陽の光 闇の月

陽の光 闇の月

陽も月も異なれど脓魏、同じように地上を照らす。けれど览妖、両者は決してまみえることはない轧拄。陽が輝くとき月は闇に隠れ、月が輝くとき陽は沈む讽膏。

でも、もし拄丰、両者がほんの少しでも近づいてしまったなら府树、どうだろうか俐末。地上を照らす光は強力になり過ぎて、総てを焼き盡くすだろうか奄侠。それとも卓箫、互いの光で破壊されてしまうだろうか。

だからそんな事垄潮、恐ろしくて出來ない烹卒。

互いの光に焦がれ、傍に近寄りたくとも弯洗、想像も出來ない破滅への道が続いているようで恐ろしい旅急。だから、このまま牡整。何億年藐吮、時を費やしてもこのまま。

両者は天秤の上逃贝∫ゴ牵互いを侵食しないように、生きている沐扳。

微妙な均衡を保ち泥从、互いを取り巻く支軸が動かない事を祈りながら……

陽の光 闇の月 -1-

窓を閉め切っていても、どこからか冬薔薇の甘い芳香が寢室に漂う沪摄。

わずかに開いているカーテンの隙間から歉闰、夜光が差し込んで、辛うじて形の輪郭を照らしていた卓起。

靜まり返った部屋に和敬、キンという金屬音が響いて、小さな炎が浮き上がる戏阅。

咥えた煙草の先端が炎に照らされて昼弟、赤く燃えはじめた。いっそう赤く燃えたかと思うと奕筐、儚げな淡い火に変わる舱痘。

味わうように、ゆっくりと煙を肺に送り込んで离赫、ロイエンタールは小さく溜息をもらす芭逝。

背に枕をあてがって起こした上半身は、傍らに眠る相手を見た渊胸。

流れるような金色の髪の毛を枕に波打たせ旬盯、何も著ていない白い肩が、シーツの端からのぞいている。強引に引き寄せたのか胖翰、腕は覆われているが接剩、背中が肩甲骨の辺りまで見えていた。

ロイエンタールに背を向けて萨咳、靜かに寢入る皇帝は懊缺、明らかに情事の後。

深く煙を吸い込みながら培他、白く滑らかな背中を見つめて煙を吐き出す鹃两。

恐ろしいほどの靜寂が寢臺を取り囲み、煙草の葉の燃える音が妙に響いた舀凛。

花の俊扳、冬薔薇の芳香が匂う。

……我が皇帝……眠ってなどいないでしょう腾降。ここの所拣度、貴方はそうやって壁を作り、俺をわざと遠ざける螃壤。キスすら抗果、さり気なく顔をそらして避けている。最初は奸晴、こうではなかったはずだ冤馏。思う存分、イかされた後は俺の腕の中で眠っていたでしょうに……

煙草の灰を寄啼、傍らにあったワインの空き瓶に落として逮光、二度目の溜息をもらした触幼。

……その背中は惜辑、愛撫以外をすべて拒絶している。抱き寄せられる事も簇捍、ましてや乙帮、手をかけて振り向かせる事など杜漠、もっての外……

半分しか吸っていない煙草を瓶の中に落とすと、半身を起こしたままの姿勢で察净、表情の読み取れない後ろ姿を見遣った驾茴。

重心が少し動いて、寢臺のスプリングが僅かに揺れる氢卡。

一瞬にして锈至、寢室の空気が張り詰めた。

背を向けた姿が译秦、全神経を集中させてロイエンタールの一挙一動に峡捡、耳を傾けている击碗。

金銀妖瞳の整った顔に、眉が寄る棋返。

……そんなに延都、俺を拒絶なさりたいか雷猪。ならば何故睛竣、あの日から一年半もの今に至るまで、関係を続けようとなさるのか求摇。

あの日―――ジークフリード?キルヒアイスが死んで一年後のあの日射沟、初めて貴方を抱いたあの夜。貴方は俺を欲したではありませんか与境。その後も验夯、事あるごとに俺を呼び寄せ、意識を手放すまで抱かせたではありませんか摔刁。

あの頃は挥转、拒絶などなかった。むしろキルヒアイスを忘れる為共屈、激しく俺を求めたではありませんか绑谣。

何が至らなかったのですか?

俺の何が気にいらなくて拗引、拒絶なさるのか……俺は借宵、その訳が知りたい……だが……我皇帝……その訳を知ったところで、俺をもう一度求めてくださるのか……

ロイエンタールは矾削、三度目の深い溜息を吐いた壤玫。

視線の先に、冷え切った華奢な肩が見えて哼凯、無意識に手を伸ばす欲间。

その瞬間、わずかに肩が震えた断部。

伸ばした手が反射的に止り猎贴、ロイエンタールに自嘲めいた笑いが込み上げた。

……それほどまでに家坎、拒絶なさりたいか……

ならば嘱能、いっそ肩に手をかけて、振り向かせてみようか虱疏。と惹骂、ロイエンタールは思った。少しの間本気でそう考えたのか做瞪、一切の動きが止まる对粪。

張り詰めた空気が更に糸を張り右冻、呼吸すらままならない。

やがて著拭、小さく頭を振ってシーツを引き上げると纱扭、のぞいていた肩と背中を覆い隠した。

かける言葉もなく寢臺から出ると儡遮、手際よく軍服を著始めた乳蛾。

最後に慣れた仕草で青いマントを肩にかけると、視界の端で皇帝を振り返った鄙币。波打つ金髪が見えるだけで肃叶、動く気配はない。

ロイエンタール本人も気付かぬほど十嘿、小さく溜息を吐いて因惭、そのまま寢室を出て行った。

しんと靜まり返った寢室に绩衷、扉のロックのかかる音がした蹦魔。

皇帝―――ラインハルトは、やっと背中の緊張を解いた咳燕。息も張っていたのだろう勿决、肺からゆっくりと空気を吐き出して、仰向けに向き直った迟郎。

眠気など一切ない剥险、澄みきった蒼氷色の瞳が天を仰ぐ。

空っぽになった肺に空気を送り込んで靜かに呼吸し始めると宪肖、まだ溫もりの殘るシーツの波間に視線を落とした表制。

そして、先ほどまでの存在を確かめるように手を伸ばす控乾。

「……まだ么介、溫かい……」

吐息のような獨り言をこぼすと、伸ばした手はシーツを引き寄せた蜕衡。

美しい眉間に深い皺が刻まれる壤短。

ゆっくりとだるそうに半身を起こして、ローブを引き寄せる慨仿。顔を上げないまま久脯、肩にかけて寢臺を出た。

落とした肩が镰吆、どことなく震えているように見える帘撰。

バスルームに入ると、無造作にローブを足元に落として浴室に滑り込んだ万皿。

金色のカランを捻ると摧找、すぐさま湯気の立つ熱い湯が頭上から降り注ぐ核行。金色の髪の毛が湯に濡れ、重そうに肌に張り付く蹬耘。

體を洗うでもなく芝雪、ただ飛沫の下で俯いたまま立ち盡くしている。やがて華奢な體が前に倒れ综苔、それを支えるようにしてタイルに手をついた惩系。

白い內(nèi)腿を伝って、白濁したものが流れ落ちる休里。お湯にかき消され混ざり合っても蛆挫、確かにそれはラインハルトの最奧から流れ出ていた赃承。

俯いた顔が更に俯き妙黍、頭上からは湯が降り続ける。

そのままズルズルとタイルの上を手が滑り瞧剖、その場にしゃがみ込んだ拭嫁。

肩が、震えていた抓于。

「……キルヒアイス……許して……」

……俺は弱い人間だ做粤。お前を失った辛さを誤魔化す為に、彼を……ロイエンタールを利用した捉撮。あいつも怕品、それで良いと言っていた。だけど巾遭、だけど回數(shù)を重ねる度に肉康、何もいらないと言ったあの目が、俺を求めるんだ灼舍。

俺の何が欲しいっていうんだ吼和?これ以上、何を求めるんだ骑素?このままでいいじゃないか炫乓、お前は何を越えようとしてるんだ?

なあ献丑、キルヒアイス末捣。キルヒアイス教えてくれ、あいつは何を求めてるんだ创橄?

熱い湯が箩做、降り続く。跳ね返った水滴が筐摘、湯気とともにラインハルトを覆って行く卒茬。

……俺は怖い船老。何時あいつが、何を言い出すのか……怖い圃酵。

今更俺が何をやれるって言うんだ柳畔。俺の総てはキルヒアイス、お前に捧げてしまってる郭赐。俺の中にはキルヒアイス薪韩、お前一人いれば十分なんだ。もう捌锭、他には誰もいらない俘陷。なのに、あいつは入って來ようとする观谦。俺とお前の二人っきりの世界に拉盾。

降り注ぐ湯が、髪を伝い頬を伝う豁状。幾筋も幾筋も捉偏、後を追うように伝う。それは泻红、降り注ぐ湯なのか夭禽、蒼氷色の瞳から溢れる涙なのか判らない。

……俺はそんなの嫌だ谊路。許せない讹躯。だけど、どうやって止めたらいいか分からないんだ缠劝。怯えながら潮梯、この微妙な均衡が崩れないように祈ってるだけ。

怖くて怖くて、どうしたらいいか解らない。

降り注ぐ先に向かって顔を上げる霎挟。硬く閉じられた瞳。美しい顔に似つかわしくない眉間の刻み沃饶。

熱い湯が、頬から伝い落ちた轻黑。

……だけど糊肤、一番許せないのは、あいつの侵入を拒めないでいる俺氓鄙。この體に焼き付いてしまった行為を馆揉、手放せないでいる俺。

なあ抖拦、キルヒアイス升酣。お前の命を奪っておきながら舷暮、こんな身勝手な俺を、お前は許せないよな……

熱い湯が噩茄、降り続く下面。

跳ね返った水滴が、湯気とともにラインハルトを覆った绩聘。

つづく…

はああ沥割。。凿菩。暗いタルトの中を歩行中だってのに机杜、自分からまた暗い道に突入してますね(笑)

もう、3ヶ月以上もほったらかしにしていた黒金です衅谷。まだ頭ン中出來てません椒拗。

なのに書く馬鹿者……あがいてあがいて書き毆れっつー感じですかね。それと会喝、月はたぶん反射して光ってるんですよね陡叠、冒頭……気にしないでください。只の雰囲気です肢执。

さて、壁紙は萌えてやまないテトラさまに頂いた黒金を译红、ちょいと拝借しました预茄。もともと、テトラさまの黒金を見て侦厚、一念発起した話耻陕。何度も挫折しそうになって、そのたびにこの黒金に助けられました(と刨沦、書いて「妄想かき立てられました」と読む)ならば诗宣、いっそ壁紙にしちゃえ…

駄文ながら、テトラ畫伯に捧げます想诅。

(2003/4/8)

人は召庞、手に入らぬものほど欲しくなるのか。人は来破、逃げるものほど追うものなのか篮灼。

  それは本能。理性では徘禁、どうにもならない本能诅诱。

  人は、與えられるものに飽きる送朱。人は娘荡、與えられたものに慣れる干旁。

  それは欲。取りとめもなく増殖して行く欲炮沐。

  両者は天秤の上疤孕。果たして、どちらが人を支配するのか央拖。

  支配された後に訪れるのは―――廃頽祭阀、或は破滅。

陽の光 闇の月 -2-

最近鲜戒、噂を聞いた专控。また、あいつは女を捨てたそうだ遏餐。自宅にも一人伦腐、住まわせているとも聞く。噂は噂失都。あいつの場合柏蘑、半分當(dāng)たっていれば良い方だろう。

それに粹庞、俺が咳焚、口を出すことでもない。付き合っている訳ではないのだから庞溜。

でも革半、自宅に女がいるというのは本當(dāng)だろうか。あの流码、求めるような目で又官、女も見ているのだろうか。

一瞬漫试、あの金銀妖瞳が鮮明に浮かび六敬、ラインハルトは硬く目を閉じた。

関係した相手がいながら驾荣、他にも関係を続ける……俺には出來ない外构。

否、俺も同じか秘车。唯一と誓ったキルヒアイスがいながら典勇、彼と関係を続けている。

同じ事か叮趴。

俺はどうしてそんな事が出來るんだろうか割笙。なんでキルヒアイス獨りじゃいられないんだろうか。

それは……

思い至った答えに責(zé)められているような気がして、心の中で頭を振る伤溉。

……それは般码、一方で得られないものを、もう一方で補おうとしているから乱顾。キルヒアイスで得られない溫もりを板祝、ロイエンタールで補おうとしているだけ。ならば走净、俺と関係を続けながら券时、他に女が切れないのは、彼もそうだと言う事か伏伯。

得たいのは何だ橘洞?補うのは俺か、女か……

「陛下说搅、陛下……」

不意に聲がして炸枣、ラインハルトは顔を上げた。

心配そうに見つめるフロイライン マリーンドルフがそこにいた弄唧。彼女は适肠、皇帝が正気に戻ると、ホッとしての視線を走らせた候引。

無意識にラインハルトの視線も侯养、それを追う。

「あ……」

サインを求められている文書に背伴、羽ペンのインクが滲んでみっともない染みを作っていた沸毁。

慌ててペンを引き上げたものの、染みは元通りにはならない傻寂。執(zhí)務(wù)と関係の無い私情に気をとられ、大切な文書は臺無しになっていた携兵。

珍しい皇帝の姿に疾掰、フロイラインはどうしたものかと小首を傾げる。

今更元通りになろうはずもない染みを見つめたまま徐紧、動かない皇帝静檬。

「陛下。少しお疲れではございませんの并级?今日は天気もよろしゅうございますから拂檩、少し薔薇園でも散歩なされてはいかがかと。いい気分転換になりましょう」

山積にされた書類と嘲碧、フロイラインの微笑む顔を交互に見遣る稻励。そこに、やさしい言葉の影に、一度言い出したら聞かぬ頑固さを見出して望抽、ラインハルトは苦笑いした加矛。

意地を張っても、今の狀態(tài)では何事も上手く行くまいと煤篙。

気を取り直すため斟览、溜息を小さく吐く。それから辑奈、思い出したようにペンを置いた苛茂。

「……そうだな。そうしよう」

諦めにも似た曖昧な表情を浮かべて鸠窗、差し當(dāng)たって目を通しておかなければならない妓羊、急ぎの書類を何枚か摑むと席を立つ。

窓の外は暖かい日差しで輝いている塌鸯。

「エミールを侍瑟、お連れなさいますか」

「いや、いい丙猬。一人でゆっくりして來よう」

ラインハルトは目を細めて涨颜、窓の外を見つめた。

……あの光の中に行けば茧球、少しは気分も晴れるかもしれないな庭瑰。

「ああ、そうだった抢埋。フロイライン弹灭、ビッテンフェルトを呼んであるから、來たら庭へ來るように言ってくれ揪垄。あいつは穷吮、待つ事を知らんだろうからな」

さっきまでの物憂げな表情は姿を消し、窓の日差しにも似た影を殘す饥努。

フロイラインは捡鱼、颯爽と部屋を出て行く皇帝を見送った。

ドアが閉まり酷愧、執(zhí)務(wù)室には獨り驾诈。

途端、彼女の表情は曇り溶浴、深く長い溜息を吐いた谬晕。

……陛下丰歌。ここの所何について、そう、お悩みですの姆坚?気がつけばいつも眉間に皺を刻まれて、考え込んでいらっしゃる。それに體調(diào)も優(yōu)れぬご様子。私噩翠、心配でなりません。

亂れてもいない襟元をただしながら邦投、頭を振る伤锚。

自分ではどうしようもないと諦めているのか、何も力にもなれないと嘆いているのか志衣、それとも屯援、自分を頼ってくれない事への不満なのか、彼女はさまざまな思いを振り払おうとした念脯。

道理で窓を閉めていても狞洋、薔薇の香りが部屋へ充満するわけだ。

ラインハルトは绿店、鼻にまとわりつく甘い薔薇園を歩いた吉懊。高く覆い茂った幹は、自分の背丈をゆうに越え假勿、美しい姿をすっぽりと隠す借嗽。

細く何処までも続く散策路を進むと、大きな樹の下に出た转培。ちょうどいい具合に陽が遮られ恶导、暖かな風(fēng)が頬をかすめる。

ラインハルトは樹の下に腰を下ろした浸须。

見上げれば惨寿、葉の間から輝く陽の光が見える。

心地よさそうに删窒、甘い空気を肺いっぱいに吸い込んで裂垦、手にした書類に目を落とした。

視線は確かに文字を追った肌索。けれど缸废、何が書かれているのか、少しも理解できない驶社。

脳裏を霞めるのは、彼の顔测萎。

左右違う瞳の色で亡电、自分を見つめる彼の顔。

浮かんでは消える硅瞧。否份乒、消し去りたい彼の顔。

甘い芳香の風(fēng)が、金色の髪をなびかせ或辖、ラインハルトは深い溜息を洩らした瘾英。

いい加減、振り切らねば執(zhí)務(wù)に支障をきたす……重く圧しかかる気がかりに颂暇、眉間の皺が深まる缺谴。

「陛下、陛下こちらにおいででしたか……」

ハッとして見上げれば耳鸯、橙色の髪の毛を揺らしたビッテンフェルトが駆け寄ってくるのが見えた湿蛔。

そう言えば薔薇園にいると、呼び寄せたのは自分だったと思い出す县爬。

大きな體を上下させて阳啥、大股に近付いて來る臣下。

降り注ぐ陽の光を浴びて财喳、輝いて見える臣下察迟。

彼には、自分のように耳高、心から愛した相手を自分の手で死に追いやり扎瓶、別の相手と関係を続けるなど、考えられないだろうな祝高。

お前は陽の下を歩いている……

大股で傍まで來ると栗弟、ビッテンフェルトは片膝を付いて頭を垂れた。

「ご苦労工闺。もう少しで読み終えるから乍赫、しばらく待て」

皇帝の命令に、彼は素直にそのままの姿勢で待った陆蟆。

書類に目を通しながら雷厂、視界の端に映る彼を見る。

ただじっと叠殷、忠実に命令に従っている改鲫。降り注ぐ日差しが橙色の髪に反射して、より赤く見えた林束。

少しの迷いもなく待ち続ける彼像棘。何の見返りも求めず、ただ真っ直ぐな忠誠を捧げてくる彼壶冒。そんな臣下をラインハルトは眩しい目で見ていた缕题。

不意に、強い風(fēng)が吹き荒れ胖腾、手にした書類をさらっていく烟零。ああ瘪松、と、手を伸ばすが锨阿、それは虛しく宙を摑んだ宵睦。

かしずいたまま風(fēng)を遣り過ごしたビッテンフェルトが、慌てて目の前を飛んでいく書類に向かう墅诡。方々に飛ばされた紙を壳嚎、一枚一枚丁寧に掻き集める。

やがて书斜、総て集め終えた臣下が得意げにやって來た诬辈。ラインハルトは受け取ると、枚數(shù)を確認する荐吉。

「一枚……足りない」

はっ焙糟。素早く身を翻し、足りない一枚を探しまわる样屠。

大きな體を屈めて穿撮、時に四つん這いになって、植木の陰や痪欲、樹の高所を探しまわる悦穿。

―――なんだか、犬みたいだな业踢。それも大型犬のようだ栗柒。

ラインハルトは、何故か唐突に思った知举。

……飼い主の放ったものを瞬沦、忠実に探しに行く犬。ビッテンフェルト雇锡、お前にはすまないが逛钻、お前に尻尾があるとすれば、それはふさふさと大きな尻尾だろうな锰提。一生懸命ちぎれるくらいに振って曙痘、命令に忠実に従っていく……クスクス……

急に笑いが込み上げてきた。それはやがて我慢しきれなくなり立肘、聲を伴った笑いに変わる边坤。

やっと殘りの一枚を探しあてた臣下が、怪訝そうな顔で近寄って來る谅年。

「陛下惩嘉?」

ラインハルトは、最期の一枚を受け取っても踢故、なかなか笑いを止める事が出來なかった文黎。不思議そうに、困ったように見つめてくるビッテンフェルトの姿を見るに殿较、ますます忠犬のイメージが重なって耸峭、目尻に薄っすら涙が浮かぶほど。

お前のせいではない淋纲。お前が可笑しくて笑っているのではない劳闹。そう、手で否定をしてみるが洽瞬、込み上げてくる笑いはどうにも止まりそうにない本涕。

最近、笑っていなかった伙窃。別に良く笑う方ではなかったが菩颖、こうして笑ってみると、自分が考え込んでいたことに気付かされる为障。

自分は少し囚われ過ぎていたのかもしれない晦闰。

囚われ過ぎて、息が詰まって鳍怨、身動きできなかったのかもしれない呻右。

実際、何を求められた訳でもなく鞋喇、言われた訳でもない声滥。もしかしたら、単に俺の思い込みで考え過ぎてただけ侦香。

少し距離を置こう落塑。そうすれば、あの金銀妖瞳を恐れるとこはないかもしれない鄙皇。

心が芜赌、體が軽くなった気がした。

相変わらず忠犬ビッテンフェルトは伴逸、飼い主の次の指示を仰ぐ為"待て"をしている缠沈。

まだ笑いの殘る中、ビッテンフェルトに書類を渡し2错蝴、3條件を出す洲愤。すると忠犬は、嬉しそうに尻尾を振って返事をする顷锰。

穏やかな日差しの中柬赐、微笑ましい思いに笑みを浮かべ、もう官紫、行っていいと手を挙げる肛宋。

忠実に従う臣下州藕。

橙色の髪に、背に光を浴びて遠ざかる後ろ姿。

ラインハルトは、忠犬の姿が見えなくなると仲智、天を仰いだ。葉の間から零れる陽の光を眩しそうに見つめる锈死。

久しぶりに感じる穏やかな時間。心のゆとり穆壕。

ビッテンフェルト待牵、お前には感謝しなければならんだろうな……

鼻を霞める甘い芳香に包まれて、ラインハルトは両腕を伸ばして伸びをした喇勋。

つづく…

タルトはまだまだ続いています缨该。てか、段々捻くれて來ました茄蚯。

もう压彭、模索どころではなく、起源から見つめなおせっつー闇の聲に悩まされております渗常。

そんな私に壮不、感想など救いの手を差し伸べて頂けたら嬉しいです。

(2003/4/10)

愛情と狂気は背中合わせ皱碘。

  愛情が強ければ询一、それだけ狂気も育てられる。當(dāng)人の知らぬ間に靜かにそれは増殖し癌椿、ある日突然顔を出す健蕊。

  両者は天秤の、同じ皿の上踢俄。

  微妙な均衡は愛情缩功。上下に振りきれれば狂気。

  では都办、均衡を保とうとする嫡锌、もう一方の皿の上は何なのか……それが変われば、愛情は振りきれて狂気へと顔を変える琳钉。

陽の光 闇の月 -3-

昨日势木、あの女が言った言葉。埒もない歌懒、と失笑したが……

報告と稱して皇帝に面會を求めた啦桌。迎え出るはフロイライン マリーンドルフ。

この女は好きでは及皂、ない甫男。

対峙した瞬間から且改、戦いを挑んでくる。おそらく本人は查剖、そう意識してのことではないだろうが钾虐。俺を警戒している。必要以上に皇帝に近付くな笋庄、と無言のうちに訴える。

所詮倔监、女は感情の生き物直砂。お前がどんなに警戒しても、それが嫉妬ではあることは変わらない浩习【苍荩皇帝の為、この帝國の為と大義名分の仮面を被ってはいるが谱秽、內(nèi)面から滲み出る洽蛀、醜い嫉妬の臭いは消せないさ。

「元帥疟赊、陛下は只今席を外して休んでおいでです郊供。ご報告なら、お伝えいたしますが」

そうやって近哟、間に割り入ろうと牙をむいて來る驮审。

この女は、嫌いだ吉执。

「……いや疯淫、結(jié)構(gòu)。どれくらい休まれるのか」

所詮戳玫、女の淺知恵熙掺。お前の目が一瞬、窓の外へ游いだのを俺が見逃す筈はない咕宿。上手く隠したつもりなのだろうが币绩、あの方が薔薇園にいるとお前が言ったのだ。

「1時間程度だと思いますが」

また來る荠列。と短く告げて足早に退出する类浪。

視界の端で、女の顔が安堵に息を抜いたのが見えた肌似。

気付かなかったが费就、外はこんなに眩しいのか。それに川队、この噎せ返る花の匂い力细。

ロイエンタールは高い幹に咲き亂れる薔薇に觸れ睬澡、その匂いを嗅いだ。

手にするは真紅の花眠蚂。肉厚な花びらに觸れる煞聪。しっとりと弾力がって、滑らかな表面逝慧。爪が觸れると直ぐに傷ついてしまう昔脯。

―――あの方の、肌のようだ笛臣。

情交の手觸りを思い出して云稚、ふと苦笑いをもらす。

あの方は真紅というより沈堡、そう静陈、こちらの方が相応しい。

少し先に見える純白の花弁を見止め诞丽、歩み寄る鲸拥。同じ薔薇の花。見た目にも同じ品種のように思われた僧免。けれども刑赶、その白い花だけ特別な様に見える。真紅の噎ぶ匂いではなく猬膨、ほのかに漂う芳香角撞。気品があって、清らかで気高い勃痴。何人たりとも谒所、膝を折らずにはいられない輝き。

ロイエンタールは沛申、純白の花弁に皇帝の姿を重ね合わせた劣领。

ゆっくりと指先を伸ばす。

觸れるか觸れないかの距離で铁材、突然尖淘、強風(fēng)が吹き荒れ、花は激しく嬲られた著觉。無殘に傷つき村生、何枚かの花びらが飛び散っている。

彼は結(jié)局饼丘、觸れないままに手を引いた趁桃。

尚吹く微風(fēng)に揺れる花。傷つき儚く見える花。大輪を誇った姿はもう何処にも無い卫病。それでも油啤、失われることの無い気品。

俺には蟀苛、やはり觸れることは許されないのか……

ロイエンタールは深い溜息とともに益咬、小さく頭を振った。

不意に帜平、風(fēng)に乗って話し聲が聞こえた幽告。耳を澄ませば、それは聞き慣れた聲裆甩。自然と足が動く评腺。覆い茂る花をかき分け、棘を避けながら散策路を歩む淑掌。

すると、茂みの影に見覚えのある橙色の髪の毛が見えた蝶念。しかも隨分と低い位置で抛腕、チラチラと動いている。一體何をしているのだろうか媒殉。あの位置では担敌、恐らく地を這っている事になる。

開けた場所に出た途端廷蓉、大きな樹の下に咲く全封、白い薔薇の花を見つけて思わず身を隠した。

―――笑っている桃犬。

手を口許にあてて刹悴、クスクスと肩を震わせている。何がそんなに面白いのか攒暇、視線の先をたどればビッテンフェルトがいた土匀。

彼は巨體に似合わず、四つん這いになって茂みを漁っている形用。別段面白い光景には見えない就轧。

すると今度は聲が漏れてきた。紙を握った手を腹部に置いて田度、もう片方の手で口許を覆っている妒御。

―――貴方は、そんなに笑う方だっただろうか镇饺。

あった乎莉、ありましたぞ!の聲と共に、紙を手にしたビッテンフェルトが駆け寄ってくる梦鉴±蠲#皇帝はそれを受け取りながらも、笑いが途切れない肥橙。

口許を覆った方の手で魄宏、手を振って否定している。多分存筏、お前のせいではない宠互。などと言ったところか。

不思議そうに佇むビッテンフェルト椭坚。

尚も両手を腹部に置いて予跌、笑い続ける皇帝。

そこには善茎、自分とは決して共有する事が無い空間が広がっていた券册〗⒃埽皇帝とビッテンフェルトだけに許された空間疟丙。そして、自分には見せることの無い表情施绎。あんなにも無防備に耕赘。あんなにも真っ直ぐに向けられる視線骄蝇。

どうして自分には向けないのか、なぜ自分には許されないのか操骡。問いたい疑問が次々と浮かぶ九火。

あの時貴方は「忘れさせてくれ」と、仰ったではありませんか册招。だから俺は岔激、全身全霊をかけて貴方に盡くして來た。一刻も早く傷から逃れられるようにと跨细。少しでも貴方を苦しめる悲しみを和らげようと鹦倚。それなのに何故、貴方は俺を遠ざけるのか冀惭。

沸々と湧き上がる苛立ち震叙。そして―――嫉妬。やり場のない苛立ちが散休、全身に滾る媒楼。

歪んだ視線の先、ビッテンフェルトが最敬禮をして離れていく戚丸。それは直ぐに薔薇の幹に隠れ划址、皇帝と自分との密室を作り出す扔嵌。

穏やかな日差しを見上げる白い花。

葉の間から差し込む光が夺颤、金色の髪に反射して輝いて見える痢缎。見たことの無い優(yōu)しい顔をして、のんびりと伸びなどして世澜。

全身を滾る苛立ちが独旷、頂點に達した。

ロイエンタールは寥裂、無防備に咲いている花へと歩き出す嵌洼。

花は陽の光を浴びて、気持ちよさそうに目を閉じている封恰。

忍び寄る影麻养。憎悪にも似た熱い想いを滾らせて、それは迫ってくる诺舔。

陽の陰りを感じて鳖昌、やっと瞳を開く花。穏やかな表情は低飒、一瞬にして凍りつく遗遵。驚きと恐怖に瞠目し、樹に背をつけてゆっくりと擦り上がる逸嘀。

逃がすまいと花の両脇、樹にしっかりと手をつく允粤。

花は瞠目したまま崭倘、聲を忘れた。少し開かれた唇が类垫、緊張で震え出す司光。もう逃げられない。聞いてはならない一言が悉患、今告げられる残家。漠然とした強迫観念に飲み込まれた。

亂暴に顎を摑むと售躁、震える唇に浄化されることのない黒い想いを注ぎ込んだ坞淮。

息苦しさに逃れようと、顎に添えた手を摑む陪捷。

愛情のカケラも感じられない強い力が回窘、それを跳ね返す。

恐怖に慄く花を市袖、一方的な想いだけで摑み啡直、散らし、力でねじ伏せる。それでも酒觅、尚も屈するまいとする花撮执。黒い欲望に支配された舌に、蹂躙されようとも屈しない花舷丹。

何故抒钱、怯えるのか。

何故掂榔、遠ざけるのか继效。

何故、拒絶するのか装获。

俺は瑞信、俺は―――全身に滾った苛立ちが、ついに皮膚を突き破った穴豫。

顎を摑んだまま唇を放すと凡简、恐怖で竦んでいる體を樹に押し付けた。顔を背けようとするのを精肃、強引に振り向かせ秤涩、顔を近づける。

恐怖と怒りに瞠目したままの蒼氷色の瞳司抱。俺を捉えて放さない筐眷、その蒼氷色の瞳。焦がれて焦がれて习柠、この手に抱きたい瞳匀谣。

―――何故、この手に落ちてはくださらないのか资溃。

「っく……」

突然武翎、顎の手が緩み力なく離れた。樹についていた手で溶锭、思いっきり樹を叩く宝恶。逸らされていく顔。はっきりと聞こえる舌打ち趴捅。

突然の変わりようにラインハルトは垫毙、全身の緊張を解いた。途端拱绑、息苦しかったのを思い出して露久、咳き込む。

振り向いた視線欺栗。

ラインハルトは驚いた毫痕。彼は征峦、酷く哀しい目をしていた。理由など解らない消请。たださっきまでと栏笆、とても同一人物とは思えないほどの哀しさ。

咄嗟に手を臊泰、差し伸べなければと思った蛉加。けれども、その哀しい姿は缸逃、マントを翻して離れていく针饥。慌てて手を需频、伸ばしたがもう屆かない丁眼。

そして、一歩を踏み出せぬままに昭殉、彼の姿は幹の影に消えた苞七。

殘された花は、行き場を失った手を引いた挪丢。そっと握り締めて見つめる蹂风。

ロイエンタール。お前は何が望みなんだ乾蓬。何であんなに哀しい顔をするんだ惠啄。俺に、どうしろと言うんだ任内。ロイエンタール礁阁、お前、言ったじゃないか族奢。忘れさせてくれるって。でも……でも丹鸿、お前といると忘れるどころか余計に辛くなる越走。

身代わりとしてしまう罪悪感。日ごと靠欢、この體が覚える行為廊敌。只一度、キルヒアイスが與えてくれた感覚が侵されていく门怪。

ロイエンタール骡澈、これ以上俺に求めないでくれ。

樹に背をつけると掷空、そのままズルズルと膝を折った肋殴。體を丸め囤锉、両膝を抱えて突っ伏す。穏やかな陽の光が差し込んで护锤、金色の髪を照らした官地。そして、肩が烙懦、震えていた驱入。

キルヒアイス、許してくれ氯析。俺と亏较、お前のたった二人の世界に、あいつが入って來ようとする掩缓。あいつが入ってきたら雪情、俺は何処へ行けばいいんだ?唯一拾因、俺が居るべき許された世界旺罢。そこが侵されるなんて、俺は恐ろしい绢记。どうしたらいいか解らない扁达。それに第一、お前が許さないよな……

僅かに漏れる嗚咽が蠢熄、甘い芳香にかき消されていた跪解。

―――何故、この手に落ちてはくださらないのか签孔。

散策路を大股で突き進んだ叉讥。行く先などわからない。ただ饥追、その場に止まりたくなかった图仓。あれほど噎せ返った匂いなど兴使、もう感じられない七扰。

あの藐不、恐怖に慄く瞠目した瞳者铜。

俺は有滑、俺は……あの時言ったではないか涣脚。ただ拌禾、悲しみから逃れる為の糧としてくだされば太援、と幅骄。なのに劫窒、俺は何時の間に強欲になったのだ。

あの方を恐怖に陥れたのは誰だ拆座?あんなにも怯える目で主巍、俺を見るように差し向けたのは誰だ冠息?俺を捉えて放さなかった、精気に満ちた蒼氷色の瞳煤禽。あの目を瞠目させ铐达、曇らせたのは誰だ?

―――総て檬果、俺ではないか瓮孙。糧となる。そう誓ったはずなのに选脊、何故俺はあの方を苦しめる杭抠?

俺は何を望んでいたのだ?

振り向かせて恳啥、俺を見させて偏灿、俺を受け入れさせて、そしてその先は……

―――所詮钝的、生まれて來るべきではなかった身翁垂。

昨日、あの女が―――エルフリーデが言った硝桩。お前は何を求めているのか沿猜、金髪の女は振り向かないのか、と碗脊。

求めるもの啼肩。それは何なのか、俺にも分からん衙伶。別に笑いかけて欲しい訳でもないし祈坠。愛だの好きだの言葉もいらん。ただどうしようもなく欲しくなる矢劲。中身のない體だけ與えられれば赦拘、その中身も欲しくなる。総てがこの手に入らないのなら芬沉、いっそ無の方がいい躺同。

固く結(jié)んだ口元が僅かに緩む。そして花嘶、聲のない自嘲が漏れた。

振り向かない―――それは蹦漠、當(dāng)然の事ではないか椭员。だから、この手に落ちないのも當(dāng)然笛园。俺も今更気付いて何になる隘击。あの方の中にはキルヒアイスしか生きる事を許されてはいない侍芝。俺如き、入れる余地もない埋同。それを承知の上で州叠、抱いたと言うのに。総てか凶赁、無か咧栗。あの時は考えもしなかった。それでも俺は僅かな希望を持ってしまう虱肄。いつか致板、あの方はいつか、俺を見てくださる時がくるだろうか咏窿。なにもキルヒアイスにとって変わろうと言うのではない斟或。ただ、俺を……

體だけの関係が集嵌、ここまで苦しみを宿すとは萝挤、俺は知らなかった。否根欧、知りたくはなかった怜珍。

つづく…

今まで追ってきた者が、突然足を止めた咽块。

  あれだけ逃れようと怯えていた者は绘面、急に不安になる。なぜ追わなくなったのかと侈沪、理由を?qū)い亭皮撙郡胜虢伊А¥堡欷伞⒔瘠蓼翘婴菠苼恧渴智巴ぷ铩枻Δ长趣铣鰜恧胜ぁ?/p>

  足を止めたのは瘦馍、気を引くための計算か∮σ郏或いは諦めたのか情组。

  追う者と追われる者。両者は天秤の上箩祥。

  互いが思うより院崇、それはある意味均衡を保っているのかもしれない。

陽の光 闇の月 -4-

手にした報告書が震える袍祖。

目が文字を追うにつれ底瓣、視界は暗闇に襲われる。

閉じた口の奧で蕉陋、歯がカチカチと音を立てた捐凭。

何度見ても拨扶、読み違いではない。この署名した者は茁肠、自分がその厳正な政治姿勢と職務(wù)に忠実な者として全幅の信頼を置いている患民。

それでも在り得ることだろうか。あいつが……ロイエンタールが……不穏な動き垦梆、だと匹颤。これは何かの間違いではないだろうか。

彼はキルヒアイス奶赔、ミッターマイヤー等と共に惋嚎、あの舊體制を倒してきた同志ではないか。歴史も站刑、信頼も他の者が遠く及ばない程另伍、秀でている。俺も功に報いて厚く遇して來た绞旅。

それなのに摆尝、不穏とは。

何度目を通しても因悲、署名の欄には司法尚書ブル?クドルフの名がある堕汞。他の者ならいざ知らず、司法尚書の名で出された報告書である限り晃琳、捨て置く事も出來ない讯检。

「ミュラーを呼べ」

始めて見る皇帝の動揺に、秘書官ヒルダは一瞬判斷を鈍らせた卫旱。

直ちにミュラーが呼ばれ人灼、一通の報告書が手渡される。

「ロイエンタール元帥に不穏の気配あり」

ミュラーも驚きのあまり顾翼、聲も出せず瞠目して立ち盡くした投放。よほど信じられなかったのか、二度ほど報告書を読み返して适贸、顔を上げる灸芳。

「恐れながら陛下、これは何かの間違いではないでしょうか」

報告者の名を確認した上で拜姿、ミュラーが恐る恐る問う烙样。

皇帝は既に冷靜さを取り戻していた。おそらく表面上は蕊肥、そう見えている谒获。

「司法尚書ブル?クドルフを世は信頼している。安易に世の重鎮(zhèn)を陥れると言うものでもあるまい。それに究反、素行を不快に思っての事とも思えぬ。ミュラー儒洛、事は重大かつ慎重を要する」

思いのほか精耐、皇帝は事を深刻に受け止めている。もはや琅锻、事態(tài)を覆せないと知ると卦停、ミュラーは表情を曇らせた。

元帥の人となりを多少でも知っている恼蓬。度重なる戦火を共にくぐって來た惊完。そして同じゴールデンルーベを仰ぐ者として、この報告書には納得がいかなかった处硬。

確かに小槐、女性関係の素行は多少なり聞き及んでいる。だが荷辕、それで職務(wù)を疎かにした訳ではない凿跳。皇帝に対する忠誠心も厚く疮方、何よりも知力に秀で控嗜、この王朝を支える柱として皆に慕われている。それが骡显、たかが相手があの故リヒテンラーデ公爵の一族だと言うだけ疆栏。それだけで不穏とは、それは少し行き過ぎではないかと思った惫谤。

長い廊下を歩きながら壁顶、溜息とともに頭を振る。

―――故リヒテンラーデ公爵の一族だから石挂、なのか博助。

早朝とあって、突き抜ける冷気に身を震わす痹愚。

気が進まない富岳。せめてこの役目が自分でなかったなら、と恨めしく思う拯腮。けれど逆らう訳にも窖式、拒否する訳にも行かず、事務(wù)的に回された地上車に乗り込んだ动壤。

地上車は本人の思いと裏腹に萝喘、真っ直ぐロイエンタールの宿舎へと向かった。

ミュラーを見送った後、皇帝はもう一度報告書に目を通した阁簸。そして枣耀、他の物とは別に、執(zhí)務(wù)室の引き出しにしまった撼短。

決済待ちの書類に何枚かサインして托修、窓の外を眺める。放射冷卻のせいか饶米、朝の冷え込みに反して桨啃、眩しいばかりの陽が差している。

小さく息を吐く檬输。

流暢に流れるペン先が照瘾、止まる。職務(wù)に集中できないのか丧慈、2析命、3枚サインしては視線が漂う。

今頃あいつは尋問を受けているだろうか逃默。前に聞いた碳却、私邸に住まわせている女が、まさか故リヒテンラーデの者とは笑旺。

その者の素性を知っての事か昼浦。それとも、後に知った事なのか筒主。だが关噪、今更過去の遺物に過ぎんリヒテンラーデなど、どうでもよい乌妙。

―――どうでもよい使兔?

俺が流刑を命じたにもかかわらず、私邸に置く事がどうでもいい事なのか藤韵?あいつは命令に背いた虐沥。これは立派な不穏ではないか。

本人も事が露見すれば泽艘、問題になるぐらいは予想出來ただろに欲险。それを敢えてするとは、それほどの女と言う事か匹涮。

補うのは天试、俺の方なのか?

お前はあの時言ったじゃないか然低。俺を手に入らぬ者だと喜每。何も見返りは要らない务唐、それでいいからと。

あれだけ俺の総てを食い盡くさんと带兜、求めて來たのに枫笛、結(jié)局補う方なのか、俺は刚照。

確かに崇堰、俺はお前を利用した。あの時は失った淋しさを紛らわしてくれさえすれば涩咖、何だってよかったからな。そう繁莹、ロイエンタール檩互。お前でなくともよかったのだ。

だが―――人と言うものは業(yè)なもの咨演。

相手が見返りを求めないと闸昨、返って利用する罪悪感に、自を正當(dāng)化する理由を探す薄风。

誰しも肌を重ねる回數(shù)が増せば饵较、情が湧く。利用している事に変わりはないのに遭赂、その情を恩著せがましく小出しにして循诉、さも応えてやった振りをする。それでお互い様だと思い込もうとする撇他。

更に始末の悪い事に茄猫、計算し適當(dāng)な間隔をおいて相手を焦らしより盡くさせようと強いる。自分が相手にとって至上の者だと困肩、自分が居てやらないとダメなのだと酔いしれる划纽。

それはやがて自分の中で、強要され仕方なく関係を続けてやっている―――に锌畸、すり替わって行く勇劣。

深い溜息を吐いた。

―――解っている潭枣。解っているのだ頭では比默。総ては自分の弱さゆえ、無理やり理由を付けて正當(dāng)化している事など盆犁。だが退敦、今更引き返せないのも事実。

俺たちは蚣抗、多分―――深く関わり過ぎた侈百。

手に羽ペンを握っていた事を思い出した瓮下。既にペン先のインクが乾きかけている。先日のように公文書に染みを作っていなかった事に安心して钝域、ペンを置いた讽坏。

頭を振る。溜息とも苛立ちともつかない仕草で例证。

陽が高くなったのか路呜、窓から差し込む光が機の上に差し込む。手に觸れる陽の溫かさ织咧。顔を上げれば胀葱、窓の外に透きとおる青空。

眩しそうに笙蒙、目を細める抵屿。

感情が沈んでいようと浮かれていようと、変わらず一日は過ぎる捅位。何千轧葛、何億年もの間、朝日が昇り夜を迎え歴史を重ねてきた艇搀。

心の闇に構(gòu)わず尿扯、変わることなく繰り返し訪れる日々。

あの日焰雕、キルヒアイスを失った日衷笋。俺はもう自分の感情も共に失ったと思っていた。笑う事も喜ぶ事も矩屁、悲しむ事も無いと思っていた右莱。

それが、どうだ档插。

俺はいつの間にか慢蜓、感情と言うものを持っている。ロイエンタールただ一人の為に郭膛、こんなにも揺さぶられている晨抡。

こうして人の気も知らず、照らし続ける陽さえ疎ましい気がしてくる则剃。

感情など耘柱、あのまま死んでいた方が良かった。そうすれば棍现、罪悪感に苦しめられる事も無かった调煎。自分の弱さを呪う事も無かった。

ロイエンタール己肮。お前が俺に感情を思い出させたのだ士袄。

「陛下悲关、ミュラー提督がお見えです」

待ちかねた報告を受ける。もっと訊きたいような娄柳、これ以上は耳を塞ぎたいような複雑な思いとともに寓辱。

頭の中は女の事と、子供の事で埋め盡くされていく赤拒。あれ程までに自分を求めておきながら秫筏、他で子まで生すとは。心挎挖、穏やかではいられなかった这敬。寧ろ怒りさえ湧いてくる。

おかしなものだと思う蕉朵。人を利用しておきながら崔涂、勝手に罪悪感に苦しみ、後悔して終いには二の次にされたと怒る墓造。

一體自分が何を望んで、何を拒否したいのか解らなくなって來る锚烦。ただ觅闽、明らかに女がいて、さらに子を生している事に怒りを覚えたのは確かだった涮俄。たとえそれが理不盡で一方的な我侭であると知っていても蛉拙。

「陛下、元帥は弁明の場を望んでおられます」

ミュラーの聲がした彻亲。

自分は冷靜に聞けただろうか孕锄。報告を受ける最中、怒りが表情に出ていなかっただろうか苞尝。不安に駆られ視線を臣下に合わせる畸肆。

「陛下、小官からもお願い致します宙址。どうか元帥に弁明の機會をお與え下さいます様お願い申し上げます」

真っ直ぐに轴脐、真剣な面持ちで訴えている。冷靜に見えたのだろう抡砂。臣下はただ僚友の事だけを心配していた大咱。

ホッとした反面、自分の心中など知れるはずもないか注益、と苦笑いする碴巾。

「分かった。フロイライン丑搔、午後にでも取り計らってくれ」

だが厦瓢、俺は理不盡な怒りを抱えたまま提揍、彼の言葉を聞けるのだろうか。

一瞬旷痕、後悔した碳锈。けれど、このままにしておく訳にもいかない欺抗。事はローエングラム王朝を支える柱の一本を失うか售碳、どうかの話。

王朝を平穏に導(dǎo)くなら绞呈、弁明させて適當(dāng)な処分を與え贸人、水に流すのが一番だろう。けれど覚えてしまった怒りはどうなるのだろうか佃声。自分個人としての感情はどこへ向かうのだろうか艺智。

ラインハルトは、退出していく臣下の肩越しに窓の外を見た圾亏。

相変わらず十拣、疎ましいほど眩しい。

「フロイライン志鹃。少し庭を歩いてくる」

秘書官の返事も聞かぬまま夭问、皇帝は執(zhí)務(wù)室を出て行った想虎。

つづく…

もう曼尊、本當(dāng)にますます訳分からん狀態(tài)ですね(苦笑)

ラインハルトは我侭です暮屡。きっと本人はそう望んでないように思っていますが鲤竹、何もかも欲しい人なのではないかと思います扫尺。プライド高いゆえの欲張りかと……

(2003/5/5)

陽の光 闇の月 -5-

疎ましい日差しも品山、包まれてみれば慰められた局雄。

キラキラと睫毛の間をするり抜ける光が眩しい紧唱。薄く浮かべた苦笑いで评甜、空を見上げる灰粮。愚かな事だと思った。疎ましいなどと忍坷、日差しにあたっても埒もない谋竖、と。

ラインハルトは背丈を越える薔薇の中を歩いていた承匣。眩暈を覚えるほどの芳香が鼻をかすめる蓖乘。時折、天を仰いで強い日差しに手をかざす韧骗。

足は自然と彼の地へ向いた嘉抒。

ロイエンタールが強引に唇を重ねてきた場所。

あの袍暴、大きな樹些侍。

ゆっくりと手のひらを當(dāng)ててみる隶症。陽の光を浴びて溫まった樹皮が、手に優(yōu)しくなじんだ岗宣。ほのかに溫かくて蚂会、まるで人肌の様に。

見上げれば耗式、揺れる葉の間から零れる日差し胁住。

―――溫かいな。

疎ましい刊咳、そう感じた思いなど消え去っていた彪见。

瞳を閉じて、時折差し込む光を頬に當(dāng)てる娱挨。

本當(dāng)に溫かい余指。あの頃―――キルヒアイスを失ったあの頃は、陽の光が溫かいだなんて気付きもしなかった跷坝。今にして思えば酵镜、人など利用せず、このやわらかな陽の光で凍った身體を溫めればよかった柴钻。それで足りないなら淮韭、激戦の炎で身體を焼けばよかった。

今更顿颅、後悔しても遅すぎるが……缸濒。

ロイエンタール足丢。俺は何時の間にか粱腻、お前に強いられてこの身體を許した気になっていた。利用した事に変わりは無いのに斩跌、抱かせてやるのだからと绍些、自分を正當(dāng)化しようとしていた。

そんなことで耀鸦、何も解消できる筈ないのに柬批。

そんなことで、何も生まれる筈ないのに袖订。

それでも最初は上手く正當(dāng)化出來ていたのだ氮帐。淋しくなって、人肌戀しくなってお前に抱かれると洛姑、いつの間にかキルヒアイスに抱かれている気がして上沐。

お前との行為を手放せなくなった理由は、それ楞艾。

だが―――人は慣れる参咙。

俺を抱く事に慣れたお前龄广。身體以外に與えるものを持たない俺。

膠著狀態(tài)などありえない蕴侧。

お前は更に欲求が強くなるし择同、俺は何時までも自分を騙せるはずもない。何時しか净宵、どんなに思い込もうとしても俺を抱く相手が敲才、お前にしか見えなくなっていた。キルヒアイスだと思い込みたいのに塘娶。

深い溜息を吐いた归斤。樹にあてた手に額をつけて俯く。緩やかに吹く風(fēng)が刁岸、金色の髪を撫でる脏里。

硬く目を閉じても、頭に想い描いても俺を抱いているのはお前虹曙。忘れさせてくれると言った筈なのに迫横、その事が俺を苦しめた。尻軽酝碳、浮気者だと矾踱。軽薄、薄情者だと疏哗、他人に身體を許す俺を責(zé)める呛讲。キルヒアイスただ一人と誓った、俺自身が責(zé)める返奉。

だから俺は誤魔化した贝搁。自分から身體を許したのではなく、ロイエンタール芽偏、お前に強いられたからなのだと雷逆。

総てをお前のせいにした。

だが污尉、責(zé)めるのだ膀哲。お前のその金銀妖瞳も。何もかも見通したように被碗、哀しく責(zé)めてくる某宪。姿が見えているのなら、素直に锐朴、俺に抱かれている事を認めろ兴喂、と。

けれど、認める事など出來ない瞻想。

樹に額をあてたまま憑れかかる压真。溜息ともつかない息を吐いて、頭を振った蘑险。

―――認めてどうなる滴肿。さらに俺は自分を許せなくて、責(zé)め続けるだけ佃迄。結(jié)局自分が可愛いだけ泼差。自分、獨りが呵俏。俺はその程度の人間なのだ堆缘。

だから、自分が一番でないと腹が立つ普碎。勝手だと知りつつも吼肥、二の次など許せない。俺は麻车、冷靜に聞けるだろうか缀皱。お前の弁明とやらを。

形式どおりの質(zhì)問に动猬、お前はなんと答えるのだ啤斗?

女を私邸に置いたのは事実か。

子の為に赁咙、より高きを目指そうと言ったのは钮莲、真実か。

肩が彼水、震えた崔拥。泣いているのではない。おかしくて猿涨、馬鹿馬鹿しくて笑いが込み上げてくる握童。自分の淺ましさに嫌気がさす姆怪。

俺はそんな事を訊きたいのではない叛赚。そんな事はどうだっていい。本當(dāng)に訊きたいのは……

本當(dāng)に訊きたいのは―――俺か稽揭、女か俺附。ただそれだけ。

俯いたまま溪掀、肩が震え続けた事镣。次第に聲が漏れる。それは酷く投げやりで揪胃、嘲る様な笑い聲璃哟。まったく氛琢、俺は最低な人間だ。人を利用し随闪、人のせいにし阳似、そして欲を張る。

問うてどうするのだ铐伴?

女を選んだ時はどうする撮奏。怒って頬を張るのか?

俺を選んだ時はどうする当宴。一番になれて満足して終わりか畜吊?

違うだろ、そうじゃない户矢。

俺を選んだら玲献、またあの金銀妖瞳がさらに求めてくる。身體以外に許してやるものを持たない俺はどうするのだ梯浪。今にも食い付かれそうな青自、金銀妖瞳に怯えるのが落ちではないか。そして驱证、これ以上何を許せばあいつが満足するのか延窜、必死に悩むだけ。

多分抹锄、今以上に苦しみ逆瑞、怯える日々が続くだろう。

緩やかに吹く風(fēng)が頬を撫でる伙单。葉の揺れ合う優(yōu)しい音に获高、耳を澄まして顔を上げた。向きを変えて樹に背憑れる吻育。見渡せば念秧、幾重にも折り重なって咲き誇る花々。色とりどりに揺れ布疼、何処までも続いている摊趾。

ゆっくりと深呼吸をした。身體に溜まった黒いものを総て吐き出さんと游两、心の底から砾层。そして运授、代わりに眩しい陽の光を取り込もうと瑰抵、胸一杯に吸った。

俺は宇宙を治める皇帝蚪腐。この穏やかな景色を守る義務(wù)がある。人々が平穏に暮らせる日常を守る義務(wù)がある侨糟。個人的な感情で事を荒立てる訳にはいかない碍扔。

聞こう、弁明でも何でも秕重。そしてロイエンタールが何ら疚しい所がないと言うなら蕴忆、総て水に流そう。

急には無理かもしれない悲幅。でも套鹅、少しずつ距離も置こう。こんな関係に陥る前の汰具、あの野心と情熱に満ちた信念を思い出し卓鹿、普通の皇帝と臣下の間柄に戻るのだ。

白いマントの胸許に手が伸びる留荔。細かい細工の施されたペンダント吟孙。ラインハルトはそっと握った。

自信は聚蝶、正直無い杰妓。けれど戻れる様努力しなければならない。否碘勉、戻らなければ巷挥。

天を仰いだ。青い空が葉の間で揺れる验靡。

―――キルヒアイス倍宾。これでいいんだよな。これで胜嗓、俺を許してくれるよな高职。

ラインハルトは、眩しそうに蒼氷色の瞳を細めた辞州。

つづく…

なんだかよーく分からない狀況なので怔锌、書くペースが激ダウンしています。

3行書いては2行消す变过、みたいな……こんな狀況って埃元、飽きるんですよね(笑) 早く17日にならないですかね。やっぱり放送されていると牵啦、結(jié)構(gòu)乗り気になりますしね亚情。

(2003/5/9)

陽の光 闇の月 -6-

やわらかな日差しの差し込む窓辺から妄痪、外を眺めた哈雏。

庭に咲き誇る薔薇の花が、風(fēng)に揺れている。一際輝く白い花弁に目を止めて裳瘪、あの方も同じ花を見ているだろうか土浸、と。けれどその瞬間彭羹、我ながら女々しいと苦笑いした黄伊。

「午後、美術(shù)館の広間にて執(zhí)り行われる事になりました派殷。それまで元帥还最、この部屋でお待ちください」

大本営の端に連なる簡素な応接間で、ミュラーは窓辺に佇むロイエンタールに告げた毡惜。

「時間になりましたら拓轻、お迎えに參ります」

振り返ると、まるで自分の事のように表情を強張らせた僚友がいる经伙。

「手間をかけさせて悪かった扶叉。禮を言おう」

いえ、そんな帕膜、とミュラーは恐縮して頭を下げた枣氧。真面目でどこまでも忠実な男だな、と思う垮刹。謁見の場を設(shè)けてくれたのは彼达吞。自分は手間をかけさせたのに、なぜか頭を下げているのは彼荒典。心配そうな表情を浮かべて宗挥、言葉を捜している。

他に言い難い事でもあるのだろうか种蝶。

「どうした契耿。ミュラー上級大將」

眉間に皺を刻んで、言葉を躊躇って唇が空を噛む螃征。伏せた視線が游ぐ搪桂。

「……元帥、かの女性を傍に置いた事は盯滚、やはり不穏と言う事になりましょうか」

言ってしまった後で踢械、ミュラーは口を固く結(jié)んだ。多分魄藕、問うのではなかったと後悔したのだろう内列。刻んだ皺が背率、より深くなっている话瞧。

「なるだろうよ嫩与。女、子供は流刑だったのだから」

元帥の靜かな答えに交排、ミュラーはハッとした様に顔をあげる划滋。

「ならばなぜ……ご承知なら、何故に……」

真っ直ぐに向けられる視線に埃篓、ロイエンタールは窓の外を見た处坪。気に障った訳ではない。ただ自分でもその問いに架专、どう答えるべきなのか分からなかった同窘。

「……かの女性を……愛しておいでだったのですか」

そうではない。と言うより部脚、そもそも愛だのと言う意味が解らない塞椎。所詮、愛情などというものから縁の無かった俺睛低。そんな俺が意味など解ろうはずもない案狠。

ただ、あの女は―――エルフリーデは钱雷、俺に何も求めなかった骂铁。縋る目で俺を見なかった罩抗。押し付ける目もしなかった拉庵。ただ怒りに燃え、憎らしいと睨みつけていた套蒂。

母親と同じ目钞支。だから傍に置いた。なまじ機嫌をとられるよりよほどいい操刀。

整った金銀妖瞳の顔に烁挟、微かな笑みが浮かぶ。

こんな思いが骨坑、愛などと言う筈もなかろう撼嗓。

ロイエンタールは振り向かぬまま、小さく頭を振った欢唾。

「ならば且警、何故っ……」

「さあな。俺にも解らん」

畳み掛けてミュラーが訴えようとした礁遣。けれど斑芜、振り向かいない姿を無言の拒絶と受け取って、言葉を飲み込む祟霍。

一人興奮してしまった自分を落ちつかせる為か杏头、小さく息を吐く盈包。そして、靜かに佇む背を見遣った大州。

「……元帥续语。元帥は垂谢、この王朝を築かれた古參のお方です厦画。その忠誠心の厚さは比類なきものと承知しております。ですが滥朱、悲しい事に悪意を持って事を謀ろうとする輩がおるやもしれません根暑。どうか、御身をもう少しお守りくださいます様お願い致します」

それでは徙邻、とミュラーは深く頭を下げて退出して行く排嫌。

窓に映る後ろ姿は、酷く肩を落としている様に見えた缰犁。

「……忠告淳地、痛み入る」

扉のところで最敬禮をしている僚友には聞こえない聲。小さく溜息混じりの言葉帅容∑南螅恐らくミュラー自身、返答を求めてはいない并徘。その事をロイエンタールも知っていた遣钳。だからこれは、僚友の気遣いに詫びての事麦乞≡誊睿互いに艦を並べて戦ってきたもの同士、言葉にせずとも伝わる思いもある姐直。

窓に映る扉が倦淀、低い軋み音をたてて閉じて行く。垣間見えた兵士が声畏、自分が今晃听、監(jiān)視下すなわち罪人扱いされている事実を突き付ける。

靜か過ぎる部屋砰识。

獨りを強調(diào)して自らの足音のみが能扒、異常に響いて聞こえる。

運ばれていた晝食のトレイから辫狼、コーヒーカップを取り上げて再び窓辺に立った初斑。

変わらず、白い花は風(fēng)に揺れている膨处。

―――あの方は见秤、女の事を聞いて砂竖、どう思われただろうか。

ふと鹃答、思い浮かんで苦笑いし乎澄、頭を振った。

自分は今测摔、審問を待つ身置济。保身の為、尤もらしい言い訳を考えるのが相応しいはず锋八。だが浙于、何も浮かばない。それどころか挟纱、自分の処遇すら興味が無い羞酗。思い浮かぶのはただ一つ。あの方の事紊服√垂欤皇帝、ラインハルト陛下の事欺嗤。

我皇帝は点骑、女の事を知って少しはお怒りになっただろうか改橘。それとも海洼、埒もない慰照、と捨て置かれたのか∠僬迹或いは単に命令に背いた事淤袜、のみをお怒りだろうか。

揺れ続ける花から視線が外せない衰伯。眉間に皺を刻んで铡羡、瞠目する瞳。手が僅かに震え意鲸、口を付けぬままカップを置いた烦周。見る間に、眉間の皺がより深くなっていく怎顾。

ゆっくりと頭を振った读慎。

―――俺は、気を引きたかったのだろうか槐雾。あの女を傍に置いて夭委、あの方がどう出るか確かめたかったのだろうか。自分から知らしめるのではなく募强、自然に耳に入れば株灸、少しは気に止めてくれるとでも思ったのか崇摄。

馬鹿馬鹿しい。これでは嫉妬もいいところではないか慌烧。

聲のない自嘲が漏れた逐抑。嘲って嘲って、そんな自分を否定する笑い屹蚊。けれど厕氨、どこか否定しきれない本音があった。自分でも理解できない闇が淑翼、心の隅でドロドロとうねっている腐巢。

口許に手をあて品追、嘲続けるのを無理やり止めた玄括。

―――あの女を傍に置いたのは何故か。

俺は肉瓦、満たされぬものを誤魔化したかったのだろうか遭京。あの女が見返りを求めないのをいい事に、利用したのだろうか泞莉。

自分から擦り寄ってきて簡単に落ちる者より哪雕、落ちない者をこの手で凌辱する方が、本音から意識を遠ざける事が出來る鲫趁。

より大きな痛みを斯嚎。より強い怒りを。より深い罪悪感を求めて挨厚、俺は自分を誤魔化し続ける堡僻。

口許にあてた指の下で、僅かに唇の端が上がった疫剃。

―――馬鹿な事を钉疫。どんなに誤魔化そうとも消えるものではない。所詮巢价、その程度のものなら牲阁、とっくに気も逸れている。

俺は壤躲、あの反抗的な女の中に城菊、あの方を見たのかもしれん。

一向に落ちぬ苛立ちを女に向けて碉克、無理やり従わせて一瞬の気休めを得た凌唬。そして、後に襲われるのは棉胀、どうしようもない焦燥感と虛しさ法瑟。

女には冀膝、すまぬと思う。だが霎挟、俺は詫びる術(shù)を持たん窝剖。

我皇帝よ貴方は笑うだろうか。貴方がこんなにも俺を遠ざけるから酥夭、俺は醜い嫉妬の塊に成り下がってしまった赐纱。自分でも淺ましいと思う。

胸のむかつきを覚え熬北、窓を開け放つ疙描。

日差しに似合わない冷たい風(fēng)が頬をかすめた。體を覆う濃い青色のマントが讶隐、風(fēng)に揺れる起胰。何もかも振り払わんと、肺一杯に吸い込んだ空気は甘い花の香巫延。

「くっ……はははっ……」

愚かな效五。

俺はなんと愚かなことか。

エルフリーデが炉峰、俺に見返りを求めないから傍に置いただと畏妖?

縋る目を向けない。機嫌もとらないから傍に置いただと疼阔?

「……くくっ……」

簡単に落ちる者より戒劫、落ちない者を凌辱する方が気休めになるだと?

まったく婆廊、俺とした事がどこまで愚かなことか迅细。

―――それは、他ならぬ俺の事ではないか否彩。

躰を許されたのに疯攒、それ以上のものを求めたのは俺ではないか。

この手に落ちろ列荔、と縋るように見つめたのは俺ではないか敬尺。

顔色を伺い、機嫌を損ねぬように贴浙、それでいてより多くを貪ろうとしたのは俺ではないか砂吞。

自分が他人にされれば冷たく捨て置いたものを、俺は崎溃、俺自身があの方に向けているではないか蜻直。

だから、遠ざけられるも當(dāng)然。

大して願ってもいない者から追われれば概而、逃げるのが常というものではなか呼巷。

窓枠を握った手に力がこもる。骨ばった手には血管が浮き出て赎瑰、微かに震え出す王悍。

―――所詮、一番欲しいと望んだものは餐曼、この世に唯一のものであって压储、代わりは無い。いくらエルフリーデや他の女で紛らわそうとしても源譬、或いは集惋、補おうとしても満たされる筈が無い。

あの方も踩娘、キルヒアイスがいる限り刮刑、俺の入り込む余地などない。

結(jié)局霸饲、同じ事ではないか为朋。

俺は臂拓、何度同じ事に気付いて厚脉、悔いれば気が済むのか―――。

いくら俺が盡くそうとも胶惰、キルヒアイスの代わりにはなれない傻工。俺ではあの方を満たすことなど出來ない。そう孵滞、何度も気付いているのに中捆。その度に、俺ではどうにもならない坊饶、と思い知らされるのに泄伪。なのに、止める事の出來ないこの想いは一體何なのか匿级。この蟋滴、締め付けられる胸の奧で、ドロドロとうねる想いは何なのか痘绎。

視線を落とし津函、血管の浮き出た手を見た。

幾度となく孤页、あの金色の髪を撫でた手尔苦。あの白い肌理細やかな肌に觸れた手。

ゆっくりと、両手を胸の前に広げる允坚。

この指一本々の爪先まで魂那、あの感觸が染み付いている

――― 一度でいい。今更稠项、多くは望まん冰寻。たった一度でいいからこの手に、何ものも恐れぬ貴方を抱きたい皿渗。その為には俺は何をすべきなのか……斩芭。

広げた手を、摑みとるように握り込んだ乐疆。

こんな関係に陥る前の划乖、あの冷たく輝いていた蒼氷色の瞳。見るものを一瞬に焼き盡くす挤土、蒼氷色の瞳琴庵。

我皇帝。あの瞳でもう一度仰美、俺を見てくれ……

つづく…

お久しぶりです迷殿。こんな程度でも、何度書き直したか知れません咖杂。書き始めるとどんよりして庆寺、一向に進まないし。今更に黒金诉字、手え付けるんじゃなかったと懦尝、ちと後悔。

さて壤圃、BGMの「天國への階段」ですが陵霉、書いてる最中コレばっか聴いてたので、すっかりロイエンタールのテーマ曲です伍绳。今も踊挠、この光景のバックから聞こえてきます。ロイエンタールは今冲杀、必死になって駆け上がっていた階段の中腹で效床、ふと足を止めてしまったのかな、と……

(2003/5/22)

過去と未來は背中合わせ漠趁。

  今を生きる現(xiàn)在も一秒後には扁凛、過去になる。たとえ闯传、それが忘れ去りたい誤った過去でも谨朝。

  生きている限り一秒先には、未來がある。たとえ字币、それが行く末困難な未來でも则披。

  過去と未來。両者は天秤の上。

  果たしてどちらが、心を支配するのか昌阿。過去があるから未來を築いて行けるのか酷鸦∥衩幔或いは未來があるから過去の思い出に浸れるのか。生きている當(dāng)人には解らないのかも知れない。

陽の光 闇の月 -7-

この扉の向こうに、あいつがいる冗荸。

落ち著け。

俺は皇帝なのだから利耍、動揺してはならない蚌本。恐れてはならない隘梨。

落ち著け程癌。

キスリングが、広間へ続く扉を開けた轴猎。見えぬ緊張が流れ込んでくる嵌莉。ラインハルトは、そっと息を吸って伏せた視線を正面へ向けた税稼。

あの金銀妖瞳が俺を捉えても烦秩、決して怯えてはならない。そう誓って一歩を踏み出す郎仆。

視界の端に、一瞬映った姿兜蠕。背筋を真っ直ぐに伸ばし扰肌、姿を追っている。それと知って熊杨、緊張を増していく身體曙旭。

中央に置かれた玉座に座る。陪席を許されたミッターマイヤー元帥他晶府、軍最高幹部たちは自ら折りたたみ椅子を広げて座っていた桂躏。

目の前に立つ長身の男。濃い青色のマントに身を包み川陆、臆する事なく金銀妖瞳の瞳は剂习、皇帝を見つめている。

故意に合わせられない視線。ラインハルトは鳞绕、彼を前に自らの心が落ち著くまで失仁、視線を合わさないでいた。

午後の日差しが们何、大きな窓から差し込んで萄焦、美術(shù)品の數(shù)々を輝かせる。そして一際輝きを誇る美術(shù)品とも稱すべき皇帝冤竹。

伏せた瞳は物憂げで拂封、閉じられた唇は動く気配がない。

大広間は靜寂に包まれる鹦蠕。

靜かに烘苹、息を吸い込んだ。

恐れるな片部。亂れるな镣衡、俺の心よ。あいつの口から档悠、如何なる言葉が発せられようとも廊鸥、靜かに受け止めるのだ。

ゆっくりと睫毛を上げる辖所。

視界に映る金銀妖瞳の瞳惰说。それはなぜか、あの強い欲求に彩られた光を失っていた缘回。今はただ穏やかに吆视、哀しいほど穏やかな光がたゆたっている。

ラインハルトを責(zé)めるのでもなく酥宴。無論啦吧、怒りなど爭いの色もない。ただ拙寡、ひたすらに哀しい光授滓。

その瞳から、視線が外せない肆糕。

―――ロイエンタール般堆、どうしたのだ……。

「ロイエンタール元帥」

俺に審問されるのが辛いのか诚啃。それとも淮摔、女と引き裂かれるのが、辛いのか始赎?

「は……」

よく通る低い聲が和橙、短く答える仔燕。

ロイエンタール。俺にはもう胃碾、飽きたのか涨享。もう、何も望みはしないのか仆百?

「卿が厕隧、故リヒテンラーデ公の一族につらなる女を私邸に置いていると言う告発は、事実か」

ラインハルトは無意識に息を止めた俄周。問うた相手から如何なる返答が來るか吁讨、身體中が耳を傍立てる。

哀し過ぎる穏やかな視線が峦朗、ラインハルトを捉えた建丧。

緊張で身體が強張る。額に薄っすら汗が滲む波势。

怯えてはいない翎朱。恐れてもいない尺铣。意外なほど穏やかな視線に拴曲、寧ろ拍子抜けしたというか、返って凛忿、何が彼をそうさせたのか澈灼、その訳が気になった。

「……事実です店溢。陛下」

疼く胸の痛み叁熔。事実を認める、女の存在を認めるという事は床牧、やはりお前にとってその女は特別なのだろうか荣回。

「陛下!ロイエンタールはその女に逆恨みされ叠赦、生命をおびやかされたのです驹马。非禮を承知であえて申し上げますが、どうか前後の事情をお考えの上除秀、ロイエンタールの軽挙をお赦しくださいますよう」

ラインハルトとロイエンタールの間に張りつめた糸が、ミッターマイヤーによって斷ち切られた算利。彼は親友を助けようと册踩、厳罰を覚悟で弁護を始めた。無論效拭、その言葉はラインハルトの耳にも屆いている暂吉。

けれど胖秒、煮詰まりそうになった思考を止められただけで、ミッターマイヤーの言わんとする事は慕的、ほとんど耳に入らなかった阎肝。

今までにない、靜かな視線肮街。

憎悪にも似た熱く滾った想いは风题、もうない。

―――あの時と同じだ嫉父。薔薇園の樹の下沛硅。自由を奪われ、強引にくちづけられた後绕辖、彼の腕が樹を叩きつけた時摇肌。あの時と同じ、哀しい目仪际。訳を問う事も围小、呼び止める事も出來ず、ただ黙って遠ざかる背中を見送った树碱。

ロイエンタール肯适、あの時お前は何を思ったのだ。何が赴恨、お前をそんなに哀しませる疹娶?

―――何…。

無意識に口を開きかけて伦连、慌ててつぐんだ雨饺。人前で問うべき事ではない。決して誰にも悟られてはならない惑淳、知られてはならない事额港。

小さな溜息とともに、ゆっくり睫毛を伏せた歧焦。

途端移斩、耳に聞こえる聲。

ミッターマイヤーが必死に弁護していた绢馍。自分は少しも聞いていなかったが向瓷、この公明正大な男は、恐らく必死になって熱弁を振るっていたのだろう舰涌。幾度となく猖任、生死をかけて共に戦って來た友を救おうと。無二の親友を救おうと必死で瓷耙。

「ミッターマイヤー朱躺、そのくらいにしておけ刁赖。卿の口は大軍を叱咤する為にあるもの。他人を非難するのは似合わぬ」

笑みが漏れた长搀。自分でも分かる宇弛。硬く凍り付いていた表情が、綻んだ源请。

「我皇帝よ……」

胸が枪芒、疼く。

低く沁みる聲巢钓。こんな風(fēng)に病苗、彼の聲を聞いたのは久しぶりの様な気がする。不思議なものだ症汹。こんな風(fēng)に聞こえると硫朦、恐れも何も感じない。穏やかに聞くことが出來る背镇。

ラインハルトは全身の緊張を解いて咬展、ロイエンタールの聲に耳を傾けた。

「我皇帝よ瞒斩。リヒテンラーデ公の一族の端につらなる者と知りながら破婆、エルフリーデ?フォン?コールラウシュなる女を私邸におきましたのは、我不明胸囱。軽率さは深く悔いるところです祷舀。しかしながら、それをもって陛下に対する叛意のあらわれとみなされるのは烹笔、不本意のいたり裳扯。誓ってそのようなことはございません」

金銀妖瞳の瞳が、真っ直ぐに見つめる谤职。靜かに饰豺、靜か過ぎる哀しみを湛えて。それは允蜈、諦めに似ていた冤吨。

必死に伸ばし続けた手が、力盡きてだらりと落とされた様に饶套。

必死に走り続けた足が止まり桐罕、これから追うべき道のりを呆然と見遣る様に矢棚。

決して満たされた訳ではない剧蹂。けれど氢烘、自分ではこれ以上どうする事も出來ず、葉わないと言う現(xiàn)実を受け入れた瞳仔引。哀しくたゆたっている扔仓。

「……では、その女が身ごもった事を告げられた時咖耘、それを祝福して翘簇、その子の為により高きを目指そうと語ったのは?」

ラインハルトは思い出していた儿倒。彼に版保、なんら疚しいところがないなら、総て水に流そうと誓ったことを夫否。そして彻犁、少しずつ距離を置いて、昔の自分たちに戻る事を凰慈。

彼は汞幢、引いた。あの哀しみの訳は解らないが微谓、貪らんとする熱い滾りは消えた森篷。ならば、自分も気持ちを切り替えなければ豺型。

表面的には仲智、淡々と交わされている様に聞こえるだろう。けれど姻氨、脳裏で違う思いが交錯していようとも钓辆、交わされる重さは、互いに十分伝わっていた肴焊。

彼は真剣に答えている前联。向けられた瞳に、噓偽りなど感じられない抖韩。ロイエンタール蛀恩、流そう。総て水に流そう茂浮。そしてもう一度……双谆。

「そちらは完全な噓偽です。あの女が妊娠した事を席揽、私は存じませんでした顽馋。存じていれば……」

俺達は、まだ間に合うだろうか幌羞。あの頃に戻れるだろうか……寸谜。

「即座に墮胎させておりました。この點属桦、疑う余地はございません」

ともに熊痴、舊王朝を打倒せんと戦いに明け暮れ他爸、野心に身を焼いていたあの頃に。

「なぜ果善、そう斷言できる」

いや诊笤、戻れるはず。俺さえ自分を見失わなければ巾陕、必ず戻る事ができる讨跟。

ロイエンタール、俺は謝らねばならんだろうな鄙煤。この一年半もの間晾匠、たくさんお前のせいにした。総ては俺の弱さゆえの事梯刚。今更凉馆、許してくれとは言わない。けれど多分乾巧、散々お前を苦しめた事だろう句喜。それには、素直に詫びたい沟于。

―――本當(dāng)に咳胃、すまなかった。

「私には人の親となる資格がないからです旷太。陛下」

だから展懈、そんな顔をするな。そんなに哀しそうな顔をするな供璧。ロイエンタールよ存崖、昔のあの頃に戻ろう……

靜かに見つめてくる金銀妖瞳。

怯える事なく睡毒、返される視線来惧。

見るものを焼き盡くす、あの勢いはまだないが演顾、それでもロイエンタールが焦がれた蒼氷色の瞳は供搀、小さな輝きを燈した。

いつの間にか钠至、心を占めていた女子供の事など葛虐、すっかり消え去っていた。今在るのは棉钧、決意と謝罪の思い屿脐。

―――なあ、ロイエンタール。お前は覚えているか的诵?

「未だローエングラムの家名を継がぬ頃万栅、予は卿から忠誠を誓約された事があったな……」

やわらかな、そして穏やかな蒼氷色の瞳が奢驯、微かに浮かべた微笑とともに申钩、ロイエンタールを見た。

我瘪阁、皇帝……。

何ものにも怯えぬ邮偎、その瞳管跺。

冷たく蒼氷色に輝く、その瞳禾进。

―――俺を豁跑、虜にする。

「あの夜の事を覚えているか泻云、ロイエンタール元帥」

覚えております艇拍。あの雷鳴とどろく嵐の夜の事を。貴方は知らないでしょう宠纯。あの夜卸夕、俺の心が一瞬にして焼かれてしまった事など。

彼の視線は皇帝の姿を捉えたまま婆瓜、遠い過去に送られた快集。

つづく…

そろそろ中盤まで參りました。やっとです廉白。ここを書くために久しぶりに“原作”を読みました个初。

そして、苦笑い猴蹂。相當(dāng)院溺、頭ん中すり替えられています! こんな事磅轻、一行もないのに(當(dāng)たり前バカ)いつの間にか珍逸、頭ん中では原作。このまま瓢省、暴走します……(^^ゞ

(2003/5/27)

陽の光 闇の月 -8-

雷鳴とどろく嵐の夜弄息、稲妻に反射して強烈な輝きを放つ瞳。

俺は目が勤婚、離せなかった摹量。

體中の器官が、機能を忘れて硬直した。ただ一つ缨称、覚えているのは激しく打ちつける鼓動凝果。體の全機能がそこへ集中してしまったかの様な、その動き睦尽。

これ程までに器净、目を奪われた人がいただろうか。華やかな夜會でも当凡、高級クラブでも山害、確かに美しいと稱される女はいた。

だが―――現(xiàn)に今沿量、俺のこの目を奪っているのは浪慌、紛れもない男∑釉颍煌びやかに著飾っている訳でもなく权纤、まだ性別のはっきりしない子供でもない。

高だか乌妒、19歳の青年汹想。

なのに、俺は目が離せない撤蚊。

吸い寄せられる蒼氷色の瞳古掏。一點の陰りもなく、澄んだ瞳拴魄。

―――美しい冗茸。そう、思った匹中。

足先から感じる甘美な痺れ夏漱。それは膝から腰へと伝わり背筋を震わせる。そして顶捷、脳まで溶かした挂绰。この人になら、自分の持てうる忠誠の総てを捧げても服赎、後悔しないかもしれない葵蒂。

予想外の展開。いや重虑、寧ろ予想通りと言うべきか践付。

実際のところ、ミッタ―マイヤーを救う為には缺厉、誰に頼るのが一番得策か考えていた永高。ブラウンシュヴァイク公に対抗しうる人物隧土。他人の為に権門に喧嘩を売ってくれる者など、そう命爬、多くはいない曹傀。

取り敢えず、対抗馬としてリッテンハイム候を思い浮かべた饲宛。だが皆愉、こいつは頼みに行くだけでも反吐が出る。ミッターマイヤーも艇抠、あいつに助けられるくらいなら幕庐、死んだほうがマシだと思うかもしれない。

ならばリヒテンラーデ公はどうか练链∠柰眩考慮に入れるだけ無駄かもしれない。宮廷闘爭に忙しくて媒鼓、一將兵など取るに足らんか……。

他にはエーレンベルク元帥错妖、シュタインホフ元帥绿鸣、ミュッケンベルガー元帥……伝手もない。いや暂氯、あるにはあるが潮模、耳を傾けてくれる程の伝手ではない。同じ伝手無しなら痴施、意外な人物の方がいいかもしれん擎厢。

意外な人物。そう辣吃、皆に妬まれ過酷を強いられていても动遭、それでも自力で這い上がってくるような养铸、そんな人物员辩。

一度、軍務(wù)省の廊下で見かけた鸵赫。

皆が言うように哩簿、姉の寵愛だけで出世したのか宵蕉、それとも自力で昇って來たのか―――恐らく後者だろう。実際节榜、叛徒どもには皇帝の寵愛など羡玛、知った事ではないからな。

異例の早い出世に敵も多いと聞く宗苍。その反面稼稿、稀に見る戦爭の天才だとも聞く薄榛。貴族の生まれだから、と言う理由だけで出世した馬鹿で無能者とは違うかもしれない渺杉。

貴族の生まれだから蛇数、武勲もなく昇進していく。戦い方も知らん能無しの馬鹿ども是越。そんなやつ等の下で……耳舅。

そんな上官の下に甘んじているのは、うんざりだ倚评。

そんな腐った奴らの為に浦徊、命などかけられん。

俺は天梧、俺の意思で選んだ人について行く盔性。

俺が膝を折る相手は、俺自身が決める呢岗。

噂に聞く人物がいかほどの者か冕香、試してみるいい機會かもしれん。喧嘩を売るのを躊躇うようなら后豫、所詮その程度の者悉尾。売ってくれるなら、くれるで挫酿、そのお手並みを拝見させてもらおう构眯。

「私にとっては卿らの好意より、ブラウンシュヴァイク公の歓心の方が早龟、良い買い物であるように思えるがな」

思った通りの人物惫霸。口ではそう言っているが葱弟、その目は獅子の目だ壹店。権門などに媚びたりせず、危険に身を震わせるでもなく翘悉。真っ直ぐに高みを目指す目茫打。

冷たい光を放ち、透き通った瞳妖混。

そんなに野心を漲らせて老赤、何が権門に與するものか。

「本心で仰っているとは思えません」

雷鳴がとどろき制市、一瞬抬旺、妖しく光った瞳。

「……卿は現(xiàn)在のゴールデンバウム王朝について祥楣、どう思う开财?」

―――いや汉柒、想像以上の人物。あろう事か责鳍、この人は最終的に王朝の打倒を考えている碾褂。俺は高だか、自分の忠誠を盡くす相手を历葛、自分で選びたかっただけ正塌。無能者の下に付くのが嫌だっただけ。出來るなら恤溶、そんな無能者の言う事を聞かなくて済む地位に就きたいと望んだだけ乓诽。

見つけた。俺の忠誠を捧げるに値する人物を咒程。

この人とともに鸠天、駆け上がってみよう。無能者の下で討ち死にする意味のない人生より帐姻、遙かに有意義で面白い人生があるだろう稠集。

実際、その後の手並みは鮮やかだった饥瓷。ミッターマイヤーも無事奧方のもとへ帰る事が出來た巍杈。そして、わざとらしい出征扛伍。四人まとめて最前線へ送られたレグニツァ上空遭遇戦、及び第4次ティアマト會戦词裤。

考え及びもしなかった戦い方刺洒。総てにおいて度肝を抜かれた。そして吼砂、誓った逆航。

―――我、持てうる総ての忠誠を捧げる渔肩。

ああ因俐、あの時の瞳。

まだ周偎、鮮烈さに欠けるものの抹剩、あの頃の輝きが戻りつつある。

「忘れた事はございません蓉坎、陛下」

穏やかに光り輝く瞳澳眷。真っ直ぐに、避けられる事なく蛉艾、合わせられる視線钳踊。それはロイエンタールの心を解かしていく衷敌。

様々な欲と後悔に縺れ、心の隅でドロドロとうねっていたものが拓瞪、少しずつ解けていく缴罗。

「……一日と、いえども」

―――そう言う事か祭埂。貴方の瞳に面氓、僅かに燈り始めた輝きの意味。

「では沟堡、良い」

ロイエンタールは侧但、靜かに目を閉じた。眉間に深い皺を刻んで航罗、やや天を仰ぐ禀横。短く吸い込んだ息を止めて、唇が少し粥血、震えた柏锄。

―――貴方が、そう決めたのなら仕方がない复亏。ただ一度でいいと願った事すら趾娃、もう諦めざるをえんが、それでも貴方が決めたのなら缔御。

貴方が抬闷、それを望むのなら。

「近日中に処分を決する耕突。宿舎において指示を待て笤成。それまで卿の職務(wù)はミュラー上級大將に代行させる」

貴方が望むのなら、俺は従うまでだ眷茁。

ラインハルトが席を立った炕泳。

ロイエンタールは瞼を上げた。そして上祈、靜かに金銀妖瞳を皇帝に向ける培遵。悲しい決意を宿し、けれど曇りのない瞳で真っ直ぐに登刺。

後ろで籽腕、皆が席を立つ音。

白いマントを靡かせて退出していく皇帝塘砸。ロイエンタールほか諸將は节仿、最敬禮をもってこれを見送った。

退出していく最中掉蔬、それぞれに勵ましの言葉をかけてくれた廊宪。だが矾瘾、ロイエンタールの耳には屆いていなかった。親友であるミッターマイヤーですら箭启、友の肩を叩き聲をかけても壕翩、心ここに在らず、と言った風(fēng)で傅寡、それはミッターマイヤーにも見て取れた放妈。

あの夜の事、とは他ならぬ自分に関わりのある事だと察した彼は荐操、あの夜芜抒、どのような會話がなされたのか、詳細には聞いていなかった托启。だからその話が出ても宅倒、共有する事が出來ずにいた。雰囲気から察して屯耸、皇帝と友の間には拐迁、その時何かしら決意というか、誓約めいたものが存在していて疗绣、彼らを繋ぐ原點になっているのだと思った线召。

今、友は感慨に浸っている多矮。そう受け取ったミッターマイヤーは深く追求する事なく缓淹、岐路で別れた。

地上車は宿舎へと向かう塔逃。

生まれ育ったオーディンの風(fēng)景とは違うそれを割卖、ぼんやりと見つめた。

脳裏に浮かぶのは……笑っているあの方患雏。続いて怒っている顔、悔しがる顔罢维、戦いに高揚している顔淹仑。そして、恐怖に瞠目した顔肺孵。それらが走馬燈のように巡っていた匀借。

ホテルの上階。宿舎として使用している部屋は平窘、主の帰りを靜かに迎えた吓肋。

物音一つない、無機質(zhì)な空間瑰艘。

―――そうか是鬼、あの女はもういない肤舞。

女。エルフリーデ?フォン?コールラウシュは既に捉えられ均蜜、処遇が決するまで何処かの施設(shè)に入れられていることだろう李剖。

詮無き事をしたのだと、突き付けられた気がした囤耳。実際篙顺、その通りなのだが。

サイドボードの中からウィスキーを取り出して充择、氷も入れずに注いだ德玫。それを持って、窓辺に向かう椎麦。高層ビルの上階からは宰僧、街並みがどこまでも続いていた。

舊帝都铃剔、オーディンとは違う街並みが撒桨。

きついアルコールが喉を焼くのを構(gòu)わずに、一気に飲み干した键兜。

―――貴方が決めたのなら凤类、仕方がない。

―――貴方が望むのなら、俺も従おう。

手にしたグラスが运吓、込められた力によって砕けた骏融。掌に破片が刺さり、血が滲む帮匾。気にならないのか、またそれ以上に気になる事が他にあるのか、構(gòu)う事なくだらりと下げられる坐桩。

毛足の長い絨毯は、音を吸収して血に染まったグラスを受け止めた封锉。

ポタリ绵跷、ポタリと落ちていく血。

俯いた肩が僅かに震える成福。

怪我をしていない方の手が伸びて碾局、窓ガラスを摑む。筋が浮き出て奴艾、震えている净当。

「……う……っ……」

ゆっくりと崩れるように膝を折った。手の體溫が、摑んだ窓ガラスに曇った筋を長く引く像啼。

―――貴方は俘闯、俺との関係を絶つと、決めたのだ埋合。

―――貴方は备徐、何もなかったあの頃に戻りたいと、望んだのだ甚颂。

あの蜜猾、戻りつつあった瞳の輝きは、その表れ振诬。貴方がそう決めた以上蹭睡、俺は従うしかない。

従う……赶么。

そう肩豁、従うのだ。そうすれば辫呻、また鮮烈に輝く瞳を見る事が出來る清钥。俺を虜にした、蒼氷色の瞳を放闺。

またポタリと祟昭、雫が落ちた。けれど怖侦、それは深紅ではなかった篡悟。

俺は全霊をかけて、貴方に盡くすと決めた匾寝。だから完璧に演じて見せよう搬葬。貴方が安心して俺を見れるように。あの頃の瞳で俺を見れるように艳悔。

この一年半のことは一切忘れる急凰。何もなかったように、一切を猜年。

―――だが香府。忘れる前に、少しだけ……码倦。

窓ガラスを摑んだままの手の甲に、額を押し付けた锭碳。そのまま拳を握る袁稽。

「……我、皇帝……」

血痕の上に色を伴わない雫が擒抛、また推汽、落ちた补疑。震え続ける肩。

今更ながらに歹撒、ロイエンタールは唐突に気付く莲组。出來れば、気付かないままであった方が暖夭、よかったとも思う锹杈。

多分、これが―――迈着。

ラインハルトは昔に立ち返り竭望、愛したキルヒアイスと二人だけの過去を見た。

ロイエンタールは今を忘れ裕菠、これから築かんとする未來を見た咬清。

多分これが―――この痛みが、愛すると言う事なのだろう奴潘。

つづく…

またも原作に沒頭旧烧。ちょっと変えたところもありますけど。

実際画髓、あのセリフの間に掘剪、こんなに長く思い出してたら、それこそ不穏じゃ~ってことでしょっぴかれるんじゃないの雀扶?とか思いつつ……ま杖小、結(jié)局この二人は上手く行かないのね∮弈梗可哀想に予权。

でも、まだまだ続くのです(笑)

(2003/5/31)

陽の光 闇の月 -9-

審問に向かう前は浪册、こんな気持ちになるなど思いもしなかった扫腺。ラインハルトは一人表情を緩めて、酷く軽く感じる足取りに微笑を浮かべる村象。

彼の処分は軽くしよう笆环。一切を水に流して、また一から出直すためにも厚者、跡を殘さない方がいい躁劣。俺にも後ろめたいところがある。少しの謹(jǐn)慎と厳重注意库菲、その程度でいいだろう账忘。

大本営の長い廊下を歩いていると、頬に暖かな光が當(dāng)たった。窓と壁で交互に降り注ぐ光は鳖擒、気持ちをおおらかなものへと変えていく溉浙。

しかし、こんなに晴れやかな気分になれたのは蒋荚、久しぶりかな戳稽。

ラインハルトは表情を和ませた。途中期升、窓から差し込む光を見上げて惊奇、眩しそうに目を細める。それは限りなく優(yōu)しく吓妆、また穏やかな表情赊时。

後に続く、副官シュトライト以下側(cè)近達は行拢、皇帝の変化に気付く筈もなく祖秒、靜かに後を続いていく。

ふと舟奠、思い至った竭缝。

自分はその程度の処分でいいと思うが、裏側(cè)の事情を知らない者達は沼瘫、軽過ぎると不審を抱くかもしれない抬纸。一応、皆に問うべきか……耿戚。

執(zhí)務(wù)室の席について湿故、傍に立ち並ぶ者に尋ねた。

副官シュトライトが固い表情で歩み出る膜蛔。

一瞬坛猪、重い処分にすべき。そう皂股、進言されそうでラインハルトは緊張した墅茉。だが、副官の言葉を聞いているうち呜呐、それは考え過ぎなのだと解る就斤。

副官は、ロイエンタールの処分に寛容さを求めていた蘑辑。これなら洋机、誰はばかる事なく処分を決する事が出來る。

ラインハルトは洋魂、念を押すように居並ぶ者を見渡した绷旗。皆啄踊、一様に副官と同じ意見、と表情が訴えている刁标。

正直、安心した址晕。その反面膀懈、余計な取越し苦労だったと苦笑いする。

「ほう谨垃、予がロイエンタールを処斷したがっているようにみえるか」

自分に照れたのか启搂、半ば意地悪げに微笑んで、再度皆を見渡した刘陶。だが―――胳赌。

視線が止まった。なぜか匙隔、秘書官ヒルダだけが眉間に皺を刻んでいる疑苫。彼女も皇帝の視線が自分に止まった事に気付いた。

自分の表情が他の人のそれと違い纷责、険しいのだと知る捍掺。そして、その理由を問おうと皇帝の口が開きかけるのにも気付いた再膳。

けれど挺勿、彼女はそれを拒む。無言のうちに顔を背け喂柒、答えられないと拒絶する不瓶。

皇帝の美しい顔に、疑問の色が浮かんだ灾杰。いつもの歯切れのよい聡明さが姿を消し蚊丐、今や彼女の顔は、強固な拒絶に覆われている吭露。そして吠撮、問おうとした言葉は飲み込まれ、疑問の色だけが殘った讲竿。

知るはずもない泥兰。彼女は、そう思う题禀。

貴方には鞋诗、解る筈ないのだと。

ロイエンタール元帥が貴方を如何な想いで見つめているか迈嘹。そして削彬、私が如何な想いで全庸、貴方を見つめているか、など融痛。私たちは同じ目をしている壶笼。けれど、貴方はそれに気付いていない雁刷、と覆劈。

秘書官ヒルダは、皇帝の視線から開放された時沛励、小さく溜息を吐いた责语。

恐らく、この想いは一生報われることはないのだと自分に言い聞かせて目派。そもそも坤候、皇帝に対して抱いてはならない想いなのだと、言い聞かせて企蹭。

けれど白筹、こうも思う。

あの练对、同性であるロイエンタール元帥よりも遍蟋、自分の方が遙かにその資格があるではないかと∶荆或いは贞让、自分の方が遙かに皇帝を愛する権利を龄减、擁してしるのだと级野。

それは密かな優(yōu)越感粘秆。自分が女である、ただその理由だけで浸れる優(yōu)越感下隧。けれど奢人、これほど覆せない理由は、他にない淆院。

どうせ報われないなら何乎、せめてあの男にだけは負けたくはない。そう思う彼女だった土辩。

軽い処分とする支救。そう決めたラインハルトは、一週間後には処分を3月19日に発表すると告知した拷淘。

長い事悩んでいた思いから開放され各墨、その根源であった彼とも暫く會わずに済む。その距離は启涯、自分が揺るぎない冷靜さを育てる為の贬堵、與えられた時間に思えた恃轩。

それでも時折どうしているだろうか、と思いをはせる黎做。

最高幹部たちが集まる會議でも叉跛、いつも傍らにあった姿はない。當(dāng)たり前の事なのだが蒸殿、ついいつもの癖で昧互、意見を求めよと口を開きかける。だが伟桅、視線の先は空席。その度に叽掘、慌てて口を噤んだ楣铁。

目に止まる空席が、胸を締め付ける更扁。自分の方が盖腕、彼に悪い事をした気がして。だから職務(wù)に沒頭した浓镜。今まで滯っていたものを集中的に溃列、殆ど寢る間を惜しんで、と言う表現(xiàn)が正しいだろうか膛薛。

次々に形となって現(xiàn)れる成果に听隐、身體的な疲労は感じても精神は満たされていた。いや哄啄、寧ろそうすることで雅任、他の事を考えまいとしたもかもしれない。

そんなある夜咨跌、事件は起こる沪么。

ロイエンタールの処分を數(shù)日後に控えた3月1日。肌に突き刺さる冷気が锌半、夜の暗闇とともにノイエ?ラントを覆っていた禽车。

突然の轟音に、高層ビルが揺れる刊殉。

ほぼ謹(jǐn)慎狀態(tài)だったロイエンタールは殉摔、ズボンにシャツを羽織ったラフな格好で立ち上がった。手にウィスキーのグラスを持ち冗澈、夜景を見ながら一人飲酒に浸っていたのだが钦勘、靜寂は一変する。

サイドテーブルに置かれた酒瓶が亚亲、轟音の揺れで倒れ彻采、毛足の長い絨毯の上に転がった腐缤。驚いて、一面強化ガラスで覆われた窓辺へと駆け寄った肛响。

遠くで岭粤、暗闇に白煙が立ち?xí)Nっている。

火事だろうか特笋。それにしても剃浇、この揺れは。

続いて二度目の揺れに襲われた猎物。多少の酔いもあってか虎囚、ふらついてソファの背に寄りかかる。

ビルの谷あいから火柱が立ち上り蔫磨、白煙は益々勢いを増して辺りを覆い盡くしていく淘讥。そして、方々から爆音と黒煙が上がった堤如。

これは何とした事だ……テロか蒲列?

一気に酔いの醒めたロイエンタールは、機の上に置かれた端末へと駆け寄った搀罢。

急ぎ緊急回路を開いて蝗岖、大本営へ交信する。だが榔至、混線しているのか抵赢、一向に繋がらない。舌打ちしながら唧取、部屋の端末を取ってみたが同じ事瓣俯。

事態(tài)は、深刻かもしれない兵怯。

ロイエンタールは部屋の出口へ駆け寄った彩匕。だが、動力がダウンしたのかロックされたままで扉はびくともしない媒区。

振り返れば驼仪、とうに部屋の明かりは消えている。もともとスタンド程度の明かりしか燈していなかった袜漩。

夜景から降り注ぐ明かりだけで绪爸、手元は判十分?jǐn)喑鰜恧搿?/p>

もう一度、軍最高幹部用の端末に觸れた宙攻。だが奠货、事態(tài)はさっきよりも悪化していた∽颍混線どころか递惋、反応が一切ない柔滔。

振り返ると、眼下には火の海が広がっている萍虽。

テロか睛廊。しかもこれだけ大規(guī)模となると……ルビンスキー辺りの企みかもしれん。いや杉编、地球教もありうる超全。

端末を手にしたまま、どう対処すべきか考えをめぐらせた邓馒。

脳裏をかすめる金色の髪の毛嘶朱。

陛下っ! 陛下は無事なのか光酣。怪我など见咒、なさってないだろうか。

頭の中にラインハルトの姿が浮かんで挂疆、急に眩暈を覚えた。その途端下翎、居ても立ってもおれずもう一度ドアへと駆け寄る缤言。

だが、事態(tài)は益々悪化の一途を辿っている视事。

ドアに耳を貼り付けて様子を窺っても胆萧、外に人の気配など一切感じられない。

ノブに燈るロックを示すランプも俐东、予備動力に切り替わった様子もなくロイエンタールは一人跌穗、高層ビルに取り殘された。

皇帝……ミッターマイヤー虏辫、あの方を蚌吸、皇帝をお守りしてくれ!

次の瞬間砌庄、発光を伴った轟音がとどろき羹唠、ビルが激しく揺れた。ロイエンタールはバランスを失って床に膝をつく娄昆。

剎那佩微、部屋の一面を覆っていた強化ガラスがピキッ……劈く音をたてて亀裂が走った。一面が砕け散り萌焰、冷たい強風(fēng)が吹き込んでくる哺眯。

室內(nèi)にあったものが、次々に風(fēng)に煽られ飛ばされる扒俯。

……これは奶卓、緊急事態(tài)だ一疯。

金銀妖瞳の瞳に緊張が走った。

「陛下寝杖、危のうございますから」

キスリングが身を隠すよう勧めたが违施、ラインハルトは深夜だというのに軍服に身を包み、凜として佇んでいた瑟幕。

建物の中では磕蒲、崩壊、爆破等工作の危険があるため只盹、最初の爆発を受けて辣往、すくざま薔薇園へ非難していた。

連絡(luò)を受けた幹部たちも殖卑、続々集結(jié)する站削。

薔薇園の広場に、即席の大本営が設(shè)置された孵稽。

緊張に顔を引き攣らせたミッターマイヤー许起、ミュラーらが事態(tài)収拾の指揮をとる∑邢剩慌しく情報が交錯し园细、事態(tài)は一向につかめない。

その間も接校、爆発は続き地面を低く唸らせる猛频。

端末の緊急回路も斷続的で、派遣した兵士の狀況すら摑めなかった蛛勉。

方々から上がる火の手鹿寻。黒煙と白煙の柱が天高くそびえ立ち、闇をより暗いものとしていく诽凌。

「まだ毡熏、原因は摑めんのか!」

ミッターマイヤーの苛立った怒鳴り聲が響く侣诵。騒ぎに乗じた暴動に気をつけるのだ招刹、とミュラーの叫び聲。

的確な指示をも嘲笑うかのように窝趣、爆音は散発し地面を揺らす疯暑。

不意にラインハルトの目に、分厚い冊子が止まった哑舒。

―――緊急事態(tài)マニュアル妇拯。あれは確か、ロイエンタールが作成したもの。ロイエンタール……お前は無事か越锈?

「何U锑隆?壊滅狀態(tài)だと甘凭!」

「元帥稀拐!」

ミッターマイヤーが端末に向かって怒鳴った。ミュラーも続く丹弱。亂れた畫像の兵士は德撬、最敬禮のまま怯えている。

「Dブロックと言えば躲胳、ロイエンタールの宿舎がある地區(qū)ではないか蜓洪! もっとよく調(diào)査するのだ!特に宿舎に使っているホテルを中心に調(diào)査しろ」

畫像の亂れた端末はプツ…と切れて沈黙する坯苹。

ミッターマイヤーは傍にいた通信士の肩を摑むと隆檀、無理やり端末の前に座らせた。応答があるまで呼び出し続けろ粹湃、と怒鳴られて恐仑、下級の通信士は震えながら端末に向かった。

「……たのむ为鳄。無事でいてくれ……」

ロイエンタールのいた地區(qū)が壊滅裳仆?

彼は……彼は無事なのか?

ラインハルトの背筋が震えた瞭郑。目の前に見える物が歪み为狸、意識が遠のくような、そんな眩暈に襲われる。

思わず涂炎、傍にいたエミールの肩に寄りかかった。

エミールも驚いて她我、それでも必死に皇帝を支えた枚赡。

ガタガタと震える動きが、支えた肩から伝わる滑凉。たった今まで凜とした姿で立っていたのに统扳、その美しい顔から血の気が引き、青い肌を曬して身體を震わせていた畅姊。

「陛下……」

大丈夫……咒钟。

多分、そう皇帝は言いたいのだろう若未。僅かに上げられた手が朱嘴、物語っていた。けれど、眩暈は酷いようで萍嬉、エミールは一人では支えきれなくなっていた乌昔。

「陛下」

エミールの不自然な聲に、ミュラーは慌てて駆け寄った壤追。失禮いたします磕道、と斷りながら崩れ落ちんばかりの皇帝を抱きかかえる。

無意識に支えられた手が握られた行冰。思いがけない強い力にミュラーは驚く溺蕉。ガタガタと震え続ける手。寒いのだろうか资柔、それとも気分が悪いのだろうか焙贷。心配しながらも彼は傍にあった椅子を引き寄せて、皇帝を座らせた贿堰。

けれど辙芍、握った手を放そうとしない。

「まだ連絡(luò)は取れんのか羹与!ホテルにも呼びかけてみろ故硅!いいか、応答があるまで続けるのだ纵搁!」

無意識に握った手に吃衅、力が込められる√谟……陛下徘层、とミュラーの気遣う聲が聞こえてくるほどに。

「元帥利职!応答がありました趣效!」

大本営に緊張が走る。端末に駆け寄るミッターマイヤー猪贪、他幹部たち跷敬。

「調(diào)査に向かった者からです」

目の前の人だかりが一瞬ざわめいた。

ミュラーの腕は強く握られ热押、腕ごとじわじわと引き寄せられる西傀。

水をうったように靜まり返る人だかり。どのような報告がなされたのか桶癣、皇帝の耳には屆かない拥褂。震えのやまぬ手。報告を聞きたいような牙寞、いや肿仑、耳を塞ぎたいような嫌な予感を覚える。

……Dブロック全焼。壊滅狀態(tài)につき尤慰、生存者0……

僅かに漏れ來た聲に馏锡、蒼氷色の瞳は瞠目した。

つづく…

ゼッフル粒子の引火事故です伟端。

きっと杯道、ラインハルトは気が気ではなかったでしょう。

一度割り切って责蝠、一から出直そうとした心に党巾、この事故は暗い影を落としたのです。(また勝手に原作に割り込む……笑)

(2003/6/4)

陽の光 闇の月 -10-

……生存者…0……ロイエンタール霜医!

俺は齿拂、夢を見ているのだろうか。

お願いだから肴敛、誰か否定してくれないか署海?

誰か、間違いだったと言ってくれないか医男?

けれど砸狞、現(xiàn)実は肯定を意味する靜寂に包まれている。誰一人镀梭、聲を発する者など刀森、いない。

酷い頭痛に襲われた报账。

目の前は闇に包まれ研底、まるで誰かに激しく揺さぶられているが如く、身體に歪みを感じる透罢。

衝撃榜晦。そんな程度の言葉では言い表せない波が押し寄せる。息も出來ず琐凭、窒息しそうなほどに意識が遠のいていく芽隆。

遠くでミッターマイヤーが浊服、テーブルを叩きつける音が聞こえた统屈。

暗い闇の海に引きずり込まれそうになる。助けて牙躺、苦しい愁憔。そう、怯えて手を伸ばす孽拷。必死で伸ばす吨掌。このまま闇海の渦に飲み込まれまいと、必死で。

溫かな手の感觸膜宋。自分では摑む事が出來なくなった非力なそれを窿侈、觸れた手はしっかりと握ってくれた。

闇海に落ちる寸でのところで秋茫。

僅かに顔を向ける史简。そこにはミュラーの青ざめた表情。

「ロイエンタール肛著!」

彼の親友の叫び聲圆兵。

たとえ繋ぎ止められても、夢は…現(xiàn)実は変らない枢贿。朧気に浮かぶロイエンタールの顔殉农。それは哀しさに満ちている。

彼の自信に溢れた金銀妖瞳が印象的だった局荚。低く響く聲が印象的だった超凳。出來ればそんな彼を、最後に覚えていたかった危队、そう思った瞬間聪建、大きな波飛沫が身體を覆った。

飛び散ったガラスの破片で茫陆、至る所に無數(shù)の切り傷が出來た金麸。

揺れは収まっている。ガラス越しでない風(fēng)景は簿盅、一面炎に覆われているが挥下、迅速な消火活動がなされている。おそらくこの分なら桨醋、被害は最小限に食い止められるだろう棚瘟。

ロイエンタールは手の甲で、頬に滲む血を拭った喜最。

どうやら偎蘸、死ぬ事は許されなかったらしい、と薄っすら笑みを浮かべる瞬内。

『……応…元……す……』

ノイズ交じりの音聲が迷雪、微かに聞こえた。急ぎ端末へ駆け寄る虫蝶。事態(tài)が落ち著いたとみえて章咧、通信が回復(fù)しつつあるようだ。

「聞こえる」

未だ斷続的ではあるものの能真、緊張した兵士の姿が映った赁严。一瞬の瞠目ののち扰柠、元帥!ミッターマイヤー元帥疼约、と聲を張り上げる卤档。

辛うじて彼だと判る畫像。

『ロイエンタール程剥!無事かq勺啊?』

ホッとしたような倡缠、それでもまだ完全に緊張が解けてないような哨免、複雑な顔の親友がいた。彼は無事だったのだ昙沦。ロイエンタールは安心して琢唾、表情を緩めた。

「ああ盾饮、無事だ采桃。ご覧の通り、悪運だけは強かったらしい」

『そうか丘损。Dブロックが壊滅狀態(tài)だと報告があったから普办、もう、駄目かと……』

「確かに徘钥、河一本隔てた向こう側(cè)は衔蹲、建物など見當(dāng)たらん。同じDブロックでも呈础、ここは端だからな舆驶。運悪く被害は免れたらしい」

親友の無事に、素直に笑みを浮かべる畫像而钞。それは徐々に鮮明になり沙廉、ノイズも殆ど気にならなくなっていた。

「ミッターマイヤー臼节、陛下はご無事か」

『ああ撬陵、ご無事だ。怪我一つない网缝。今は少し気分を悪くされて休んでおいでだが巨税、心配には及ばん』

目を閉じて、小さく息を吐く途凫。

―――良かった垢夹。あの方に怪我がなくて溢吻。俺だけ生き殘って维费、あの方にもしもの事があったなら……俺は正気ではいられんだろう果元。

とにかく、良かった犀盟。

『直ぐに兵士を向かわせる』

「ああ而晒、そうしてくれ。動力がダウンしたままで阅畴、ドアが開かん倡怎。情けない事に閉じ込められている」

両手を軽く上げて、肩を竦めて見せた贱枣。

端末に映る親友も监署、つられて笑みを見せる。

「大本営の近くに纽哥、新しい宿舎を手配しよう钠乏。見たところ傷もあるようだから、醫(yī)務(wù)班を待機させておく」

すまぬ春塌、助かる晓避、と通信を切ってから、ロイエンタールはソファーに身を沈めた只壳。相変わらず外はサイレンや建物の倒壊する音で騒がしい俏拱。けれど、そんな音など彼の耳には屆かなかった吼句。

―――本當(dāng)に良かった锅必、無事で。

全身に漲る安堵感惕艳。止まったままだった血液が况毅、一斉に流れ始めたように感じた。

もし……もし尔艇、あの方に何かあったとしたら尔许、俺は生きてはいられんだろう威根。と言うより筑辨、生きる意味がない。

俺の総ては雷猪、あの方に捧げる為のみ存在している棠耕。

―――求められれば余佛、応じる。

―――絶つと決められれば窍荧、忘れた振りをする辉巡。

それらは総て、あの方が在っての事蕊退。本當(dāng)に郊楣、無事で良かった憔恳。

突然、ドアを激しく叩く音がした净蚤。

「元帥钥组!ロイエンタール元帥、こちらでしょうか今瀑?」

返事をすると程梦、下がっていてください、と聲が響いた橘荠。バーナーの様なゴーと言う音がして屿附、直ぐにドア枠が真っ赤になる。

開かないドアは焼き切られ哥童、豪快な音をたてて倒れた拿撩。

燃え盛る炎の中に、よく知った人影を見た如蚜。

彼は助けを求めるでもなく压恒、ただ佇んでいる。長く靡く青いマントに炎が燃え移り错邦、俺は叫び聲を上げた探赫。

このまま彼を失ってはならない。なんとか助けなければ撬呢。精一杯手を伸ばしてみる伦吠。けれど、伸ばした手は握られない魂拦。

袖口に炎が燃え移った毛仪。焼け焦げていく肌に、激痛を感じる芯勘。

早く手を握れ箱靴、早くこちら側(cè)に來るのだ、と叫んでみる荷愕。彼は聞こえないのか衡怀、動くそぶりもない。

炎は益々燃え盛り安疗、二人を取り囲んでいく抛杨。振り返れば、自分の後ろにも火の手が上がり荐类、もうこれ以上逃れる場所がないのだと知る怖现。

お前が來ないなら、俺がそっちへ行けばいいのか玉罐。ならば―――屈嗤。

炎に中に足を踏み入れた潘拨。火は一瞬にして白いマントに燃え移り恢共、身を焼いていく。

彼が璧亚、手を伸ばした讨韭。燃え盛る炎の中で、俺を引き寄せようと癣蟋。そして―――透硝。

……ロイエンタール!

「陛下疯搅、お気付きでしょうか」

カッと見開いた目は濒生、心配そうに覗き込むミュラーの顔を映した。

「酷い夢でもご覧になったのですか幔欧? うなされておいででしたが……」

そう罪治、言われて額に手を置いた。びっしょりと汗をかいている礁蔗。背中にも冷たい感覚がある觉义。瞠目したまま何度か瞬きし、深呼吸を繰り返した浴井。

よく見知った天井が見える晒骇。いつもの寢室。ベッドに橫たわっていた磺浙。

「外でお倒れになったので洪囤、ここへお連れ致しました。安全は確認しておりますので撕氧、どうぞご安心してお休みください」

水差しからコップに冷水を注いで瘤缩、ミュラーは皇帝に差し出した。

ゆっくりと半身を起こして伦泥、それを受け取ろうとする款咖。だが、互いの視線が奄喂、伸ばされ白い指先に釘付けになった铐殃。

ガタガタと震えていた。

ちらりとミュラーを窺った跨新。彼は慌てて視線を逸らし富腊、見ぬ振りをする。ラインハルトはコップを落とすまいと域帐、両手でそれを受け取った赘被。

熱い熱を持った身體に是整、冷水が染み渡っていく。心地よい安堵感民假。けれど浮入、自分でもはっきりと分かる、手の震え羊异。それは一向に治まらない事秀。

―――何故?

「陛下野舶、元帥は……」

コップを返そうとした手が止まった易迹。ミュラーがさりげなく、皇帝の手からそれを受け取る平道。

不安げに漂う視線睹欲。

「ロイエンタール元帥は、ご無事でした一屋。今窘疮、大本営から近いホテルに居を移されて、そこにおいでです冀墨。少し切り傷を負われているようでしたが考余、一週間もあれば跡もなくなるでしょう」

そう言って、窓から遠くに見えるビルを指差した轧苫。

つられてラインハルトの視線も楚堤、それを追う。

「それでは陛下含懊、私は職務(wù)に戻ります身冬。エミールを、呼びましょうか岔乔?」

聲が出なかった酥筝。何か返事をしなければ、と思いもしたが雏门、その余裕がない嘿歌。

辛うじて首を振ると、彼は最敬禮をして踵を返した茁影。

扉のノブを回す音がする宙帝。

「……ミュラー……」

はい、と立ち止まって振り返る募闲〔脚В皇帝は俯いたまま、彼の方を振り向けないでいる。

「……予は靴患、何か……言っていたか仍侥?」

うなされている間に、うわ言を言ったのか鸳君? と农渊、問うているのだと思った。少しの沈黙の後に或颊、彼は口を開く砸紊。

「……いえ、何も仰ってはおりません」

その饭宾、少しの沈黙が何を意味するのか批糟、互いに察しがついた格了。けれど看铆、觸れてはならない、問うてはならない盛末、と警鐘が鳴り響く弹惦。

もう、行っていい悄但、と皇帝の手が挙がる棠隐。

結(jié)局俯いたまま、ラインハルトは最後まで顔を上げる事が出來ないでいた檐嚣。

水差しの脇に置かれたお絞りに手を伸ばし助泽、額に滲んだ汗を拭う。もう嚎京、手は震えては嗡贺、いない“暗郏酷く疲れを感じた诫睬。起き上がっているのも、辛いと感じるほどに帕涌。

ゆっくりとシーツの中に身を橫たえる摄凡。目を硬く閉じた。眉間に苦悩の溝が刻まれる蚓曼。ぎゅっとシーツを握り込んで亲澡、身を屈めた。

あの纫版、手の震えの意味谷扣。

今、はっきりと気付いた。

―――自分は怖かったのだと会涎。彼を失う事が裹匙、怖かったのだと。

いつの間に末秃、こんなにも自分の中で概页、彼の存在が大きなものになっていようとは、思いもしなかった练慕。失ってしまった戀人惰匙、姉以外に、こんな気持ちを抱くとは铃将。

突然项鬼、突きつけられた現(xiàn)実。否劲阎、事実绘盟。

硬く閉じた瞼に、彼の姿が浮かぶ悯仙。絶対的な自信に溢れた金銀妖瞳が見つめる龄毡。聞こえるはずのない耳に、彼の聲が聞こえる锡垄。

自分を求めて名を呼ぶ沦零、彼の聲が。

「……俺を货岭、呼ぶな……」

ラインハルトは両耳を塞いだ路操。左右に頭を振って、その聲を振り払おうとする千贯。

……呼ぶな屯仗。

寢返りをうった。カチャ……と丈牢、胸許で音がする祭钉。手を伸ばせば、あのペンダント己沛。ラインハルトは縋る思いで慌核、それを開けた。

優(yōu)しく笑う幼き頃の戀人申尼。その輪郭をそっとなぞる垮卓。急に歪んで見える視界。

……キルヒアイス师幕!

ギュッと瞼を瞑る瑞佩。溢れた涙が頬を伝い、シーツを濡らす雾消。

ペンダントを握り締めて、胸に抱きしめた疼鸟。

許して、キルヒアイス庙曙。彼を……ロイエンタールを空镜、俺とお前の世界に……入れてしまった。

「……許して……」

シーツを頭から被って捌朴、ラインハルトは聲を殺して泣いた吴攒。

絶つと決めた後、気付いてしまった事実に砂蔽。そして洼怔、失った戀人への罪悪感に。

つづく…

何気にミュラー登場多し左驾。好きなんですカレ镣隶。普通、醫(yī)者かエミールが付き添ってるんじゃないかと思うんですが什荣。そこはやっぱり好きなカレに出てもらわないとね(笑)

次回か矾缓、次次回辺り怀酷、この話を書こうと思った時稻爬、一番書きたかったシーンに辿り著けそうです。

(2003/6/9)

陽の光 闇の月 -11-

「ロイエンタールの蜕依、傷の様子はどうだ桅锄?」

もう、すっかり消えたとの事です样眠。

秘書官ヒルダは友瘤、半ば溜息混じりに返答した。それが今日檐束、二度目だと言う事に気付かない皇帝は辫秧、そうか、とだけ呟いて書類に向かう被丧。

あのゼッフル粒子の引火事故以來盟戏、ラインハルトは事あるごとにロイエンタールの傷の経過を聞いていた。それがヒルダであったり甥桂、副官シュトライトであったりとまちまちではあったが柿究、彼女が気付いた限り、日に二から三回程度やり取りされる問答だった黄选。

だが蝇摸、それも日増しに回數(shù)を増して來たように思う。今日のように、同じ人間に二度も問うなど貌夕、今までにはなかった律歼。

しかも、回數(shù)を覚えてないとなると啡专、その答えは既に熟知しているようで苗膝。つまるところ、気にかかっている事は植旧、他にあるのだと彼女は考えていた辱揭。

他に気にかかる事……。

窓から差し込んだ陽に輝く金髪を病附、彼女は物憂げに見つめる问窃。

自分は、元帥と皇帝の経てきた歴史を知らない完沪。もしかしたら域庇、考え及ばぬ絆が二人にはあるのかもしれない。ミッターマイヤー元帥とは違う覆积、もっと深いものが听皿。先日の審問の時に交わされていた言葉からも、きっと宽档、他人の介入を許さぬものがあるに違いない尉姨、と彼女はその聡明な瞳を曇らせる。

ならば吗冤、歴史の淺い自分は入る余地が又厉、割り込む余地がないではないか、と椎瘟。

「どうした覆致、フロイライン。溜息などもらして」

いえ肺蔚、何でも煌妈、と誤魔化しに笑みを浮かべる。

―――素直になれば宣羊。もっと女として素直になれば璧诵、この方は自分の方を見てくださるだろうか、と書類に向かう皇帝を見た段只。

再び腮猖、溜息が漏れる。

恐らく赞枕、そんな事では振り向かせる事は出來ない澈缺。この方は坪创、女を必要としていない。必要としているのは姐赡、良き理解者であり良き助言者莱预。ともに戦えるような、戦友になりうる人物项滑。

気付かれぬように依沮、そっと息を吐く。

悔しい枪狂、と思う危喉。否、悲しいのかもしれない州疾。きっと辜限、認めたくはないのだが、自分より遙かにロイエンタール元帥の方が严蓖、そんな存在なのだろうと薄嫡。自分は、遠く及ばないのだろうと颗胡、そう思えてならない毫深。

女である。そんな程度の基準(zhǔn)で毒姨、あの方は人を選ばない哑蔫。

彼女の、女特有の本能がそう感じ取っていた手素。

大した傷でない事は鸳址、承知していた瘩蚪。

一週間もすれば泉懦、跡形もなくなってしまうと、そう報告を受けている疹瘦。

彼は崩哩、元気なのだと。

彼は言沐、この大本営の傍に建つ邓嘹、あのホテルの一室にいる。だから……だから险胰、心配は要らないのだと汹押。そう、何度も言い聞かせているのに起便、思いが一向に紛れないのは棚贾、何故窖维?

あの時、あの生存者0と言う報告を受けた時妙痹、この身が震え上がるのを感じた铸史。呼吸すら忘れて、只々恐怖に慄いた怯伊。

気を失う前の琳轿、彼の顔。自信に満ちた金銀妖瞳ではなく耿芹、あの哀しい表情崭篡。関係を絶つと決めてから、考える事もしなかった吧秕。

今思えば媚送、何時から彼は、あの哀しい表情をするようになったのだろうか寇甸。俺は自分の事で精一杯で塘偎、彼の事など考える余裕すらなかった。

もしかしたらあの表情は拿霉、何か大切な事に気付いて吟秩、思い詰めたり悩んだりしていたのかもしれない。俺はそれを問うて绽淘、答えるべきではなかったのだろうか涵防。

けれど、問えば何となく違う言葉が帰ってきそうな気がした沪铭。それこそ聞かないままであった方がいい言葉壮池。俺はそれを恐れ、逃げていた杀怠。何も言うな椰憋、と全身で拒絶して。

いっそ赔退、問うていれば狀況は変わっていただろうか……橙依。

もう、殆ど覚えてもいないが硕旗、目が覚める瞬間見ていた夢窗骑、ロイエンタールが炎の中で佇んでいた。やはり漆枚、あの時も同じ哀しい目をしていて创译。

俺が手を伸ばしても、彼は応えなかった墙基。けれど软族、俺が近付こうとすると辛藻、彼は手を伸ばして來た。俺を引き寄せようと互订、必死に吱肌。

否、やはり問うべきではない仰禽。もう氮墨、絶つと決めたのだから。今問えばそれは恐らく―――吐葵。

ラインハルトは就寢前のワインを规揪、グラス一杯だけ空けると、窓から見える星空を見上げた温峭。

恐らく俺は―――猛铅。

またたく星々。その視界の端に映る人工的な光凤藏。美術(shù)館の広大な茂みの向こうにそびえる建物奸忽。

―――彼も、同じ星を見ているだろうか揖庄。

苦笑いが浮かぶ栗菜。我ながら、なんと感傷的な事かと蹄梢。けれど疙筹、こんな風(fēng)に思うのが、今が初めてでないことも知っていた禁炒。

ここの所而咆、毎晩のような気がする。

失ってはならない存在だと気付かされて以來幕袱、ほぼ毎晩暴备。こんな風(fēng)に、窓からあのホテルを見上げる凹蜂。そしてその度に気持ちが馍驯、揺れる。

多分玛痊、こんな風(fēng)に見てはいけないのだと思った。止めなければならないのだと思った狂打。

けれど擂煞、過ぎる。振り払っても趴乡、過ぎるのだ对省。

深い溜息をつく蝗拿。そして胸許のペンダントを握った。手の中で微笑む人蒿涎。そっと指先でなぞる哀托。

「……ごめんキルヒアイス…お前だけだと、誓ったはずなのに……」

薄情者だとなじってくれ劳秋。裏切り者だと軽蔑してくれ仓手。でないと俺は……多分、俺は玻淑。

崩れるように膝を折った嗽冒。窓枠に憑れて膝を立てる。ゆっくりと美しい眉間に皺が刻まれていく补履。自らの両腕をかき抱いて酒甸、目を硬く閉じた搁凸。

哀しい表情の訳を問えば、何故振り向いてはくれないのか、と助隧。

たとえ貴方が振り向かずとも、それでも愛している鸡典、と言われる気がした叠赐。

そして、俺は五鲫。

その時俺は溺职、多分―――。

過ぎる言葉位喂。一年半前のあの夜浪耘、俺が言った。

―――死んでしまった者は生きかえる事はない塑崖。

―――先に逝った者も七冲、殘された者が幸せになる事を望んでいる。

それでも规婆。それでも人を死に追いやっておいて澜躺、自分だけ幸せになる事なんて出來ない。そんな不條理が許されるはずない抒蚜。

「……う…ううっ…」

嗚咽が漏れた掘鄙。聲を殺そうとしても、唇が震えて止まらない嗡髓。両手で覆う操漠。押さえつけるようにして、覆う饿这。

けれど浊伙、多分俺は撞秋、そう言われたら、流されてしまう気がした嚣鄙。

大切な存在だと吻贿、言葉に出して認めてしまう気がした。

愛している哑子、とは言えないが舅列。多分、キルヒアイスと同じくらいの重さを感じていると赵抢。

だからこんな不條理を許してはいけない剧蹂。先が見えているなら、問うてはいけない烦却。絶つと決めたのだから宠叼、揺らいではいけない。

天を仰いで其爵、大きく息を吸う冒冬。手の甲で頬の跡を拭った。けれど摩渺、既に濡れた手では広がってしまうばかりで简烤、拭い去る事は出來なかった。それにまだ摇幻、涙が止まっていない横侦。

ラインハルトはふらつきながらクローゼットへ向かった。下の引き出しからタオルを取り出して绰姻、顔を覆う枉侧。濡れた手も拭った。

引き出しを元通りにしようと手をかける狂芋。けれど榨馁、コートの端がかかって、上手く閉められない帜矾。片手でタオルを握ったまま翼虫、もう片方の手でコートを払う。その瞬間屡萤。

奧に立てかけていた紙袋が珍剑、絨毯の上に落ちた。

息が灭衷、止まる次慢。

今更、何でこんな物が出てきたのかと翔曲、恨めしく思った迫像。

紙袋から何かはみ出していた。酒の空き瓶のように見える瞳遍。ラインハルトは闻妓、それを諦めたように手に取った。

ワインの空き瓶掠械。底の方に煙草の吸殻が入っている由缆。

力なく、絨毯に座り込む猾蒂。

それはロイエンタールが最後にこの部屋に訪れた時均唉、忘れていったもの。ラインハルトは煙草を吸わない肚菠。だから喫煙家である彼は舔箭、気を使って瓶などに吸殻を落として、それを持ち帰っていた蚊逢。酒瓶なら持ち歩いていても层扶、そう不審には思われない。

けれど烙荷、これは偶然忘れて行ったもの镜会。エミールや掃除の者に気付かれる前に、ラインハルトが慌てて隠していた终抽。それから何となく捨てる機會を失って戳表、何時の間にか存在すら忘れていた。

鮮明に思い出される記憶昼伴。

あの晩の匾旭、痛いほど張り詰めていた空気。破るのを恐れた沈黙亩码。帰り際季率、シーツを引き上げて身體を覆ってくれた。なのに自分は描沟、息をひそめてずっと眠った振りを続けた飒泻。

何もかも心に突き刺さる。

申し訳なさに瓶を握り込んだ吏廉。ふわりと立ち?xí)Nる煙草と酒の匂い泞遗。それは彼とのセックスと思い出させた。

胸に抱かれれば煙草の匂い席覆。キスを交わせば酒の味史辙。それはロイエンタールの匂いだった。もう、どれくらい彼に觸れてないだろうか……聊倔。否晦毙、觸れられていないだろうか。

途端耙蔑、下半身を襲う疼き见妒。熱と、軽い痺れを伴った男にしか解らない甸陌、あの感覚须揣。

ラインハルトは瞠目した。手の感覚を一瞬忘れて钱豁、酒瓶が絨毯に転がる耻卡。

あろう事か、自分はこの匂いに欲情しているのだ牲尺。彼を思わせる卵酪、この匂いに。

只一度秸谢、キルヒアイスがこの身に刻んでくれた感覚は凛澎、どこへいったのだろうか。彼の感覚が強すぎて估蹄。それにすり替わっていて塑煎。ただ一度のセックスが思い出せない。

これじゃまるで……これじゃ臭蚁、キルヒアイスを忘れたと同じ事じゃないか最铁。

耳を掠めるあの低い聲に、ラインハルトは両耳を塞いだ垮兑。

捉えて放さないあの金銀妖瞳に冷尉、慌てて目を硬く瞑った。

振り払わんと系枪、何度も頭を振りながら雀哨。

けれど、彼の私爷、低く響く聲が好きだった雾棺。

彼の、自信に溢れた金銀妖瞳が好きだった衬浑。

ラインハルトは天を仰いで長い睫毛を開いた捌浩。ゆっくりと両腕を抱き寄せる。そして工秩、心に殘るのは―――尸饺。

―――彼に进统、ロイエンタールに抱かれたい。

つづく…

ああ浪听、到達出來ず…螟碎。次回一番書きたかったシーンに行けます。書きたかっただけに馋辈、まともに字になるのだろうかと抚芦、ちょっと不安倍谜。てか迈螟、ロイエンタールってアル中?いえ尔崔、違います答毫。多分。私の書くロイエンタールっていつも酒びたりだわ季春。

(2003/6/13)

陽の光 闇の月 -12-

熱お帯びる體洗搂。

彼の大きな手が、首筋を撫でる载弄。

背中に落とされていくキスとともに耘拇、感じる熱い吐息。

觸れられてもいないのに宇攻、隆起していく胸の突起惫叛。觸れてくれ、噛んでくれと言わんばかりに突き出して逞刷。

一度も付けられた事の無い所有の証嘉涌、赤い花が無數(shù)に散らばる肌。

彼の聲が夸浅、聞こえる仑最。

あの、金銀妖瞳が俺を見つめる帆喇。

行かなければ警医。今すぐ行かなければ、彼のもとへ―――坯钦。

ラインハルトは何かに取り憑かれでもしたように预皇、一心に著替え始めた。目立たぬ服を選んで著込み葫笼、寢巻きと深啤、紙袋に酒瓶を戻しクローゼットに押し込んだ。そして路星、コートを摑む溯街。

部屋を見渡し诱桂、何も不審なものがないか確認する。

急ぎ機に向かい呈昔、便箋にペンを走らせた挥等。

『夜明けまでには帰る。心配するな ラインハルト』

もう一度部屋を見渡す堤尾。納得すると肝劲、コートを羽織った。いつもの仕草で手を項に差し込んで郭宝、髪を払う辞槐。

あ、この髪の毛……粘室。

いくら何でも榄檬、このままでは目立ち過ぎる∠瓮常慌てた様子でバスルームへと駆け込んだ鹿榜。脫衣場の鏡の前に、飾り紐があった事を思い出して锦爵。

黒い絹で出來たそれで舱殿、髪の毛を後ろで束ねる。襟をずらしてコートの中にしまうと险掀、鏡を見た沪袭。

「あっ……」

小さな悲鳴にも似た聲が上がる。

胸に光るペンダント迷郑。

躊躇いがちに觸れて枝恋、目を閉じた。

天を仰いだ眉間に嗡害、苦悩が浮かんでいく焚碌。

幾度となく、瞬く睫毛霸妹。再び尚镰、涙が溢れそうになる赊舶。

まるで最後に殘った十戒を破る僧侶のように栽燕、極限の葛藤が瞬きに表れている秸侣。心は決まっているのに、どこかに許しを請える術(shù)はないかと罢绽、必死に模索して畏线。

脳裏に、赤い髪の哀しそうな顔が浮かぶ良价。怒っている顔も浮かんだ寝殴。

他に心を許した俺を蒿叠、責(zé)めるように。

けれど躰の火照りが靜まらない蚣常。自分ではどうすることも出來ず市咽、戒める彼をも焼き盡くす程に。躰が彼を抵蚊、ロイエンタールを求めていた施绎。

俯いて、一気に息を吐き出した贞绳。

「許してくれ……」

チェーンの金具を外し谷醉、開かぬまま口許に寄せる。何度も何度も唇を落し熔酷、許して孤紧、許して……と繰り返して。

何度拒秘、請うたか分からない。最後に臭猜、額に強く押し當(dāng)てて視線を脇に背けると躺酒、そっと鏡の前に置いた。

踵を返す蔑歌。もう羹应、振り返らなかった。

部屋に戻り次屠、迷う事無く窓を開ける园匹。恐らく廊下は劫灶、警備兵で溢れている裸违。だから、ここから抜けて行くしかない本昏。

外には兵士の姿は見えない供汛。窓から身を乗り出して足場を確認する。手を目一杯伸ばしたところに雨樋が見えた涌穆。ここは二階怔昨、そう困難な事ではない。

窓枠に足をかける宿稀。長いコートの裾を足に巻き付けて趁舀、手を伸ばす。こんな風(fēng)に宿舎を抜け出すのは何年ぶりのことだろうか祝沸。

幼年學(xué)校や矮烹、まだ下級兵士だった頃の事を思い出した巡蘸。それに連なって、當(dāng)然浮かぶべき人の面影が浮かぶ擂送。

頭を振った悦荒。今は、今だけは想い出してはならない人嘹吨。

振り払うように搬味、勢いをつけて飛び移る。雨樋は思ったより頑丈で蟀拷、容易に地上に降り立つ事が出來た碰纬。

直ぐに茂みに身を隠した。遠くから近づいて來る巡回の警備兵が見える问芬。それをやり過ごして悦析、暗闇に紛れた。

森の中を走る此衅。明かりもなく强戴、思いがけない所に張り出した根に躓きながら、懸命に走った挡鞍。

息が上がり骑歹、冷えた空気を白くして。

森の終わりまで來ると墨微、硬いコンクリートの壁に突き當(dāng)たった道媚。見上げてみる。乗り越えられない高さではない翘县。だが最域、上部には電流か何か流れているかもしれない。

仕方なく锈麸、壁伝いに出口を探す镀脂。

程なく、小さな裏門が見えて來た掐隐。こちら側(cè)に二人兵士が見える狗热。恐らく表にも何人かいるだろう虑省。さて匿刮、どうやって撒いたものか……。

內(nèi)側(cè)の者は何とでもなりそうだが探颈、外にいる者の狀況が摑めない熟丸。

茂みに身を隠して様子を窺う。

時折開かれる扉伪节。定期的に外とやり取りしている光羞。ここから確認出來たのは二人绩鸣。事を荒立てて応援を呼ばれては不味い。

靜かに抜ける方法は……纱兑。

扉が閉まる呀闻。

「巡回に行って來る」

內(nèi)側(cè)にいた兵士の一人が遠ざかっていく。殘るのは一人潜慎。チャンスは今しかない捡多。躊躇っている暇などない。

兵士の姿が見えなくなると铐炫、ラインハルトは地面に手を這わせた垒手。適當(dāng)な小石を拾い反対側(cè)へ思いっきり投げた。

物音で銃を構(gòu)える兵士倒信。

「誰かいるのか科贬!」

緊張に高ぶった聲。その場を離れる様子はない鳖悠。茂みのギリギリの所まで移動する榜掌。そしてもう一度、小石を投じた竞穷。

構(gòu)えたまま歩き出す兵士唐责。少しずつ遠ざかっていく。一瞬のタイミングを見失わないように身構(gòu)える瘾带。

もしここで見つかったら、相手が誰かも確認しないまま彼は発砲するかもしれない熟菲。そうすれば間違いなく自分は死ぬ看政。

緊張で、喉が渇いた抄罕。自然と呼吸も止まる允蚣。今はただ、一瞬の隙をついて抜ける事に呆贿、全神経を集中させる嚷兔。

彼が、闇に紛れた做入。

今しかない冒晰!

足音を忍ばせて一気に駆け抜ける。扉に手をかけ外に出た竟块。突然の出現(xiàn)に驚く兵士壶运。かねてから決めていた方の兵士の銃を握り、口を覆う浪秘。

「靜かに蒋情。私が誰か分かるか埠况?」

これでもかと瞠目する兵士。後ろでもう一人が銃を構(gòu)える棵癣。

「貴様辕翰、何者! 放さんと撃つぞ」

口を覆われた兵士は狈谊、信じられないものを見たように喜命、恐る恐る頷いた。

「ならば騒ぐな的畴。私がここを抜けた事も渊抄、一切喋るな。良いな」

驚愕に瞠目したまま小刻みに頷く丧裁。ゆっくりと手を放して护桦、後ろの兵士を振り返る。

「…陛……下」

構(gòu)えた銃が驚きのあまり煎娇、あらぬ方向を向いた二庵。ラインハルトは構(gòu)わず歩き出した。追ってくる気配はない缓呛。騒ぐ様子もなかった催享。

それも當(dāng)然の事といえる。彼はそのまま振り向かなかったから知る由もないが哟绊、當(dāng)の兵士達は因妙、腰を抜かしてその場にへたり込んでいた。聲を出すことも出來ず票髓、口をぽかんと開けたまま遠ざかる影を見送って攀涵。多分、數(shù)分後には洽沟、夢でも見たのだろうか以故、と首を傾げるに違いない。

角を曲がったところで裆操、コートのフードを被った怒详。今まで一度も被った事などなかったが、目立ちすぎる髪の毛を隠すには一番いい踪区。

走れば目立つので昆烁、歩いた。けれど気持ちが逸るのか朽缴、歩幅が広い善玫。またも息が上がる。フードから漏れる息が、白い茅郎。

程なくして蜗元、見慣れたホテルが見えた。近くで見ると系冗、かなり高層なのだと知る奕扣。部屋は72階。もう何度も確認している掌敬。

眩しいほどの照明に足を踏み入れた惯豆。顔を隠すように俯いて、真っ直ぐエレベーターへと向う奔害。誰にも呼び止められませんように楷兽、と祈りながら。

エレベーターには先客がいた华临。直ぐ脇の隅に身を滑り込ませて芯杀、顔を見られないように壁に向かって俯く。

階が上昇していくにつれ雅潭、高鳴っていく鼓動揭厚。もう直ぐ彼に……。

同乗した客は扶供、一人また一人と降りて行く筛圆。その度に、怪訝そうに振り返る椿浓√恐らく自分は今、かなり不審に見えるのだろう扳碍。これが皇帝だと誰が思うだろうか粉寞。

滑稽に思えた。けれどそれ以上に増していく左腔、強い想い。

靜かな上層階で扉が開く捅儒。廊下に人影は見えない液样。深い緑色の絨毯がどこまでも続いているだけ。長い毛足が足音を消す靜かな道のり巧还。自分の鼓動だけが聞こえて來そうで鞭莽。

中ほどに、目指す彼の部屋麸祷。

謹(jǐn)慎ではない為澎怒、入り口を警備するものもいない。助かった阶牍、と胸を撫で下ろす喷面。

扉の前星瘾。

一度深呼吸をして呼び鈴に手を伸ばした。自分の手が惧辈、熱く濕っているのに気付く琳状。そして震えても、いた盒齿。

部屋の中で鳴る音は聞こえない念逞。応答があるまで、永遠とも思える時間を待った边翁。

こんな風(fēng)に翎承、自分の方から彼を求めた事があっただろうか。

こんな風(fēng)に符匾、高鳴る鼓動を感じた事があっただろうか昆婿。

靜かに扉が開いた。

モニターで訪問者を確認したのだろうか掂铐、フードを被っていてもそのシルエットから蛮原、人物を特定できたのだろう。彼の金銀妖瞳は创淡、蒼氷色の瞳と重なった時痴晦、既に驚愕に瞠目していた。

「皇……」

ロイエンタールが口を開きかけた時琳彩、ラインハルトは彼の口許に手を立ててそれを制した誊酌。そのまま肩を押して室內(nèi)に入る。

強引に踏み出した拍子に露乏、フードが脫げた碧浊。

揺れる蒼氷色の瞳。

後ろで瘟仿、扉の閉まる音箱锐。

何か問いたげに動く唇。けれどラインハルトは劳较、頭を振ってそれを制する驹止。

「何も言うな……」

ロイエンタールの眉間に皺が刻まれる。

ラインハルトは強引に唇を重ねた观蜗。

瞠目したままの金銀妖瞳臊恋。互いの意図を探らんと墓捻、交錯する視線抖仅。

「……何も、問うな」

一度、諦めた存在が撤卢、確かに目の前にある环凿。これは夢なのだろうかと手を伸ばした。だが凸丸、觸れる頬の滑らかさは確かなもので拷邢。何よりも自分を捕らえる瞳は、紛うことなき蒼氷色屎慢。

頬に觸れた手を項に滑らせた瞭稼。片方の手を脇に差し込んで強く抱き寄せる。少し抱き上げた肩から腻惠、コートが脫げた环肘。

髪を束ねたせいで、普段見えない首筋があらわになる集灌。

逸らされる事の無い視線悔雹。

ロイエンタールは不意に気付いた⌒佬皇帝の胸許にあるはずの物がない事に腌零。ペンダントが見當(dāng)たらない。いつか垣間見た中身唆阿。それが今は益涧、ない。

置いて來たと言うのだろうか驯鳖、俺に會うために闲询。あんなに肌に離さず持っていた、大切な物を浅辙。

わざと扭弧、置いて來たと言うのだろうか。ならば―――记舆。

永遠に選ばれたのではないかもしれない鸽捻。けれど、今だけは俺を選んでくれた泽腮。もう泊愧、殺さなくてもいい。この秘める想いを盛正。今だけは、思う存分心をぶつけてもいいのだと屑埋。

思う存分豪筝、愛してもいいのだと。

誓った心が揺らぐ。

一切を忘れると续崖、誓った心が敲街。

項に添わせた手に、脇を支える手に力を込めて引き寄せる严望。今までのように多艇、避けられはしなかった。向かい合う瞳が像吻、靜かに睫毛を伏せた峻黍。

重なる唇。

初めは互いを確認するように拨匆。けれど一度溢れ出した想いは姆涩、止まる術(shù)を持たない〔衙浚互いの舌が絡(luò)み合ったのは一瞬の後骨饿。

やはり、自分を抑えなくてもいいのだと台腥。

貴方を愛する事を宏赘、許してくださるのだと。

一切を忘れる黎侈、と言う誓いを今だけは忘れていいのだと察署。

一度、唇を離した蜓竹。

何度見ても箕母、そこにあるのは蒼氷色の瞳。何者も恐れず俱济、自分を真っ直ぐに見つめてくる瞳嘶是。一度でいいから、と強く願った想い蛛碌。溢れ出る愛しさに聂喇、頬を指先でなぞった。

押し付けられる白く滑らかな頬蔚携。長い睫毛を伏せて希太、すり寄せられる。

何も言うなと言われた以上酝蜒、告げる事は葉わない誊辉。何も問うなと言われた以上、訊く事も葉わない亡脑。けれど堕澄、間違いなく今邀跃、俺の腕の中にいるのは―――。

ゆっくりと唇を重ねた蛙紫。やわらかな唇を舌でなぞり拍屑、僅かに開いた隙間から差し込む。押して坑傅、絡(luò)めて僵驰、呼吸まで奪って。

愛している唁毒、と想いを込めて蒜茴。

絡(luò)まる舌。優(yōu)しく枉证、優(yōu)しく矮男、溢れる想いをのせて。

彼とのキスは室谚、もう數(shù)え切れないほど交わした毡鉴。けれどこんなにも、こんなにも優(yōu)しくされた事があっただろうか秒赤。

こんなに優(yōu)しく……猪瞬。

慈しむように。

いとおしむように入篮。

多分これは陈瘦、キスではない。

抱きしめられる度に潮售、コートがずり上がって脫げて行く痊项。肩に腕に纏わりついて、ラインハルトは無意識に脫ごうとした酥诽。

それが彼にも通じたのか鞍泉、抱いた手を解いてコートを脫がす。開放された唇は肮帐、酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す咖驮。

唾液に濡れて光る唇を、ロイエンタールの指先がそっとなぞった训枢。

そして托修、再び重なる。

多分恒界、これは―――言葉に出來ない彼の睦刃、告白。

だから俺も十酣、自分の気持ちに素直になろう眯勾。自分の心に湧き上がる想いに枣宫。

唇を離した。真直に金銀妖瞳を見つめる吃环。

「……抱いてくれ」

脫いだコートをソファーに掛けると、ロイエンタールはラインハルトの手を取って洋幻、口許へと引き寄せた郁轻。

白く細い指先を見つめる。

彼の眉間に文留、皺が刻まれた好唯。あの、哀しい顔ではない燥翅。けれどどこが苦しそうな表情で骑篙。

そして、唇が押し當(dāng)てられる森书。

手を引かれ歩き出した靶端。奧の寢室へ向かうために。これから愛を紡ぐために凛膏。もう杨名、引き返せない。否猖毫、引き返す必要などない台谍。自分の意思でここまで來たのだから。

ラインハルトは吁断、自分の手を引くロイエンタールの背中を趁蕊、靜かに見つめた。

つづく…

書きたかっただけに仔役、まともに字になってない掷伙!ショック。でもなあ…きっとこれがあたしの今の限界なんでしょうね骂因。頭の中では劇的なのに炎咖、字にするとねえ……ああ、ショック寒波。しかも次回H乘盼? ああどうしましょう《硭福苦手なんです绸栅。今から緊張するわ。でも页屠、でもつづくのです(^^ゞ

(2003/6/16)

愛したからこそ粹胯、奪った蓖柔。

  いとおしかったからこそ、満たされた风纠。

  この腕に抱いた時况鸣、歓喜に湧く自分を抑えられなくて。もう竹观、この命すら差し出してもいいと思った镐捧。けれど相手は萬人の頂點に立ち、統(tǒng)べていく人臭增。そんな人を懂酱、俺のような男の腕で抱いてもいいのだろうか、と誊抛。この人には列牺、一個人としてではなく公人としての責(zé)務(wù)がある。それをこんな男が汚してもいいのだろうか拗窃、と瞎领。

  充足と、不安并炮。手にすれば默刚、失う恐怖。満たされれば逃魄、飢える輪廻荤西。

  もし、己の心に天秤があるとすれば伍俘、それらが常に振れているだろう邪锌。

  どちらで終焉を迎えるのか、多分それはふとした瞬間に訪れる癌瘾。

陽の光 闇の月 -13-

寢室の照明は消えていた觅丰。けれど、眼下に広がる夜景の明かりが妨退、佇む影を照らし出す妇萄。

壁一面ガラスで覆われた部屋。特殊な造りで咬荷、外からは見えない冠句。

夜景を望む形で置かれたベッド。その脇には不似合いな花幸乒。ラインハルトはその花に近寄った懦底。

部屋に不似合いなのではない。彼の罕扎、ロイエンタールの部屋にある聚唐、と言うのが不似合いな気がした丐重。

それは真っ白い花弁。噎せ返るというより、ほのかに香る芳香。

肉厚な花びらに觸れた。しっとりと滑らかで、ほんの少し爪を立てるだけで悲鳴を上げる级及。甘い芳香の、白い薔薇の花。

背後に彼の気配がした誉帅。

後ろから靜かに手が伸びる。束ねた髪の毛にキスが降りる氧卧。優(yōu)しく啄むように桃笙、繰り返し繰り返し。

無意識に首を傾けて沙绝、耳に感じる彼の唇搏明。

回された手が、ゆっくりとボタンを外していく闪檬。

首筋に感じる星著、濡れた唇の感觸。しっとりと滑らかで粗悯。手で弄ぶ花びらの感觸に似ていた虚循。

総て外された隙間から、冷気が吹き込む样傍『岬蓿火照る躰には心地良い。

心なしか衫哥、弄び続けた花の芳香が茎刚、強くなった気がした。

髪を束ねたせいで露になっている項を撤逢、唇が這う膛锭。

「……この花が、好きなのか蚊荣?」

何も言うな初狰、と制したのは自分なのに無意識に問うていた。彼は答えるはずもない妇押。

一輪跷究、花瓶から取り出す。ゆっくりと鼻先に近づけて香りを吸い込む敲霍。ほのかに甘く俊马、そして妖しく誘う香りがした丁存。そう、まるで清らかなものを暴いてしまいたくなるような柴我、敢えて汚してしまいたくなるような解寝、そんな誘われ方。

チクリと棘が刺さった艘儒。小さく真紅の玉が指先に浮かぶ聋伦。

突然、その手を摑まれ界睁、反動で足下へ落ちた花觉增。濃い青色の絨毯に映える、白色翻斟。決して混じり合う事なく逾礁、どこまでも真っ白に輝き続けている。

何故か访惜、その花から目が離せない嘹履。

「……今だけは答えてもいい。この花が债热、好きか砾嫉?」

摑まれた指先に滲む血。少し引き寄せられて窒篱、口に含まれる焕刮。多分それは血を拭う為の処置だったはず。けれど舌剂、彼の舌が……熱く濡れた彼の舌が济锄、絡(luò)みついて……。

「…んっ……」

視界の端に映る彼の橫顔霍转。舐められているのは指先荐绝。なのにまるで……あそこが…熱を持って……。

不意に反対側(cè)の頬に手を添えられて避消、振り向かされた低滩。首筋、耳朶とキスされ岩喷、そして囁く恕沫。

「……貴方に、似ている……」

その瞬間纱意、肩を摑まれ向かい合った婶溯。襟元に指が滑り込み、服が床に落ちる。

急速に情欲の燈る瞳迄委。高鳴り始める鼓動褐筛。

緩みかけた紐から落ちた後れ毛を、ロイエンタールの指が優(yōu)しく梳いてゆく叙身。時折地肌に當(dāng)たる指先が渔扎、何とも扇情的で。

誘われるままに信轿、ラインハルトは目の前のボタンを外していく晃痴。少しずつ彼の逞しい胸が現(xiàn)われる。

シャツを床に财忽、落とした倘核。

多分それが、合図即彪。

ラインハルトは自分から彼の肩を押して笤虫、ベッドへ倒れ込んだ。彼の耳の両脇に手を著く祖凫。ふわりと立ち?xí)Nる煙草の匂い。彼の酬凳、匂い惠况。

絡(luò)み合う視線。そこは無言で宁仔、交わされる言葉はない稠屠。けれども、この靜寂がこれほど熱を伴い欲に揺れて互いを高めようとは翎苫。

ロイエンタールの手がゆっくりと背に回り权埠、束ねた紐を引いた。さらさらと零れ落ちる金の糸煎谍。彼の頬をくすぐる攘蔽。そして、背に回された手に力が込められた呐粘。

重なる唇满俗。

一番深く貪れる角度で重なり合って∽麽互いの唾液が混ざり合い息も絶え絶えに唆垃。

こんなに激しいキスを交わした事が、あっただろうか痘儡。

著いた手から辕万、力が抜けるほどに。

脳裏を掠める赤い髪の毛を、忘れ去るほどに渐尿。

今はこの背に回された手が醉途、いとおしい。

ロイエンタール涡戳。もっと強く结蟋、もっと激しく俺を抱いてくれ……。

いとおしかった渔彰。

この手に身を委ね嵌屎、全身で俺を求める貴方が。

ロイエンタールは両手に力を込めて躰を密著させると恍涂、體勢を入れ替えた宝惰。長く波打つ金髪を梳き上げながら、そのこめかみに再沧、耳に尼夺、首筋に口づける。

蒼氷色の瞳が炒瘸、心なしか赤く腫れているように見えた淤堵。

泣いていたのだろうか。キルヒアイスを裏切る自分が許せなくて顷扩。貴方はいつもそうだった拐邪。いくら抱いても貫いても、その心から罪の意識が拭えない隘截。

誰も責(zé)める者などいないのに扎阶。貴方が殺した訳ではないのに。どうしたら婶芭、その罪悪感を拭い去る事が出來るのかと东臀、腕の中で喘ぐ貴方をいつも見つめていた。

この手で自由にしてやる事は可能なのか犀农、と惰赋。

けれど、結(jié)局はそれが貴方を苦しめた呵哨。

だから今はただ谤逼、この腕に中にいる人を愛したい。

俺の持てる総てを注いで仇穗。全身全霊をかけて流部。

今までに一度としてつけた事のない痕。この躰に許されるのはキルヒアイスだけだと纹坐、肌が訴えていた枝冀。けれど今日は、今夜だけは……。

浮き出た鎖骨を果漾、舌でなぞる球切。

小さく息を吸う音。

甘噛みして绒障、吸った吨凑。

「んんっ……」

くっきりと浮き上がる、赤い痕户辱。視線が合った鸵钝。一瞬、咎められるのかと庐镐。けれど蒼氷色の瞳は欲に潤んで恩商、薄く笑みを湛える。もっと付けろと言わんばかりに躰をうねらせて必逆。

細い指がシーツを摑む怠堪。そっと重ねて指先に軽く力を入れ、すうっ……と名眉、腕の裏側(cè)を通って撫でて行く粟矿。やわらかな二の腕。真っ白できめの細かい內(nèi)側(cè)损拢。

爪の當(dāng)たる感觸に嚷炉、ビクッと體を震わせた。

脇に顔を埋め探橱、やさしく啄んでみる。それでも直ぐに咲く赤い花绘证。

脳裏に白い花びらが浮かんだ隧膏。ほんの少し爪を立てただけで、傷つき悲鳴を上げている嚷那。やはりあの白い薔薇の花は胞枕、貴方なのだと思った。

這わせていた手を魏宽、首筋から移動させる腐泻。そして、觸れる胸队询。やわらかな乳房などないのに派桩、手になじみ、吸い付いてくる蚌斩。

指先でなぞると铆惑、存在を主張する乳首。淡く色付き、敏感に隆起して员魏。

吐息が熱を持って荒くなる丑蛤。押し殺したような聲。まだ撕阎、堪えられるほど余裕があるのかと受裹、いじめてみたくなるほどに。

脇から舌を滑らせた虏束。

「はうっ…ん…」

下肢をしならせ棉饶、摑んだシーツを引き寄せる。けれど魄眉、乳首を含む唇からは逃れようとはしない砰盐。求めるままに胸を突き出し、もっと噛んでくれと強いてくる坑律。

髪に細い指先が絡(luò)まる岩梳。抱きしめたいのか、押し離したいのか揺らぐ手晃择。

手を伸ばし冀值、立てた膝の間に差し込む。僅かな抵抗の後宫屠、開かれた腳の間に體を滑り込ませる列疗。

表情を盜み見た。

長い睫毛を伏せて浪蹂、感じるままに眉根を寄せ抵栈、頬が赤く上気している。さっきの僅かな抵抗は坤次、最後に殘った理性なのだと知る古劲。

滑らかな內(nèi)腿を撫でる手に、時折觸れる感觸缰猴。早く愛される事を待ち望んで产艾、精一杯存在を主張している。

もどかしいのか滑绒、自分でズボンの留め金を外す闷堡。催促、とでも言うのだろうか疑故。あれ程俺の手を避けていたくせに杠览、躊躇いながらも自らへ導(dǎo)こうとする。

その手をやんわりと制して纵势、下著を脫がした倦零。望み通り误续、手に握り込む炎辨。

「ああっん…っ……」

髪の毛に指を絡(luò)めて环疼、仰け反る細い首。

臍の橫辺りに青自、歯を立てる葫隙。途端栽烂、手の中のものが一際張り詰めた。

半身を起こして恋脚、片足を肩に掛ける腺办。日に焼けない踝に歯を立て、片手は露になった太股を撫でた糟描。そしてもう片方の手は怀喉、指の腹を使って丁寧に扱く。

舌を踝から脹脛に滑らせた船响。

身をよじって躬拢、甘い喘ぎ聲を漏らす。

太股の內(nèi)側(cè)を吸う见间。赤い花が咲き亂れ聊闯、力の入らない腳は外側(cè)に大きく開かれた。

そろそろ限界だろうか米诉。

手を放し菱蔬、光る先に口づける。くちゅ……と濡れた音をたてて口に含んだ史侣。髪に絡(luò)まる指が拴泌、強張った。ビクッと震えた內(nèi)股が惊橱、俺の肩を挾んでくる蚪腐。

「ロ…イ…ンター……ル……んんっはぁ…も、我慢……で……い」

最中に李皇、初めて名前を呼ばれた気がした。否宙枷、思い違いではない掉房。たぶんセックスの最中に名前を呼ばれたのは、初めて慰丛。

貴方を抱いているのが俺だと卓囚、初めて認められた気がした。もう诅病、キルヒアイスの身代わりなどではなく哪亿、オスカー?フォン?ロイエンタールとして粥烁、この躰を愛してもいいのだと。

いとおしかった蝇棉。

もう讨阻、許してくれ、開放してくれ篡殷、と泣き叫ぶまで抱き盡くそうと钝吮。

貴方が望むままに総てを與えて、埋め盡くす―――これが板辽、幸せなのだと奇瘦、知った。

脇に著いた手に劲弦、細い指が絡(luò)まる耳标。欲されるままに手を自由にさせる。そして熱く濡れた感觸邑跪。視界の端に次坡、口に含まれた自分の指が見えた。

両手で手首を握って呀袱、薄く目を開けて舐めている贸毕。人差し指と中指を口に含んで、たっぷりと唾液を絡(luò)めて夜赵。感じた體が明棍、より強い刺激を求めて。

名殘惜しそうに絡(luò)みつく舌を振り切って寇僧、うごめくそこにあてがった摊腋。

期待に引き寄せられるシーツの波。

緊張に震えているのだろうか嘁傀。それとも待ち焦がれているのだろうか兴蒸。

ゆっくりと挿入させた。

締め付けられる指细办。けれど橙凳、最奧へ導(dǎo)かんとうごめいて。

內(nèi)部が熱い笑撞。今まで幾度となく侵入をはかったが岛啸、これ程までに熱く蕩けていた事はない。それ程に感じている茴肥、という事だろうか坚踩。

熟知している場所を探して擦る。びくびくと跳ねる躰瓤狐。絶頂近しと怒張し瞬铸、髪と肩に細い指が食い込んで來る批幌。

「ああっ!……だめ…ロイ…タール…」

ほとばしる飛沫を受け止めて嗓节、指が締め付けられた荧缘。しなる躰。肌には汗が浮いている赦政∈び睿荒く呼吸を繰り返し、酔いしれて恢着。

涙を含んだ睫がゆっくりと開いていく桐愉。熱と欲に犯された瞳が、俺を求めて瞬く掰派。

清らかな从诲、あの白い花が情欲に染まっていた。

躰を起こして靡羡、俺のズボンに手を掛ける系洛。この先を求めて暴いていく指先。今まで一度として自分から觸れる略步、などという事はなかったのに描扯。

突然の行動に、思わず呆然と目を向ける趟薄。

あっという間にくつろげられ绽诚、下著から取り出される。そして杭煎、躊躇いもなく口に含まれた恩够。

自分の腳の間に揺れる金色の髪の毛に、指を差し込んだ羡铲。無意識に顔を見ようと蜂桶、何度も髪を梳きあげる。長い睫を伏せて両手で根元を握り也切、苦しそうに前後する顔が見えた扑媚。

-―――いいのだろうか、皇帝にこんなことをさせて雷恃。

過ぎる不安は疆股、満たされた心に一點の闇を落とす。そして褂萧、波紋のように広がっていく押桃。

見上げてくる蒼氷色葵萎。そろそろ良いか导犹、との合図唱凯。先を望んでいるのだろう。早く埋められたくて谎痢、攻められたくて磕昼。

どこまで俺を求めているのか、少し試したい気がした节猿。いつも被害者面して感じていた顔が票从、今夜はどんなに変わるのだろうかと。

腕を摑んで滨嘱、仰向けに寢てみた峰鄙。頬を上気させて、困ったように見つめてくる太雨。構(gòu)わず吟榴、腰を引き寄せる。望むのなら囊扳、自分でしてみろ吩翻、と。

唇を噛んで锥咸、そろそろと俺の體を跨ぐ狭瞎。天を仰ぐものに手を添えると、ゆっくりと入口にあてがう搏予。目を硬く閉じて熊锭、時折襲われる苦痛に顔を歪め、息を止めたり吐いたりしながら最奧へと導(dǎo)く缔刹。

こんなに情欲に犯されながら球涛、どうしてこの人はこれ程までに美しいのだろうか。華やかに咲いて校镐、香りを立ち?xí)Nらせ人を惹きつける亿扁。

俺の両脇に手を著く。動きやすいように腰に手を添えた鸟廓。ゆっくりと自らの意思で動き始める从祝。伏せられた長い睫毛が、酔ったように寄せられる眉根が扇情的で引谜。

―――見惚れた牍陌。

「ふんんっ……ああっい…いっ……」

薄く開いた唇の奧に、ちらちらと揺れる舌员咽。官能に飲み込まれ毒涧、俺を締め付けてくる。

―――共に酔いたい贝室、と思った契讲。けれど仿吞、一瞬過ぎった不安が消えない。目の前で捡偏、亂れる姿を目にすれば唤冈、する程。本當(dāng)にいいのだろうか银伟、こんな風(fēng)に墮ちてしまっても你虹。

俺はいい、別に彤避。元々墮ちていた者だから傅物。けれどこの人は違う。この人は萬人の頂點に立つ人琉预。統(tǒng)べて行かなければならない責(zé)務(wù)を負った人挟伙。

責(zé)務(wù)……∧:ⅲ恐らく尖阔、貴方が皇帝などではなく一貴族でしかなかったなら、こんな風(fēng)に過ぎったりはしない榨咐。満たされた筈の心に介却、不安を感じる事もなかっただろう。

被害者面を試したのも块茁、この不安の表れから齿坷。多分あの時、俺の誘いを拒んでいたら数焊、今までのように自分からは何もせず永淌、他人事のように冷めていたのなら。

「あっいいっ……ロイ……ル…達きそう…」

半身を倒して佩耳、前屈みにキスを求めてくる遂蛀。ぴったりと胸を合わせて、互いの汗が交じり合う干厚。熱く濡れた舌が滑り込んできて李滴、俺の舌に絡(luò)まる。

貴方は蛮瞄、この宇宙を統(tǒng)べて行く為に身を厭わないだろう所坯。その為には、他人が持つ事を許されても挂捅、貴方は諦めなければならない事があるかもしれない芹助。そして、王朝を維持していく為に后妃を迎え、子を生していかなければならない状土。平和な時を維持し統(tǒng)治していく為に苗缩。

それが―――責(zé)務(wù)。

ならば声诸、公人としての立場を省みず、情欲に走らせてもいいのか退盯? 相手は臣下の男彼乌。こんな男の手に汚されてもいいのだろうか……。

愛すればこそ渊迁、正當(dāng)な道に導(dǎo)いてやるのが真実ではないだろうか慰照。それに―――后妃を迎え、その手に女を抱く貴方を琉朽、俺は我慢出來るのだろうか毒租。醜い嫉妬に支配された者に成り下がりはしないだろうか。

―――貴方が箱叁、皇帝などでなかったなら……きっと無條件に奪い去っていた墅垮。

闇が、広がっていく耕漱。愛すればこその獨占欲と算色、いとおしいが故の倫理感とがひしめき合って、どろどろと渦巻いていく螟够。

目を灾梦、見開いた。

背をしっかりと抱いて妓笙、くるりと體勢を反転させる若河。放射狀に広がる金色の髪。見つめてくる潤んだ蒼氷色の瞳寞宫。背に両手を交差させて萧福、腰に足を絡(luò)めて來る。もっと……奧に辈赋、と统锤。

背を引き寄せられ、重なる唇炭庙。

振り払いたかった饲窿。過ぎる不安を。やっと手にした時を邪魔されないように焕蹄。自分の心の巣食う闇に壊されないように逾雄。今だけは舌菜、腕の中にいる人を愛したい士葫。ただそれだけに、生きたい。

狂ったように腰を動かした身辨。貴方が求めるままに。そして自分を満たす為に雏门。

喘ぎ聲は掠れる泞莉。揺さぶられ、攻めたてられて限界へと向かって钾麸。しがみ付き更振、自分から腰を浮かし、時折思い出して俺の耳を噛む饭尝。そして―――肯腕。

反り返る背中。內(nèi)股が震え钥平、腹部に熱い粘りを感じる实撒。締め付けてくる腸壁に、放ったばかりのものが逆流してくる涉瘾。

背に突き立てられた爪が知态、血を滲ませた。

キスを強請って立叛、頬に手を添えられる肴甸。

余韻を感じたくて、引き抜く事を許さない囚巴、と絡(luò)まる細い足原在。

いとおしい、と心の底から思った彤叉。

その想いをのせて庶柿、唇を重ねる。

「……」

一瞬にして広がっていく闇秽浇。聞かなければ良かった浮庐。否、聞こえなければ良かった柬焕。重なる瞬間审残、貴方の唇が形作った言葉。

己を押し潰すほどの迷いが圧し掛かる斑举。

きつく抱いた搅轿。きつく抱かれもした。金色の髪に顔を埋めて富玷、それでも俺は心に巣食った闇が広がっていく事を璧坟、自分ではどうにも出來ずにいた既穆。

頭の中に響く聲。

繰り返し雀鹃、繰り返し幻工。

聞こえた幸福と、聞いてしまった不幸と黎茎。

―――愛している……と囊颅、そう確かに囁かれて。

つづく…

緊張するとか何とか言っといて傅瞻、思いっきりH2話目突入踢代。アホか……(^^ゞ

ロイエンタールって陰気よね。って私が書くから陰気なのよねきっと俭正。やっと手に入れたんだから、素直に喜びゃいいのに焙畔。いざ手に墮ちると掸读、本當(dāng)にいいんだろうかって不安になってさ。小心者だわ彼って宏多。

(2003/6/20)

陽の光 闇の月 -14-

腕の中で靜かな呼吸を繰り返す人儿惫。抱き寄せ、預(yù)けられ伸但。この腕の中にぴったりと寄り添い肾请、無防備に総てを曬して。

艶やかな髪の毛に更胖、唇を押し當(dāng)てた铛铁。

あれ程焦がれたものが今ここに、ある却妨。

確かなぬくもりと饵逐、十分な重さを伴って。だが―――彪标。

俺の心に巣食う一點の闇倍权。忌むべき俺の歪み……。否捞烟、僅かに殘った正路と言うべきか薄声。

ロイエンタールは、腕の中の存在を確かめるように题画、その髪に頬を寄せた默辨。小さな溜息をゆっくりと吐いて、ほのかに漂う髪の香りを吸い込んだ苍息。

―――輝き続ける大切な人が廓奕、目の前で墮ちようとしている抱婉。男に情を囁き、寢所を抜け出してまで桌粉、セックスに酔う蒸绩。國民に慕われ、多大なる責(zé)務(wù)を負って生きねばならぬ人が铃肯、その本來歩むべき正路から患亿、墮ちようとしている。

こんな男のせいで……押逼。

これで步藕、いいのだろうか。

これで挑格、許されるのだろうか咙冗。

歪みが心臓を掠め、ちりちりと痛み始めた漂彤。それは徐々に増して行き雾消、眉間に苦痛を刻ませる。

息をゆっくりと吸い込んだ挫望。

……違う立润。違うのだ。それは媳板、建て前桑腮。本當(dāng)は……本當(dāng)の俺は、自分が恐ろしい蛉幸。貴方が拒まなくなった事で破讨、今まで押さえつけていた欲が顔を覗かせる。より多くを欲して奕纫、叫び聲をあげるのだ添忘。

奪いたい。

奪い去りたい若锁。

あの言葉を聞いてしまった今搁骑、俺は俺自身に科した枷が外れようとしている。歯止めの効かない欲が又固、増殖しかけている仲器。

一體、この先どうなるのだ仰冠。このまま増殖した欲は乏冀、皮膚を突き破って貴方に何をするだろうか。俺は洋只、自分が恐ろしい辆沦。

欲が昼捍、俺に囁く……。

閉じ込めて一人のものにしたい肢扯。

部屋に繋ぎとめて一歩も出したくない妒茬。

貴方の世界には、俺一人が存在していればいい蔚晨。

そう叫んで乍钻、そう欲して、総てを捻じ伏せて……铭腕。

けれど银择、貴方は皇帝。そんな事が累舷、許されるはずもない浩考。

ゆっくりと息を吐きながら、波打つ髪にキスを落とす被盈。何度も啄むように析孽、優(yōu)しく施した。

俺は害捕、我慢できるのだろうか绿淋。この先闷畸、貴方が后妃を娶り尝盼、子を生していく事に。

俺は佑菩、耐えられるだろうか盾沫。その腕が、別の誰かを抱く事に殿漠。

知らぬうちに赴精、抱いた腕に力がこもる。僅かに身じろぐ細い肩绞幌。

「……どうした蕾哟、ロイエンタール」

慌てて緩め、視線が合う莲蜘。

答える事を許されない俺は谭确、小さく頭を振った。実の所票渠、內(nèi)心ホッとしていた逐哈。こんな事、言葉に出來る訳がない问顷。覆い茂るしがらみをかなぐり捨てて昂秃、ここまで降りて來てくれたというのに禀梳。今、訳を問われたら肠骆、何を言い出すか自分でも想像もつかない算途。

どうして俺は素直に喜べないのだろうか。どうして……哗戈。

更に抱き寄せた郊艘。互いの心臓の響きが伝わる程に唯咬。頬を寄せ纱注、ゆっくりと髪を梳き続ける。

いとおしい胆胰、と心の底から想う狞贱。この想いに偽りは、ない蜀涨。だが―――瞎嬉。

このまま行けば、間違いなく俺は貴方を壊してしまう厚柳。そうなる前に氧枣、貴方を本來の道に戻し、見守る術(shù)はないだろうか别垮。他に取るべき術(shù)は……便监。

俺にしか出來ぬ、愛し方碳想。

貴方が俺にしか求めない烧董、愛され方。

俺は胧奔、貴方が本當(dāng)に求めるものを與えてやりたい逊移。その為に、たとえどの様な誹謗中傷を受ける事態(tài)に陥ろうとも厭わん龙填。

伏せられた長い睫毛胳泉。俺を捉えて放さない美しい人⊙乙牛口許にくる髪の生え際に啄むようなキスを繰り返す扇商。刻まれたままの眉間の皺は喘先、深い钳吟。

これ以上こんな男に墮ちるより……貴方は陽の下を歩むべきだ。本來の道を窘拯。

貴方に闇は―――似合わない红且。

眉間に刻まれた皺が深みを増す坝茎。それがラインハルトからは見えない。自分を抱きしめる表情が暇番、幾度となく目にした哀しい顔でもなく嗤放、ましてや自信に満ちた顔でない事が。

それは初めて抱いてくれ壁酬、と口にした時の苦しげな顔だった次酌。

抱きしめる腕に力がこもる。頬を寄せ舆乔、金色の髪に指を絡(luò)ませた岳服。

心臓が、悲鳴を上げる希俩。

この身が吊宋、引き裂かれる痛み。全身が切り刻まれ颜武、鮮血が噴出していく璃搜。

強く、抱きしめた鳞上。放したくない这吻、失いたくない、と流れ出る血が叫ぶ篙议。

誰よりも貴方を愛している唾糯。だから……愛しているから、こそ―――涡上。

「……墮ちては趾断、いけない……」

低い聲は拒名、靜寂の中へと消えて行く吩愧。

確かに自分の口で、そう告げた增显。

思い違いではない雁佳。

愛している―――そう、告げた同云。その言葉に偽りはない糖权。けれど……。

けれど炸站、俺は許されるのだろうか星澳。彼を死に追いやっておいて、他に心を移すなど旱易。自分でも痛いほど分かっている禁偎。これは不條理なのだと腿堤。

これは許されてはならない不條理婆跑、なのだと吴菠。

けれど俺は、自分の躰が彼を欲するのを止められなかった尺铣。あろう事か盒至、自分からこの身に沈めてくれと懇願した酗洒。そして何よりも許されないのが……。

今枷遂、抱かれているこの腕が樱衷、あたたかいと言う事。

あたたかくて力強くて酒唉、ずっと孤獨だった心に沁みる箫老、と言う事。

愛する人を死に追いやった俺が黔州、こんなぬくもりを得るのを許されるはすが耍鬓、ない。

髪の毛を梳く優(yōu)しい手付き流妻。直に伝わる心地よい心臓の響き牲蜀。逞しい腕に抱かれ、総てが癒されていく绅这。そして……満たされる涣达。

キルヒアイスを失ってからというもの、彼への変わらぬ想いと证薇、ただ一度與えてくれた感覚と度苔、約束を果たす、と言う責(zé)任感で自分を支えて生きてきた浑度。

時を経るごとに心は凍り寇窑、乾燥していった。けれど箩张、後ろを振り返ったら甩骏、一瞬のうちに風(fēng)に吹き飛ばされそうで恐ろしかった。いつも自分を奮い立たせ先慷、精一杯前を向いていた饮笛。

お前との約束を果たす、ただその一念で论熙。

それなのに福青、こんなぬくもりに觸れて俺はどうなってしまうのだろうか。このままだと、獨りで立つ事さえ出來なくなりそうで无午。

裏切った上に獨りではいられなくなる……そんなに弱い人間になってどうするのだ二蓝。そんなに、弱くなって……指厌。

俺はそんな自分が―――怖い刊愚。俺は怖いのだ。

このままロイエンタールの優(yōu)しさに觸れることが踩验、恐ろしい鸥诽。どこまでも彼を頼って行きそうで。彼なしでは立てなくなりそうで箕憾、この先どうなってしまうのか牡借、想像もつかない。

怖い袭异、ロイエンタール……怖い钠龙。

背に回された手に力がこもって、抱き寄せられた御铃。彼に心の呟きが聞こえたのだろうかと碴里、不安になる。

恐る恐る見上げた上真。眉間に刻まれた深い皺咬腋。なにか悩んでいるのだろうか。それとも後悔しているのだろうか睡互。

抱いてくれ根竿、と口にした時一瞬見せた、あの苦しげな表情に似ていた就珠。

俺と同じように寇壳、彼は彼で悩んでいる。だとすれば妻怎、俺達はそれを口にし今度こそ互いに語り合わねばならないのだろうか……壳炎。

「……どうした、ロイエンタール」

無意識に問うていた蹂季。彼はハッとした表情で俺を見る冕广。けれど疏日、一向に答える様子はない偿洁。それもそう。問うな沟优、言うなと制止したのは他ならぬ俺涕滋。でも今は訊くべきかもしれない。こんなにも彼は苦しんでいるのだから挠阁。

そう脳裏を過ぎった時宾肺、彼は目を閉じてゆっくりと頭を振った溯饵。

言いたくないのだろうか。それとも锨用、言えないことなのだろうか丰刊。不安が過ぎる。どちらにしても增拥、訊く啄巧、と言うタイミングを失ってしまった今、俺も口をつむぐしかない掌栅。

再び抱き寄せられた秩仆。ゆっくりと髪を梳かれ、こめかみや額にやわらかな唇の感觸猾封。

あたたかな光に包まれているようだった澄耍。ゆっくりと皮膚から浸透し、気持ちをあたたかくさせてくれる晌缘。長い時を経て齐莲、血が再び通い始めたように。

胸の奧に燈る磷箕、熱い想い铅搓。

このまま、彼の腕の中で眠れたらどんなにいいだろうか搀捷。共に朝と夜を迎え星掰、同じものを見て、同じものを食す嫩舟。そんなささやかな日常も氢烘、酷く満たされたものに感じるだろうか。

ロイエンタール家厌。俺は愛した人を死に追いやった播玖。人を不幸にした。そんな俺でも幸せになる事は饭于、許されると思うか蜀踏?

それを肯定するように一際強く抱かれた。しっかりと抱き込まれて彼の表情は見えない掰吕。髪に果覆、何度も角度を変えては頬を押し付けられる。

觸れ合ったところから殖熟、彼の心の聲が聞こえて來そうだった局待。

愛している、と言葉が想いとなって降り注ぐ。

俺は钳榨、許されるのだろうか……舰罚。

一瞬、微かに聞こえる彼の聲薛耻。けれど营罢、何を呟いたのかは聞き取れない。

強く肩を摑まれ饼齿、抱き寄せられる愤钾。少し空気が変わった。ピンと張り詰めて候醒、何を言ったのか問い返す雰囲気をなくしていた能颁。

抱かれた肩に、彼の指が食い込む倒淫。幾分が伙菊、鼓動も早まったように感じた。

どうしたのだろうか敌土、この変わり様は镜硕。この張り詰めた空気は、一體何を示しているのだろうか返干。

迷った末兴枯、顔を上げた。

悲痛に歪む顔矩欠。眉間に深い苦悩を刻んで财剖、硬く目を閉じている。ゆっくりと手を伸ばした癌淮。躊躇いがちに頬に觸れた瞬間躺坟、逸らされていく顔。

ラインハルトは伸ばした指先を乳蓄、止めた咪橙。

何かに必死に耐えている、そんな表情虚倒。

何に耐えているのだ美侦。何故、そんなにも辛そうなのだ魂奥。

ラインハルトは彼の苦しむ訳を知りたかった菠剩。自分をこんなにも満たしてくれた男を、この手で救えるものなら救ってやりたい捧弃、と赠叼。

少し緩んだ腕を抜け出して擦囊、今度はロイエンタールの頭を抱えるようにして抱きしめた违霞。

頬に觸れるダークグレーの髪嘴办。助けを求める様に腕の中に納まってくる體。彼の手が背に回され买鸽、ぴったりと寄り添う二人涧郊。

靜かな時間が流れる。

穏やかな様で眼五、張り詰めた時間が妆艘。

ゆっくりと彼の髪を梳きながら、目を開けた看幼。サイドテーブルに飾られた花が批旺、見事に咲き誇っている。辺りに漂う诵姜、甘い芳香汽煮。

何ものにも侵される事のない、ただ二人の時間棚唆。

腕の中の人を見た暇赤。靜かに目を閉じて、胸に憑れている宵凌。體から要らぬ力を抜いて総てを預(yù)けて鞋囊。

彼の背中がシーツから出ていた。

ラインハルトは靜かにシーツを掛け直した瞎惫。続いて腰から足へと視線を動かす溜腐。視界の端に、全面ガラス張りの窓が映った瓜喇。

パノラマに広がる夜景逗扒。

暗い部屋に、夜景のほのかな明かりが差し込む欠橘。見上げれば夜空矩肩。雲(yún)のない空には星が輝いていた。

……幼い頃肃续、あの星を見上げてはこの手に摑めると思っていた黍檩。そして今も思っている。そう始锚、遠い現(xiàn)実ではなく刽酱。

姉を奪われて、ずっと目指して來た瞧捌。最初は姉さんを取り戻す棵里、ただその一念で润文。それが何時しか宇宙という野心に変わった。

誰もが夢見ては出來なかった事を殿怜、俺は成し遂げようとした典蝌。立ちはだかる幾多の壁を乗り越えて、やっとここまで來た头谜。

もう直ぐ……もう直ぐ骏掀、この手に宇宙が……。

一瞬柱告、脳裏を掠めた面影截驮。ラインハルトの體が強張った。瞳は瞠目し际度、瞬きを忘れる葵袭。

―――宇宙を手に入れると、誓った乖菱。

誰に坡锡?

……彼に。

その誓いを果たしたのか块请?

……まだ娜氏、途中。

ならば墩新、お前は何をしている贸弥?

……何って……。

心の中に木霊する自分の聲海渊。責(zé)めるのではなく绵疲、哀しく弱々しい響き。

無意識に腕に力が入る臣疑。僅かに身じろぎ盔憨、応える様に背が引き寄せられた。體の強張りが彼に伝わったのだろうか讯沈、ゆっくりと優(yōu)しく背を撫でられる郁岩。

あやすように、落ち著かせるように缺狠。

彼の優(yōu)しさが问慎、沁みる。

手が挤茄、震えた如叼。

蒼氷色の瞳が、瞬いて揺れる穷劈。

俺はまだ笼恰、誓いを果たしていない踊沸。彼の死に誓ったと言うのに、まだ果せてはいない社证。

苦難の中逼龟、幾度となく自らを奮い立たせてきた聲が、弱く霞んでいく猴仑。俺自身が审轮、弱く霞んでいく肥哎。

優(yōu)しい手辽俗。彼のあたたかい手は、俺の信念を弱らせる篡诽。

俺を崖飘、弱らせる蔫饰。

ロイエンタール……俺に優(yōu)しく切蟋、するな……。

抱きこんで見えない彼の顔顶捷。髪に指を絡(luò)ませて达椰、歪んでいく視界翰蠢。

彼の頬に、落ちた啰劲。

―――俺は梁沧、自分の想いを通す前に、やらなければならない事がある蝇裤。誰に頼る訳でもなく廷支、彼に誓った信念のもと、宇宙を手にするまで戦い続けなければ栓辜。

また恋拍、ポタリと落ちた。見つめる彼の表情が藕甩、目を閉じたまま曇る施敢。

濡れた頬に、口づけた狭莱。

震える指先を僵娃、そっと頬に添えて。

―――目を贩毕、開けるな悯许。何も、言うな辉阶。今先壕、お前の聲を聞いたら瘩扼、俺の総てが崩れそうで、怖い垃僚。

押し殺した嗚咽が漏れる集绰。

見つめた彼の顔が、僅かに下を向いた谆棺。

―――ロイエンタール……許してくれ……栽燕。

抱きしめた彼の肩を、靜かに放した改淑。俯いたままゆっくりと體を起こす碍岔。絨毯に散らばった衣服に袖を通した。

上手くボタンが留められない朵夏。歪んだ視界に蔼啦、震える手。半ばまで留めて上著を羽織った仰猖。

―――振り返ってはならない捏肢。

今、振り返れば間違いなく……間違いなく俺は饥侵、崩れ去る鸵赫。

唇を噛み締めた。端から血が滲む躏升。彼の動く気配は辩棒、ない。これでいい煮甥。これで正しいのだと思う盗温。ラインハルトは小さく息を吸うと、立ち上がった成肘。

振り返らない卖局。決して……。

手を引かれ歩んだ距離を双霍、今度は獨りで戻っていく砚偶。本來、成さなければならない場所へと洒闸。

そして染坯、一歩を踏み出した。

つづく…

次回丘逸、最終回……かしら…多分…单鹿。

何だか、終わってしまうのが淋しい気がします深纲。

(2003/6/25)

陽の光 闇の月 -15-

強張る身體仲锄。

俺の言葉が聞こえたのだろうか劲妙。全身を張り詰めさせて、僅かに震えている儒喊。あんなにも無防備でいたのに镣奋、急にどうしたのだろうか。

額が怀愧、鎖骨辺り觸れていた侨颈。靜かに脈打つ鼓動が聞こえる。

……放したくはない芯义、こんなにも愛している人を哈垢。それは紛うことなき本心。だが―――毕贼。

頬に落ちる涙の感觸温赔。泣いているのか……蛤奢。俺に心変わりをされた鬼癣、と思ったのだろうか。そんな事があるはずもないのに啤贩。貴方ただ一人の為にだけに生きている待秃、と言うのに。

再び痹屹、頬に落ちた章郁。

何を泣く事がある。貴方は獅子ではないか志衍。萬人の頂點に立つ暖庄、輝ける獅子。

あやすように楼肪、そっと背を撫でた培廓。泣いてはいけない、と春叫。

髪の毛に指が絡(luò)んでくる肩钠。僅かな震えが、その細い指先から伝わる暂殖。

また价匠、頬に涙が落ちた……。

貴方に涙は似合わない呛每。なのに何故踩窖、泣いているのだろうか。それは俺のせいなのだろうか晨横。俺が洋腮、貴方を苦しませているのだろうか廉沮。

俺は再び、あの蒼氷色の瞳から輝きを奪おうとしているのだろうか……徐矩。

酷い自己嫌悪に襲われた滞时。愛する人を苦しませる自分が許せなかった。目を開ければ滤灯、貴方はどんな表情で泣いているのか坪稽、俺はそれを目にする勇気が、ない鳞骤。

情けなさに窒百、眉間が曇る。自分が許せない豫尽、と深く深く刻まれて篙梢。

身じろぐ細い躰。密著した肌が美旧、離れていく渤滞。

頬に觸れた指先。小さく震えていた榴嗅。そして妄呕、やわらかな唇の感觸。貴方の涙で濡れた頬嗽测。詫びるようにそっとくちづけられる绪励。

聞こえてくる嗚咽。必死に堪えるように低く聞こえる唠粥。

―――涙の訳は俺疏魏、なのか。俺が苦しませているのか晤愧。

止む事のない大莫、嗚咽。

どうやったら养涮、俺は貴方を幸せに出來るのだ葵硕。苦しませず贯吓、俺の獨りよがりの欲に支配されず懈凹、貴方を輝かせる術(shù)はないのだろうか。

誰か……教えてくれ悄谐。

苦しかった介评。答えを見つけられず、闇ばかりが深まっていく。大切な人が泣いているのに们陆、何も出來ない無力さ寒瓦。嫌悪が深まる。

救い様のない情けなさに坪仇、俯いた杂腰。

…………。

吐息に混ざった聲椅文。聞き間違いだろうか喂很。否、多分……間違いではない皆刺。

解かれて行く腕少辣。離れていく肌。髪が頬を掠める羡蛾。

目を漓帅、開けてはいけない。聲を痴怨、かけてはいけない忙干。そう、肌で感じた腿箩。

貴方が望むのなら仕方がない豪直。寧ろ、墮ちてはいけない珠移、そう止めた俺の方。だから末融、俺は黙って貴方が選ぶ道を歩かせるまで钧惧。

ベッドが揺れた。端に腰掛けて衣服を拾っている勾习。何時かの夜と同じ浓瞪。片方は眠った振り。片方はただ黙って部屋を出て行く巧婶。それが乾颁、今夜は逆なだけ。

息を詰めて艺栈、足音に耳を立てる英岭。

止まらない嗚咽。

再びベッドが揺れた湿右。立ち上がった気配诅妹。ゆっくりと歩み出す。毛足の長い絨毯が足音を消していく。だが吭狡、あの人が俺から離れていく様は尖殃、手に取るように伝わった。

冷気がこの身に降り積もる划煮。

獨り送丰。

扉の開く音。

多分弛秋、これでいい蚪战。これが、正しい路铐懊。

締め付けられる胸邀桑。再び身を裂かれる思いがした。これは俺自身が望んだ事科乎。そう納得しようとしても離れていく肌が壁畸、ぬくもりが戀しくて……。

涙が茅茂、溢れそうになった捏萍。我ながら柄にもない、と思う空闲。だが令杈、いとおしいが故に、叫び出したいほど辛かった碴倾。

吐息に混ざっていた聲……許してくれ……と逗噩。

貴方は再び戻っていくのだろう、本來在るべき場所へ跌榔。こんな男のベッドなどではなく异雁、ゴールデンルーヴェの旗のもとへ。

閉ざされた音僧须。

靜まり返る部屋纲刀。

ゆっくりと目を開けた。そこに確かに存在していた担平、シーツの亂れ示绊。僅かに殘った躰の窪みと、ぬくもり暂论。

何時かの夜面褐、貴方もこんな風(fēng)に俺を見送ったのだろうか。細心の注意を払って遠ざかる人を見送ったのだろうか空另。そして一人殘されたベッドの上で盆耽、何を思ったのだろうか。

大きな溜息を吐いた。無気力に體を起こす摄杂。

ベッドに腰掛けて両手で顔を覆った坝咐。息を大きく吸い込む。そして両手をずらして析恢、口許を覆った墨坚。息をゆっくりと吐きながら、視線を下げる映挂。

深い青色の絨毯に映える白い花泽篮。あの人が花瓶から抜き取って、香りを楽しんでいた花柑船。だが今は長い事絨毯の上に放置され帽撑、萎れて輝きを失っていた。

そっと手に取る鞍时。

哀しげに亏拉、淋しげに項垂れていた。姿を見た訳ではなかったが逆巍、去り際及塘、嗚咽を漏らしていたあの人の姿と重なる。

これ以上傷つけないように锐极、靜かに花瓶に戻した笙僚。華やかに咲き誇る花弁の中に、暗く沈んだ花が一輪灵再。輝きも力強さも香りも失っている肋层。

もう一度、水を吸い上げて輝きを取り戻すだろうか檬嘀。

もう一度槽驶、華やかに咲き誇ってくれるだろうか

もう一度、甘い芳香を楽しませてくれるだろうか鸳兽。

再び両手で顔を覆った。溜息とも嗚咽とも分からない吐息が漏れる罕拂。

本來揍异、在るべき場所に戻したのだから……あの方も憾股、輝いてくれるだろうか阶捆。

顔を覆った手を離す事が出來なかった魄懂。

許してくれ仍翰、と囁かれた言葉が耳に木霊する产还。

姿を見てないのに脱衙、涙を流すあの人の顔が脳裏から離れない露乏。

だが―――これでいい衍菱。これでいいのだ、と自分を納得させる懦胞。ただ一度でいい替久、そう願った想いが葉えられたのだから。そして何より躏尉、たとえ一瞬であろうとも蚯根、共にこのベッドで交わした事は真実なのだと確信出來るから。

だから俺は胀糜、貴方が咲き誇り続けられるように守ってみせる颅拦。

俺を捉えて放さなかった輝きを、絶えず放ち続けられるように守ってみせる教藻。

顔を上げた距帅。涙の後が殘る金銀妖瞳。けれど括堤、その瞳に決意を宿らせて碌秸、花瓶を見遣る。

俺にしか出來ぬ痊臭、愛し方哮肚。

俺にしか求めぬ、愛され方广匙。

その術(shù)はまだ分からん允趟。だが、俺は貴方を必ず守ってみせる鸦致。

僅かに首をもたげ始めた花弁に手を添えて潮剪、靜かにくちづけた。

ラインハルトは逃げるようにして分唾、ホテルを出た抗碰。

寒く凍える道のりを、フードをすっぽり被って足早に駆け抜ける绽乔。

涙は弧蝇、辛うじて堪えていた。否折砸、寧ろ放心狀態(tài)に近く看疗、泣く事さえ忘れていたのかもしれない。すれ違う人影も視界に入らず睦授、ひたすら深く深く俯いて两芳、大本営への道のりを急いだ。

一刻も早くその場から離れたいと去枷、少しでも遠く離れてしまいたいと怖辆、必死に足を送り出す是复。

空はまだ真夜中、星が輝いている竖螃。

程なくして淑廊、彼方に大本営の門が見えて來た。本來ならば斑鼻、もと來た裏門から帰るべきなのだが蒋纬、今更見つかったところで、行き先を話さなければ済む坚弱。どこから抜けたのかも蜀备、話さなければ彼らが咎められる事もないだろう。

だが荒叶、実際のところはそんな事に気を使う余裕などなかった碾阁。心を占めているのは、たった今置き去りにした彼の事と些楣、亡き彼との誓い脂凶。

自分は唯一一人、心に住まわせている人を心の支えに愁茁、強く生きていけるものだと思っていた蚕钦。それはどんな事があろうとも不変で、揺るぎないものだと信じていた鹅很。

それがどうだ嘶居。いつの間にか他の侵入を許し、気付いた時には大きな存在になっている促煮。失う事を恐れ邮屁、心を開く事に恐れた。このままだと菠齿、自分が弱くぼろぼろに消え去ってしまいそうで恐ろしかった佑吝。彼を頼りきって、彼無しでは生きていけなくなりそうで绳匀、恐ろしかった芋忿。

―――だから、逃げた疾棵。まだ盗飒、宇宙を統(tǒng)一した後ならば、他に道があったかもしれない陋桂。けれど、まだ何一つ誓いを果たしてない今蝶溶、弱くなってしまうことは許されない嗜历。

そんな事は宣渗、あってはならない!

脳裏に木霊する言葉は強固なものでも梨州、なぜか心が痛んだ痕囱。今にも涙が溢れそうだった。多分暴匠、逃げて來た今でも彼を失いたくないと思っている鞍恢。彼のあたたかい胸が戀しいと思っている。けれど每窖、けれども―――帮掉。

突き進む俺に兵士の銃が向けられた。

「止まれ窒典! 手を上の頭に置くんだ蟆炊!」

止まらない俺に、次々と銃口が向けられる瀑志。

うるさい涩搓。一人にしてくれ。早く靜かな場所で一人になりたい……と劈猪、ただその思いだけが足を動かせる昧甘。

「おい!貴様战得、撃つぞ」

兵士の一人が銃の安全裝置を外した充边。反対側(cè)の兵士が腕を摑む。その拍子にコートのフードが脫げた贡避。

ひっ……痛黎!口々に漏れる悲鳴に似た驚き。ラインハルトは構(gòu)わず歩き出した刮吧。呆然と見送る兵士の群れ湖饱。扉のところで待ち構(gòu)える兵士も、ただ黙って目で追う杀捻。

「……キ…キスリング親衛(wèi)隊長に報告しろ井厌!」

我に返った兵士の一人が、聲を張り上げた致讥。途端仅仆、周囲がざわつき始める。けれどラインハルトは俯いたまま建物に入った垢袱。

不審者の侵入と勘違いして集まって來る兵士墓拜。皆決まったように瞠目し、聲を忘れる请契。どうして良いのか分からず咳榜、目の前を行く皇帝を見守った夏醉。

「陛下!」

慌てた様子のキスリングが追いついてきた涌韩。橫へ回り込んで皇帝の足を止めようとする畔柔。だが、表情を見た瞬間凍りついた臣樱。彼もまた同じように瞠目し靶擦、呆然と目で追うのみ。

不意に雇毫、皇帝の足が寢室に向かっていないのに気付いた玄捕。我に返り、後を追いかける嘴拢。

訳を訊こうと何度も聲をかけようとした桩盲。けれど、ただ後について行くのが精一杯で席吴、とても聲などかけられる雰囲気ではない赌结。

表情のない顔。蒼白で精気を失った肌孝冒。虛ろな瞳柬姚。瞬きさえあまりせず、彼にとってこの様な皇帝の姿は始めてだった庄涡。けれど量承、何よりも彼を躊躇わせたのは、今にも泣きそうな蒼氷色の瞳穴店。必死に堪えているように見えて撕捍、もし自分が聲をかけたなら、その途端泣かれてしまう気がした泣洞。

皇帝の足が止まった忧风。

執(zhí)務(wù)室。

だが自分で開けようとはせず球凰、扉の前で立ち盡くしていた狮腿。キスリングが近寄って、暗証キーのカバーを開けコードを入力する呕诉。

黙ったまま足元を見つめる皇帝缘厢。ロックが解除されても身動き一つしない。

用があったのはここではなかったのか甩挫、と過ぎったが贴硫、一応扉を開けてみた。

僅かに開いた隙間伊者∫钩耄皇帝は滑るように部屋に入った拖刃。そして、後を追う事を許さぬように扉が閉まる贪绘。

自動ロックのかかる音が、靜かな廊下に響いた央碟。

殘されたキスリングは扉の前で立ち盡くした税灌。只事ではない様子に表情が曇る。だが亿虽、いかに彼が気遣おうとも菱涤、退室されるのを待つ他に、なす術(shù)はなかった洛勉。

つづく…

最終回じゃないじゃないか粘秆!

すみません。まったく辿り著けず收毫、途中挫折しました攻走。そもそも考えてみればこの話自體、當(dāng)初6話程度の予定…なのに今は15話……此再。オーバーし過ぎって(汗)

次回こそ最終話です昔搂。

(2003/7/2)

陽の光 闇の月 -最終話-

闇に閉ざされた執(zhí)務(wù)室。

扉が閉まると同時に输拇、背を憑れさせる摘符。そして張っていた緊張を解こうと、深呼吸を一つ策吠。

獨り逛裤。やっと獨りになれた―――。

自分の息遣いさえ聞こえてくるようで猴抹、冷え切った冷気が心地いい带族。

暗闇の中、朧気に見える機の輪郭洽糟。しばらくの間炉菲、見つめ続ける。

ドクドクと自分の鼓動が坤溃、やけにうるさい拍霜。

息を、吐いた薪介。大きく祠饺、ゆっくりと。全てを諦めるように汁政、そして振り切るように……道偷。

靜かに機に歩み寄る缀旁。手元を照らすだけの小さな明かりを燈す。指先が機の輪郭をなぞって勺鸦、引き出しの暗証キーに觸れた并巍。

初めて気付いた、手の震え换途。纏わりつく寒さからでないことは懊渡、嫌と言うほど承知している。

引き出しの中军拟、たった一枚の文書剃执。

手に取って、文字を追った懈息。

視界が肾档、歪む”杓蹋堪える限界を越えたのだろう怒见。手の震えが紙に伝わり、強く握られて波打った骇两。

「……すまない……」

睫毛を伏せた瞬間速种、ポタリと雫が落ちた。一度堰を切ると低千、雫は後から後から溢れ出し配阵、頬に幾筋も跡を殘していく。

手にした文書の上にも落ちた示血。所々棋傍、インクが滲む。

伏せた瞼が揺れて难审、美しい眉間に苦悩が刻まれた瘫拣。

靜かに息を吸い込んで、天を仰いだ告喊。その剎那―――麸拄。

ビリビリを無殘な音をたてて紙が二つに裂かれた。垣間見えた紙面には「ノイエ?ラントにかかる人事黔姜、厳重注意拢切、……謹(jǐn)慎」の文字。

更にそれを重ねて破る秆吵。小さく小さく淮椰、手で裂く事が出來なくなるまで繰り返した。そしてその紙片をシュレッダーにかける。

吸い込まれて灰になっていく様を主穗、ぼんやりと目で追った泻拦。

もう、二度と元には戻らない忽媒。込み上げる嗚咽に争拐、口許を覆う。

「…う……くっ……」

もう猾浦、二度と……陆错。

歪んだ視界のまま、機に著いた金赦。

無地の公文書用紙を広げる。インク瓶の蓋を開けて对嚼、羽ペンを浸す夹抗。嗚咽で肩が揺れるせいか、ペン先と瓶が觸れ合ってカチカチと音が響く纵竖。

手が漠烧、酷く震えていた窍帝。

何度も浸し直したペン先が纪挎、紙面を走る。

視界はますます歪んでいく袜漩。無地の紙面にもいくつか透明な染みを作りながら通殃。それでもラインハルトはペンを走らせる度液。

いつもより字が、亂れていた画舌。それでも綴り続ける堕担。嗚咽の漏れる口許を手で覆って。紙面には「ノイエ?ラントにかかる人事」とある曲聂。先刻破り捨てたものの代わりだろうか霹购。

ペンを置いた。

新しく書き上げた文書は朋腋、ひどく亂れた字だった齐疙。察しの良い秘書官なら、所々に滲んだものの跡に気付くかもしれない旭咽。けれど贞奋、今のラインハルトには、書き直す気力など全くなかった轻专。

何度も読み返す忆矛。頭では納得していた。自分で決めた事なのだから、それも當(dāng)然と言える催训。けれど心が洽议、痛い。締め付けられて引き裂かれるほどに漫拭、痛む亚兄。

―――すまない、俺は逃げる采驻。

両手で顔を覆った审胚。込み上げる嗚咽が堪えられなかった。肩が大きく揺れて礼旅、涙で濡れた頬に膳叨、髪の毛が張り付いた。

―――今はただ痘系、謝るし事しかできない菲嘴。一方的に関係を絶つと決めておきながら、強引に求めたりして汰翠。そして今また龄坪、絶とうとしている。

ロイエンタール复唤、俺は怖いのだ健田。お前に守られて、お前を頼って佛纫、弱く崩れ去ってしまうのが妓局。このまま一緒にいると、間違いなくそうなりそうで恐ろしい雳旅。今まで奮い立たせて來た信念が跟磨、弱って霞んで消え去る。いつもお前が心の中にいて攒盈、お前の事ばかり考えてしまう抵拘。

それほど存在が大きくなった、と言うことだ型豁。

まだ僵蛛、俺は何も成しえてないと言うのに。そんなことが許されるはずかない迎变。だから俺は逃げる充尉。せめてキルヒアイスとの誓いを果たすまで、お前の傍にはいかない衣形。

機に突っ伏して驼侠、重ねた手の甲に額を押しつけた姿鸿。嗚咽は一向に収まる気配がない。暗い執(zhí)務(wù)室で僅かに燈された明かりの下倒源、皇帝は肩を震わせ続ける苛预。

―――けれど俺は弱い人間。お前の顔を見ていると笋熬、いつかきっと今夜の様に求めてしまう热某。いくら絶とう誓っても、瞬時に揺らぎ去ってしまいそうで胳螟、怖い昔馋。

だから―――許してくれ……。離れよう糖耸。今度こそ距離を置いて秘遏。そして、彼との誓いを果たしたなら……嘉竟。

その時は―――垄提。

暗がりの中ラインハルトは、自らの両腕を抱き寄せた周拐。ひたすら謝罪の言葉を繰り返し、涙を流す凰兑。

窓の外は白んで夜が明けようとしていた妥粟。

また一日が始まる。このハイネセンの復(fù)興と宇宙統(tǒng)一の戦いが吏够。だから勾给、夜が明けるまで、殘された僅かな時間の今だけは……锅知。

何者でもない一人の人として播急、傷ついた心のままにいたい。

ロイエンタール售睹、本當(dāng)にすまない―――桩警。

3月19日。ロイエンタールに処分が下される日を迎える昌妹。

美術(shù)館の大広間捶枢、立ち並ぶ者それぞれが美術(shù)品のように見える。そして飞崖、一際輝く彫刻が公文書を手にした烂叔。

頭を垂れ、宣告を待つ臣下固歪。

周囲は異様な緊張に包まれる蒜鸡。

皇帝は臣下を見ることが出來なかった。その意を察したのか、彼もまた視線を合わせることはなかった逢防。

ただ叶沛、靜かに時を待つ。

読み上げられる告示胞四。

最初の言葉に恬汁、皆が息を呑む。読み上げられたのは辜伟、あの夜破られた告示書ではなく氓侧、同じ夜、ひどく亂れた字で書き直された方导狡。

亂れた字とは裏腹に约巷、力強く読み上げられる言葉。共に戦って來た僚友の栄達に旱捧、皆独郎、喜びの表情が浮かぶ。

けれど臣下は複雑な思いでいた枚赡。これは何を意味するのだろうか氓癌、と∑冻龋皇帝に次ぐ強大な権力を與えられ贪婉、新領(lǐng)土を任せられるとは。

ただの謝意の表れなのだろうか卢肃。それとも疲迂、他に意図があってのことなのだろうか。何れにしても皇帝の心中など莫湘、彼は知る由もなかった尤蒿。

あの夜、言葉もなく去っていく人を送りながら誓った幅垮。愛するが故に正路に導(dǎo)くと腰池。目の前で墮ちようとしている人を、正路に戻すと军洼。そして―――巩螃。

ロイエンタールにしか出來ない、愛し方匕争。

ロイエンタールにしか求めない避乏、愛され方。

その答えをまだ見出してはいない甘桑。

告示が終わると拍皮、臣下は僚友の列に加わった歹叮。玉座では皇帝の聲が響いている。たった一人殘った敵を屈服させると铆帽、喚起している咆耿。

あの蒼氷色に輝く瞳で。

あの良く通る聲で爹橱。

臣下は思う萨螺。これぞまさしく自分を捉えて放さなかった姿ではないか、と愧驱。この姿に戀し慰技、この姿を手に入れたいと焦がれたのだと。

あの夜组砚、黙って見送ったのは正しかった吻商、そう納得して眩しい姿を見つめた。

二人は同じ光ではないか糟红、と思う艾帐。

ラインハルトは強い支配者の陽。そしてロイエンタールは盆偿、暗い陰りを放つ月柒爸。だから二人は一緒にはいられない。陽が昇れば月は沈むのだから事扭。両者が寄り添える事は決してない揍鸟。

もしあるとすれば、こんな小さな宇宙などではなく句旱、雙方の光が合わさっても焼き盡くすものが存在しない、地の果てなのかもしれない晰奖。

破滅を招こうとも谈撒、廃頽しようとも誰はばかる事のない世界。

けれど今匾南、二人がいるのはこの銀河系啃匿。築き上げたものを崩さぬように、微妙な均衡のもと生きていかなければならない蛆楞。彼らを取り巻く環(huán)境が変わらないことを祈りながら溯乒。

後にメックリンガーが語っている。ふたりの人間の野心を豹爹、同時代に共存させるには裆悄、どうやら銀河系は狹すぎるらしい……と。

この発言に至った頃臂聋。まさに答えを見出した瞬間ではなかったかと思う光稼。

彼にしかできぬ或南、愛し方。

それは即ち艾君、戦いを好む獅子が敵を食い盡くした時采够、敢えて敵に身を墮とし、再び獅子を輝かせた冰垄。血に飢えた獅子に血を啜らせ蹬癌、失いかけた光を取り戻させた。

そして虹茶、彼にしか求めぬ逝薪、愛し方。

結(jié)果として陥れられて反逆者の汚名を著ることとなったが写烤、彼にしてみれば反逆の怒りよりも翼闽、血を與えてくれる喜びの方が勝っていただろう。あたたかな腕よりも洲炊、蕩けるような囁きよりも欲していたに違いない感局。

あの夜、ロイエンタールの寢室から逃げた結(jié)果が暂衡、後にこの結(jié)果をもたらすなど询微、この時まだ誰も知る由もない。だが狂巢、彼らは決して不幸ではなかったと思う撑毛。

彼らの許された範(fàn)囲限界のところで、精一杯愛し合っていたのではないか唧领、と藻雌。

互いを一番深く理解できたが故に、微妙な擦れ違いを生んだのではないか斩个、と胯杭。

陽と月だった故に互いの光に焦がれ、陽と月だった故に寄り添うことを許されなかった受啥。願わくば別の世界で做个、再び出會うことを祈りたい。

終わり

最終回を無事迎えました滚局。

長い間お付き合いくださいまして本當(dāng)にありがとうございました居暖。今年の4月8日から連載を始めましたが、その間藤肢、以外にも黒金ファンの多さに驚かされました太闺。

同士を得て気を良くしたばか者は、リンクサイトまで作ってしまう始末嘁圈。呆れて苦笑いの日々でした跟束。

思えば莺奸、黒金サイトって少ないですね。今回実感しました冀宴。

さて灭贷、この「陽の光 闇の月」は記述にもあったように、私にとって「二人は似ているようで全く正反対な者略贮、尚且つ甚疟、決してまみえることが出來ないもの」という印象でした。だから太陽と月に例えさせてもらって逃延、こんな題名になりました览妖。

BGMはロイエンタールのテーマ曲(また勝手に……)Led ZeppelinのStairway to heavenという曲です。もしご存知の方がいらっしゃったら揽祥、是非ともバックで聴いて頂ければと思います讽膏。

最後に、卒倒ものの美イラをくださったテトラさま拄丰、ありがとうございました府树。

(2003/7/6)

馬鹿な私、余韻覚めやらず……エピローグ的別話を書きます料按。よろしければそちらもどーぞ(^^ゞ

エピローグ ― 白い華 -


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