハルトは
更に強(qiáng)気にキルヒアイスにニヤリと笑ってそう答えたのだった。

まだ伴郁、キルヒアイスは納得のいくところではなくラインハルトにも曖昧に頷くしかない耿战。

話のきりのいいところで落ち著いたのでラインハルトはその腰をあげた。

「…なら焊傅、オレは姉上を連れてそろそろ部屋へと引き上げるとしよう…
今日は剂陡、楽しい時(shí)間を過ごさせて貰った、皆に禮を言う」

ラインハルトは皆にそういうと笑って禮を述べた狐胎。
皆も後に続いて立ち上がり禮をもってそれに答える鸭栖。

ラインハルトが噂話の禮とばかりにミュラーに言葉をかけた。

「そうだ…ミュラー顽爹。こういうのは纤泵、どうだ觉增?」
「え…灵巧?」
ミュラーがラインハルトのその言葉に顔を上げた時(shí)のことだった。
ラインハルトが隣にいるキルヒアイスの唇に軽く自分のそれに觸れさせたのだ许师。

「陛肉渴、下…っ9!」
キルヒアイスが驚きの聲をあげてその口元を手で覆った同规。

その言葉に睨みを効かすようにラインハルトが下から見上げてキルヒアイスを見つめ返す循狰。

「今、なんていった…券勺?」
「ライン绪钥、ハルト様…なんて、ことを…」
慌てて名前で呼び直したキルヒアイスがわなわなと震えだす様子を
ラインハルトは悪戯に成功した子供のような笑い聲でそれを受け止めた关炼。

これは男爵夫人にまんまとその唇を奪われてしまったキルヒアイスに対する
ラインハルトの嫌がらせもかねてのことだったのである程腹。

「ははは…っこれで、また噂のタネが出來たじゃないか」
「笑い事ではありません…ッそれでなくとも私達(dá)儒拂、昔からよからぬ妙な噂が流されているのに…ッ寸潦!」

ラインハルトは怒るキルヒアイスがまた可笑しくて笑い聲が止まらない色鸳。

「ラインハルト様、あなた酔っていらっしゃいますね<命雀?
一體、どのくらいお酒をお召しになったのです斩箫?」
「ふふ…これで2本目吏砂。だが、オマエが早く男爵夫人を送ってこないとなると
部屋でまた1本空けることになる…だから乘客、早くいってこい」

笑いながらラインハルトはそういって皆に手をあげるとアンネローゼの元へと立ち去っていってしまった赊抖。

その後、取り殘された提督達(dá)とキルヒアイスは異様な沈黙に覆われていた寨典。

「あの…提督方。陛下は房匆、酔っておいでなのです耸成、よ?」
だが額に手をやってそう弁明するキルヒアイスの聲は
途方にくれてしまった提督達(dá)の耳に入ることはなかったようである浴鸿。

”ああ…ッ一體どうしてくれるのですか井氢、ラインハルト様!”

ラインハルトが去った後岳链、提督達(dá)のいるテーブルに殘されたキルヒアイスは
そのまましばらく気まずい空気の中に曬される羽目になってしまったのだ花竞。

男爵夫人からのお呼びの聲がかかるその時(shí)まで。

その後キルヒアイスは男爵夫人を屋敷まで無事送り屆けるとそのまま再び獅子の泉へと戻った掸哑。

そして大きな溜め息をつきながら自分の部屋へ入ったところで
キルヒアイスは自分のベッドの上にいるラインハルトの姿を見つける约急。

悪魔を憐れむ歌/終章?5.獅子は微睡む-2
「…なにをなさっておいでです?ラインハルト様」
「オマエのベッドで一人酒盛りをしているんだが…見て分からないのか苗分?」

ラインハルトはけろりとした口調(diào)でそう言ってのけたが厌蔽、
流石にキルヒアイスもそこで引き下がりはしなかった。

「もう摔癣、駄目です…ラインハルト様奴饮、今夜はお酒の量が過ぎますよ」
「…ふむ、今度はアル中にでもなるかな」
ラインハルトは今夜とてもいい酒を飲んだようだった择浊。
気分がいいのかラインハルトからはこれまでにない安堵の表情が見て取れる戴卜。

「冗談ではありません、まったく…」
そういってキルヒアイスがラインハルトが手に持ったワインを取り上げると
そのまま部屋のワインセラーへと片付けた琢岩。

「キルヒアイス…」
ベッドの上で膝をたて両手を開いてラインハルトがキルヒアイスを招く投剥。
その聲に導(dǎo)かれるままキルヒアイスはベッドに腰掛けるとラインハルトを抱きしめると
ラインハルトがキルヒアイスのその背に腕をまわした。

「…もう粘捎、隨分とオマエの背中に觸れてない薇缅。ずっと危彩、こうしたかった…」
「そうですね…貴方がつけた背中の爪跡、もうすっかり消えてしまいましたよ」

二人が身體を重ね始めてからラインハルトによってキルヒアイスに時(shí)折つけられた背中の傷跡は
ほとんど絶えることはなかった泳桦。

だが汤徽、今回の件でその傷跡はすっかりキルヒアイスの背中から消えていた。

ラインハルトがキルヒアイスの背中にその指と辿らせ
キルヒアイスがラインハルトの感觸を確かめるようにラインハルトを掻き抱く灸撰。

それはまるで互いの存在を溫もりで確認(rèn)しているような抱擁だった谒府。

ラインハルトがキルヒアイスの頬を挾みこむとそのまま自分の唇をあわせた。
そのまま唇をわずかに離してラインハルトはキルヒアイスに小聲で囁く浮毯。

「また完疫、つけていいか…?」
ラインハルトの言葉にキルヒアイスはラインハルトの手を自分の背中に回させて
唇を重ねることでその答えを返したのだった债蓝。

そのまま月明かりに照らされた二人の影が部屋の中で折り重なった壳鹤。

二人は先を急ぐように互いの服を脫がしあいその肌を求めあう。
そしてかつて身體を重ねた時(shí)のようにキルヒアイスはラインハルトの肌を愛しんでいく饰迹。

手で芳誓、唇で。その溫もり全てで啊鸭。
ああ…自分はこれが欲しかったのだと锹淌、互いがそう感じていた。

言葉だけでは伝わらない溫もりと赠制、觸れ合うことでしか感じられない労わり赂摆。
身體を重ねるときの一體感とその時(shí)一緒に重なるその心こそ今二人が求めていたものだ。

二人は幼年學(xué)校の頃から身體を重ねてきた钟些。
傍にいるだけでは足りない何かを埋めるように今まで互いを求め続けてきたのである烟号。

今、身をもって二人はそれを感じていた政恍。
それは身體だけでは埋まらないものであり褥符、だが心だけでもそれは足りないものだった。

「…今まで抚垃、この溫もりなしで…どうやって喷楣、夜を過ごしてきたのか分からない」
「私もです…ラインハルト様」
同じ夢(mèng)をみよう…そういったのはやはり幼年學(xué)校時(shí)代の時(shí)の話だ。
それから二人は同じ夢(mèng)を共有しながら供に夜を過ごしてきた鹤树。

時(shí)にこんな風(fēng)に身體を重ねて铣焊。

ラインハルトの左胸に唇を寄せるとキルヒアイスはその胸の飾りを唇で吸い上げると
ラインハルトはその背を逸らしてキルヒアイスの頭を抱え込んだままそれを受け止める。

「ん…ッ」
両手で胸の尖りに愛撫をしながらキルヒアイスの舌がそのまわりを辿って下へと降りてゆき
やがてそれはラインハルトの下肢に及んだ罕伯。

ベッドに腰掛けていたキルヒアイスの愛撫を膝を立てて受けていたラインハルトだったが
すでに膝は下肢の熱により立っているのがやっとの狀態(tài)だった曲伊。

「ふ…う、んんッ」
キルヒアイスに自身を含まれるとたちまち膝から力が抜けてしまったが
キルヒアイスの両手によって支えられた身體は
そのままベッドに腰を下ろしてしまうことが出來ない。

ラインハルトはキルヒアイスの髪を震えた手で摑みあげながら惜しみなく與えられる愛撫を堪える坟募。

「あ岛蚤、ああ…んッキルヒ、アイスッ」
ラインハルトの聲でその限界を悟ったキルヒアイスが
そのままラインハルトを口に含みながらその指先をラインハルトの奧へと忍ばせた懈糯。

「んッあ…は」
両手の指に入り口を撫でられてそのままキルヒアイスの指を奧へと受け入れると
ラインハルトはそれに堪えきれずにキルヒアイスの口の中へ自身を解放させてしまう涤妒。

「や…ああっ!」
「ライン赚哗、ハルト様…」
指を奧に差し入れたまま下から仰ぎ見るようにキルヒアイスがラインハルトを呼んだ她紫。

その言葉に答えるようにラインハルトはキルヒアイスの眉間に唇を寄せると
そのままラインハルトは身體を屈ませてキルヒアイス自身をその口に銜え込む。

「ん屿储、う…ッ」
ラインハルトはキルヒアイス自身を口に銜えこんだままキルヒアイスの指先を奧へと受け入れていた贿讹。
時(shí)折キルヒアイスから漏れる熱く低い聲が心地よくラインハルトの耳に屆く。

「…ラインハ…ルト够掠、様」
キルヒアイスの呼ぶ聲にラインハルトはその名を呼ばれる幸せに浸っていた民褂。

「もう…しい、です疯潭。ライ助赞、ンハル…ト様」
キルヒアイスの苦しそうな聲にラインハルトが顔を上げる。

かすかに屆いた聲にラインハルトは笑みを浮かべ
その褒美を與えるようにキルヒアイス自身から口を離して
そのままキルヒアイスを奧へと受け入れる袁勺。

「…あッんん」
ラインハルトが苦しそうな聲を上げながらゆっくりと腰を下ろしてキルヒアイス自身を飲み込んでいく。
そしてその全てを飲み込んでラインハルトはキルヒアイスの大腿に腰を下ろした畜普。

熱に浮かされたまま二人は視線を合わすと
そのまま引き合うように唇を深く重ね期丰、舌が絡(luò)み合うと同時(shí)に腰が動(dòng)き始める。

キルヒアイスを飲み込んだラインハルトの奧が熱くそれに絡(luò)みつき
腰の動(dòng)きにあわせて貪欲に貪り始めた吃挑。

ラインハルトの熱い內(nèi)部に締め付けられて眩暈を覚えながらキルヒアイスは
ラインハルトの身體を抱えたまま下から突き上げてそれに答える钝荡。

ラインハルトは嬌聲を上げ続けキルヒアイスの背に爪をたてて更にキルヒアイスを求めた。

「…んっ…もっと…あ舶衬、あんっ」
一つになった二人はそのまま自分に足りない何かを補(bǔ)うように互いを求め続けたのだった埠通。

「ずっと…ずっと、欲し逛犹、かった…」
「…もっ端辱、と」
二人を捕らえる熱は中々その治まりを見せず、時(shí)間を忘れて身體を重ね続けた虽画。

「このまま…離れたくない舞蔽、な」
キルヒアイスの上に重なるように身體をうつ伏せにしているラインハルトは
そんな言葉を口にしながら自分の奧に受け入れたキルヒアイスを決して解放しようとはしない。

その言葉に答えるようにキルヒアイスもまた
ラインハルトに何度も唇をあわせてそれに答えた码撰。

觸れるような口付けから離す度にその角度をかえ徐々に深く舌を絡(luò)ませていく渗柿。
互いの熱は治まるどころかさらにその高まりを見せるばかりだった。

”ずっと脖岛、か…本當(dāng)にそれが葉うものなら”

キルヒアイスがそんなことを考えながらラインハルトの顔を自分の方へと向けさせると
自分の唇を辿るキルヒアイスの指先をラインハルトがその手にとって愛おしそうに口付けた朵栖。

「…そんな顔を颊亮、するな。キルヒアイス…オマエの言いたいこと陨溅、
オレが分からないとでも思っているのか终惑?」

後継者問題である。

皇帝となったからにはその世継ぎが必要になる声登。
近頃では見合いの話が嫌でもラインハルトの耳に入ってきていた狠鸳。

ラインハルトの皇帝としての最終目標(biāo)は皇帝を必要としない自治を作り上げることにあった。
だがそれはまだまだ一代では不可能なことであり悯嗓、時(shí)間が必要なものだ件舵。

「…オレに、女が抱けると思うか脯厨?」
「世継ぎは必要です…私があなたを抱くように抱けばいい」
キルヒアイスの言葉にラインハルトが信じられないものを見るように見つめ返す铅祸。

「オマエ、それ…本気で言っているのか合武?」
「勿論…それでも私はずっと貴方の傍にいて貴方を想い続けることしか出來ないでしょうけれど」

キルヒアイスはそういって自分の頬に當(dāng)てられているラインハルトの手を
両手で握り締めながら目を伏せて答える临梗。

「では仮に…オレが皇妃を娶ったとしよう。その子供稼跳、オマエは愛せるのか…盟庞?」
「愛せます…他ならぬ貴方の血を分けた御子です。
きっと…貴方に似て天使のように美しい御子であることでしょう」

”強(qiáng)い貴方の傍に在るために…私は今よりさらに強(qiáng)くならなくてはならない汤善。その全てを許せる強(qiáng)さを…”

ラインハルトはキルヒアイスの全てを許すという什猖。
だからキルヒアイスもラインハルトの全てを許せとラインハルトは言うのだ。

この事件を経て二人は互いの存在に勝る
確かで大切なものなどこの世のどこにもないことを知った红淡。

キルヒアイスの即答にラインハルトはキルヒアイスの新たな決意を再確認(rèn)した思いだった不狮。

実際そのような事態(tài)になればやはりどちらも苦しむだろうが
キルヒアイスにとってラインハルトの存在そのものとその問題は比べられるものではないことなのだ。

ラインハルトにとってキルヒアイスの存在がそうであるように在旱。
キルヒアイスの言葉で改めてそのことをラインハルトは身に染み込ませた摇零。

「…今すぐに、とはいかないが桶蝎。いつか驻仅、オマエにオレの子供を抱かせてやってもいい」
「ラインハルト様…?」
そういいながらラインハルトはキルヒアイスの頬を優(yōu)しく撫で上げる登渣。

「だが…オレはオマエ以外の人間を愛せそうにない…だから雾家、
その子はオレの代わりにオマエが愛してやってくれ」

「………ッ!」
この世の終わりを見屆けたような儚い笑顔でラインハルトはそう告げた绍豁。
だがキルヒアイスにとってそれはこれ以上にない言葉だった芯咧。

キルヒアイスはラインハルトのその言葉に熱い抱擁をもってそれに答える。

”この想い、今まで何度身體を重ねてもあなたに言葉で伝えることがどうしても私には出來なかった敬飒。
だがあなたはそれをいともたやすく口に出來てしまうのですね…こんな時(shí)私はいつもあなたには
永遠(yuǎn)に敵わないのだということを思い知らされる…”

その後邪铲、二人はベッドにその身を橫たえさせながらいろんな話をした。

出會(huì)ったときのことから今までのことまで
それはまるで御伽噺を話すように二人は夜を明かす程語り続けた无拗。

そして二人が最後に話した事带到。

「…それって、いわゆる駆け落ちです英染、か…揽惹?」
「そう…いつか、全てを終わらせることが出來たら二人で誰もいない遠(yuǎn)い所にいこう」

それは幼年學(xué)校にいた頃二人で語りあった夢(mèng)の話だった四康。

「宇宙を手にいれるのに10年余り…あと10年でそれを成し得ないなんてオマエは言わないよな搪搏?
これから先もオレ達(dá)に葉わないことなんて、ない」
「ライン闪金、ハルト様…っ」

ラインハルトはそうしてキルヒアイスの頭を撫でながら
最後に話をこう締めくくったのだった疯溺。

「…それまではオレが皇帝を続けてオマエを食わせてやる。
だがそれから先オレは働かないからな…オマエに養(yǎng)って貰うことにする哎垦。
だからその時(shí)がきたら今度は囱嫩、オマエの夢(mèng)を二人で葉えにいこう?」漏设、と墨闲。

二人はこの時(shí)からまた新しい夢(mèng)を見始める。
その夢(mèng)もまた今の二人には先の見えない遠(yuǎn)い未來のことだ郑口。

だがその手で夢(mèng)を?qū)g現(xiàn)させて宇宙を手にいれたように
今度の夢(mèng)もまたきっと二人は葉えることが出來るだろう鸳碧。

暗闇の開けた獅子の泉に靜かにその年の初雪が舞い降り
その雪を眺めながら二人はやがてくる新たな年を迎えようとしていた。

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