ACT4 誓約
少し前を行く、白に馬に跨る秀麗な姿。それ自身が美術(shù)品のように驱富、絵になる姿。深い緑の中を题翻、金色と白色が互いを際立たせるように輝いて見える。
けれども腰鬼、その外見に似合わない馬の蹄の音は嵌赠、荒々しくペースが亂れていた靴拱。
手綱を操る顔は、蹄音をそのまま表していた猾普。靜かな森の中を、荒れた感情のままに突き進(jìn)んでゆく不機(jī)嫌な顔本谜。機(jī)嫌を取ろうとしても初家、つっかかって來(lái)る口調(diào)。こうなっては手がつけられないのは乌助、いつものことと十分承知している溜在。
キルヒアイスは、深い溜息とともに他托、頭を振って手綱を握り直した掖肋。
さて、どうしたものか……と赏参、思案を巡らせつつ志笼、そっと苦笑を浮かべる。なんだかんだと溜息は出るが把篓、それでも纫溃、不機(jī)嫌な姿にさえ見惚れてやまない。さらに韧掩、どうやって宥めるのか紊浩、宥められるのは自分だけだと己惚れてしまうのは、どうにも手に負(fù)えないほど彼を愛しているのだ疗锐、と今更ながらに思い知らされて坊谁。
小さく頭を振って、何気なく空を仰いだ滑臊。先ほどから気になっていたのだが口芍、空模様が怪しい。高山の天気は変わりやすく简珠、さっきまでの陽(yáng)気どこへ行ったのか阶界、空は急速に曇り始めていた。
「雲(yún)行きが怪しいですから聋庵、やっぱりコテージに戻りましょう」
何度目かの問いかけをしてみるが膘融、一向に戻ろうとする気配はない。
再び祭玉、重く吐息した氧映。この休暇はずいぶん前から決まっていたのだ。人里離れた山荘で脱货、誰(shuí)にも邪魔されず昔が戻ったみたいなひと時(shí)岛都。アンネローゼさまと3人での休暇律姨。口の悪いラインハルトさまが臼疫、耄碌ジジイの生前最期の善意择份、と言ったほどだ。それが烫堤、だ荣赶。
約束の日、アンネローゼさまの屋敷にお迎えに行ったならば鸽斟、女官が出てきて拔创、皇帝陛下が朝から體調(diào)を崩しておいでなので看病にゆかれました、と言ったものだから富蓄、さあ大変剩燥。見る間にラインハルトさまの秀麗な顔は憤怒に彩られ、細(xì)く長(zhǎng)い指はふるふると震えた立倍。しかも灭红、それ以上の説明もなく、女官は口注、預(yù)かっていました比伏、と大きなバスケットと手紙を寄越しただけでさっさとドアを閉めたのだ。
大きなバスケットには疆导、白い大きなレースのハンカチがかけられており赁项、そっと捲って見れば、サンドイッチや果物澈段、ケーキに飲み物がびっしりと詰まっていた悠菜。山荘に著いたら、3人で食べようと仕度されていたのだろう败富。手紙には謝罪の言葉と悔醋、二人で楽しんで來(lái)て、と綴られていた兽叮。
「ラインハルトさま芬骄、きっと雨になりますよ。降る前に戻りましょう」
無(wú)駄だと知りつつも鹦聪、何度目かの問いかけをしてみる账阻。
山荘に著くなり、早々泽本、馬を借りて遠(yuǎn)出に出た淘太。気の荒い馬だから乗りこなすのは無(wú)理だと馬主に言われたにもかかわらず、苛立っていたラインハルトさまは、余計(jì)にその馬を選んだ蒲牧∑埠兀荒れる馬を制御することで、自分の苛立ちを抑えようとしたのかもしれないが冰抢。
キルヒアイスは仕方なく松嘶、馬主に推された馬を借り、バスケットをくくりつけて後を追っている挎扰。けれども先ほどから喘蟆、空が気にかかるのだ。抜けるように青かった空が急に黒くなり鼓鲁、明らかに雨雲(yún)とわかるそれが空を覆って來(lái)ている。
未だ怒りを制御しきれていないラインハルトは港谊、何度言われても聴く耳を持とうとはしない骇吭。今更だと知っていても、彼はどう宥めてよいのか歧寺、いつも言葉を探していた燥狰。
「まったく、あのジジイめっ斜筐!」
荒れる馬の手綱をグイと引いて龙致、ラインハルトはどんどん森の中を行く。
空が光った顷链。
落雷があるかもしれない目代。彼は決心して馬の腹を蹴ると、前を行く戀人の許へ向かった嗤练。
「ラインハルトさま榛了、落雷があるかもしれません。帰りましょう」
「くそっ煞抬、まだ幾らも走ってないじゃないかっ霜大!」
帰らない、と駄々をこねて馬の腹を蹴った革答。
俄かに広がる距離战坤。
空が、また光った残拐。
キルヒアイスは途茫、心配そうに空を見上げて溜息を吐く。
「馬にあたっても仕方がないでしょう溪食? 帰りますよ」
「嫌だ」
振り切るように慈省、白馬は加速していった。呆れた彼も再び馬の腹を蹴ると、前をゆく金髪を追う边败。強(qiáng)引に手綱を握り袱衷、連れ戻すしか方法はなさそうだ、と意を決めて手を伸ばした剎那―――笑窜。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ドーン致燥。
馬の、狂ったような嘶き排截。
「あぶな……」
「わっ…嫌蚤!」
白い馬の前足が、高々と宙を蹴った断傲。手綱を締め切れなかったラインハルトは脱吱、背から振り落とされまいと必死にしがみ付いた。前足が地面に著いて认罩、漸く體制を持ち直したつかの間箱蝠、突如暴走し始めた。
振り落とされまいと必死にしがみ付くのが精一杯で垦垂、とても制御できそうにない宦搬。激しく揺さぶられながら、猛烈な速さで木々の中を劫拗、道無(wú)き道を突き進(jìn)んでゆく间校。
「ラインハルトさま!」
後ろからキルヒアイスが追う页慷。
「ダメだ憔足! 全然言うことを聴かない!」
必死に首に手を回し必死にしがみ付いたまま酒繁、彼は振り返って叫んだ四瘫。
まったくとんでもない事になった。これも欲逃、自分がキルヒアイスの言うことを聴かなかったからだ找蜜、気の荒い馬にこんな感情のままに乗ったからだ、と今更後悔してみるが稳析、ラインハルトの乗った馬は一向に止まる気配がなかった洗做。
ぽつぽつ降り始めた雨が、急速に激しくなってゆく彰居。どこからか诚纸、水の音も聴こえてくるようだ。もしかしたら陈惰、この先は谷にでもなっているのかもしれない畦徘。暴走は止まる気配が無(wú)い。振り向く顔、追いかける顔に井辆、不安が過(guò)ぎった关筒。
雨音と、水の音杯缺。
川か蒸播、谷か。
この先に危険があるのは間違いないようだ萍肆。そして再び―――袍榆。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ドーン。
狂った嘶き塘揣。
蹴り上げられた両足は包雀、宙を蹴る。
「うわっ亲铡!」
先ほどよりもより高く傾いた背は才写、簡(jiǎn)単に人を振り落とす。キルヒアイスは奴愉、落ちてゆく身體を抱きとめようと、必死に腕を伸ばした铁孵。
ドサッ锭硼。
枝の折れる音とともに、二つの身體が激しく地面に叩きつけられた蜕劝。
「痛っ……」
足を折れた幹に叩きつけたようで檀头、ジンと熱く疼いた。地面にぶつかった衝撃で岖沛、息も出來(lái)ず視界が暗くなる暑始。走り去る馬の蹄。そして突如婴削、悲鳴のような泣き聲廊镜。
容赦なく頬に打ち付ける雨粒で、ラインハルトは急に我に返った唉俗。
「キルヒアイス嗤朴!」
慌てて身體を起こせば、その下から痛みに顔を歪めた彼がいた虫溜。
「……大…丈夫…ですか雹姊?」
急いで抱き起こしてみる。目だった外傷はなかったが衡楞、歪んだ表情が痛みを物語(yǔ)っていた吱雏。
「キルヒアイス! 大丈夫か?」
肩に手をやりながら歧杏、痛みに顔をしかめる镰惦。それでも、無(wú)理に笑って得滤。
「大丈夫です陨献。それよりラインハルトさまは?」
おろおろと動(dòng)揺し懂更、大丈夫だ眨业、と頷くのが精一杯で。どうしたらよいのか考えることすら出來(lái)ず沮协、無(wú)意識(shí)にその手を差し出した龄捡。恐縮そうにラインハルトに支えられながら慷暂、彼はゆっくりと立ち上がる聘殖。傍には彼の乗っていた馬が、靜かに鼻を鳴らしていた行瑞。
大丈夫だから奸腺、と顔を撫でてやり、何気なく白い馬が走り去った方を見た血久。二人は一瞬にして突照、血の気を失った。その先には氧吐、途切れた地面がある讹蘑。高さは分からないが、おそらくは谷にでもなっているのだろう筑舅。危うく二人とも落ちるところだったのだ座慰。
どちらともなく顔を見合わせて、安堵に笑みを浮かべる翠拣。急に強(qiáng)まってきた雨腳に版仔、キルヒアイスは空を見上げて。
「帰りましょう误墓。これ以上酷くなったら危険です」
馬の手綱を握ると邦尊、鐙に足をかけた。
「っ痛……」
瞬間优烧、襲ってくる激痛蝉揍。
彼は、乗り損ねて再び地を踏んだ畦娄。
「大丈夫か又沾?」
心配そうに肩をさすって弊仪、今度はラインハルトが手綱を握った。ヒラリと軽い身のこなしで杖刷、馬にまたがる励饵。そして、キルヒアイスに向かって手を差し伸べた滑燃。
ここで役听、もたついている訳にもいかない。痛みは一瞬のこと表窘。馬に乗りさえすれば典予、あとは何とでもなる。彼は覚悟を決めると乐严、差し出された手を握った瘤袖。もう一度鐙を踏み、精一杯地を蹴って反動(dòng)をつけた昂验。
「うっ……」
苦痛に歪む顔捂敌。それでも手を握り締め、ラインハルトの後ろに跨った既琴。はっ……と馬の腹を蹴って占婉、もと來(lái)た道を引き返す。
強(qiáng)まる雨腳甫恩。
「ごめんな逆济、キルヒアイス。俺が言うことを聴かなかったばかりに……」
あまり早く走ればキルヒアイスの肩に響くので填物、ゆったりとした速さで森の中を進(jìn)む纹腌。雨粒が葉に當(dāng)たって霎终、ぱりぱりとうるさい音をたてる滞磺。
「そうですね。本當(dāng)にあなたって人は……莱褒。ま击困、今に始まったことじゃありませんけど」
ラインハルトの両脇から手を伸ばし、手綱を握る广凸。ぴったりと隙間なく合わさる背と胸阅茶。耳のすぐ傍で、戀人の聲が聞こえることに谅海、ラインハルトは少し恥ずかしい気がした脸哀。
どれくらい戻っただろうか。けれども一向に道は見えてこない扭吁。変化のない森の中撞蜂。同じ樹木に同じ倒木盲镶。どこまでも覆い茂るシダ。同じ景色蝌诡、繰り返される光景溉贿。
不意に馬の足取りが止まった。
「本當(dāng)にこっちの方角でしたでしょうか浦旱?」
前を見て宇色、ゆっくりと後ろを振り返る。違う眼差しが颁湖、左右を見比べる宣蠕。果たして、後ろが前か爷狈。前が右なのか左なのか―――植影。
「……やはり、迷ったのか涎永?」
と思币、言うことでしょうか……と、キルヒアイスは困惑の聲を上げて手綱を引いた羡微。
「困りました谷饿。迷ったときは無(wú)闇に動(dòng)かない方がいいのですが、この雨では……」
見渡す限りの樹木妈倔。多い茂る葉博投。天を仰げば、降り注ぐ雨盯蝴。
「ここにこうしていても毅哗、身體が冷えるばかりだ。もう少し移動(dòng)して捧挺、雨がしのげる場(chǎng)所を探そう」
そうですね虑绵、と彼は再び手綱を握った。痛くても闽烙、さっきよりもペースを上げて進(jìn)む翅睛。
張り出した枝をくぐり、葉を掻き分けて進(jìn)む黑竞。
すぐ目の前に見える金髪は捕发、すっかり濡れてしまって地肌まで見えている。寒くないように很魂、とより身體を密著させて扎酷、先を急いだ。そして―――遏匆。
突如法挨、開けた場(chǎng)所に出る骤铃。
「これって……」
森の奧深く。訪れる人もなく忘れ去られた廃墟坷剧。尖がった屋根の先惰爬、半分朽ちたシンボルが、かろうじて何であったのか想像させる惫企。
「埃りっぽいでしょうけど撕瞧、雨はしのげそうですよ」
朽ちた扉は既になく、代わりに覆い茂ったツタが暖簾のように垂れ下がっている狞尔。二人は馬から降りると丛版、ツタを掻き分けた。
薄暗くてはっきりは見えないが偏序、隅の方へ積み上げられたまま腐った家具類が見える页畦。あとは駄々広いホールになっていて、石の間からは痩せた木が生えていた研儒。
手綱を引いて馬も入れると豫缨、適當(dāng)な石の突起にくくりつけた。落ち著いたのか端朵、暢気に石の間に生えている草を食べ始めた好芭。
二人はその様子に緊張を解されたのか、クスリと笑ってバスケットを降ろした冲呢。草も生えてなく舍败、平らな石畳を探して腰を下ろした。雨はしのげるが敬拓、朽ちた窓には當(dāng)然ガラスのようなものもなく邻薯、場(chǎng)所によっては雨が降り込む。
「止みそうにありませんね」
寒いのか乘凸、ラインハルトが身體を寄せてきた厕诡。詫びるように見上げて、大丈夫か翰意? と木人、視線を送ってくる信柿。本當(dāng)に悪かった冀偶、と反省しているのだろう。彼には甘いキルヒアイスのこと渔嚷、穏やかに笑って安心させようとする进鸠。
「寒いのですか?」
ぴったりと寄せ合った身體は形病、どちらともなく震えていた客年。彼は肩を庇いながら立ち上がると霞幅、朽ちた家具らしきものの殘骸へと近づいた。
何度か往復(fù)してラインハルトの座っているすぐ先へ量瓜、適當(dāng)な大きさの木材を積み上げる司恳。
「ラインハルトさま。そこの吹き溜まりになっている枯葉をそこに」
組み上げた木材の隙間へ绍傲、言われたとおり枯葉を詰め終わると扔傅、彼はバスケットの中からライターを取り出した。
「出掛けに入れておいたんです烫饼。まさか役立つとは思いもしませんでした」
枯葉はすぐにパチパチと音を立て始めた猎塞。程よく乾燥して朽ちた材木は簡(jiǎn)単に火が著く。俄かにぬくもりが頬を照らし杠纵、冷え切った肌を溫めてくれた荠耽。
二人は並んで腰を下ろす。
ゆらめく炎が比藻、ラインハルトの白い頬を撫でる铝量。
これでは乾きにくいから、と二人は上著を脫いで火の傍に並べた银亲。そして身を寄せ合い款违、暖をとる。
「何か飲み物群凶、ありませんでしたかね……」
バスケットを引き寄せてカバーを捲れば插爹、白い大きなレースのハンカチ。隅にはアンネローゼのお手製の刺繍が見える请梢。それをラインハルトに手渡すと赠尾、彼は感慨深げに見入った。
バスケットの中にはポットがあった毅弧。少し冷めたコーヒーだったが气嫁、今はこれで十分。蓋のカップに並々と注ぎ够坐、二人で分け合って飲んだ寸宵。身體に染み入るぬくもりに、どちらともなく元咙、ほう……と梯影、息を漏らす。
「俺は本當(dāng)に非力だな」
淡い炎の中でハンカチの刺繍を見つめ庶香、ラインハルトはポツリとつぶやいた甲棍。
「姉と休暇をともにとることもままならず。助けようとした姉に赶掖、逆に救われてばかりだ」
怪我を負(fù)っていない方の肩に寄りかかってくる感猛。
「お前にも七扰、怪我を負(fù)わせて……」
ごめん、痛かっただろう陪白? とそっと手を伸ばしてさする颈走。
普段と違いうなだれた肩は、か細(xì)く華奢で頼りなげだ咱士。凜とした聲も疫鹊、はりを失っている。こんな時(shí)こそ司致、思う存分甘やかして守りたいのだけれども……拆吆。
自分の抑えきれない感情のために、迷惑をかけてしまったのだと脂矫、深く傷ついている様子枣耀。こんな時(shí)の不用意な慰めの言葉が、返って深く傷つけることになると知っている彼だからこそ庭再、何も言わず捞奕、ただじっと黙っていた。
「姉上を盜られて9年拄轻。力を得ようと必死にここまで來(lái)たが颅围、9年かかっても、ここまでしか來(lái)ていない」
レースの白いハンカチを握り締め恨搓、深い吐息を漏らす院促。その橫で彼は、寂しげな橫顔を見つめ自身を責(zé)めた斧抱。
非力なのは自分とて同じこと常拓。この姉弟を守るのだと誓いを立てて、いったいどれ程の月日が流れたことだろうか辉浦。ラインハルトと共に生き弄抬、同じ高みを目指し、いつかアンネローゼをこの手に取り戻して幸せな二人の姿を見たい宪郊、と掂恕。それなのに現(xiàn)実は。
焦ってはだめだ弛槐、と頭では分かっている懊亡。今の出世さえも、驚異的だということも丐黄。けれども斋配、こうしてラインハルトがふせる度に孔飒、どうしようもない非力さを突きつけられて灌闺、己が身を責(zé)めるほか艰争、苛立ちを鎮(zhèn)める術(shù)を知らないのだ。
寄りかかる華奢な肩を抱き寄せた桂对。倒れこんできた金色の髪が甩卓、鼻先をくすぐる。
「キルヒアイス蕉斜∮馐粒……俺達(dá)は、姉上を取り戻せるよな」
決して宅此、弱気になっている訳ではない机错。もしや取り戻すことができないのでは、と疑っている訳でもない父腕。ただ弱匪、確認(rèn)したかったのだ。それはキルヒアイスにだけ見せる姿璧亮。
「俺達(dá)は萧诫、姉上を取り戻せるよな」
「もちろんですよ」
肩を抱かれたままラインハルトは、彼を見上げた枝嘶。いつものやさしい顔帘饶。穏やかで、自分を包み込んでくれるあの群扶、青い眼差しがそこにあった及刻。
「焦りは失敗を招きます。ラインハルトさま竞阐、焦ってはなりません」
うん提茁、分かっている……と、小さく頷いて身體をすり寄せる馁菜。
雨はまだ降り続いていた茴扁。雨腳は激しいようで、外は日暮れのように暗い汪疮。所々雨漏りはしているが峭火、炎は暖かく二人を包んでいた。
靜かな時(shí)の流れ智嚷。炎はパチパチと音を発し続ける卖丸。
雨音が続いている。
水滴が盏道、激しく葉を打ちつけた稍浆。
寄り掛かる華奢な肩。乾いた金髪が、さらさらと頬をくすぐった衅枫。
何の疑いも嫁艇、何の不安もなく、無(wú)防備に憑れる身體弦撩。
痛めていない方の腕を伸ばすと步咪、抱き寄せた。
炎に照らされて色づいた顔が益楼、上がる猾漫。
まっすぐに見つめてくる蒼氷色の眼差し。
いとおしく感凤、いとおしく悯周、肩を抱き寄せる。
「キルヒアイス……」
甘い響きに陪竿、身が甘く痺れた队橙。無(wú)性に觸れたくて、顔を傾けて寄せる萨惑。觸れる柔らかな唇捐康。重なることが當(dāng)然のようにピタリと合わさった。
いとおしい庸蔼、ラインハルトさま解总。
「……愛しています」
うん……と、頷いたような姐仅、聲を出したような花枫。けれども塞がれた唇は、もう次の言葉を紡いでいた掏膏。絡(luò)まる舌から零れる水音劳翰。愛の告白を想いながら交わすからか党涕、水音は言葉にも聞こえるのだ淹遵。
「なあ……本當(dāng)に取り戻せるよな」
いたずらに唇を離したり叁怪、絡(luò)ませたり阵难。頬にくちづけて、耳を噛んで法牲。
「ええ矢否。必ず」
「そしたら邦马、3人で暮らせるのか腥刹?」
ちょうどラインハルトの耳たぶの下に唇を這わせているところで马胧、思わず、ええ―――と衔峰、うっかり返事をしそうになった佩脊。
彼は動(dòng)きを止め蛙粘、しげしげとラインハルトの顔を見つめた。綺麗な蒼氷色の瞳が威彰、不安げに曇る出牧。
「ダメか?」
様子の変わったキルヒアイスに抱冷、ラインハルトは心細(xì)く訊ねた崔列。その姿は梢褐、何も知らない無(wú)垢な少女のようで旺遮、むしろ自分一人が疚しいことを考えている気がして、思わず口籠る盈咳。
「ダメって……耿眉。一緒に暮らして大丈夫なんですか?」
ますます怪訝そうに首をかしげ鱼响、大丈夫とはどんな意味だ鸣剪? と理解できず、不安一杯の表情を浮かべる丈积。純真な少女のような眼差し筐骇。疑うことを知らず、嫉妬や欲望など江滨、一切無(wú)縁のようだ铛纬。
まったく……これでは私一人が汚れているみたいじゃありませんか……と、小さく吐息して唬滑。
「私には告唆、そんな自信ありませんよ」
彼はふう……と、吐息混じりに晶密、呆れ気味というか苦悩というか擒悬、とにかく重い顔をして頭を振った。この人が鈍感な人だったと言うことをすっかり忘れていた稻艰、と眉間の皺は見る間に深くなった懂牧。
「なあ、どういう意味だ尊勿? またお前归苍、俺を鈍いとか言って呆れているんだろう?」
そこまで分かるならば运怖、どうして拼弃? といつもの天然の鈍さ加減に泣きそうになる。悪気はないのだと十分承知していても摇展、自分とて言い難いことだってあるのだ吻氧。その辺りをいい加減察してくれてもいいのでは? と願(yuàn)わずにはいられない。
「……もし盯孙、3人で住んだなら鲁森、ラインハルトさまはこの先どうなさるおつもりですか?」
「この先って振惰?」
無(wú)防備な返答に歌溉、彼の皺は溜息とともに更に深みを増した。忘れていた骑晶。すっかり忘れていた痛垛。はっきり言わないとこの人には伝わらないのだということを。願(yuàn)ったところで成長(zhǎng)は見られない桶蛔。むしろ期待するだけ匙头、落膽する自分が可哀想というものだ。
ここで誤魔化しても仕方がない仔雷、と決心して蹂析、ニブチンでも理解できるストレートな言葉を選んだ。
「はっきり申し上げますが―――碟婆。アンネローゼさまのいらっしゃる家で电抚、私達(dá)はどうやってこの関係を続けてゆくのですか? ちゃんと隠しおおせますか竖共? それともカミングアウトしますか蝙叛? 同じ屋根の下で、もしや壁を隔てた隣にいらっしゃる狀況で肘迎、セックスが出來(lái)ますか甥温?」
蒼氷色の綺麗な瞳が、一瞬にして瞠目した妓布。
「それとも姻蚓、一切なしにしますか? どちらにしても私は無(wú)論のこと匣沼、ラインハルトさまにも耐えられない狀況だと思いますが」
とうとう言ってしまった狰挡。一つ屋根の下、最愛の弟は幼馴染の男と寢ている释涛。しかも加叁、弟のことをよろしくたのむ、と願(yuàn)った相手とだ唇撬。そんな意味で頼んだのではない它匕、と嘆かれるのがオチではないか。
「もっとも窖认、アンネローゼさまがいらっしゃれば豫柬、戀どころではないかもしれませんけど」
瞠目した瞳は告希、はっと我に返って青い瞳を見上げた。いつも姉のことで頭が一杯なのだから烧给、一緒に住んだならば燕偶、自分とのことなど忘れるだろう、とそう僻んでいるのだ础嫡。不思議と極端に鈍いラインハルトでも指么、この手の響きには聡いようで、瞬時(shí)に顔色が変わった榴鼎。
「どういう意味だ伯诬? お前だって、姉上に憧れていたんだろう檬贰?」
「わがままで人の言うことも聴けない人よりは姑廉、遙かに憧れの対象ですね」
棘のあるラインハルトの言葉に缺亮、思わずキルヒアイスも棘で返してしまった翁涤。肩に手はかかってはいるが、ただ置かれているだけなので萌踱、二人の間は自然と開いた葵礼。
パチパチを揺らめく炎が、白い頬を照らし出す并鸵。
どれくらい時(shí)間がたっただろうか鸳粉。すいぶん長(zhǎng)い間睨み合ったままでいたが、ふいにキルヒアイスが小さく吐息して园担。
「すいみせん届谈。そんな意味で言ったんじゃありません。泣かないでください弯汰。ほら艰山、こっちへ來(lái)て」
泣いてはいなかった。けれども今にも泣きそうな顔で咏闪、キルヒアイスを見つめていたのだ曙搬。最初は怒りを含んだ顔だったが、次第に悲しげに歪んでゆき鸽嫂、しまいには纵装、今にも頬を涙が伝いそうだ
素直に隙間を埋めてくる。寄りかかった肩は再びぬくもりに包まれた据某。
「……考えもしなかった橡娄。確かに姉上には隠さなければいけないよな」
「同性愛は禁じられていますからね。迫害は免れませんし癣籽、偏見も根強(qiáng)いと思います」
離れたくない挽唉、とラインハルトは身體を寄せてきた扳还。その想いは彼とて同じで、肩に腕を回し橱夭、ぎゅっと抱き寄せる氨距。普通の男女間の戀愛でも、気持ちが揺れ動(dòng)き棘劣、悩み俏让、壁にぶつかることはたくさんある。それが微妙な同性同士ならば尚のこと茬暇。些細(xì)な言葉一つで不安になり首昔、悪気なのないことでも嫌がらせになってしまう。微妙な立場(chǎng)糙俗。不安定な関係勒奇。なんと足場(chǎng)の悪いところで、自分達(dá)は戀を積み上げていかなければならないのか巧骚。
「取り戻せた訳でもないのに赊颠、今悩むこともありませんね……」
取り戻せないと嘆いているのに、取り戻した後のことを今悩んでも詮無(wú)きこと劈彪、と彼は小さく吐息してラインハルトを抱き寄せた竣蹦。
「なあ、キルヒアイス……」
肩に頬を乗せて沧奴、ラインハルトは小さな聲を紡ぐ痘括。彼は聞き取り難いので、更に密著するように顔を傾けた滔吠。
「俺は纲菌、気がついたときにはお前のことを好きになっていた。でも疮绷、ずっと片思いだろうと翰舌。通じ合うことなど絶対にないと思っていた」
パチパチと穏やかな炎が二人を包む。雨腳は弱くなったのか矗愧、さほど音は聞こえない灶芝。
「ずっと苦しかった。お前が姉上を見るたびに唉韭、辛くて―――辛くて夜涕。好きだと言ってくれたときは、本當(dāng)にうれしかった属愤。今でも女器、あのときの喜びは忘れられない」
在りし日の出來(lái)事を思い出して、キルヒアイスは感慨深げに瞼を閉じた住诸。
「私達(dá)は驾胆、長(zhǎng)い時(shí)間をかけて漸くここまで來(lái)たのですね」
うん涣澡、と小さく頷いて、肩にあるキルヒアイスの手に手を重ねて丧诺。
「こんなに長(zhǎng)い時(shí)間をかけて結(jié)ばれたのに入桂。こんなにも愛しているのに。俺は些細(xì)なことで驳阎、いちいち不安になるんだ抗愁。決してお前を疑っているわけじゃないのに」
重ねられた手を、指を絡(luò)ませて握る呵晚。こめかみや額にそっとくちづけて蜘腌、揺らめく炎を見つめた。
「それは私も同じです饵隙。疑っているわけでもないのに撮珠、無(wú)性に不安になるのです。でも金矛、それが戀をしている証拠ではないでしょうか芯急?」
戀は、自分の想いを相手に受け取ってもらい绷柒、そして応えてもらおうと必死だ志于。だから自分がどう思われているか涮因、相手がどう思っているか気になって仕方がない废睦。些細(xì)なことで行違いを起こし、いつも不安にさらされている养泡。
「不安にならないって嗜湃、出來(lái)るのか?」
靜かな沈黙に包まれた澜掩。二人身體を寄せ合い购披、じっと炎を見つめる。
不安を感じないでいられたら肩榕、どんな楽か知れない刚陡。けれどそれは何を意味するのだろうか。相手に興味を失ってどうでもよい存在になったら株汉、不安など感じないだろう筐乳。けれども、そんなことなどありえない乔妈。自分の中から蝙云、キルヒアイスが、ラインハルトが消えることなど決してないのだから路召。
「戀ではなく勃刨、愛になれば感じないかもしれませんよ」
「愛波材?」
もたれた首を起こして、ラインハルトは彼を見上げた身隐。揺らめく炎が廷区、青い瞳に映っている。
「愛って贾铝、無(wú)償の愛って言いますでしょ躲因? 相手にどうしてもらいたいか、ではなく忌傻。自分がどうあるべきか大脉、ですね」
つまり……遠(yuǎn)く離れていようとも、想い続けることはできるでしょう水孩? たとえ相手が別の人を選んだとしても镰矿、その人が幸福そうに笑っていたら許すことができる。とにかく俘种、愛した人の幸福が秤标、自分の全てであること。うまく言えませんけど……と宙刘、恥ずかしそうに笑って苍姜、照れ隠しのように一つ咳払いをした。
「よく分からないが……悬包。要求するのではなく衙猪、與えろ、ということか布近?」
ま垫释、そうなりますか……と、何とも簡(jiǎn)素に約されてしまった自分の考えに苦笑した撑瞧。しかしながら棵譬、言うべきは容易いが、いざそうあろうと思うのは難しいものだ预伺。欲もあれば订咸、プライドもある。何もかも受け止めて酬诀、太陽(yáng)のように包み込んで愛情を注ぐなど出來(lái)るだろうか脏嚷。
「難しいが、何とも甘い響きだな料滥。そんな風(fēng)に互いを想いあえたら然眼、本當(dāng)に幸せだな」
「他人事ですか?」
いや……と葵腹、バツが悪そうに俯いた高每。まだ子供っぽい仕草をみせるラインハルトが愛しくて屿岂、キルヒアイスは怪我をしていない方の手で、乾いた髪を梳いた鲸匿。
雨は既に止んでいる爷怀。靜かな空間に二人きり、何ものにも邪魔をされないひと時(shí)带欢。忙しく戦いに明け暮れる日々の中で运授、こんな風(fēng)に話したことなどなかったかもしれない。
「次元が違うのだな」
小さな聲で呟いた乔煞。何かの話の予兆に聞こえ吁朦、キルヒアイスは敢えて問い返さず、黙ったままでいた渡贾。
「人に知れるとか逗宜、逢えないとか、自分を見てくれないとか空骚、本當(dāng)はそんなことはどうだっていいんだ纺讲。お前が俺のことを好きだと想ってくれる。そう想ってくれるお前が囤屹、いてくれるだけで……」
材木の燃え崩れる音に混じって熬甚、確かにそう聞こえた。髪を梳くことを忘れ肋坚、突然の胸の高鳴りに乡括、キルヒアイスはそっと天を仰いだ。
「この世に存在してくれるだけで……」
眥が熱を持つ冲簿。締め付けられる粟判、胸の高鳴り。戀と気付いたあの頃のままに峦剔、いや、それ以上に角钩、熱く滾るこの想い吝沫。今、彼は心の底から感じていた递礼。ラインハルトと知り合えた奇跡を惨险。そして、傍にあることを許された幸運(yùn)を脊髓。
「私は辫愉、幸せです」
最後の一言を奪い去って、キルヒアイスは抱き寄せた髪にくちづけた将硝。
炎を見つめていた顔が恭朗、ゆっくりと振り返る屏镊。最後の臺(tái)詞を盜られた悔しさと、告げられた恥ずかしさの入り混じった眼差しが痰腮、青い瞳を見つめた而芥。
全身を駆け巡る、この想いが伝わるだろうか膀值。激しく高鳴った棍丐、この想いが見えるだろうか。溢れ出るラインハルトへの想いを沧踏、目に見えるものに変えることが出來(lái)るならば見てほしい歌逢、と熱い想いで見返す。
おずおずと手が伸びて翘狱、キルヒアイスの首の後ろを包み込んだ趋翻。
ゆらめく蒼氷色の瞳。
小さく唇が動(dòng)いた盒蟆。
「お前という存在があるだけで……」
満たされる……と踏烙、吐息だけの言葉を紡いで睫を伏せると、ゆっくり唇を重ねた历等。
熱い情欲を伴わない讨惩、それ。
そっと寒屯、溢れ出る想いの全てを注ぎ込むように荐捻。
身體が、熱く満たされてゆく寡夹。
いとおしい处面、と言う愛情の炎で。
きっとこの先も菩掏、仄かに魂角、そして揺らぐことなく燃え続けてゆくのだ。
燃えて智绸、燃え盡きて野揪、真っ白い灰になって、一つに混ざり合うまで瞧栗。
「誓いを斯稳、たてませんか?」
今更だと思う迹恐。こうして互いの心の內(nèi)で挣惰、存在を確かめ合っていれば、それでいいのだと。何を疑うことがあろうか憎茂。けれども珍语、だからこそ。
來(lái)て……と唇辨、火の燈る材木の切れ端を握ると廊酣、積み上げてある家具の朽ちた場(chǎng)所まで導(dǎo)いた。松明のようなそれを赏枚、壁に向かってかざす亡驰。
「あ……、やはりそうだったのだな饿幅。さっき屋根の上で見たから」
「まだ凡辱、人類が地球に留まっていた頃、多くの人が祈りをささげた場(chǎng)所です栗恩。今では忘れ去られ透乾、信仰する人もいなくなったのでしょうけど、細(xì)々と続いていたのですね」
高い天井まで壁一面に描かれた女性の絵磕秤。色の劣化が激しく乳乌、所々剝がれ落ち、石がむき出しになっている市咆。それでも辛うじて汉操、自愛に満ちたやさしげな女性が、小さな命を抱いている姿が見えた蒙兰。
「前に決闘をした時(shí)磷瘤、歴史を調(diào)べていたら偶然見たんだ。オーディンにも在ったとは驚いたな」
松明を壁に立てかけ搜变、壁畫を照らし出す采缚。見上げるラインハルトの手から、アンネローゼの白いハンカチを取ると挠他、端を持って広げた扳抽。
「……痛ッ……」
腕を上げようとして、彼の顔が苦痛に歪んだ绩社。
「大丈夫か摔蓝?」
慌てて壁畫から彼の方を見遣ったラインハルトは、心配そうに痛めた肩を撫でた愉耙。大丈夫ですよ、と無(wú)理に笑って手を握る拌滋。そのまま壁畫に向き直ると朴沿、片手だけでそっと金髪の上にレースのハンカチを被せた。
「俺が新婦か?」
不服そうに赌渣、レースの越し蒼氷色の瞳が見上げてくる魏铅。同じ男として生を受けたにもかかわらず、妻にさせられている自分がおかしかったのか坚芜、照れた苦笑だ览芳。
「仕方ないですよ。新婦は美しいものだと相場(chǎng)が決まっているのですから」
青い眼差しにやさしい微笑を添えて鸿竖、そっとラインハルトの頬を撫でると沧竟、彼は赤くなって俯いた。
卑怯だ缚忧。あの顔でやさしくされたら悟泵、何も言い返せなくなってしまう。それと知っていてキルヒアイスはいつもあの顔で自分を言い包めている闪水、とラインハルトは掣夥牵々不満に思っていた。けれども球榆、言い返せなくなるのは朽肥、それだけ彼のことが好きなのだと突きつけられたようで、恥ずかしい方が先立ってもいる持钉。
一瞬衡招、しんと靜まりかえったホールの中。
未だ握られたままの手に右钾、ぎゅっと力が籠められた蚁吝。そして、靜かなる聲―――舀射。
「私たちは窘茁、互いに夫と呼び」
はっ……と、レースの影でラインハルトは息を潛めた脆烟。
「良いときも悪いときも山林、富めるときも貧しきときも健やかなるときも」
握られたままの手に、細(xì)くしなやかな指が重なった邢羔。
「死が二人を分かつ迄……」
レース越しに蒼氷色の眼差しが驼抹、青い瞳を真っ直ぐに見上げる。
「互いを愛し拜鹤、慈しみ」
逸らされることのない框冀、交し合う視線。溢れるいとおしさが敏簿、握り合った手から明也、合わさった眼差しから伝わる宣虾。
脳裏に明滅する様々な光景。初めて出會(huì)った庭先でのこと温数。嫌がらせの喧嘩に明け暮れた绣硝、幼き日々。日が暮れるまで遊んだなら撑刺、甘いケーキと溫かなチョコレートの香り鹉胖。姉を失った寂しさ、悔しさ够傍。幼年學(xué)校での日々甫菠。そして、戦場(chǎng)王带。何度も死にそうな目に遭いながらも淑蔚、その度に二人力を合わせて生き延びて來(lái)た。
この密やかなる気持ちを伝えたのは愕撰、何時(shí)だっただろうか刹衫。
「貞節(jié)守るとこを誓いますか?」
部屋にこっそり忍んでは搞挣、そっとくちづけた带迟。
初めて抱きしめられた腕の中は、本當(dāng)に心地よくて囱桨。
このまま仓犬、時(shí)が止まってしまえばいい、と舍肠。
誰(shuí)にも渡したくはない搀继、と。
たとえ翠语、それが姉であったとしても叽躯。
誓いを聲に出せる喜び。好きな人に好きと言える喜び肌括。ほかの誰(shuí)でもない点骑、自分に誓いを求めるいとおしい聲。それに応えるのに何の躊躇いがあろうか谍夭。
「……誓います」
ああ黑滴、―――キルヒアイス。
熱く滾る想いを全身で噛み締めて紧索、ゆっくりと瞬いた袁辈。彼は小さく息を吸って、不安と期待の揺らめく瞳を向けて問う珠漂。
「誓うか吵瞻?」
レース越しの小さく震える聲に葛菇、キルヒアイスは甘磨、誓います橡羞、と即座に答えて、靜かにレースをめくった济舆。
瞬いて卿泽、見上げる眥から、涙が一滴零れ落ちる滋觉。
白いレースの下で签夭、金糸の髪が揺れた。シミ一つない白磁のような肌椎侠。涙を湛えた蒼氷色の瞳は第租、繊細(xì)なガラス細(xì)工のようで。この身に觸れることを許す唯一の人のために我纪、わずかに開けた唇は慎宾、今か今かと待ちわびている。
誓います―――と浅悉、もう一度囁かれた聲が趟据、何時(shí)までも甘い余韻を胸に響かせた。
薄暗い松明の光术健。鬱蒼と茂る汹碱、森の中の廃墟。遙か昔に忘れ去られた聖なる母の前で荞估、二人は永遠(yuǎn)とも言える愛を誓った咳促。
誰(shuí)に聴かせる訳でもない】彼牛互いの気持ちを互いに誓い合うだけの跪腹、儀式。拙く粗末なそれは娇昙、けれども二人にとっては至上とも思える瞬間で尺迂。痛めた肩を庇いつつ、誓いのくちづけは永遠(yuǎn)に続く冒掌。
雨は完全に止んでいた噪裕。外はすっかり闇に包まれ、夜蟲の鳴き聲が聞こえてくる股毫。
二人の愛に満たされた廃墟膳音。
長(zhǎng)い時(shí)間をかけてここまで來(lái)たが、二人の將來(lái)は铃诬、まだスタートラインに立ったばかり祭陷。これからさらに困難で険しい道が待っているだろう苍凛。けれども誓いどおり、良いときも悪いときも二人で力を合わせて歩んでいけたら兵志、と醇蝴。まだまだ若い彼らの心には、そんな甘い想いが満ちていた想罕。
終わり
お久しぶりです^^;
何と言っても赤金は悠栓、何年も書いたことがなかったですからね……。
はっきり言って忘れていました按价。最終話だけ殘っていたのが気になってはいたのですが惭适、何をどう書いてもオチもなにもない、ただの甘い話になるとしか思えなかったので楼镐、長(zhǎng)い間頓挫しておりました癞志。
まあ、一応ケジメ的なものということで???
(2005.9.22)